放火罪は殺人罪と同等の法定刑が科せられている、非常に重い罪です。過失により火災を起こした場合、放火罪ではなく失火罪に問われますが、取り調べや裁判で適切な対応を取れなかったばかりにより重い罪が適用されることもあります。本記事では放火罪や失火罪に関する基礎知識、逮捕後の流れをまとめて解説。放火罪・失火罪を弁護士に相談すべき3つの理由もお伝えします。
【この記事がおすすめな方】
- 放火罪や失火罪で家族や友人・知人が逮捕された方
- 勾留された本人に面会しようとして、できなかった方
- 謝罪や示談交渉のために被害者を訪ねたが、応じてもらえなかった方
建物に故意に火を放てば放火罪、過失により出火させれば失火罪となります。しかし、過失による出火であっても、失火罪よりも重い放火罪や重過失失火罪に問われることもあります。
また、放火罪の法定刑は殺人罪と同等であり、非常に重いです。取り調べや裁判で適切な対応を取れないと、本来よりも重い刑が科せられてしまう可能性もあるでしょう。
放火罪や失火罪で逮捕された場合、可能な限り早く弁護士に相談し、都度最善の対応を取らなければなりません。
そこで今回は、放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき理由や、どんな弁護士に相談すべきなのかを解説します。
放火罪や失火罪の懲役・罰金、逮捕後の流れも紹介します。家族や友人・知人がいきなり逮捕され、どうしたらいいのかわからない方は、ぜひ参考にしてください。
本記事が皆さまの不安と混乱を少しでも和らげ、放火・失火に強い弁護士へ相談するきっかけとなれば幸いです。
火災を起こした場合、放火罪もしくは失火罪に問われる

火災を起こした場合、それが故意であったか過失であったかにより、放火罪もしくは失火罪に問われます。
放火罪は字のごとく、火を放ったことによる罪です。故意に火をつけて人やその財産に危険を及ぼした場合、放火罪が適用されます。
失火罪は過失により火災を起こした場合に適用される罪です。ただ、過失ならすべての火災が失火罪になるわけではなく、過失の内容次第でより重い罪に問われることもあります。

放火罪の種類と懲役・罰金

放火罪は、放火の対象が何であったかにより次の3種類に分かれます。
【3種類の放火罪】
- 現住建造物等放火罪
- 非現住建造物等放火罪
- 建造物等以外放火罪
まずは3種類の放火罪について、それぞれの内容や懲役・罰金を詳しく確認していきましょう。
現住建造物等放火罪
現住建造物等放火罪は、人が(住居として)使用している建造物等に故意に火を放った場合に適用されます。未遂でも罪に問われ、法定刑は「死刑または無期、もしくは5年以上の懲役」です。
現住建造物等とは、具体的には次のようなもののことをいいます。
【現住建造物等とは?】
- 人が住んでいる建物
- 人が使用している建物
- 人がいる電車や新幹線
- 人がいる艦船
- 人がいる鉱坑
人が何らかの用途に使用している建物や乗り物、場所が「現住建造物等」と考えておくといいでしょう。
非現住建造物等放火罪
非現住建造物等放火罪は、人が(住居として)使用していない建物に火を放った場合に適用されます。非現住建造物等にあたる具体的な建物は、空き家や倉庫などです。
未遂でも罪に問われ、法定刑は「その建物が誰のものか」により次のように変わります。
【非現住建造物等放火罪の法定刑】
自己所有の建物への放火:6ヵ月以上7年以下の懲役
他人所有の建物への放火:2年以上の懲役
なお、自己所有の建物であっても、次のような場合は他人所有と見なされます。
【他人所有と見なされる自己所有の建物】
- 差し押さえられた建物
- 賃貸にしている建物
- 保険をかけている建物
建造物等以外放火罪
建造物等以外放火罪は、人の乗っていない車やバイク、家具などに火を放った場合に適用されます。
非現住建造物等放火罪と同じく、放火の対象物が誰に所有されているかにより、法定刑が変わります。「自己所有であっても他人所有と見なされる物」の条件も、非現住建造物等放火罪と同様です。
【建造物等以外放火罪の法定刑】
自己所有の物への放火:1年以下の懲役、または10万円以下の罰金
他人所有の物への放火:1年以上10年以上の懲役

失火罪の種類と懲役・罰金

失火罪は過失の程度や内容により、次の3種類に分かれます。
【3種類の失火罪】
- 失火罪
- 業務上失火罪
- 重過失失火罪
次からは3種類の失火罪について、どのような過失でどの罪に問われるのか、懲役や罰金と併せて確認していきましょう。
失火罪
失火罪は、過失により(非)現住建造物等を出火させてしまった場合に適用されます。失火罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
覚えておきたいのは、「過失による出火がすべて失火罪になるわけではない」ことです。過失の内容や程度によっては放火罪が適用されたり、後述する重過失失火罪が適用されたりすることもあります。
具体的には「火事になり得る」と想像できる状況で注意を怠り、実際に出火に至った場合は、罪が重くなる傾向にあります。
業務上失火罪
業務上失火罪は、業務上の不注意による失火に対して適用されます。法定刑は「3年以下の禁錮または150万円以下の罰金」です。
飲食業をはじめとする「火を扱うことの多い仕事」に就いている人にとって、気を付けたい罪といえます。
重過失失火罪
重過失失火罪は、「出火した場合の危険性が高い状況」や「火の扱いに慎重になるべき状況」で、慎重さを欠いて失火させた場合に適用されます。法定刑は「3年以下の禁錮または150万円以下の罰金」です。
具体的に次のような状況では、重過失失火罪になる可能性が高いです。
【重過失失火罪が想定される状況】
- ガソリンスタンドでの喫煙
- 庭や木造建築物に、火のついたままたばこを捨てる
- ガスバーナーを使うような極めて危険な火遊び
放火罪や失火罪の法定刑一覧

放火罪や失火罪の法定刑は細分化され、どんな処分を受けるのか、出火当時の状況により大きく変わります。一般の方だけで当時の状況を説明し、減刑を求めるのも困難です。だからこそ、火災に関する罪に問われたときは、弁護士に相談することをおすすめします。
ここで一度、放火罪や失火罪の内容と法定刑をおさらいしておきましょう。
罪名 | 内容 | 法定刑 |
現住建造物等放火罪 | 人が居住、もしくは使用している建物への放火 | 死刑または無期、もしくは5年以上の懲役 |
非現住建造物等放火罪(他人所有) | 他人所有と見なされる、人が住居として使っていない建物への放火 | 2年以上の懲役 |
非現住建造物等放火罪(自己所有) | 自己所有の、人が住居として使っていない建物への放火 | 6ヵ月以上7年以下の懲役 |
建造物等以外放火罪(他人所有) | 他人が所有する、人の乗っていない車やバイク、家具などへの放火 | 1年以上10年以下の懲役 |
建造物等以外放火罪(自己所有) | 自分が所有する、人の乗っていない車やバイク、家具などへの放火 | 1年以下の懲役、または10万円以下の罰金 |
失火罪 | 建造物等への失火 | 50万円以下の罰金 |
業務上失火罪 | 業務上の不注意による失火 | 3年以下の禁錮または150万円以下の罰金 |
重過失失火罪 | 重度の過失による失火 | 3年以下の禁錮または150万円以下の罰金 |
放火罪や失火罪で逮捕されるとどうなる?
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放火罪や失火罪で逮捕された後は、最大23日間、勾留される可能性があります。次からは、逮捕から釈放もしくは起訴までの間に何が行われるのか、流れに沿って確認していきましょう。
1.逮捕後48時間以内に釈放もしくは送検される
放火罪や失火罪で逮捕されると、身柄を拘束され、48時間以内に「釈放」もしくは「送検」されます。この間、拘束された本人と面会できるのは弁護士だけであり、家族でも面会はできません。
2.送検後24時間以内に釈放または勾留請求される
逮捕後、釈放されず送検された場合は、24時間以内に釈放または「勾留請求」されます。
交流請求とは、検察官が裁判官に対し、被疑者を勾留する許可を求めることです。裁判官による勾留請求が認められると、勾留状が発行されます。
勾留請求が認められなかった場合、被疑者は釈放されます。
3.最大20日間勾留される
勾留請求が認められた場合、原則として10日間、延長した場合は最大で20日間勾留されます。勾留されている間に起訴されるか釈放されるかが決められます。

放火罪や失火罪での勾留後はどうなる?

放火罪や失火罪で勾留されると、「起訴」「不起訴」「処分保留」のどれかの決定が下されます。それぞれどのような意味で、その決定が下された後はどうなるのか、ひとつずつ確認していきましょう。
起訴
勾留後、起訴されると裁判手続きが始まります。勾留されていた本人は「被疑者」から「被告人」と呼ばれるようになります。
起訴とは、その刑事事件について裁判を起こしたいという意思表示のことで、基礎ができるのは原則検察官のみです。
不起訴
勾留後、不起訴になると被疑者は釈放されます。その後、同じ事件について裁判にかけられることも、有罪となる可能性もほとんどありません。
不起訴には次の3種類があります。
【3種類の不起訴】
嫌疑なし:被疑者に対する疑いが晴れた場合
嫌疑不十分:疑いは完全に晴れていないが、有罪の証明が困難な場合
起訴猶予:有罪の証明は可能だが、状況や犯罪の重さなどにより、検察官の裁量で不起訴となる場合
処分保留
処分保留は、起訴・不起訴の判断を保留にしたまま釈放されることです。勾留期間中に十分な証拠が揃わなかったときは、処分保留となります。処分保留は意味合い的に不起訴の「嫌疑不十分」に近く、その後は不起訴となることが多いです。
ただ、殺人や放火などの重大事件では再逮捕が行われ、実質的に勾留期間が延長されることもあります。
原則として、同じ事件・罪名での逮捕・勾留は1回とされています。そのため、殺人罪の被疑者を死体遺棄で再逮捕するように、再逮捕の場合は別の罪で逮捕されることが多いです(勾留中に見つからなかった有力な証拠が新たに見つかった場合、同じ罪での再逮捕もあり得ます)。
放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき3つの理由

放火罪や失火罪の刑は重く、適切な対応を取れなければ、不当な処分を受けることにもなりかねません。減刑を求めたり、適切な判決を受けるためには、弁護士への相談は必須です。
最後に、放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき3つの理由を紹介します。
理由1.弁護士以外は本人との面会が難しい
放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき1つ目の理由は、弁護士以外は本人との面会が難しいからです。
まず、放火罪や失火罪で逮捕された場合、勾留が決まるまでは家族であっても面会できません。勾留決定後も警察や検察が接見禁止の請求をし、裁判所により認められれば、面会するのは難しいです。
しかし、弁護士だけは勾留決定までの間も面会ができます。接見禁止になった場合も同様です。
弁護士との面会には時間や回数の制限がなく、警察官の立ち合い無しの面会もできます。立ち合い無しの面会で話すことは確実に秘密になるよう、法律で保障されています。
放火罪や失火罪では対応のスピードや正確な事実確認がとても重要です。逮捕直後から面会でき、話の内容も秘密にできる弁護士は、放火罪・失火罪で逮捕された人にとって欠かせない存在といえます。
理由2.放火・失火の示談は極めて難しい
放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき2つ目の理由は、これらの示談は極めて難しいからです。
放火にしても失火にしても、その火災の被害者は心身にかなりのダメージを負っています。住む家や多くの財産、家族を失った人は、その原因をつくった相手に強い憤りを抱えているでしょう。
本人は勾留されているためそもそも示談交渉できませんし、家族や知人・友人が訪ねても、応じてもらえない可能性が高いです。
放火や失火の被害者との示談交渉は困難を極めます。専門的な知識と多くの経験を持つ弁護士以外には難しいでしょう。
示談の成立は、その後の起訴・不起訴、判決にも大きく影響します。だからこそ、弁護士に相談し、迅速かつ最善の対応をとってもらう必要があるのです。
理由3.放火罪・失火罪はややこしい
放火罪や失火罪を弁護士に相談すべき3つ目の理由は、これらの罪が極めてややこしいからです。
記事前半で解説したように、放火罪や失火罪にはかなりの種類があります。紹介したこちらの記事を読んだ方は、「延焼罪」や「焼損の考え方」など、火災にはさらに複雑な事柄が絡むことを痛感したのではないでしょうか。
一般の方が事件当時の状況について適切に話し、減刑を勝ち取るのは困難を極めます。失火罪が妥当なのに、放火罪や重過失失火罪などのより重い罪を、不当に適用される可能性もあるでしょう。
取り調べや裁判で適切な対応を取るためにも、なるべく逮捕直後から、弁護士に相談する必要があります。
放火罪や失火罪で逮捕されたら、すぐ弁護士に相談を!

解説してきたように、火災に関する罪にはさまざまなものがあります。そのどれも刑は重く、中でも現住建造物放火罪には殺人罪と同等の法定刑が定められています。
弁護士以外は面会や示談交渉が難しいこと、そもそも故意や過失の証明が困難を極めることからも、弁護士への相談は必須です。
とはいえ、ただ弁護士に相談すればいい、というわけではありません。放火・失火事件は刑事事件の中でも対応が難しく、多くの知識や経験、そして情熱を持った弁護士に相談する必要があります。
なるほど六法を運営する「鈴木総合法律事務所」は刑事事件全般に強く、放火・失火事件に関しても一定の評価をいただいています。
私たちが大切にしているのは、放火や失火、刑事事件の手続きに関する難しい話もわかりやすくお伝えし、迅速かつ丁寧な対応を取ることです。
初回相談は30分無料で承っているので、まずはお気軽に、何より早めにご相談ください。

