ある日突然未成年の子どもが逮捕されてしまったら、親としては動転してしまうのが当然です。
実は未成年の場合、逮捕後の流れが成人とは異なります。
少年院送致などの不利益な処分を避けるため、当初から適切な対応を進めましょう。
今回は未成年が逮捕された後の流れや、親がとるべき対処方法を弁護士の視点から解説します。
子どもが逮捕されてお困りの親御様は、ぜひ参考にしてみてください。

1.未成年は年齢によって犯罪行為への処分が異なる

万引きやひったくり、痴漢など、未成年が刑事事件を起こしてしまうケースは少なくありません。
未成年の場合、犯罪行為をしたときの処遇は「年齢」によって異なります。
14歳未満の場合には刑事責任能力がないため、刑事事件になりません。逮捕もされませんし、処罰されたり少年院に送られたりすることも基本的にないと考えましょう。
そのまま家に帰すのが不適切な場合、「触法少年」として、児童相談所へ送られて一時保護される可能性があります。
未成年でも14歳以上の場合、刑事責任能力があると考えられるので「犯罪少年」として逮捕される可能性も出てきます。
万引きや原付窃盗なら窃盗罪、カツアゲなら恐喝罪、ひったくりなら窃盗罪や強盗罪、オレオレ詐欺なら詐欺罪や窃盗罪などの罪に問われる可能性があります。

2.未成年は「刑罰」を受けない

未成年の場合、14歳以上であっても成人とは違って基本的に「刑罰」が適用されません。
「少年法」という法律により、保護矯正のための手続きが適用されます。
子どもは未成熟な分、教育や環境の変化によって更生していける可能性が高いと考えられているからです。
窃盗罪、迷惑防止条例違反、恐喝罪などの犯罪行為を行っても「罰金」や「懲役」などの刑罰を受けることは基本的にありません。
2-1.保護観察、少年院送致
よくある処分は「保護観察」や「少年院送致」です。
保護観察になれば、保護司による指導を受けながら自宅で過ごせます。これまでとあまり生活を変えずに済み、不利益は小さくなるでしょう。
少年院送致になれば、数ヶ月~2年程度、少年院で過ごさねばなりません。学校にも行けず生活や人生に対する影響も大きくなります。
2-2.審判不開始、不処分
実際には犯罪行為をしていなかった場合や処分を科するほどの悪質性がなかった場合などには、不処分や審判不開始となり、何の処分も受けないケースもあります。
2-3.逆送とは
未成年であっても、極めて悪質な犯罪行為をすると大人と同じ刑事手続に乗せられる可能性があります。これを通称「逆送」といいます。たとえば殺人事件や傷害致死事件、強盗殺人事件、危険運転致死事件などを起こすと逆送される可能性が高いと考えましょう。
逆送とは、家庭裁判所の審判官の判断により、未成年を検察官の元へ送る処分です。
逆送された未成年は検察官の判断により起訴され、刑事裁判で裁かれることになります。
この場合には懲役刑などの重い処分を受ける可能性が、極めて高くなるでしょう。
3.未成年が逮捕された後の流れ

14歳以上の未成年が逮捕されると、そのまま身柄拘束されてしまう可能性があります。
以下で手続きの流れをみていきましょう。

3-1.釈放、勾留または勾留に代わる観護措置がとられる
逮捕されたら、48時間以内に検察官のもとへと身柄を送られます。その後は身柄拘束が続く場合と続かない場合があります。
事件がさほど悪質ではなく逃亡のおそれなどもなく「身柄拘束の必要性がない」と判断されたら、釈放してもらえます。
一方で、未成年が逮捕後に身柄拘束される場合「勾留に代わる観護措置」という手続きをとられることが多くなっています。その場合、大人と違って「勾留」はされません。
勾留に代わる観護措置になると、未成年の身柄は少年鑑別所へ送られます。
ただし未成年者でも勾留されるケースもあります。
3-2.家庭裁判所へ送致される

未成年者が検察官のもとへ身柄を送られると、すべての案件について「家庭裁判所」へと送致されます。成人のように、検察官が「起訴するか不起訴にするかを決定」することはありません。「全件送致」となります。
また成人の場合、起訴されたら「地方裁判所」の公開法廷で裁かれますが、未成年の場合には「家庭裁判所」で審判を受けることになります。少年審判は非開示の手続きなので、一般人に傍聴などされる可能性はありません。
3-3.在宅や少年鑑別所で調査される
未成年が家庭裁判所へ送致されると、調査官によって少年本人の生活や考え方、傾向や家族関係、学校などについて調査が行われます。
調査官が少年と面談をしたり学校に訪問したり親や保護者と会ったりして、少年に対してどういった処分が適切かを調べます。
調査が終了すると、調査官は審判官へ意見書を提出します。
意見書は審判官の判断内容に極めて大きな影響を及ぼすので、未成年本人や家族にとって非常に重要な資料といえます。
3-4.少年審判
少年審判は、家庭裁判所で開かれます。
未成年本人と保護者が出席しますが、弁護士に付添人を依頼していれば付添人も一緒に出席して審理が行われます。
審判官から保護者や少年自身に質問されることもあるので、聞かれたことには適切に回答しましょう。付添人がいれば、付添人から審判官へ意見書を提出します。
審理が終了すると、審判官によって審判が言い渡されます。
これにより、保護観察になるのか少年院送致になるのか不処分となるのかなど、処遇が決定されます。
悪質な場合には検察官へと逆送され、成人と同じ刑事手続に乗せられる可能性もあります。
3-5.抗告について
審判の結果、少年院送致などが決定して納得できない場合、「抗告」という方法で争えます。
ただし抗告をしても少年院送致を止めることはできません。基本的に少年院に収容された状態で抗告審を進めることになります。
また抗告審は書面審理であり、原審のように審判期日が開かれる可能性はほぼありません。
抗告によって原審の決定が覆る件数は少数であり、抗告審にあまり多くの期待をかけても報われにくいといえるでしょう。
少年院送致を避けたければ、原審でしっかり対応しておく必要があります。

4.未成年が逮捕されたとき親がすべきこと

もしも子どもが逮捕されたら、親としてはどのように対応すればよいのでしょうか?
4-1.面会に行く
まずは本人に面会に行きましょう。
子どもは逮捕されると、非常に大きな不安を抱えるものです。家族が面会にきてくれると、顔を見られるだけでも安心できるでしょう。
警察で留置されていれば警察署へ、少年鑑別所で観護措置を受けていれば鑑別所へ行って接見や面会を申請してください。
本人に会ったら事情をよく確認し、寄り添う態度を示してあげましょう。
本当に犯罪行為をしたのかどうかなど、本人の言い分も聞いてあげてください。
4-2.差し入れをする
警察の留置場や鑑別所では、身の回りの物品や衣類などが不足するケースも多々あります。
ちょっとした雑誌などの読み物を希望する子どももいます。
本人の希望を聞いて、差し入れをしましょう。
ただし留置場や鑑別所には何でも差し入れできるわけではありません。
たとえば食べ物や紐付きのパーカー、ジッパーつきの衣類などは差し入れできないケースが多数です。
事前に施設に確認してから、物を持っていきましょう。遠方の場合、宅急便での送付も可能です。
4-3.調査官調査に対応する
家庭裁判所の審判では、調査官による意見が非常に重視されます。
少年院送致の意見を出されてそのまま受容する審判が下されると、本人は数か月~数年間少年院で過ごさねばなりません。
できるだけ保護観察相当としてもらえるように、調査官調査へは丁寧に対応しましょう。
自宅に戻ってきても親がしっかり監督し、学校でもまじめに生活できることをわかってもらえたら、保護観察の意見を書いてもらえる可能性が高くなります。
4-4.弁護士に相談する
少年審判を有利に進めるには弁護士の「付添人」をつけると有効です。付添人弁護士は、少年と面談してアドバイスをしたり調査官と面談したりして、少年院送致を避けるためのさまざまな活動を行います。
逮捕直後の段階から弁護士をつけておくと、取り調べや調査に適切に対応できるので、審判の結果によい影響を与えやすくなるものです。
5.弁護士に依頼するメリット

以下で少年事件において弁護士に依頼するメリットをご説明します。
5-1.逮捕直後に面会可能
子どもが逮捕されたら、すぐにでも面会して事情を聞きたいと思うでしょう。
しかし逮捕直後の段階では、たとえ親でも自由に面会ができません。面会が可能になるのは基本的に勾留または勾留に代わる観護措置の手続きがとられてからです。
しかし逮捕直後は本人にとって非常に重要な期間です。このときにどういった受け答えをするかで、在宅処分となるか鑑別所送致になるかが変わる可能性もあります。
弁護士をつければ逮捕直後からすぐに面会してアドバイスできるので、本人が受ける不利益を最小限にとどめられるでしょう。
5-2.示談交渉の代理
万引きや原付窃盗、ひったくりや盗撮など被害者のいる事件で情状を良くするには、示談が非常に重要です。きちんと謝罪をして示談を成立させられたら、軽い処分にしてもらえる可能性が高くなります。審判までにはあまり時間がないので、できるだけ早めに示談交渉を始めなければなりません。ただし本人やご家族が自分たちで交渉するのは難しいでしょう。
弁護士であれば、ご本人の代理人として丁重に被害者へ接触し、被害弁償の話を進めることができます。金額などについての交渉もできますし、合意ができたらきちんと合意書を作成して示談の証拠を残せます。
5-3.環境調整のサポート
少年審判で有利な結果を獲得するには、少年を取り巻く環境が非常に重要です。
ご家族や学校できちんと少年を監督できる状況を用意できたら、在宅での保護観察にしてもらえる可能性も高くなります。
付添人弁護士がついたら、ご本人やご家族と話をしてどういった環境を整えるのがよいか検討します。私学の場合には退学処分をさけるべく学校と交渉するケースも少なくありません。
5-4.調査官面談
付添人弁護士は調査官と面談して少年にとって有利になる事情を主張します。たとえば本人がしっかり反省していること、自宅での更生が可能な事情などを話して保護観察処分が相当であることを示して、説得します。
これにより、調査官が保護観察処分の意見を出せば、審判で少年院送致とされる可能性はかなり低くなるでしょう。
5-5.意見書作成
付添人弁護士は、審判官に対して処遇についての意見書を提出できます。
少年自身はうまく事情や意見を伝えられないのが通常ですが、付添人弁護士がついていれば本人がしっかり反省している事情などを適切に伝えられます。
親や学校などの周囲の環境が整っていること、少年の将来のためにも少年院送致が不相当であることなどを説得的に述べられます。
付添人の意見により少年院送致決定をされるリスクが低下することもあるので、子どもを少年院に送りたくない場合には付添人をつけるよう強くお勧めします。
当事務所では刑事事件や少年事件全般に力を入れて取り組んでいます。
ご要望がありましたら、すぐに留置場や鑑別所へ行き、ご本人と面談を行います。
子どもが万引きや原付窃盗、痴漢、盗撮などで逮捕されてしまったときには、お早めにご相談ください。

