既婚者の方のなかにはパートナーとの喧嘩、性格の不一致、結婚後に判明した事情等を理由に離婚を検討されたことがある方も多いかと思います。
離婚するとして気になるのはそのメリットやデメリットです。メリット、デメリットをしっかりと理解したうえで離婚するかどうかを決断しないと、今後の人生に悪影響が生じてしまう可能性があります。
今回の記事では、離婚することによるメリットとデメリットについて弁護士が解説します。
子のいない夫婦が離婚した場合のメリット
まずは、子どもがいない夫婦が離婚する場合のメリットについてみてみましょう。
01.一人になって自由になれる
子どものいない夫婦が離婚した場合、独身時代の自由な生活を取り戻すことができます。
パートナーとほとんどコミュニケーションを取らない、配偶者に気持ちが残っていない、「単なる同居人」のような状態になっている、ということであれば、離婚してのびのびと暮らす方が幸せになれることでしょう。
02.お金を自由に使うことができる
婚姻中は、自身の収入から家庭の支出を賄う必要がありますので、自由に使用できるお金が少なくなってしまうものです。いわゆるお小遣い制を採用し、毎月少額のお金で自身の交際費や遊興費をやりくりされている方も多いことでしょう。
離婚後は、自身の収入を自分の好きに使えるというメリットがあります。高額な物を買ったり旅行をしたりしやすくなることでしょう。
03.再婚することができる
離婚して独り身になったのであれば、別の人と再婚して新たな家庭を作れます。今の配偶者に気持ちが残っていない場合にはこれは大きなメリットとなるでしょう。
女性には再婚禁止期間がある
民法第733条
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
民法においては、女性に対し100日間の再婚禁止期間が設けられております。この期間は再婚ができませんのでご注意ください。
子のいない夫婦が離婚した場合のデメリット
子どもがいない夫婦が離婚する場合のデメリットについて確認してみましょう。
01.さみしくなる
離婚して一人身になると、孤独感、さみしさを感じてしまいます。離婚後、再婚する予定がない場合、再婚できなかった場合にはおひとりさまとして生涯を終えることとなります。
02.結婚に失敗したというコンプレックスを抱えることになる
人にもよりますが、離婚すると「結婚に失敗した」という思いに苛まれて苦しんでしまう方がいらっしゃいます。この苦しみから逃れるためにアルコールに溺れるなどしまう方や鬱病等を患い体調を崩す方もいらっしゃいますので注意が必要です。
03.偏見を受ける
離婚したことで偏見を受けることもよくあります。特に地方や田舎ではこの傾向が強いといえます。親など親族から「なぜ離婚したの?」と詰められる、責められる可能性も否めません。
04.再婚する際のキズとなる
離婚歴があることは、再婚する際にキズとなることもあります。特に再婚相手が初婚の場合は特に顕著となることでしょう。
05.経済的な問題
結婚により専業主婦になっていた女性において重大な問題となるのですが、離婚すると経済的に困窮してしまう可能性が非常に高りです。就職しようにもブランクが長すぎてできなかったり、低収入の仕事しか見つからないといったケースも多々あります。
離婚後はどのように収入を得るのか、どうやって生活を維持するのかをしっかりと検討する必要があります。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合のメリット
次に、未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合のメリットについて確認してみましょう。
01.子どもに夫婦喧嘩を見せずに済む
夫婦喧嘩を繰り返している光景を見せられることは、子どもにとって大きなストレスとなります。チック症状が出てしまったり学校で友達に暴力を振るったりしてしまう子どもも中にはいます。
離婚することで両親の喧嘩を見せずに済むようになれば、子どものストレッサーを除去することができます。
02.教育方針を自由に決められる
婚姻中は、夫婦でお互いに話し合って子どもの教育方針を決定しなければなりません。意見が合わなければ衝突が発生しますし、納得できなくても相手に合わさないといけないこともあるでしょう。
離婚して自分が親権者になれば、基本的には自分で自由に教育方針を決められます。
03.その他のメリット
前段落「子のいない夫婦が離婚した場合のメリット」に記載したメリットの一部または全部を享受することもできます。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合のデメリット
未成年の子どもがいる夫婦が離婚した場合のメリットについてもみておきましょう。
01.相手に親権をとられるリスクがある
子どものいる夫婦が離婚する際、親権者を定めることになりますが、日本では単独親権を採用しています。父または母の一方しか親権者になることができないということです。
離婚した際に、自身が必ず親権者になれるとは限りません。相手に親権をとられるリスクもあります。親権者と鳴れなかった場合、「子どもとずっと一緒に暮らしたい」と思っている方にとっては大きな喪失と受けることになります。
02.面会させてもらえないリスクがある
親権者ではない親には子どもとの面会交流権が認められておりますので、離婚後も定期的に会ったり電話などで連絡をとりあったりすることができます。
しかし、実際には離婚後に子どもと会わせてもらえていない方がたくさんいらっしゃいます。特に親権者側が再婚した場合、「新しい父親(母親)に早くなじませたいから」という理由で面会を拒絶されやすいので注意が必要です。
03.仕事上で悪影響が出ることがある
親権者となった場合、自身の仕事や就業状況に大きな影響が出る可能性があります。
子どもが体調を崩した際は、通院のために早退や遅刻、欠勤せざるを得ず、勤務先に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
また、転職をする場合に、シングルであるとこれらを懸念されて採用されしてもらえないケースも多々あります。
04.世帯収入が減少する
夫婦が共働きであった場合、離婚することで世帯収入が減ってしまいます。これにより子どもを習い事に通わせられない、大学に進学させられないなど、経済的に不自由な思いをさせてしまう可能性もあります。
05.その他のデメリット
前段落「子のいない夫婦が離婚した場合のデメリット」に記載したデメリットの一部または全部も受けてしまうことが想定されます。
パートナーの不倫を理由として離婚する場合のメリット
パートナーの不倫・不貞行為を理由として離婚する場合のメリットについてみてみましょう。
01.気分的にスッキリする
パートナーが不倫した場合、多くの方は「許せない」と感じるものです。この負の感情を要因として日々イライラし、ストレスが溜まったり仕事に集中できなくなったり鬱病になったりしてしまう方も多くいらっしゃいます。
離婚してしまえば、パートナーは元パートナーとなり赤の他人となります。気分もスッキリするでしょうし、気持ちを煩わせられることもなくなることでしょう。
02.高額な慰謝料を払ってもらえる可能性がある
パートナーの不貞行為を理由として離婚する場合、慰謝料を請求することが可能です。裏切り者のパートナーといつまでも一緒にいるよりも高額な慰謝料を貰ったうえで離婚した方が良いと考える方も多いことでしょう。
不貞の慰謝料の相場は50~300万円とされていますが、不貞の事情や状況によっては相場よりも高額な慰謝料を得ることも可能です。また、不貞慰謝料は、パートナーのみならずパートナーの不倫相手に対しても請求することが可能です。
03.新しい生活を始められる
不倫によって自分を裏切ったパートナーともう一度やり直すのは簡単なことではありません。相手の顔を見るたびに不倫の事実を思い出して不快に感じたり、夫婦関係がギスギスしてしまったりする方も多数いらっしゃいます。
離婚すれば心機一転新しい生活を始められますし、パートナーと顔を合わせる機会もなくなりますので、その後の人生を有意義に過ごせるでしょう。
04.その他のメリット
前段落に記載したメリットの一部または全部を享受することもできます。
パートナーの不倫を理由として離婚する場合のデメリット
パートナーの不倫を理由として離婚する場合のデメリットについて確認してみましょう。
01.家庭が崩壊して子どもに悪影響が出る
パートナーの不倫で離婚するとなると家庭は崩壊します。
特に小さい子どもがいる場合には家庭崩壊による悪影響は大きいでしょう。子どもには親の不倫というものを理解することが困難です。「なぜパパ(ママ)がいなくなったのか」「ぼくは見捨てられたの?」と悲しんでしまうことが多々あります。
また、不倫で離婚するとお互いの感情の対立や再婚などの事情で子どもとの面会が行われないケースも多く、やはり子どもが「親に捨てられた」と思ってしまう傾向にあります。
02.相手の再婚に対する悔しさ
離婚後すぐに、元パートナーと不倫相手が再婚してしまうことがあります。
こちらは不倫されて傷つけられているのにも関わらず、不倫相手と再婚した元パートナー側が幸せそうにしているのをみたり聞いたりすると、非常にくやしい思い、やるせない気持ちを抱えてしまうことでしょう。
03.証拠がないと慰謝料を払ってもらえない
不貞の慰謝料を請求するためには、不貞の証拠が必要となります。証拠がない場合は、慰謝料を払ってもらえない可能性があります。
なお、ここでいう証拠は肉体関係を示すものが必要です。このような証拠はなかなか収集しづらく、特にこちらが証拠の確保に動いていると知られてしまえば、証拠を確保することはほぼ不可能となってしまいます。
証拠不足により不貞の事実を疎明できず、慰謝料を請求できないという最悪の事態を避けるためにも、証拠集めはしっかりと行ないましょう。自力での対応が難しいようであれば探偵や弁護士に相談してみましょう。
04.その他のデメリット
前段落に記載したデメリットの一部または全部も受けてしまうことも想定されます。
熟年夫婦が離婚する場合のメリット
熟年離婚のメリットを見てみましょう。
01.多額の財産分与をもらえる可能性がある
高額な財産がある場合、離婚によって多額の財産分与を受けられる可能性があります。
財産分与の割合は双方2分の1ずつが原則です。たとえば自宅や株式、預貯金や退職金などで総額5000万円の資産があるのであれば、財産分与として2500万円分を受け取ることが可能です。
たくさんの財産分与を受けることができれば、離婚後の生活にも大きな不安を抱えずに済むでしょう。
02.自由になれる
婚姻中はパートナーの身の回りの世話や家事などしなければならないことがたくさんあって、やりたいことも我慢している方が多いでしょう。
離婚すると身軽になれます。趣味に打ち込んでもかまいませんし新しい恋人を作ってもかまいません。定年退職後、自由気ままな第二の人生を送りたい方にとっては熟年離婚は非常にメリットがあります。
03.その他のメリット
前段落に記載したメリットの一部または全部を享受することもできます。
熟年夫婦が離婚する場合のデメリット
熟年離婚のデメリットも確認しておきましょう。
01.家事や介護への不安
いままで妻に家事を全面的に任せていた場合、離婚すると自分で全部行わなければならないので非常に困惑するケースがあります。掃除や洗濯などが行き届かず生活が荒れてしまう方もなかにはいらっしゃいます。
また、将来介護が必要になったとき、1人暮らしでは不安を抱えることとなります。脳梗塞などで倒れたときにも発見が遅れて後遺症が残ったり死亡してしまうリスクが高くなってしまいます。
02.遺産相続の方が有利なケースがある
熟年離婚で財産分与をもらうよりも、配偶者が死亡するまで婚姻関係を続けて遺産相続した方が、経済的に有利となるケースがあります。
財産分与では、「相手が実家から相続した遺産」や「相手が独身時代から持っていた財産」は特有財産に該当するため分与の対象とはなりませんがしてもらえませんが、遺産相続であればこれらもすべて対象となります。また、相手が死亡した場合、遺族年金を受給できる可能性があり、年金分割してもらって自分が離婚後に受け取れる金額より高額になるケースも少なくありません。
離婚してしまった場合は、パートナーとの関係性は赤の他人となります。相続人とはなれないので、これらを受け取ることはできません。熟年離婚を検討するときには、こうした経済的なメリットとデメリットの比較が必要といえるでしょう。
04.その他のデメリット
前段落に記載したデメリットの一部または全部も受けてしまうことも想定されます。
DVが介在する場合の離婚
相手から暴力、DV(ドメスティックバイオレンス)を受けているなら、離婚することを推奨します。
01.メリット
DV被害に遭っている場合に、離婚することで得られるメリットとしては以下のものがあります。
- 暴力から逃れられる
- 慰謝料を請求できる
- 子どもを健全な環境で育てられる
①についてですが、暴力は相手の人権を無視した卑劣な行為で、どのような理由があっても許されるものではありません。離婚により暴力を受け続ける異常な環境から解放されて、人間らしい生活を取り戻せるのは、何よりのメリットといえるでしょう。
また、②についてですが、暴力は不法行為にあたるますので、離婚の際には相手へ慰謝料請求できます。金額は50~200万円程度となるケースが多いですが、悪質な場合にはもっと高額になる可能性もあります。
③に関してですが、父親が母親に日常的に暴力を振るっている環境で育つと、子どもにも多大な悪影響が及びます。離婚した方が子どもを健全な環境で育てられるメリットがあります。
02.デメリット
デメリットとしては、経済的なリスクが挙げられます。相手の収入に依存して生活している場合、離婚することで経済的な不安を抱えることになってしまうかもしれません。
この点、慰謝料や財産分与を受けられますし、親権を得ているのであれば養育費を払ってもらうことも可能です。行政からの児童扶養手当やその他の補助も受けることができます。哀愁手段としては生活保護を受けることで生活することはできます。経済的な不安を理由として離婚を思いとどまる必要はありません。
さいごに
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