配偶者(パートナー)が不倫していたことが判明したので、その不倫の相手方に慰謝料を請求するのはよくある流れです。
しかし、この慰謝料請求に対し、「〇〇といった理由があるので慰謝料は払わない」と主張、慰謝料の支払いを拒絶してくるケースは少なくありません。
この記事では、不倫の相手方が「慰謝料を支払わない」と主張してきた場合の対処方法を解説します。
「不倫なんてしていないから払わない」
不倫相手に対し慰謝料を請求すると、「不倫なんかしていません」と反論されるケースがほとんどです。
実際に不倫の事実がないのであれば慰謝料請求の前提となる事実が存在しない以上、慰謝料を請求することはできません。
ただ、相手方が嘘をついているケースも多々あります。
相手方が「不倫していないから払わない」と主張する場合、不倫の具体的な事実や証拠を示すと効果的です。
たとえば、LINEやメールなどでの親密なメッセージのやり取りのコピーを持っている、不貞行為を行なっていた日時や場所等をを把握しているということであれば、「こちらはこのような証拠を押さえています」と具体的に明示し、必要に応じて開示しましょう。
探偵会社の調査報告書を持っていることを告げるのも有効です。
なお、証拠を提示する際、原本を提示してしまうと書類を破かれたり隠されたりされryことがあるため見せるのであればコピーを見せる方が無難です。
また、言い訳を検討されたりするおそれもあるので、コピーを手渡さない(その場で提示するだけにとどめる)といった状況に応じた対応も必要となります。
「慰謝料が高額過ぎて納得できないから払わない」
慰謝料請求をすると「高額過ぎるのではないか。納得できないのでそんなに多額は支払えない」との反論を受けるケースもよくあります。
事案次第ではありますが、不倫慰謝料の相場はだいたい100~300万円程度です。
もし、あなたが500万円以上の金額を請求しているのであれば、相手方の主張にも理がありますので相場程度にまで落とす必要が出てくるでしょう。
逆に相場通りの金額を請求しているのであれば、それより下げる必要はありません。相手方に対しては法的な相場に従って請求していることを告げ、支払いを求めましょう。
それでも相手方が減額を主張してくる場合は、ある程度歩み寄って示談を成立させるのも1つの方法ではあります。相手が不当な減額を主張するもであれば訴訟も検討すべきです。
自分の事案ではどのくらいが請求できる相場なのか判断しにくい場合は、弁護士までご相談下さい。
「お金がないから支払えない」
慰謝料請求に対し、相手方から「不倫をしてしまったことは申し訳ないとは思うけれど、お金がないので慰謝料を払えない」との回答を受けるケースもあります。
この場合、相手方の主張すなわち「本当にお金がないのかどうか」を確認する必要があります。
職業(勤務先や役職)、居住地(実家か1人暮らしか)、家族構成等から推測したり、資産内容(自動車や住居の所有)、収入の金額を尋ねたりしましょう。
もし、相手に本当にお金がないのであれば、訴訟を起こしても無駄となる可能性が高くなります。そのようなケースでは、相手方の支払うことができる条件を設定すべきです。
たとえば、慰謝料を相手の払える金額にまで減額する、相手が月々払える金額での分割払いを検討すべきでしょう。
なお、分割払いを認める場合には、必ず慰謝料支払いの合意書を「公正証書」として残しておくべきです。公正証書を作成しておくと、将来相手が途中で支払いをしなくなったとき、すぐに相手方の給料や預貯金などを差し押さえることができます。
「時効が成立している」
不倫の慰謝料請求権には時効があり、「不倫の事実と不倫相手を知ってから3年(2020年4月以降は5年)(消滅時効)」または「不倫から20年(除斥期間)」で時効にかかります。
そのため相当の時間が経過している場合、相手方から「時効が成立しているから支払わない」と主張されることもあります。
このような場合は、まずは「本当に時効が成立しているか」をチェックしましょう。
不倫が始まっても、あなたが不倫の事実や不倫相手について知らなければ消滅時効の時効期間は進行しません。相手は「不倫から3年経ったので時効が成立している」と勘違いしている可能性があります。
そのような場合は、主張する時効は成立していないことを告げ、支払いを求めましょう。それでもごねるようであれば訴訟を検討すべきです。
「既婚と知らなかった」
相手方から「既婚とは知らなかったんです」と主張されるケースも多いです。
実際にあなたの配偶者(パートナー)が相手方に対し「独身です」と説明し、相手方がその言葉を過失なく信用して行為に及んでいた場合には不倫慰謝料を請求できない可能性が高くなります。
ただ、多くのケースでは、相手方は、不倫相手(あなたの配偶者)うすうす既婚者であると気づいているものですし、途中で気づいたとしても不倫関係を続けています。
そういった場合は、「既婚とは知らなかった」とは主張することはできませんので慰謝料を請求することは可能です。
「すでに婚姻関係が破綻していると聞いていた」
「交際を始める際、すでにあなたとは関係が終わっていると聞いていた」と弁明されるのもよくあるパターンです。
相手方から上記のようなことを主張された場合は、夫婦関係がうまくいっていた事実や証拠を提示しましょう。
たとえば、不倫が始まった当時に、「家族で旅行に行った」「運動会などの子どものイベントに参加した」「一緒に食事に行った」ことを説明し、その写真などを示したりすると効果的です。
慰謝料の減額や免除は認められないことを伝え、相場通りの支払いを求めましょう。
「性行為を強要された」
相手方から「(あなたの配偶者から)性行為を強要された。不倫ではない。逆に訴えてやる」と言われるケースもあります。
実際に強要があったのであれば、強制性交等罪などの犯罪が成立する可能性もありますが、現実にはそのようなケースは少数です。
相手も合意していたケースの方が多数ですし、最初は多少強引な誘い方であったとしてもその後普通に不倫関係に移行しているケースも少なくありません。
経緯はともあれ相手も納得して不倫していたのであれば慰謝料請求をすることは可能です。
困ったら弁護士に相談しましょう
誰しも自身に負い目があったとしても、請求された慰謝料を支払いたくはありません。できる限り支払いを免れようと、様々な反論、弁明、言い訳が返ってくることが予想されます。
上述のパターンに該当しない主張がなされるかもしれません。
不倫相手への慰謝料請求を確実に行いたい、ということであれば弁護士に代理交渉をまかせるのが正攻法です。
自分で対応することは難しいとお考えになった際は、弁護士にお気軽にご相談ください。