執行猶予ってなに?刑罰の種類と併せて解説!!

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弁護士 鈴木 翔太
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「懲役1年、執行猶予3年」というように、刑事事件の判決においては執行猶予が付される場合があります。

この場合、被告人は今後どういう扱いとなるのでしょうか?
そもそも執行猶予とはどういう制度なのでしょうか?

今回の記事では、刑罰の種類や内容、執行猶予の意味や効果、要件について弁護士が解説します。

1.刑罰の種類

刑事事件において有罪判決を受けると、刑罰が適用されます。

刑罰とは、犯罪行為をした人に与えられる罰則です。刑罰を適用されると、一生消えない前科がつきます。

主な刑罰として以下の6種類があります。

  • 死刑
  • 懲役刑
  • 禁錮刑
  • 罰金刑
  • 拘留
  • 科料

上記を「主刑」といい、主刑は主刑のみ単体として科することのできるものです。

主刑以外に「付加刑」があります。付加刑は主刑にプラスして科するものであり、付加刑のみを単体で科することはできません。

2.主刑の重さと内容

主刑を内容とともに、重い方から順番にみてみましょう。

2-1.死刑

もっとも重い刑罰で、本人の命をもって罪を償わせる刑罰です。日本では「絞首刑」の方法で執行されます。生命を奪うので「生命刑」といわれます。

法律上、死刑となる可能性のある犯罪は、刑法犯が12種類でそれ以外の特別刑法犯が7種類の合計19種類のみです。死刑のみしかないのは外患誘致罪のみで、そのほかの犯罪では死刑以外の刑が選択される可能性もあります。

死刑のある犯罪一覧

  • 内乱罪
  • 外患誘致罪
  • 外患援助罪
  • 現住建造物等放火罪
  • 激発物破裂罪
  • 現住建造物等浸害罪
  • 汽車転覆等致死罪
  • 往来危険罪による汽車転覆等
  • 水道毒物混入致死罪
  • 殺人罪
  • 強盗致死罪
  • 強盗強姦致死罪
  • 航空機強取等致死罪
  • 航空機墜落致死罪
  • 爆発物使用罪
  • 人質殺害
  • 組織的殺人
  • 海賊行為致死
  • 決闘致死
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2-2.懲役刑

懲役刑は30日以上の期間、本人を身体拘束して強制労働させる刑罰です。
自由を奪うので「自由刑」に分類されます。

懲役刑には「無期懲役」と「有期懲役」の2種類があり、無期懲役になると基本的に一生懲役刑を受け続けなければなりません。有期懲役の場合、30日以上20年以下が原則ですが、30年以下まで加重されるケースもあります。

なお、「仮釈放」が適用されることで早期に出所できる可能性があります。

無期懲役の場合は平均して30年以上、有期懲役の場合には刑期の80%程度が経過すると仮釈放が認められやすくなっております。

なお、法律上は、無期懲役の場合に10年の経過、有期懲役には刑期の3分の1の経過が条件となっていますが、これと実務的な基準とはかけ離れているようです。

2-3.禁錮刑

禁錮刑は300日以上の期間、本人を身体拘束する刑罰です。懲役刑と異なり、強制労働はともないません。

刑務所で強制労働させられる刑罰を懲役刑、労働させられない刑罰を禁錮刑と理解するとよいでしょう。

2-4.罰金刑

罰金刑はお金を払わせられる刑罰で、金額的には1万円以上となります。財産に対する侵害をともなう刑罰なので「財産刑」といわれます。

交通事犯の略式手続や軽微な窃盗、暴行、侮辱罪などの犯罪では、罰金刑が選択されるケースが多数となっています。

罰金を支払わなかったらどうなる?

支払い能力があるにもかかわらず罰金を支払わない場合、強制執行される可能性があります。

支払い能力がない場合、検察官の裁量によって「延納(支払猶予)」や「分納(分割払)」が認められる可能性もあります。資力のない場合には罰金の納付書を無視するのではなく、検察官へ連絡を入れて相談してみましょう。

罰金をどうしても支払えない場合、刑務所内の労役場に留置されて強制労働をさせられます。

2-5.拘留


拘留は29日以下の身体拘束をする刑罰です。強制労働はともないません。

30日以上なら禁錮刑になりますが、29日以下なら拘留の刑となります。身体を拘束して自由を奪うので自由刑に分類されます。

拘留と勾留は異なる

拘留と勾留は異なります。勾留は、捜査や刑事裁判のために有罪確定前の被疑者や被告人を身体拘束する手続きであり、刑罰ではありません。混同しないようにしましょう。

2-6.科料

科料は9,999円以下の金銭を支払わせる刑罰です。

1万円以上なら罰金、9,999円以下なら科料となると理解しましょう。財産に対する制約なので「財産刑」に分類されます。

科料と過料は異なる

科料は過料とは異なります。過料は行政罰の一種であり、刑罰ではありません。過料の制裁を課されても前科はつきませんが、科料の刑罰を適用されると前科がつきます。混同しないようにしましょう。

3.付加刑について

付加刑とは、主刑にプラスして科するものです。付加刑のみを単体で科することはできません。

なお現行法では「没収」のみが規定されており、懲役刑や禁錮刑などの刑罰に足して科されます。

没収は、本人から対象物の所有権を奪って国に帰属させる刑罰です。財産を奪うので財産刑の一種となります。

没収の対象となるもの

◆犯罪の成立に必須の物:たとえば偽造文書行使罪における偽造文書が該当します。
◆犯罪の手段として使用された物:傷害事件のナイフや放火事件のライターなどです。
◆犯罪によって生じた物:たとえば文書偽造罪における偽造文書が該当します。
◆犯罪によって得られた物:たとえば詐欺事件で取得した金銭などです。
◆犯罪の報酬として取得した物:たとえば共犯者から受け取ったお金が該当します。
◆生成・取得・報酬の対価として得た物:盗んだ金で買ったものなどです。

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4.執行猶予とは

執行猶予とは、被告人が自主的に社会内で更生できると期待されるなど一定要件を満たす場合、刑の執行を猶予する制度をいいます。

刑の執行を猶予する、すなわち実行時期を先送りするということなので、懲役刑や禁錮刑がいいわたされたとしても「執行猶予」が付いていれば、すぐに刑務所へ行く必要はありません。

執行猶予中に新たに別の犯罪を起こさなければ、最終的に刑罰は免除されます。

なお、罰金刑でも執行猶予がつく可能性はありますが、実際にはそのようなケースはほとんどありません。執行猶予の対象となるのは、主に懲役刑か禁錮刑と考えるとよいでしょう。

4-1.執行猶予判決の具体例

「懲役2年、執行猶予3年」という判決が出たとしましょう。

この場合、判決が確定してもすぐに刑務所へ行くことにはなりません。執行猶予期間である3年間、あらたな犯罪行為をせずに期間を満了すると、懲役2年の刑罰を受けることはなくなります。

社会生活を送るに際し、執行猶予がつくかどうかはご本人やご家族にとって非常に重要といえるでしょう。

4-2.執行猶予期間中にあらたな罪を犯した場合

執行猶予がついたとしても、あくまで「刑の執行が猶予されている」のであり、刑そのものが免除されたわけではありません。

執行猶予期間中にあらたな犯罪行為をしてしまうと、猶予された刑罰と新しい犯罪の刑罰が併せて適用されてしまいますので注意しましょう。

例えば、「懲役2年、執行猶予3年」という判決が出た後、執行猶予期間中に新たな犯罪行為をすると、新しい犯罪での刑罰とは別にもともとの刑罰である懲役2年が科されることとなります。
新しい犯罪での刑罰も懲役刑であった場合、もともとの2年と新しい罪での期間の合計で懲役を科されるということになります。

また、執行猶予期間中に別の犯罪行為をした場合、再度執行猶予をつけてもらえる可能性はほとんどありません。

執行猶予期間中は、通常の状況以上に刑事事件を起こさないように注意しながら生活を送りましょう。特に交通事故や交通違反などの犯罪には注意が必要です。

4-3.執行猶予される期間

刑罰が執行猶予される期間は、法律によって「1年から5年の間」と定められています。

言い渡された禁錮刑や懲役刑の「1.5~2倍程度」の長さになるケースが多数であり、懲役3年の場合の執行猶予期間は4~5年程度となることが多いように見受けられます。

ただし、ここの事件の内容等によっても執行猶予期間が異なってきますので、必ずしも「1.5~2倍程度」の期間になるわけではありません。

4-4.執行猶予であっても前科はつく

執行猶予判決が出た場合であっても前科はつきます。また、いったんついた前科は一生消えません。執行猶予期間が満了しても消えません。

この点、誤って解釈されている方が多いのでご注意ください。

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5.執行猶予が認められる条件

すべての犯罪や事例で、執行猶予がつけられるわけではありません。以下、適用される要件を確認しましょう。

5-1.全部執行猶予の要件

刑罰全部の執行猶予をつけられるケースは、刑法25条にて定められています。

(刑の全部の執行猶予)

第25条 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

1 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
3 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

条件の一つ目として、「言い渡された刑罰が3年以下の懲役、禁錮または50万円以下の罰金」以下でなければなりません。従って、懲役4年や5年の場合には執行猶予はつきません。

さらに以下の条件を満たす必要があります。

  • 禁錮以上の刑を受けたことがない
  • 禁錮以上の刑を受けたことがあっても執行後、もしくは免除後5年以内に禁錮以上の刑を受けていない

ただし状況によっては、上記を満たさなくても執行猶予が付く可能性もあります。

5-2.刑の一部執行猶予ができる条件

一部執行猶予については刑法27条の2に規定があります。

(刑の一部の執行猶予)

27条の2 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。

1 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
3 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

一部執行猶予には、「再び犯罪をすることを防ぐために必要かつ相当」という条件が加わっています。全部執行猶予にはそういった条件はありません。

また、以前に禁錮以上の刑に処せられた経緯があっても、刑の全部の執行猶予を受けていれば一部執行猶予を受けることが出来るとされています。

5-3.罰金刑について

一部執行猶予においては罰金刑は対象となっておりませんが、全部執行猶予においては罰金刑も適用対象とされています。

ただし、実際には全部執行猶予が罰金刑に適用されるケースはほとんどありません。

6.執行猶予の取消について

執行猶予がついても、一定の条件が満たされると執行猶予が取り消される可能性があります。

執行猶予の取消には「必要的取消」と「裁量的取消」の2種類があるので、それぞれみてみましょう。

6-1.必要的取消し

必要的取消とは、該当すると必ず執行猶予を取り消さねばならない処分です。

刑の全部の執行猶予の場合、以下のような状況となると執行猶予の必要的取消事由に該当し、猶予が必ず取り消されて前の刑罰と新たな刑罰の両方を受けなければなりません。

  • 猶予期間中に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予を受けられなかったとき
  • 執行猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予を受けられなかったとき
  • 執行猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき

6-2.執行猶予の裁量的取消し

裁量的取消とは、必ず取り消されるとは限らないけれども裁判所の判断によって執行猶予が取り消される処分です。

刑罰の全部の執行が裁量的に取り消されるのは、以下のような場合です。

  • 猶予期間中に更に罪を犯して罰金刑に処せられた
  • 保護観察に付せられたのに遵守事項を遵守せず、情状が重いとき
  • 執行猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚した

たとえば執行猶予期間中に交通事故や暴行事件を起こしたり交通違反行為をしたりして罰金が適用されると、執行猶予を取り消される可能性があります。

執行猶予期間中は、くれぐれも別の犯罪行為をしてしまわないように注意しなければなりません。

7.執行猶予中の保護観察について

執行猶予が適用される場合「保護観察処分」を受けるケースがよくあります。

保護観察処分とは、犯罪行為をした人や非行少年などを社会内で更生させるために保護観察所による指導監督を適用する処分です。

保護観察中は定期的に保護司と面談を行い、生活状況の報告などをしなければなりません。

問題行動を起こすと執行猶予を取り消される可能性もあるので、執行猶予期間中は保護観察官や保護司の指示に従い、まじめに生活しましょう。

また、長期の旅行や転居には保護観察所の許可が必要になります。

7-1.執行猶予中に海外渡航できるのか

執行猶予期間中は海外渡航が制限される可能性もあります。パスポートやビザ申請の際、犯罪歴を記載する欄があって執行猶予中である申告をしなければならないためです。

渡航先によってはビザを発行してもらえない可能性もありますし、渡航期間が制限されるケースもあります。

7-2.仕事の制限について

執行猶予がついても、刑罰を受けたことによって仕事や資格が制限される可能性もあります。

たとえば、教員や医師、士業等の国家資格の一部は、禁錮以上の刑罰を受けた場合に資格を取り消されてしまいます。罰金以上の刑罰を受けた場合に行政処分が課される可能性のある資格もあります。また、公務員においては、「禁錮以上の刑に処せられたもの」は欠格事由とされています。

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