近年、性犯罪への規制が強化されております。
特に「児童ポルノ」に関しては、単に所持しているだけでも処罰されるよう法改正が行われました。児童ポルノとは子どもの性的な画像や動画のことです。児童ポルノを所持しているだけでも逮捕起訴される可能性があることからその規制の強さが窺い知ることが出来ます。
今回の記事では、児童ポルノ所持罪が成立する要件や逮捕される可能性、犯罪行為をしてしまったときの対処方法について解説します。
児童ポルノ所持罪とは
児童ポルノ所持罪とは、以下の要件を満たす場合に成立する犯罪です。
- 自分の性的好奇心を満たす目的を有すること
- 児童ポルノを所持していること
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)に規定されています。
児童ポルノ法7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
児童ポルノとは
児童ポルノとは、性的興奮をおぼえさせるような一定の児童の「画像」や「動画」を意味します。
画像や動画であるので、文章である場合には児童ポルノには該当しません。
01.児童の範囲
児童ポルノの対象となる児童とは、どのような年齢の人を指すのでしょうか?
児童とは18歳未満の者(人)を指し示します。
逆に言えば、18歳以上であれば未成年の性的な画像であっても児童ポルノには該当しません。
アニメやイラスト、CGは?
児童というには、現実に存在する人であることが必要です。そのため、架空のアニメやイラスト、CGに留まるのであれば原則として児童ポルノには該当しません。
ただし、現実に存在する人がモデルになっている場合は、アニメやイラスト、CGであっても児童ポルノに該当してしまう可能性があります。
実在の児童を描写したCGを児童ポルノと判断した最高裁判例(最高裁令和2年1月27日)も存在するので、「CGやアニメであれば児童ポルノに該当しない」と安直に考えるのは危険といえるでしょう。
文章は?
文章や小説など文字だけである場合には、児童ポルノには該当しません。
02.児童ポルノとなる児童の姿態
児童ポルノとなるのは、以下のような児童の姿態(様子)を映したものです。
- 児童を相手にした性交や性交類似行為
- 児童が性交や性交類似行為をしている
- 他人が児童の性器等を触っている
- 児童が他人の性器等を触っている
- 衣服の全部や一部をつけない児童(児童の性的な部位が露出されたり強調されたりしている)
03.児童ポルノの媒体
児童ポルノとなる媒体は、以下のようなものです。
- 写真やビデオ画像、映画フィルム
- 画像をプリントアウトした紙
- 画像が掲載されている雑誌や写真集、ビラ、チラシなど
- 画像データや動画データ、それらを記録したハードディスクやUSBメモリー、スマホデータなど)
04.性的好奇心を満たす目的
児童ポルノ所持罪が成立するには、性的好奇心を満たす目的が必要です。
そのため、親が自分の子どもを慈しみ成長の記録を残すために水着や裸の写真を撮影・保管しているケースでは、この要件を満たさないため、児童ポルノ製造罪や所持罪は成立しません。
児童ポルノに関連する犯罪
児童ポルノに関連する犯罪は、単純所持罪だけではありません。どういったものがあるのか刑罰の内容とともに確認しましょう。
01.児童ポルノ所持、保管の罪
児童ポルノを所持、保管したときに成立する犯罪です。刑罰は1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑です。
02.提供や製造の罪
児童ポルノを製造したり第三者へ提供したりすると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が科されます。
たとえば自分で児童の性的な画像や動画を撮影したり友人や知り合いなどへ渡したりすると、製造罪や提供罪が成立します。
03.不特定もしくは多数の者への提供、公然と陳列した罪
児童ポルノを不特定や多数の人へ提供したり公然と陳列したりすると、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金刑、あるいはその両方の刑罰が科されます。
不特定や多数の人へ提供、陳列するために児童ポルノを製造した場合も同様です。たとえば児童ポルノをネットで投稿すると不特定多数が目にしますし、公然と陳列したといえるため不特定多数への提供罪、公然陳列罪が成立します。
04.児童買春
児童買春は、18歳未満の児童に対価を渡して性交や性交類似行為などを行う犯罪です。
典型的なケースが援助交際であり、相手が18歳未満であれば児童買春罪が成立する可能性が濃厚となるでしょう。刑罰は5年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
援助交際時に相手の画像や動画を撮影し保存していると、児童ポルノ製造、所持罪も成立します。
児童ポルノ所持罪に該当するケース
児童ポルノ所持罪が成立するケースを見てみましょう
- ネット上で見つけた児童ポルノ画像や動画をダウンロードし、スマホやPCに保存
- 販売業者から児童ポルノの録画されたDVDやブルーレイなどを購入
- 出会い系サイトや援助交際で知り合った児童の裸や性交渉の際の画像や動画を撮影してスマホやPCに保存
①②については児童ポルノの単純所持罪が成立します。また、③については自身で撮影しているため、単純所持罪のみならず児童ポルノ製造罪が別途成立するため刑罰が重くなります。
児童ポルノ所持罪が発覚する経緯
児童ポルノ所持は、以下のような経緯で発覚することが多いです。
01.サイバーパトロールで発覚
児童ポルノは、ネット上でダウンロードして入手する方が大多数を占めます。
警察では、専門部署が日々ネット上の違法行為を取り締まるためにサイバーパトロールを行っております。このパトロールの中で、違法サイトが摘発される例が多々あります。このような場合、ダウンロード履歴を調査すれば誰が児童ポルノを入手したのかわかるので、児童ポルノ所持罪の発覚へつながります。
02.児童ポルノの頒布元が逮捕されて発覚
違法な児童ポルノDVDやブルーレイの販売業者が逮捕されたケースにおいて、販売業者が保持する顧客リストから児童ポルノの所持者が発覚することも多々あります。
03.児童が相談して発覚
出会い系サイトなどで知り合った児童に性的な画像や動画を自撮りして送らせたケースに置いて、児童が家族や先生、警察などに相談して発覚するケースがあります。
援助交際で児童と会って児童ポルノを製造した場合にも同様です。
04.児童が補導されて発覚
児童が援助交際を行ったり夜遊びしていたりすると警察に補導されることがあります。
この補導をきっかけにスマホを調べられて援助交際の事実が発覚、そこから援助交際の相手方の児童ポルノの製造所持が発覚するケースもあります。
また、親が児童の行動を不審に感じてスマホの中身を確認した結果、性的な画像や動画の送信履歴が判明し、相手方の児童ポルノの製造所持が発覚するケースもありえます。
05.ネット上に児童ポルノを陳列して発覚
自分で保管するだけではなく、ネット上に集めた児童ポルノ画像や動画を陳列していると、サイバーパトロールにひっかかってサイト運営者を特定される可能性があります。
この場合、単純所持罪だけではなく陳列罪や不特定多数への提供罪も成立するため、刑罰が非常に重くなるでしょう。
以上のように児童ポルノ所持は、様々な過程で発覚してしまう可能性があります。「所持しているだけならバレないだろう」と軽く考えるのは危険です。
児童ポルノ所持が発覚した後の流れ
児童ポルノの所持が警察に発覚すると、どういった流れになるのでしょうか?
01.単純所持だけなら逮捕まではされないケースが多い
児童ポルノ所持罪は犯罪行為ですが、初犯で居住場所も定まっており、単純所持しか成立していないのであれば逮捕まではされないでしょう。
ただし何度も性犯罪を繰り返している場合、住居不定、無職、独身で家族がまったくいない、所持だけではなく製造や提供罪などが成立する場合などには逮捕される可能性が高くなります。
02.書類送検される
逮捕はされなくとも書類送検され刑事事件として立件されるケースが多数です。この場合、在宅のまま捜査が進められます。
被疑者の反省状況や児童ポルノ所持の経緯や保管方法、数量などの個別状況により、最終的に検察官が処分決定を行います。
不起訴になれば、刑事事件は終了し前科もつきません。起訴されると、刑事裁判となります。ここで有罪判決を受けると前科がつくことなります。
03.略式起訴で罰金になる可能性が高い
児童ポルノの単純所持の場合、起訴されたとしても「略式起訴」となり、罰金刑が適用される可能性が高いでしょう。
児童ポルノ所持で逮捕される可能性が高いパターン
以下のような場合、児童ポルノ所持であっても逮捕される可能性が高いので要注意です。
01.児童ポルノ製造、提供罪が成立する
単純所持だけではなく、児童と会ったときに性行為の場面や性的な行為を自ら撮影して「製造罪」が成立する場合、ネット上に児童ポルノをばらまいて「不特定多数への提供、陳列罪」が成立する場合には逮捕される可能性が高くなります。
02.何度も繰り返している、居所が不定、無職
児童ポルノやその他の性犯罪を何度も繰り返していると刑罰が重くなり、逃亡や証拠隠滅のおそれが高くなるので逮捕につながりやすくなります。
住居不定なケース、無職の場合などにも逃亡のおそれがあると判断され、逮捕される可能性があります。
03.別の犯罪も同時に成立している
援助交際を行い児童買春罪が成立する場合や、児童と会ったときに盗撮をして盗撮罪が成立する場合などには逮捕される可能性が高くなります。
児童ポルノを所持している場合の対処方法
現時点で児童ポルノを所持しているのであれば以下の対応を検討しましょう。
01.自首する
児童ポルノ所持や製造、提供罪、児童買春罪などに対する処分をなるべく軽くしてもらうため「自首」をお勧めします。
自首とは、捜査機関に発覚する前に自主的に犯罪を申告することです。自首が成立すると刑罰を減免してもらえる可能性がありますし、情状がよくなるので不起訴になる可能性も高まります。
特に児童買春などの所持罪以外の犯罪も犯してしまっているなら、初犯でも懲役刑が適用されるリスクがあるので、自首減刑を目指すべきでしょう。
02.被害者との示談
児童ポルノや児童買春などの性犯罪には「被害者」が存在します。刑事処分を軽くしてもらうため被害者との示談を成立させましょう。
ただし児童が被害者の場合、示談の相手は「親権者(親)」となります。親権者は、加害者へ強い処罰意思をもっているケースが多数です。ご自身で示談を進めるのは難しいでしょう。
03.弁護士に相談する
児童ポルノの所持や製造、児童買春などに該当する行為をしてしまうと、自分1人ではどう対処すればよいかわからない方が多数です。
「このままバレずにやり過ごせるのでは?」という考えにも陥りがちです。自首するにしても1人では不安、準備の方法や具体的な自首の方法がわからない方も多いでしょう。
そのような場合には弁護士に相談してみましょう。弁護士から以下のサポートを受けることができます。
- 自首すべきかどうかのご相談
- 自首のサポート(事前準備、警察への同行、自首の記録を残すなど)
- 在宅捜査となったときのご相談やサポート、刑事弁護(アドバイスや検察官とのやり取り、被害者との示談、検察官への不起訴申し入れなど)
- 逮捕されたときの刑事弁護(接見、取り調べへの対処方法のアドバイス、被害者との示談や検察官への不起訴申し入れなど)
- 起訴された場合の刑事弁護(量刑の減刑、無罪主張など)
東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、児童ポルノ絡みの犯罪の刑事弁護を受け付けております。単純所持罪への対応だけではなく他の犯罪も成立してしまっていて起訴を避けることが難しいケースにおいての刑事弁護、被害者との示談交渉なども承ります。
多種多様な事例の解決実績がございますので、1人で悩まずにご相談ください。