盗撮とは、対象者(被写体)の承諾や了承を得ずに、対象者を羞恥させたり不安感等を与えるような写真を撮影する行為をいいます。電車内でスカートの中を隠し撮りしたり、更衣室で着替えているところを隠し撮りしたりする行為がこれに該当します。
実際に盗撮の被害に遭ってしまったら。様々な疑問が頭の中をよぎることになります。
- 解決までどういう流れになるんだろう?
- あと何回警察にいかなきゃいけない?
- 慰謝料をもらうことはできる?
- 撮影されたデータはどうなる?
ほかにもわからないことがたくさんあるけど、誰にきいたらいいのかわからない。相談できる相手もいない!!!
今回の記事では、そんなあなたの疑問にお答えいたします。
1.盗撮事件の手続の流れ
1-1 被疑者が逮捕された場合
経緯にもよりますが、盗撮したと疑われた人が逮捕された場合、警察から被害者の方に連絡がいく場合があります。
逮捕後に、相手の弁護士から示談の連絡が来る場合や、自分が被害にあっているかの確認などを求められる場合もあります。
1-2 被疑者が逮捕されなかった場合
盗撮したと疑われている人が逮捕されなかった場合も、警察に捜査への協力を求められる場合があります。逮捕された場合と比べて、逮捕された人が公開の裁判にかけられる確率は下がります。
1-3 被害者がすべきこと(捜査協力)
被害を受けた直後などは特にそうですが、精神的に動揺される方が非常に多くいらっしゃいます。冷静に警察の捜査に協力なさることが理想的ではありますが、警察では被害にあわれた方へのサポートも行われていますので、勇気を出して素直に相談なさるのも一つの選択肢です。
1-4 事件の終わり方(処分の相場)
盗撮事件では、概ね条例などで定める罰金額(数十万円)が課されるか、数か月以上の懲役が課されることが多い傾向にあります。
逮捕された人が罰金に処された場合、その時点では被害者の方が金銭を受け取ることにはなりません。示談によって金銭を受け取った場合、概ねその時点でその事件は終了します。

2.盗撮の慰謝料について

2-1 慰謝料とは
慰謝料とは、精神的な被害に対して、そのつぐないのために支払われるお金のことです。日本では、民法という法律をはじめとして、様々な法律が慰謝料についてさだめています。
2-2 慰謝料をもらう流れ
盗撮の被害にあった人が慰謝料をもらう流れとしては、大きく分けてふたつの流れがあります。
①刑事事件で相手と示談するときに慰謝料をもらう。
刑事手続のながれの中で、盗撮をした人が、被害者の方に示談をしたい旨の連絡をすることがあります。
盗撮した人かされた人が慰謝料の支払いを提案し、お互いがこれを了承したときに慰謝料を受け取ることができます。
被害者の方が慰謝料を受け取るためには、上記のとおり刑事手続の中で相手と交渉して合意するか、別途民事訴訟などの手続をとる必要があります。
②民事事件として相手を訴えて、慰謝料をもらう。
刑事事件の手続中に示談しなかった、あるいはできなかった場合、民事裁判を起こして相手から慰謝料を取るケースが考えられます。
この場合、民事裁判を起こすための費用や、裁判所に出向くための労力がかかります。また、相手が本当にお金を持っていなかった場合を別にして、示談できなかった方が迅速に慰謝料の支払いに応じる確率は比較的低いので、裁判が終わって実際に慰謝料を回収するまでにそれなりの時間がかかることが予想されます。
2-3 慰謝料の相場
盗撮事件の慰謝料の相場は、罰則を定めてある規則によりますが、対象になる罰則の罰金額程度になる場合が多いようです。そのほかの刑罰には、懲役刑などがあります。
一例として、罰金30万円の支払いを命じた判決や、懲役6か月を命じた判決があります。
2-4 慰謝料が上下する事情
慰謝料は、以下の事情によって上下することが考えられます。
- 盗撮行為そのものが悪質な場合
- 盗撮した人のことを被害者がどれだけ許せるのか
- 盗撮した人の経済事情
盗撮行為そのものが悪質であると認められる場合、盗撮した人に課される刑事罰も比較的重いものになっていきますので、示談することによって慰謝料を回収しようとする側にとっては有利な事情といえます。
また、被害者の方が、盗撮した人をどれだけ許すことができるかという点も、重要な点のうちの一つとなります。
最後に、以上の事情に共通して言えることではありますが、相手の経済事情も慰謝料の額に少なからぬ影響を与えます。他の犯罪被害者の方にも共通することでもありますが、そもそも相手が経済的に厳しい状態にある場合、現実的に回収できる額は低くなる傾向にあります。
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3.解決までのポイント
ここでは実際にあった事例を挙げながら、解決に至るまでのポイントを分かりやすくお伝えします。
3-1 友人の助けを得られた事例
10代の女性が、友人と一緒に駅周辺の上りエスカレーターを利用していたところ、友人が自分の後ろにいた男性を注意し、結果として盗撮被害にあっていたことを知りました。
盗撮した人が警察に連れていかれた後も、友人たちの励ましを受けながら捜査に協力し、相手方の弁護士との示談交渉を経て、示談金を受け取りました。
(ポイント)
→盗撮被害にあったときも、その後も周囲の人の助けを得られたことによって、相手方の弁護士との交渉成立までスムーズに進みました。
3-2 弁護士に依頼した事例
20代の女性が、通勤中の電車内において盗撮被害にあいました。
盗撮した人を駅員に引き渡すことなどは問題なく済んだのですが、遠方にいる家族や友人にも知られたくなかったので、被害者側の代理人として弁護士に依頼しました。
弁護士に依頼した後も、警察に対して家族などへの連絡をしないよう伝えるなど、周囲の人に自分が被害にあったことを知られないよう行動し、結果として極めて穏便に事件が終了しました。
(ポイント)
→被害者側の代理人として弁護士に依頼したことが功を奏し、事件終了まで特に負担を感じることなく、事件後もほどなくして普段通りの生活に戻ることができました。
3-3 お一人で対応された事例
30代の女性が、退勤中の電車内において盗撮被害にあわれたケースでは、まず被害女性が盗撮した人を警察の方に引き渡しました。その後、警察の捜査に協力するとともに、盗撮した人の弁護士からの連絡に応対しました。事件の終了まで自分一人で対応したので、手間と時間はかかりましたが無事に解決しました。
(ポイント)
→相手の弁護士との応対まで含めて一人で行ったので、疲労感はありましたが達成感もありました。また、自分の代理人を選ぶこともしなかったので、情報が伝わった範囲は最小限にとどまりました。

4.盗撮されたデータはどうなるのか?

警察の捜査を通じて収集された証拠品類のうち原本については、破棄ないし消去されます。
複製された証拠品類は、記録として警察に保管され、最も短いもので1年から2年、最も長い場合で5年前後の期間を経て消去されます。
詳しくは、担当の警察官の方にお尋ねくだされば、ご回答いただけるかと思います。
5.おわりに
盗撮事件は、他の事件と比較して特に情報の流出が危惧される事件かと思います。
警察側で捕捉されたデータについては削除されるということですが、インターネット上に流出してしまったものについては事実上削除が難しい場合が多いという側面もあります。
また、慰謝料についての実際の事件の推移としては上記のようなケースが一般的かと思われます。ご自身でご対応される場合でも、そうでない場合でも参考にしていただければと思います。


