お手軽な移動手段の一つである自転車。現在も多くの人が利用されております。
レンタルサイクル(シェアサイクル)サービスを利用する人が増えていること、自転車を利用してウーバーイーツ(Uber eats)等の食品宅配業を遂行する方が増えていること等も相まって、以前よりも自転車を利用されている方が増えているように感じられます。
このような背景もあって自転車事故が発生する可能性は昔よりも高まってしまっているといえます。万が一自転車事故を起こしてしまったときや事故の被害者になったときに備えて正しい対処方法を学んでおきましょう。
今回の記事では、自転車で事故に遭った場合の対処方法を、加害者側と被害者側にわけて解説します。自転車を頻繁に利用する方は是非参考にしてみてください。
1.自転車事故は増加している!!

- レンタルサイクル(シェアサイクル)の利用者が増えていること
- ウーバーイーツ等の宅配業務を遂行する際に自転車が利用されていること
- クロスバイクやロードバイクの愛好家が増えていること
手軽な移動手段の一つである自転車。昨今は上記の背景も相まって以前よりも自転車を利用している方が増えているように感じます。
自転車を利用する方が増えればその分交通事故や交通違反が増える傾向にあります。自転車運転中に転んでけがをする事故は相次いでおりますし、自転車に乗った人が歩行者と衝突してケガを負わせる事故も全国で多発しています。
自転車は確かに便利ですが、他方で自転車事故の被害者や加害者になるリスクをはらんでおります。
自転車事故の対処方法に関する知識は、これまで以上に重要になっているといえるでしょう。
2.自転車事故の被害者となった場合の対処方法
まず、自転車に衝突されるなど自転車事故の被害者となった場合の対処方法をみていきましょう。
自転車事故の被害に遭った場合の対処方法ですが、基本的にすべきことは自動車事故の被害に遭った場合と同じです。


2-1.警察を呼ぶ
自転車に衝突される等の被害に遭った場合、必ず警察を呼びましょう。なあなあで済ませるようなことはせずに「その場で」「即座に」110番通報をしてください。
2-2.相手や自転車の特徴を把握
次に、加害者や加害者の自転車の特徴を把握しましょう。相手の容貌・身なり、自転車の色や形、大きさ、防犯登録番号などを記録してください。
特に加害者が走り去ってしまった場合(逃げてしまった場合)、警察に捜査してもらうためには加害者の特徴を詳細に伝えなければなりません。
現場に目撃者がいる場合は、連絡先を聞いておきましょう。
2-3.加害者が自転車保険に入っているか確認
加害者が現場にとどまっているような、自転車保険に加入しているかどうか入っているかどうかを確認しましょう。加入しているようであれば、どこの保険会社なのかも聞いてメモしておきましょう。
相手方が自転車保険に入っていれば、治療費や慰謝料などの賠償金は保険会社が払ってくれますので、補償を受けられないリスクはほとんどなくなるでしょう。示談交渉の相手も保険会社になるケースが多数です。
他方で、相手方が自転車保険に一歳加入していないようであれば、相手方と直接示談交渉を進めていく必要があります。相手方個人との直接交渉を進めていく場合、きちんと支払ってもらえる可能性は低くなる傾向にあります。
2-4.加害者の連絡先を確認
加害者の氏名、住所、連絡先などをしっかり確認しましょう。
特に相手が自転車保険に入っていない場合、相手と直接示談交渉をしなければなりません。この際、相手の連絡先がわからないと請求ができなくなってしまう可能性があります。
2-5.病院へ行く

救急搬送されない程度のケガであっても必ずすぐに病院へ行ってください。病院で治療を受けないと治療費や慰謝料を請求することができないからです。
また、事故当時には特に身体に目立った被害はなかったとしても、思ってもみなかった後遺症が残ってしまうケースもあり得ます。特に身体被害はなかった等と軽く考えてはいけません。必ず病院で診療を受けてください。
2-6.治療を続ける
ケガが完治するか症状固定するまで、病院で治療を継続しましょう。
2-7.示談交渉する
治療が終わったら、加害者と示談交渉を進めます。
加害者が「示談代行サービス」つきの自転車保険に入っていれば、示談交渉の相手方は自転車保険の担当者となります。
加害者が自転車保険に入っていない場合は、加害者本人と話し合わなければなりません。その場合、示談の話を持ちかけても無視されたり、払えないと開き直られたりして誠実に対応してもらえないことがあります。
交渉がスムーズに進まないということであれば弁護士に相談しましょう。

2-8.合意する
合意ができたら示談書を作成し、示談書の内容に従った賠償金の支払いを受けましょう。
相手が自転車保険会社の場合、示談書が完成すると速やかに賠償金が入金されます。
他方で相手が加害者本人である場青、合意をしても支払をしてこないことがあります。入金がされないようであればすぐに督促する必要があります。

3.自転車事故被害者における示談交渉の注意点
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自転車事故で示談交渉するときには、以下のようなトラブルが発生しやすいので注意が必要です。
3-1.相手が無視する
加害者に賠償金を請求しても、無視して対応してもらえないケースや連絡がつかないパターンです。
そのような場合、まずは内容証明郵便で請求書を送付し、プレッシャーをかけましょう。
それでも対応しない場合には、簡易裁判所や地方裁判所で損害賠償請求訴訟を提起することを勧めします。請求額が60万円以下なら少額訴訟を利用することもできます。
3-2.相手が「払えない」と開き直る
「お金がないから払えない」と開き直る加害者がいます。また、「自分は悪くないから支払義務がない」と主張する加害者もいます。
このよう場合には、裁判で解決するほかありません。弁護士に依頼して損害賠償請求訴訟を起こしましょう。
なお、加害者に本当に支払能力がない場合には、裁判をして勝訴判決を得たとしても取立ができない(強制執行できない)という可能性があります。
事前に「裁判するメリットとデメリット」について弁護士の意見をよく聞いてから決めると良いでしょう。
3-3.後遺障害認定の制度を利用できない
自転車と歩行者の事故では、後遺障害認定の制度を利用できません。被害者に後遺障害が残っても、等級をつけてもらったり適切な賠償金の金額を算定してもらったりできないのです。
そのため、自ら後遺障害慰謝料や逸失利益の金額を算出しなければなりません。
とはいえ症状に応じた適切な後遺障害の賠償金を判断するには、法的な専門知識が必要です。自転車事故によって後遺症が残ってしまった場合には、早めに弁護士に相談しましょう。


3-4.自賠責保険が適用されない
加害者の加害車両が自動車やバイクである場合、加害者は少なくとも自賠責保険に加入しています。
加害者が任意保険に加入しておらず支払能力が無かったとしてもくても、自賠責保険から最低限の賠償金は支払われますることとなりますので、治療費や休業損害、慰謝料が0円になるということはありません。
他方で自転車には自賠責保険の制度がありません。そのため、加害者が支払いをしない場合は賠償金が0円になってしまうというリスクがあります。
3-5.過失割合でトラブルになりやすい
自転車事故で加害者が自転車保険に入っていない場合、被害者と加害者が直接示談を進めなければなりません。
直接の示談交渉においては、過失割合について互いに合意できずにトラブルに発展するケースが大多数です。当事者間で過失割合の合意ができない場合は、裁判を起こし裁判所に決めてもらうほかありません。なお、交通事故の過失割合については法的な基準があります。適切な割合を確認したいときには弁護士に相談してみることをお勧めします。

4.自分の自動車保険を利用できるケースも

自転車事故の相手が自転車保険に入っておらず賠償金の支払を受けられない場合、被害者自身が加入している保険を利用できる可能性があります。
まずは自身が加入する自動車保険の人身傷害補償保険を確認してください。人身傷害補償保険は、自転車乗車中や歩行中の事故にも適用されるケースが多くなっています。もし適用されるようであれば、自転車事故被害によって発生した治療費や休業損害、慰謝料などの支払を受けられます。
また、自身が自転車保険に入っている場合には、自転車保険の傷害保険を適用することで治療費の支払を受けられる可能性があります。さらに、自転車保険以外の一般の傷害保険等に加入していれば、その保険から保険金が支給される可能性もあります。
加害者から賠償金の支払いを受けられない可能性があるときは、自身の加入している保険を確認してみましょう。
5.自転車事故の加害者となった場合の対処方法

次に、自転車事故の加害者となってしまった場合の対処方法をみていきましょう。
5-1.必ず現場にとどまって被害者の救護をする
自転車事故であっても、加害者は自動車事故と同様の責任を負います。
必ず事故現場でけが人を救護しなければなりません(救護義務。道路交通法72条1項前段)。被害者に対し応急処置を行い、必要に応じて救急車を呼びましょう。
なお、救護せずにその場を走り去るとひき逃げ(救護義務違反)になってします。自転車事故であってもひき逃げは重い犯罪行為となってしまうので、絶対に逃げてはいけません。
5-2.危険防止措置をとる
事故を起こした加害者は、事故現場の危険を防止する義務を負います(道路交通法72条1項前段)。自転車を脇に寄せて周囲に散らかったものを片付けましょう。
5-3.警察を呼ぶ

交通事故が発生したら、当事者は必ず警察に報告しなければなりません(道路交通法72条1項後段)。被害者がケガをしていない物損事故のケースであっても警察への報告義務があります。
たかが自転車事故として警察を呼ばずに済ませてはなりません。必ず110番通報しましょう。
5-4.被害者と連絡先を交換する
被害者の氏名や住所、電話番号などを確認しましょう。また、こちらの情報も同じように伝えましょう。今後示談交渉をする際などにお互いの連絡先が必要になります。
5-5.自転車保険会社へ連絡する
自転車保険に入っている方は、必ず保険会社へ連絡を入れましょう。
保険が適用されれば、被害者への損害賠償金は保険会社が払ってくれます。示談代行サービスがついていたら、示談交渉も代わりに行ってくれるので加害者の負担が大きく軽減されるでしょう。
5-6.病院へ行く
自転車事故では、転倒などによって加害者もケガをしている可能性があります。
必ず病院に行き、必要な検査や治療を受けましょう。
6.自転車事故の加害者へ適用される刑罰
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自転車事故の加害者には、以下のような刑罰が適用される可能性があります。
過失傷害罪(刑法209条)
過失傷害罪は、通常一般の自転車事故で相手にケガをさせたときに成立する犯罪です。
刑罰は「30万円以下の罰金または科料」となっています。親告罪なので、被害者が告訴しなければ処罰されません。
過失致死罪(刑法210条)
過失致死罪は、被害者を死亡させてしまったときに成立する犯罪です。
刑罰は「50万円以下の罰金刑」となります。親告罪ではないので、被害者の遺族が告訴しなくても処罰される可能性があります。
重過失致死傷罪(刑法211条)
重大な過失によって人にケガをさせたり死亡させたりしたときに成立する犯罪です。飲酒運転、片手運転、暴走、ブレーキ不良、スマホを操作しながらの運転など、危険な方法で自転車を運転していたら、重過失傷害罪が成立する可能性があります。
刑罰は5年以下の懲役もしくは禁錮、あるいは100万円以下の罰金刑となります。
救護義務違反(道路交通法72条1項前段)
自転車事故の加害者が事故現場で被害者を救護せずに走り去ると、救護義務違反として厳しく処罰されます。
自転車事故の救護義務違反に適用される刑罰は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金刑」です(道路交通法117条の5 第1項)。
7.まとめ
自転車事故は誰にとっても他人事ではありません。自転車事故に遭ったときは被害者の立場であっても加害者の立場であっても適切な処理を取りましょう。
また、自身で適切な対応を取ることが難しいと感じた場合は、弁護士に相談することを推奨いたします。
なるほど六法の運営法人である弁護士法人鈴木総合法律事務所では、自転車事故の弁護についても対応しております。お気軽にご相談ください。


