大切な家族が逮捕されてしまったら…。すぐにでも会いに行きたいと考える方がほとんどでしょう。
ところが、たとえ家族であっても逮捕された被疑者との面会は自由には認めてもらえません。スムーズに面会するには警察署の留置場に適用される面会のルールを知っておく必要があります。
今回の記事では、逮捕された家族との面会や差し入れについてのルールや注意点などについて弁護士が解説します。
用語について
【被疑者】
被疑者とは「犯罪を犯したのではないか」と疑われている人、捜査の対象となっている人のことを言います。逮捕された人は基本的には被疑者となります。
なお、その後の取り調べで犯罪を犯した可能性が十分となり、検察官によって起訴されると被疑者は被告人となります。
【接見】
接見とは、被疑者や被告人が家族や弁護士といった外部の人間と面会することを言います。
【逮捕】
逮捕とは、警察が被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一時的に被疑者の身柄を警察の留置施設に強制的に拘束することをいいます。
【勾留】
勾留とは、被疑者・被告人の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一時的に被疑者の身柄を警察の留置施設や拘置所に強制的に拘束することをいいます。検察官が裁判官に勾留請求をし、これが認められると勾留できることとなります。
逮捕も勾留も、被疑者の身柄を拘束するという点では変わりありません。手続きの段階に応じて身体拘束される理由が違うと考えていただければ結構です。
逮捕後の流れ
逮捕後の流れについて確認しておきましょう。
01.逮捕
警察に逮捕されると身柄を拘束されることとなります。この身体拘束期間は48時間以内とされており、この間に警察による取り調べが行われます。
02.検察官へ送致
捜査を終えた警察は、被疑者の身柄を検察官へと引き継ぎます。これを送致と言います。
送致を受けた検察は24時間以内に追加の取り調べを行ったうえで刑事裁判を提起すべきかどうかを検討します。
03.勾留
検察官による捜査が24時間では不十分という場合、検察官は裁判官に対し、身体拘束を延長すべく勾留請求を行うことができます。これが認められた場合、最長20日間、被疑者を身体拘束することができます。
04.起訴
捜査もよって刑事裁判にかけるのが相当であると検察官が判断した場合、被疑者は起訴されます。起訴されると被疑者は被告人となります。
05.刑事裁判
起訴されると、犯した犯罪について刑事裁判が開かれます。
複数回の期日で、証人尋問や被告人質問、検察官や弁護人による証拠提出などが行われ審理が進みます。
証拠調べ、検察官・弁護人双方の意見申述が終わると裁判官が判決を言い渡します。判決で有罪となった場合には刑罰が言い渡されます。
家族が面会できるのはいつからなの?
夫や妻、子どもが逮捕されたと聞いたら、「今すぐ会って事情を聞きたい」と考える方がほとんどだと思われます。
実のところ、家族であっても逮捕後すぐの被疑者と面会することはできません。というのも、家族が被疑者と面会できるのは「勾留に切り替わってから」と定められているためです。
逮捕による身体拘束(最長48時間)、検察官による取り調べ(最長24時間)を経て、検察官が勾留請求をし、これが裁判官に認められてはじめて身体拘束の理由が勾留に切り替わります。
このことから、逮捕されてから2~3日は面会できないとお考え下さい。勾留に切り替わったあとであれば被疑者と面会することが可能です。本人を安心させるためにもできるだけ早めに会いに行きましょう。
警察署に適用される面会のルール
被疑者との面会の際に課されるルールについてみてみましょう。
01.面会できる場所の制限
被疑者と面会できる場所は身体拘束されている警察署内の接見室に限られます。
なお、被疑者を逮捕した警察官が所属する警察署と、被疑者が拘束されている警察署が異なるケースもあります。逮捕された家族と面会したいのであれば、どこの警察署で拘束されているのかしっかりと確認しましょう。
02.面会日時の制限
いつでも被疑者と面会できるわけではありません。警察署によって運用は異なりますが、面会できる時間帯はおおよそ以下の通りです。
- 平日 9:00~11:00
- 平日 13:00~16:00
面会は平日のみであり、土・日・祝日には面会することはできません。接見できる時間帯も定められております。
また、警察署の接見室の部屋数は限られています。別の方が面会している場合はその方の面会が終了するまで待つ必要があります。その間に面会可能時刻が終了してしまった場合はその日は会わせてもらえないこととなります。
03.面会時間の制限
1回あたりの面会時間も制限されています。警察署によって運用が異なりますが、だいたい1回につき10~20分程度です。
制限時間が来てしまうと、立ち会っている警察官に強制的に面会を終了させられます。
04.面会回数の制限
1日の面会可能回数にも制限があります。これは被疑者に対し制限が課せられているものであり、被疑者は1日1回までしか面会ができません(弁護士を除く)。
そのため、いざ面会しようと警察署に出向いてもその日に被疑者が既に別の人と面会をしてしまっている場合は面会できないことになります。
05.警察官の立ち合い
家族が被疑者と面会する際は、警察官が立ち会います。警察官に話の内容を聞かれることになるので自由に話をする雰囲気ではないといえます。
また、先述の通り、面会時間が10~20分程度に制限されているため、満足に情報交換できないケースがほとんどです。
06.家族が面会に行く必要性は?
以上のように被疑者との面会は著しく制限されており、満足のいくやりとりができないケースがほとんどです。わざわざ出向いてもまともに話せないのであれば家族が面会にいく意味はないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。被疑者にとっては家族の顔を見るだけでも安心するからです。逮捕された被疑者は大きな不安を抱えています。家族が面会に来なかったら「見捨てられたかもしれない」と不安になってしまうものです。
たとえ詳しい話ができなくても家族が被疑者と面会することに意味はあります。被疑者が勾留に切り替わったらすぐに面会に行くようにしましょう。
警察署で面会する手順、方法
逮捕された家族と面会するには、以下のような手順を踏むと良いでしょう。
01.警察署に事前に連絡する
まず、被疑者が拘束されている警察署へ電話をしましょう。いきなり訪ねていってもその日に別の予定があるなどの事情で会わせてもらえない可能性があるからです。
電話をしたら留置係につないでもらい面会できるかどうかを尋ねてください。接見室の空き状況なども確認しておきましょう。
面会できるようであれば何時頃に警察署に到着する予定か伝えてから面会に行きましょう。
02.差し入れるものを用意する
身体拘束された被疑者には身の回りのものが不足しております。
夏であれば薄い衣類、冬であれば寒さを凌ぐための上着や下着が不足します。留置場内で買えるものもありますが、現金がなければ購入することはできません。現金や衣類、暇つぶしに読む本や雑誌などの差入れする物を用意しておくとよいでしょう。
また、面会や差し入れの際には印鑑が必要になりますので、認印を持参するようにしましょう(認印がない場合は指印を求められます)。
03.警察署へ行って必要書類を記入
警察署へ行ったら「接見(面会)しに来ました」と言って案内してもらい接見室へ行きましょう。
なお、面会する前に留置係の警察官から提示された書類に必要事項の記入を求められますので対応しましょう。差し入れをする場合は差し入れ用の書類への記入も求められます。
04.面会する
用意ができたら呼ばれるので接見室に入って面会しましょう。警察官の立ち会いがあり時間も制限されているので、事前に言いたいことや聞きたいことを整理しておくことをお勧めします。
留置場内の生活で不足しているものがないか、お金は要らないか等を確認し次に来るときに差し入れをするとよいでしょう。
なお、差し入れについては面会が終わってからも可能ですし宅配便を利用することもできます。
接見禁止に要注意
被疑者が勾留に切り替われば接見できるのが原則です。しかし、接見禁止が付けられた場合はこの限りではありません。勾留に切り替わったとしても面会することはできないので注意が必要です。
接見禁止とは、弁護人以外の者との接見を一切禁止する制限です。
重大犯罪の場合や被疑者が共犯者と共謀して証拠隠滅したり口裏を合わせたりする可能性がある場合などに接見禁止がつけられます。
接見禁止がついてしまうと、面会することはおろか手紙でやり取りすることもできません。
なお、接見禁止がついていても差し入れできるケースはあります。弁護人を通じて必要なものを聞き用意するとよいでしょう。
弁護士であれば面会の制限がない
上記のとおり、家族であっても被疑者との面会にはかなりの制限が課せられます。
他方で弁護士であればこれらの制限が課せられることはありません。
具体的には、被疑者が逮捕されてから勾留に切り替わるまでの間は被疑者と面会することはできないのですが、弁護士についてはこのような制限はありません。
また、弁護士であれば逮捕直後から被疑者と面会することが出来ます。10~20分という時間制限もありませんし、土日祝日でも深夜早朝でも面会することが可能です。
また、弁護士接見では警察官の立ち会いもありません。被疑者から事件の詳細な事情を聞いて今後の対応を練ることができますし、ご家族にも詳しい状況を伝えられます。
弁護士に刑事弁護を依頼するメリット
弁護士に刑事弁護を依頼するメリットとしては以下のものが挙げられます。
01.いつでも面会が可能
上述のとおり、被疑者との面会について一般人に課せられる制約なく被疑者と面会することが出来ます。これは被疑者の精神的負担の解消という点でも後述する事件への対処という点でも非常に有利なポイントと言えます。
02.適切な対処方法を伝達することができる
逮捕後からすぐに接見できるので、被疑者にもその家族にも適切な対処方法を伝達できるというメリットがあります。
まず、被疑者に対しては、取り調べに対する対応方法などを伝達することができます。
被疑者は警察からの取り調べに対し不利な供述をしてしまうことがあります。不利な供述は後に大きな不利益を生み出します(刑罰が重くなるなど)。逮捕後すぐに弁護士が面談することができれば、事件の詳細を踏まえ取り調べに対する対応方法等についてアドバイスすることが可能となります。また、今後の刑事事件への対応についてもしっかり検討できます。
家族の方においても今後の対応方針や手続きの見通しなどを案内することが可能です。不安を解消するだけではなく、今後の手続きに対し有利となるアドバイスをすることができます。不安な方は弁護士に相談することをお勧めします。
03.早期の釈放を目指せる
刑事事件で逮捕された場合、一刻も早い身柄の解放を目指すべきです。
弁護士であれば勾留しないように検察官へ申し入れたり、勾留の効果を争ったりすることで早期の身柄解放を目指すことができます。
長期間身体拘束されると解雇などの危険も発生します。そうような事態に陥る前に早めに弁護士に相談されることを推奨します。
04.不起訴処分を目指せる
刑事事件の被疑者になったときに重要なのは不起訴処分の獲得です。不起訴処分になれば刑事裁判にならないので前科が付くこともありません。刑事裁判になって前科がついてしまったら一生消えず、さまざまな不利益を受ける可能性があります。
不起訴処分を目指すためには、弁護士による対応が必要不可欠です。前科が付くことを避けたいのであれば、弁護士に依頼しましょう。
さいごに
刑事事件で逮捕された場合、弁護人をつけて対応することが非常に重要です。弁護士を早期につけるかつけないかでご本人の人生が大きく変わる可能性があります。大切なご家族の権利を守るため、一刻も早く弁護士まで相談されることを推奨します。
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、刑事弁護に注力しております。家族が逮捕されてしまってお困りの方は是非一度お問い合わせください。