盗撮は犯罪です。その場で現行犯逮捕されなくても、後日、発覚して逮捕されるケースも少なくありません。
具体的にはどういったきっかけで逮捕されるパターンが多いのでしょうか?
今回は盗撮で逮捕に至る経緯や警察に呼び出されたときに聞かれる内容、刑事事件になったときに不利益を小さくして早期解決するための対処方法を弁護士が解説します。
盗撮してしまった方はぜひ参考にしてみてください。


1.盗撮に該当する行為と刑罰

盗撮で成立する罪
日本には「盗撮罪」という犯罪類型はありませんが、以下のように、盗撮を規制する法律や条例があります。
迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、暴力行為や迷惑行為を禁止するために各都道府県が定めている条例です。
細かい規定内容は自治体によりますが「人を羞恥させたり不安をおぼえさせたりする方法で下着や身体を撮影してはならない」とされているケースが多数となっています。
具体的には電車やバスなどの公共の乗り物、人が多く集まる場所、トイレや更衣室など人が通常衣服をつけずにいる場所での盗撮行為が禁止されます。
刑罰は自治体によりますが、東京都の場合には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」となっており、常習の場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金に刑罰が加重されます(東京都迷惑防止条例)。
軽犯罪法違反
正当な理由なしに他人の家や風呂場、トイレや更衣室など人が通常衣服をつけないでいる場所をひそかにのぞき見たり盗撮したりすると、軽犯罪法違反となります。
罰則は「拘留または科料」です(軽犯罪法1条23号)。
住居侵入罪、建造物侵入罪
盗撮目的で他人の住居や他人の管理する建物内に侵入した場合、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立します(刑法130条)。
刑罰は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金刑」となります。

2.盗撮で逮捕されるパターン

盗撮で逮捕されるパターンとしてどういった状況が多いのでしょうか?
2-1.現行犯逮捕される
盗撮するとその場で発覚し、被害者や周辺の人に気づかれて取り抑えられるケースが多々あります。
現行犯逮捕は私人(一般人)でもできるので、目撃者らに取り抑えられたらその時点で逮捕が成立すると考えましょう。そのまま警察に引き渡されると、多くのケースで立件されて刑事事件になります。
2-2.防犯カメラで特定される
その場では盗撮が発覚しなくても、後日「防犯カメラ」によって犯行が発覚するケースが多々あります。
エレベーターや駅の構内など、いたるところに防犯カメラが設置されています。安易な気持ちで盗撮すると、カメラに写り込んでしまい逮捕される可能性があります。
2-3.仕掛けたカメラが見つかって発覚する
トイレや更衣室などにカメラを仕掛けて盗撮しようとすると、カメラを発見されて犯行が明らかになるケースがよくあります。
撮影機材を設置できたのは誰かなど、状況を検証していくうちに犯人が特定されるパターンです。
2-4.ネット投稿で発覚する
盗撮した画像や動画をネット上に投稿すると、投稿者の情報を追跡されて犯人が特定される可能性があります。
また人の下着姿や身体などが写っている写真や動画を投稿すると「わいせつ物頒布罪」や「児童ポルノ禁止法違反」が成立する可能性があります。さらに罪が重くなる可能性があるのでそうした投稿は控えましょう。
2-5.警察からの呼び出しを無視して逮捕される
盗撮事件が発覚すると、警察は被疑者や参考人として対象者を警察署に呼び出すケースが多々あります。
呼び出されたからといって必ずしも逮捕されるとは限りません。参考人として呼ばれているだけかもしれませんし、被疑者であっても「逃亡や証拠隠滅のおそれ」がなければ逮捕要件を満たさないからです。
しかし呼び出しを無視し続けていると「逃亡、証拠隠滅のおそれがある」と判断されて逮捕されるリスクが高まっていきます。
2-6.自宅などに来られて逮捕される
被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、逮捕状をもった警察官が自宅や勤務先などの場所にやってきて通常逮捕されるケースもあります。
以上のように盗撮すると、現行犯逮捕されなくても後日に発覚して逮捕に至るケースもあります。今はまだ刑事事件になっていなくても、いつ警察から連絡が来てもおかしくない状態といえるでしょう。
3.警察から呼び出しを受けたら取り調べで何を聞かれるの?

盗撮が発覚すると警察から呼び出される
盗撮が後日に発覚すると、警察はまず被疑者を警察署へ呼び出すケースが多数です。
出頭を拒否し続けると逮捕につながってしまう可能性もあるため、応じた方がよいでしょう。ただし仕事などで呼び出された日程の都合をつけにくい場合には、事情を伝えて変更してもらうことも可能です。
以下では警察から呼び出しを受けたら何を聞かれるのか、一般的な取り調べ事項をみてみましょう。
盗撮したかどうか、事実確認
盗撮犯人として疑われている場合、「本当に盗撮をしたのか」聞かれます。
このとき、防犯カメラなどに明らかに画像が残っているにもかかわらず「やってません」などと嘘を言っても通用しないでしょう。
盗撮をした動機
盗撮した場合、なぜそのようなことをしたのか聞かれます。「むしゃくしゃしていたから」、「画像をコレクションにしたかったから」などいろいろな動機があるでしょう。
単なる性的好奇心、コレクション目的など「身勝手な動機」は一般的に情状が悪くなります。
被害者と面識があったのか確認
従前から被害者と面識があったのかも確認されるケースが多数です。
そのときたまたま居合わせて初めて会った相手なのか、友人や同僚、元恋人なのか、など聞かれるでしょう。知っている相手であれば、どういった関係なのか、相手に対して好意の情を抱いていたのかも尋ねられる可能性があります。
特定の対象者をしつこくつけまわしていた場合、情状が悪くなります。
盗撮の方法や時間、場所を確認
盗撮の具体的な方法や時間、場所などについても細かく尋ねられます。
あいまいな記憶で適当に答えると後日に不利益が及ぶ可能性があるので、覚えていないことは「覚えていません」と答えましょう。
盗撮の頻度や回数、余罪について確認
今回だけではなく盗撮の余罪がないかも確認されます。
余罪がある場合、盗撮の頻度やこれまでに行った回数も聞かれるでしょう。
頻繁に盗撮行為を繰り返していたら、当然情状が悪くなります。
仕事や家族構成、居住環境を確認
普段の仕事内容や家族構成、居住環境についても聞かれます。
定職に就いていて家族と同居している方の場合、逃亡のおそれが低いため逮捕されずに済む可能性が高くなります。

4.盗撮してしまったときに早期解決、不利益を小さくする方法

盗撮事件が刑事事件になってしまったとき、早期解決してなるべく不利益を小さくするにはどうすればよいのでしょうか?
4-1.弁護士に相談する
盗撮が発覚して警察から呼び出しを受けたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
どう対処するのが最善か、アドバイスを受けられます。取り調べへの対処方法についても教えてもらえるので、心の準備ができるでしょう。
万一逮捕されてしまった場合でも、すぐに刑事弁護人として選任して刑事弁護活動を開始してもらえます。
4-2.被害者と示談する
盗撮が刑事事件になってしまったら、被害者との示談が極めて重要です。
逮捕前に示談が成立すれば、多くのケースで逮捕されずに済むからです。
ただ被疑者が自分で被害者に連絡を入れて示談を申し入れると、拒否される可能性が高くなりますし被害者が怯えて被害届を出したり警察に逮捕を促したりするリスクもあるでしょう。
被害者との示談交渉は、当初から弁護士に依頼するよう強くお勧めします。
4-3.早期の身体解放を目指す
万一逮捕されてしまったときには、なるべく早めに釈放してもらう必要があります。
警察の留置場に身体拘束されている状態では、通勤も通学もできません。解雇や退学の危険もありますし、社会との接触をほぼ遮断されるので、不利益が極めて大きくなってしまいます。
早期に釈放してもらうには、勾留しないように検察官へ申し入れたり不起訴処分を獲得したりする方法が有効です。
どちらの方法も被疑者本人には難しいため、弁護人が対応する必要があるでしょう。
逮捕されたら一刻も早く弁護人を選任するようお勧めします。

4-4.不起訴処分を獲得する
盗撮が刑事事件になると、捜査が終了した段階で検察官が「処分決定」します。
処分決定とは、起訴か不起訴か、起訴するなら略式にするのか公判請求するのか決めることです。
不起訴になれば、盗撮の刑事事件は終了しますし勾留されている場合には釈放されます。
略式起訴になると、釈放はされますが「罰金刑」が課されます。裁判所に行く必要はありませんが一生消えない前科がつく不利益があります。
公判請求されると公開法廷で裁かれるので、「被告人」として裁判所へ出頭しなければなりません。懲役刑が適用される可能性も高くなりますし、一生消えない前科がつきます。
前科がつくと人生においてさまざまな不利益を受ける可能性があるため、処分においては「不起訴処分」を目指すべきといえるでしょう。
処分決定前に被害者と示談できれば、多くのケースで不起訴にしてもらえます。この意味でも盗撮が刑事事件になったら、早急に弁護士に依頼して被害者との示談交渉を開始すべきです。
当事務所では東京・恵比寿を拠点として盗撮や痴漢など性犯罪の刑事弁護に積極的に取り組んでいます。盗撮をしてしまい逮捕や取り調べ、前科が心配な方、すでに逮捕されてしまった方、在宅起訴されている方などおられましたら、お早めにご相談ください。

