不倫した側(有責配偶者)から離婚を請求することはできるの?

監修者
弁護士 鈴木 翔太
弁護士 鈴木 翔太
弁護士法人鈴木総合法律事務所、代表弁護士の鈴木翔太です。
弊所では、99.43%の方から弁護士の応対についてご満足の声を頂いており、99.14%の方からお知り合いに紹介したいとの声を頂いております。
まずはお気軽にお問い合わせください。

「不倫をしてしまった側(有責配偶者)からは離婚を請求することはできないのでしょうか?」といったご相談を受けることがあります。

有責配偶者ができないのは訴訟による判決離婚です。逆に言えば判決離婚以外の方法での離婚は可能です。有責配偶者であっても相手方に離婚を要求することはできますし、この要求に相手が応じるのであれば離婚は成立します。

今回の記事では、有責配偶者側が離婚したい場合はどうすればよいのかについて解説します。

有責配偶者とは

01.有責配偶者とは

有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)とは、離婚の原因を作ったことについて責任のある配偶者のことです。

以下のような人が典型例です。

  • 不倫して婚姻関係を破綻させた人
  • 暴力を振るって婚姻関係を破綻させた人
  • モラハラ行為を行って婚姻関係を破綻させた人
  • 生活費を払わない、家出したなど悪意の遺棄によって婚姻関係を破綻させた人

02.有責配偶者には当たらないケース

以下のようなケースはどちらか一方が悪いわけではないので双方とも有責配偶者とはなりません。

  • 性格が合わずに離婚した
  • 宗教や政治思想が合わずに離婚した
相談無料
そのお悩み、弁護士に相談しませんか?
・ご相談者の満足度99.43%
・知り合いにも紹介したい方99.14%
弁護士 浜島

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者から相手方に対し離婚を請求することはできるのでしょうか?以下見てみましょう。

01.訴訟による離婚はできない

有責配偶者は自ら離婚原因を作った人です。離婚原因について責任があります。

そのため、離婚するか否かの主導権を有責配偶者側に与えるのは道理が通りません。たとえば有責配偶者の相手方が離婚を拒否している場合において「相手方が離婚を拒否しているにも関わらず、有責配偶者の意思表示に基づき離婚を認めてしまう」となると、相手側に非常に不公平な結論となってしまいます。

そのため、法律上は「有責配偶者からの訴訟による離婚」は認められていません。仮に有責配偶者が離婚訴訟を起こしても、裁判所は離婚を認めません。不倫をしたり暴力を振るったりして離婚原因を作った側が、自ら訴訟提起することで離婚を実現するのは難しいといえます。

法定離婚事由とは!?裁判離婚に必要な5つの条件を解説!!離婚するためには、夫婦の双方が離婚に対し合意することが必要です。 当事者間での話し合い(協議)や調停委員を間にいれての話し合いで離婚の合意ができない場合には訴訟で解決するほかないのですが、訴訟(...

02.訴訟によらない方法であれば離婚を請求することができる

有責配偶者に認められていないのは『訴訟によって離婚を求めること』です。

したがって訴訟による方法以外の方法であれば、有責配偶者側から相手方に離婚請求をすることができます。

有責配偶者側から離婚を請求する方法

有責配偶者側から離婚を請求する方法についてみてみましょう。

01.相手と話し合う(協議離婚)

有責配偶者側からでも相手方に対し離婚の話し合いをすることは可能です。相手(配偶者)が離婚に合意してくれるのであれば、裁判によらずとも離婚が成立します(協議離婚)。

話し合いによって婚姻関係を破綻させられた被害者側が離婚を受け入れることにしたのであれば、有責配偶者からの離婚請求であっても不公平とはならないからです。

離婚手続の種類と進め方
離婚手続の種類と進め方について解説!!いざ離婚しようと思っても何から手を付けて良いかわからないという方が多いでしょう。 離婚の際には財産分与や慰謝料、親権や養育費などさまざまなことを決めなければなりません。 また、離婚の進め方...

02.調停で話し合う(調停離婚)

有責配偶者であっても離婚調停を申し立てることは可能です。

離婚調停の場において、両者が離婚に合意することができれば当然に離婚が成立します。

調停も話し合いの手続きです。協議離婚の場合と同様、被害者側が離婚を受け入れることにしたのであれば離婚を認めても特段の不利益はないと考えられるからです。

03.離婚訴訟を提起する(裁判上の和解による離婚)

有責配偶者であっても離婚訴訟を提起すること自体は可能です。有責だからといって訴えそのものができなくなるわけではないのです。

ただし訴訟手続きが進行し判決が出る段階になると、裁判所は離婚判決を認めません。そのため裁判での判決によって離婚することはできないのです。

「訴訟での判決では離婚することができないことが確定している」のですから、離婚訴訟を起こすことにメリットがないように思われます。どこにメリットがあるのでしょうか?

メリットは、裁判上の和解として離婚を成立させる可能性があるという点にあります。

裁判上の和解とは、訴訟の最中に当事者間の話し合いによってトラブルを解決する方法です。これもまた有責でない方の配偶者が話し合いによって離婚を受け入れるということなので、協議離婚や調停離婚と同様に離婚を認めても特段の不利益がないと考えられます。

04.訴訟において相手が離婚そのものを受け入れている

有責配偶者側からの離婚訴訟の提起であっても、相手が離婚そのものを受け入れているのであれば離婚は成立します。たとえば相手が離婚については争っておらず、慰謝料額や親権などを争点としている事案等です。

以上のように、法の建前としては『有責配偶者からの離婚請求は認められない』とされていますが、協議や調停等であれば有責配偶者からの離婚請求も認められております。

不倫や暴力などの離婚原因を作ってしまった側であっても離婚をあきらめる必要はありません。

パターン別!離婚のメリット・デメリットとは
離婚のメリット、デメリットについて解説!!既婚者の方のなかにはパートナーとの喧嘩、性格の不一致、結婚後に判明した事情等を理由に離婚を検討されたことがある方も多いかと思います。 離婚するとして気になるのはそのメリットやデメリットです。メリ...

有責配偶者からの離婚訴訟が認められるケース

前述のとおり有責配偶者側からの離婚請求は認められません。そのため有責配偶者側から離婚訴訟を提起しても判決で請求棄却されてしまうのが原則です。

ですが例外として有責配偶者からの離婚請求であっても判決で離婚が認められるケースがあります。

それは『長期にわたって別居状態が続いており夫婦関係が形骸化して実態が失われている』ケースです。こういったケースでは夫婦関係を継続させる意味がないと考えられるので不倫などをした有責配偶者からの離婚請求でも離婚判決を出してもらえる可能性があります。

なお、これには以下の3つの条件を満たさねばならないとされております。

  1. 別居期間が長期に及んでいる
  2. 未成熟の子どもがいない
  3. 離婚によって相手配偶者が過酷な状況に陥らない

それぞれの条件について詳しく確認してみましょう。

01.別居期間が長期に及んでいる

1つ目の条件は、夫婦の別居が長期にわたって継続していることです。別居が長期にわたって継続し、夫婦関係が形骸化していてはじめて有責配偶者からの離婚請求が認められるのです。

10年以上別居している等の事情があれば有責配偶者からの離婚請求であっても認められやすくなります。

相談無料
そのお悩み、弁護士に相談しませんか?
・ご相談者の満足度99.43%
・知り合いにも紹介したい方99.14%
弁護士 鈴木 翔太

02.未成熟の子どもがいない

2つ目の条件は、夫婦の間に未成熟の子どもがいないことです。未成熟とは「経済的に自立していない」ということです。中学生や高校生などの子どもはもちろんのこと、大学生で成人していても経済的に自立していない子どもも未成熟の子どもとされます。

未成熟の子どもがいる場合、親が離婚すると経済的に困窮し満足に教育を受けられなくなってしまう可能性があります。子どもの生活・教育を保護する必要性から、未成熟の子どもがいる場合は有責配偶者からの離婚は認められにくくなります。

他方で、子どもが未成年であったとしても経済的に自立しているのであれば未成熟子には該当しないとされるので、有責配偶者側からの離婚は認められやすいといえます。

03.離婚によって相手配偶者が苛酷な状況に陥らない

3つ目の条件は、離婚によって相手方(有責ではない配偶者)が苛酷な状況に陥らないことです。

経済的な側面だけではなく、社会的にも精神的にも苛酷な状況にならないことが必要です。たとえば、相手配偶者が有責配偶者から経済的にも精神的にも自立しており、離婚によって社会的にも特段の不利益を受けることがないのであれば離婚は認められやすいといえます。

04.相手配偶者が有責性の証拠を持っていない

これは01~03の条件とは視点が異なるものとなりますが、参考として解説します。

こちらに有責事実があることについての証拠を相手方が持っていないのであれば、有責配偶者であっても離婚請求が認められる可能性があります。

離婚訴訟において相手方は「原告は有責配偶者である」と主張することになるのですが、そのためには相手方は有責原因となる事実が存在することを証明しなければなりません。たとえば「原告は不貞している(ので有責配偶者に当たる)」と主張するのであれば、相手側が不貞(不倫相手との肉体関係)の存在を立証しなければならないのです。証拠が不足していて証明できないのであれば、原告が有責配偶者とは認定されませんので訴訟でも離婚が認められる可能性があります。

有責配偶者が離婚したい場合には、相手の手持ち資料にどういったものがあるのかに着目しましょう。

有責配偶者側から離婚をする際の流れ

自分が有責配偶者側だとして、相手(配偶者)と離婚する際の流れについてみてみましょう。

不倫された、親権争い、財産分与(熟年離婚)、DV離婚
離婚の進め方についてパターン別に解説!!「パートナーが不倫した」、「夫からDVの被害を受けている」等、配偶者との離婚を考える事情や背景は夫婦によって異なります。 いざ離婚手続きを進める場合、離婚の原因となった事情によって手続きの進め方...

01.離婚協議を持ちかける

まずは相手と話し合いをしてみましょう。当事者間の話し合いにおいて相手が離婚に合意すれば離婚が成立します(協議離婚)。

なお、離婚の話し合いにおいては離婚条件の取り決めもしっかりと行ないましょう。取り決めるべき離婚条件は主に以下の5つです。

  • 財産分与
  • 年金分割
  • 慰謝料
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流

相手が離婚を渋る場合、慰謝料の支払いを申出たり財産分与を多めに譲ったりすると相手が離婚に応じてくれやすくなります。

離婚で取り決める条件と流れ~財産分与、慰謝料、養育費~
離婚の際に取り決めておくべきこと離婚の際には、財産分与や慰謝料、養育費などさまざまなことを決めておかなければなりません。 とはいえ正しい知識を有していないと不利な条件を押しつけられてしまうおそれもあります。財産分与の方法や慰謝...

また、離婚の交渉を有利に進めたい場合は弁護士に任せることも検討しましょう。弁護士に交渉を依頼すれば自分で対応せずに済みますしストレスもかかりにくいなどのメリットがあります。

相談無料
そのお悩み、弁護士に相談しませんか?
・ご相談者の満足度99.43%
・知り合いにも紹介したい方99.14%
弁護士 奥野

02.別居する

話し合いで離婚の合意に至らなかったのであれば、別居をしてみるのも一つの手です。別居をすることで「相手が離婚を受け入れようか」と考えるきっかけになることがよくあります。

なお、こちらが一家の大黒柱である場合や相手より収入が高い場合、別居したら必ず婚姻費用を払いましょう。婚姻費用を払わないと悪意の遺棄とみなされて有責性の上塗りになってしまうおそれがあります。相手と離婚するためにも婚姻費用の支払いが重要です。

別居の際には婚姻費用の支払いについて取り決めてから家を出るとスムーズといえます。

別居中の生活費(婚姻費用)の相場、請求方法をパターン別に解説
別居中は生活費を請求できるって本当!?婚姻費用について解説!!離婚する前段階で別居を試みる夫婦は多くいらっしゃいますが、女性側が専業主婦(家事労働者)やパート勤務である場合、収入がない(低額)ことから別居後の生活費を用意することが困難となることがほとんどです。特...

03.離婚調停を申し立てる

別居したら家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てましょう。

調停では調停委員が間に入って夫婦間の意見を調整してくれます。相手と直接話しをしなくて済むので、相手も感情的になりにくく離婚へ向けて前向きな話し合いができるケースも多々あります。

なお、こちらが有責配偶者の場合、調停委員が相手側の肩を持つケースが多々あります。調停で不利にならないためには弁護士によるサポートが必要といえるでしょう。有責配偶者側から調停を申し立てるのであれば弁護士に依頼することをお勧めいたします。

04.調停が不成立になったら訴訟を検討する

調停が不成立になってしまった場合は離婚訴訟を提起するかどうかを検討します。

相手が有責性を証明するだけの証拠を持っていないようであれば離婚訴訟で離婚が認められる可能性があります。また、訴訟の途中で和解離婚できる可能性もあります。

なお、離婚訴訟においても離婚できる見込みがほとんどないようであれば、いったん離婚はペンディングにして別居を継続するのも一つの手です。

調停が不成立になった後、有責配偶者が具体的にどのように対応すべきかは状況によって異なります。迷ったときは弁護士へ相談しましょう。

離婚の際の権利関係について

01.有責配偶者は慰謝料を支払う必要がある

不倫や暴力などによって夫婦関係を破綻させた場合、有責配偶者側は慰謝料を支払わなければなりません。

慰謝料の金額はケースによっても異なりますが、離婚の場合100~300万円程度です。婚姻年数が長いと慰謝料は高額になる傾向がみられます。

離婚で取り決める条件と流れ~財産分与、慰謝料、養育費~
離婚の際に取り決めておくべきこと離婚の際には、財産分与や慰謝料、養育費などさまざまなことを決めておかなければなりません。 とはいえ正しい知識を有していないと不利な条件を押しつけられてしまうおそれもあります。財産分与の方法や慰謝...

02.有責配偶者でも財産分与をもらうことはできる

有責配偶者であっても財産分与はもらえます。

財産分与は離婚時に夫婦の共有財産を分け合う制度であり、夫婦関係を破綻させた配偶者にペナルティを与える制度ではないからです。

なお、財産分与の割合は夫婦で2分の1ずつとするのが基本ですが、相手が離婚を渋っている場合などには相手の取得分を多くしたり相手にすべての財産を分与したりすることで離婚を促す手段として使うことができます。

03.有責配偶者でも親権者になれる

世間では「有責配偶者は親権者になれない」などといわれておりますが、実はこれは誤解で有責配偶者であっても親権者になれます。また、養育費を請求することもできます。

相手とよく話し合い「どちらが育てるのが子どものためになるのか」という視点から親権者を決定しましょう。

父母の両方が親権を希望するともめてしまいますが、有責配偶者であっても親権を獲得できるケースはあります。あきらめる前に弁護士へ相談しましょう。

親権を獲得するために対応しておくべきこと未成年の子どもがいる夫婦が離婚する際は、親権者を決めなければなりません。現行法では、父母のどちらか一方にしか親権が認められないためです。 親権について夫婦間でしっかりと話し合い合意ができればよい...

さいごに

上記のとおり、協議離婚や調停離婚、和解離婚等の場合には、有責配偶者からの離婚請求であっても認められます。

とはいえ有責配偶者から離婚を請求すると、慰謝料や財産分与、親権などの問題でトラブルが大きくなるケースも多々あります。交渉や調停、訴訟を有利に進めるため、離婚問題に詳しい弁護士の力を借りましょう。

東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、離婚問題に力を入れて取り組んでいます。離婚問題でお悩みの方はお早めにご相談ください。

不倫した夫から離婚を請求された!有責配偶者からの離婚請求が認められるケースと別れたくない時の対処方法
不倫した夫から離婚を切り出された!!どう対応すればいいの!?「不倫相手の女性と結婚するために離婚してほしい」 突然、夫からこんな身勝手なことを切り出されたら、深く傷ついてしまいます。 法律的には不倫した側(有責配偶者側)からの離婚請求は認められない...
相談無料
そのお悩み、弁護士に相談しませんか?
・ご相談者の満足度99.43%
・知り合いにも紹介したい方99.14%
弁護士 松岡
監修者
弁護士 鈴木 翔太
弁護士 鈴木 翔太
弁護士法人鈴木総合法律事務所、代表弁護士の鈴木翔太です。
弊所では、99.43%の方から弁護士の応対についてご満足の声を頂いており、99.14%の方からお知り合いに紹介したいとの声を頂いております。
まずはお気軽にお問い合わせください。