痴漢や盗撮、強制わいせつや強制性交等、性犯罪にはたくさんの類型があります。近年では性犯罪の厳罰化が進んでおりますので、性犯罪について理解を深めておきましょう。
- どのような行為を行なうとなんという犯罪に該当してなるのか?
- どの様な刑罰が科せられてしまうのか?
- 逮捕されてしまったらどうすればいいのか?
今回の記事では、性犯罪のうち、痴漢、盗撮、強制わいせつ、強制性交等、の4つについて、その内容や刑罰、逮捕されてしまった時の対処方法について、東京・恵比寿の弁護士が解説します。
痴漢
痴漢は、他者に対し、相手の意に反し、卑猥な行為、みだらな(性的な)いたずらを仕掛けることを言います。ほとんどのケースで痴漢は男性から女性に対してなされます。
たとえば、電車内で男性が見ず知らずの女性の身体を撫でまわしたり、背後から密着して体や性器を押し付ける行為が、痴漢行為に該当します。
痴漢を行なった場合は、以下の犯罪が成立します。
01.迷惑防止条例違反
電車やバス、人の多く集まる場所といった公共の場所で、人の身体に触れて羞恥心を害するような行動をとった場合には迷惑防止条例違反が成立します。比較的軽微な痴漢行為において成立する刑罰といえるでしょう。
実は迷惑防止条例違反での刑罰は自治体によって異なります。とはいえ刑罰の内容はある程度共通しており、だいたいの自治体で6ヶ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑と定められております。
初犯の場合は、示談が成立した場合は不起訴、示談ができなかった場合は罰金30万円となることが多いです。常習の場合は刑罰は加重されます。また不起訴処分となることは稀です。
02.強制わいせつ
被害者の下着の中に手を入れて直接性器を触るなど、相当に悪質な痴漢行為を行なった場合には、強制わいせつ(刑法第176条)が成立します。度が過ぎた痴漢行は強制わいせつとなってしまうと考えましょう。
強制わいせつの刑罰は6ヶ月以上10年以下の懲役刑です。罰金刑はありません。また、昔は、被害者の告訴がないと起訴されない親告罪でしたが、現在では親告罪ではなくなっております。そのため、被害者が告訴しなくても逮捕・起訴される可能性があります。
盗撮
盗撮は、被写体の同意を得ずに勝手に撮影する行為を言います(広義の盗撮)。盗撮の中でも、被写体の性的な部分を同意なく隠し撮りした場合には「性犯罪としての盗撮」となります。
たとえば、被写体のスカートの下からカメラやスマホを差し込んで下着を撮影したり、トイレや更衣室などの場所にカメラを仕掛けて着替えの様子を撮影したりするのが性犯罪としての盗撮にあたります。性犯罪としての盗撮についても、男性が女性を被写体として盗撮するケースがほとんどです。
盗撮を行なった場合は、以下の犯罪が成立します。
01.迷惑防止条例違反
- 駅や道路で盗撮行為を行なった
- 公衆トイレにカメラを仕掛けて盗撮を行なった
公共の場所で盗撮行為を行なった場合には、迷惑防止条例違反が成立します。
迷惑防止条例違反の刑罰は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑です。
02.軽犯罪法違反
- 私人の居宅や建物内のトイレで盗撮行為を行なった
- 会社の更衣室にカメラを仕掛けて盗撮を行なった
公共の場所ではなく、私的な場所で盗撮をした場合には、軽犯罪法違反が成立します。この場合の刑罰は、拘留または科料です。
強制わいせつ(刑法176条)
強制わいせつ罪は、13歳以上の女性に対して、暴行や脅迫を使ってわいせつな行為をすることをいいます。
わいせつな行為とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と判例で定義されており、かいつまんで説明すると、【性欲を刺激する行為】で、【一般的な視点からみて性的に異常と感じる行為】のことといえます。
以下のような行為は、強制わいせつに該当します。
- 無理やりキスをした
- 強引に身体に触れた、愛撫した
- 相手を脅して服を脱がせて写真を撮った
- 痴漢行為の最中、被害者の下着の中に手を入れて直接性器を触った
- 無防備な相手に対し、後ろから突然抱きついた
- 13歳以下の子どもの服を脱がせて写真を撮った
- 13歳以下の子どもの性器を触った
強制わいせつの刑罰は6ヶ月以上10年以下の懲役刑です。罰金刑はありません。また、昔は被害者の告訴がないと起訴されない親告罪でしたが、現在では親告罪ではなくなっております。そのため、被害者が告訴しなくても逮捕・起訴される可能性があります。
強制性交等(刑法177条)
強制性交等罪は、暴行や脅迫によって相手の反抗を抑圧し、無理矢理に性交や性交に類似する行為(口淫や肛門への挿入)を行ったときに成立する犯罪です。法改正前の強姦罪に相当する犯罪であり、法改正によりその呼称が強制性交等に改められました。
なお、被害者が13歳以下の場合には、暴行や脅迫を用いなくても強制性交等罪となります。すなわち同意の上の行為であったとしても強制性交等罪が成立するということです。
強制性交等罪の刑罰は、5年以上の有期懲役刑です。強制わいせつ罪と同様、昔は親告罪とされていましたが法改正によって非親告罪とされたので、現在では被害者が刑事告訴しなくても逮捕・起訴される可能性があります。
性犯罪で逮捕されたときの対処方法
01.早期の示談を目指す
性犯罪で逮捕された場合、被害者への威迫のおそれや逃亡のおそれがあるとして、なかなか身柄を解放してもらえないケースが多数です。
また、強制わいせつや強制性交等罪の場合には、起訴されて刑事裁判が開かれて実刑などの厳しい刑罰を適用される可能性が高くなります。
本当に性犯罪を犯したのであれば、早急に被害者との示談を進めるべきです。性犯罪では、被害者への被害弁償が済んで被害感情が軽くなると、情状が良くなって処分が軽くなるからです。
痴漢や盗撮などでは起訴前に示談ができると不起訴になる可能性がかなり濃厚になりますし、強制わいせつで起訴されても示談ができれば執行猶予判決を得られる可能性が高まります。強制性交等罪でも、示談が成立したら刑期を短くしてもらえるでしょう。
02.冤罪であれば相応の対応する
こと痴漢では冤罪事件も多いです。勘違いであればまだしも、中には示談金目的で痴漢をでっち上げる人もいます。
もし冤罪で逮捕されたら、すぐに無罪立証のため目撃者を探したり、被害者の供述に矛盾がないか精査したり、場合によっては鑑定によって無罪を立証したりする方法を検討しましょう。
さいごに
性犯罪で逮捕されてしまった際、刑事弁護に強い弁護士のサポートがあれば手続きを優位に進めることが可能となります。
被害者との示談交渉も冤罪に対する無罪の立証も、逮捕直後からの対応が重要となります。東京・恵比寿にある弁護士法人 鈴木総合法律事務所では刑事事件の加害者の弁護について注力しております。
刑事事件の加害者となってしまいお困りの方は早急に当事務所にご相談下さい。