ある日突然、夫や息子などの家族が「痴漢で逮捕された」と聞かされたら、誰でもどう対応して良いのかわからず混乱してしまうでしょう。この先どのような流れとなり、最終的にどのくらいの刑罰を受けるのか心配になるはずです。
また痴漢は「初期対応」が非常に重要で、早急に家族が適切な対処をしなければ後に大変な不利益が及ぶ可能性も高まります。
今回は家族が痴漢で逮捕されたときの流れと適切な対処方法について、弁護士が解説します。




1.痴漢で逮捕されたときの流れ

家族が痴漢で逮捕されたら、その後は以下のような流れで刑事手続きが進みます。

1-1.48時間以内に検察官の元に送られる
被疑者が逮捕されると、48時間以内に検察官に身柄を送られます。この間は家族であっても本人と面会できません。
1-2.24時間以内に検察官が勾留請求の有無を判断する
被疑者の身柄が検察官のもとに送られると、検察官は引き続き勾留すべきかどうか判断します。勾留が不要と判断されると勾留請求は行われず、被疑者の身柄が釈放されます。痴漢の場合、初犯で本人がしっかり反省しており被害者への威迫も行わない可能性が高ければ勾留されずに釈放される可能性が高くなりますが、この時点までに弁護人を選任しておけば勾留請求を阻止できる可能性が高くなります。
1-3.裁判所が勾留決定の有無を判断する

検察官が被疑者を勾留請求すると、裁判所が勾留の決定をするか否かを判断します。検察官が勾留請求をしても、裁判所が勾留の決定をしない場合は、被疑者の身柄は解放されます。
1-4.勾留期間に取り調べが行われる
被疑者が勾留された場合、原則的に勾留期間は10日です。その間捜査官による取り調べが行われます。逮捕から勾留に切り替わると、家族も本人に接見できるようになります。
10日間では痴漢の捜査が終わらない場合、さらに10日間勾留期間が延長される可能性があります。
1-5.起訴か不起訴かが決まる
勾留期間が満期になった場合や、勾留されずに在宅捜査になって捜査が満了すると、検察官は被疑者を起訴(略式起訴を含む)するか不起訴にするかを決定します。
初犯で示談が成立している場合は、不起訴になることが多いです。痴漢の被害者が被疑者やその家族に連絡先を教えることはほとんど考えられないため、弁護人を入れて示談交渉をすることになります。
1-6.裁判で刑罰が確定する
起訴された場合には、裁判が行われます。日本では刑事事件の99.9%で有罪判決となるので、痴漢で起訴されるとほとんどのケースで有罪判決が出るでしょう。

2.痴漢で成立する犯罪について

痴漢で成立する可能性のある犯罪は「迷惑防止条例違反」か「強制わいせつ罪」のどちらかです。
迷惑防止条例違反は公共の場所で被害女性の身体を触った場合など、一般的な痴漢のケースで成立します。刑罰は自治体によって異なる場合もありますが、だいたい6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
一方強制わいせつ罪は、相手の服を脱がせたり下着の下に直接手を入れてしつように性器を触り続けたりした場合など、相当悪質な痴漢のケースで成立します。刑罰は6か月以上10年以下の懲役刑です。
夫や息子が痴漢容疑で逮捕されたとき、放っておくと上記の罪が成立して罰金や懲役刑を受け、一生消えない前科がつくリスクが高まります。
3.家族が痴漢で逮捕されたときにやるべきこと

家族が痴漢で逮捕されたときになるべく不利益を小さくするため、以下のような対応をしましょう。
3-1.弁護士に相談・依頼する
逮捕されたら「すぐに」弁護士に相談すべきです。
早期に身体拘束から解放をしてあげないと、職を失う可能性もありますし、弁護人が入らないと示談交渉もできないことが多いです。示談が成立しなければ、初犯であっても罰金刑以上になるため、前科がついてしまいます。
このように、早期の身柄釈放や、示談成立により不起訴を獲得する(前科をつけない)ために、直ちに弁護士に依頼するべきです。
また、痴漢では冤罪も多いので、夫や息子は実際には痴漢行為をしていないかもしれません。しかし逮捕されている最中に捜査官から厳しく責められると、虚偽の自白をしてしまう方も少なくありません。すると虚偽の自白調書が後に残って証拠となり、冤罪を晴らすことが非常に困難となります。
そのようなことのないよう、当初から本人に正しい知識を伝え励まし続けねばなりません。ところが家族は逮捕後3日間本人と接見できず、話をできるのは弁護士のみです。そこで逮捕されたら時間を空けずに弁護士に接見要請すべきなのです。
3-2.必要なものを差し入れる

逮捕されたら本人は警察の留置場内で身柄拘束を受けますが、留置場内での生活は外界とは全く異なり不便この上ないものです。
パソコンやスマホなどのIT機器はもちろん使えず、外部とのやり取りは接見と手紙、電報のみです。娯楽などもほとんどありませんし、衣類も逮捕されたときのままで足りないケースが多数です。
不足しているものがあれば早めに差し入れてあげることが重要です。逮捕後3日間は家族が本人に接見できないので弁護士に行ってもらい、本人が何を希望しているかを聞いて差し入れ用品を用意しましょう。
3-3.勾留期間に切り替わったら接見に行く
逮捕後3日が経過して勾留期間に切り替わったら、すぐに留置場に接見に行きましょう。
痴漢容疑で逮捕された本人は「家族はどうしているのか?」「心配していないか?見捨てられていないか?」など不安な気持ちを抱えています。
家族が会いに行って顔を見せ、少し話をするだけでも本人は多大な安心感を得られます。
ただし留置場にて拘束中の場合、家族による面談には捜査官が立ち会いますし、時間も20分以内に限られます。
3-4.被害者との示談交渉を進める

痴漢で逮捕されたら、すぐに被害者との示談を進めるべきです。示談が成立したら不起訴になる可能性が大きく高まるからです。特に勾留された場合、起訴不起訴の決定までは長くても20日間しかないので急ぐ必要があります。
被疑者の家族が自分たちで交渉するのは難しいので、弁護士に示談を進めてもらいましょう。
3-5.冤罪の場合
痴漢が冤罪の場合、示談はしません。無罪の証拠集めが必要です。専門的な対応が必要なので、弁護士を頼ってください。

東京でも満員電車が多く、痴漢で逮捕される方は後を絶ちません。大切なご家族を守るために恵比寿の弁護士がお力になりますので、お早めにご相談ください。

