多額の負債に苦しむ方にとって、負債を所定の割合に圧縮して3年の期間で分割返済していく個人再生手続きは有効な解決方法の一つです。
また、個人再生であれば、破産手続では換価対象となってしまう自宅や自動車といった財産を残すこともできますし、資格制限や郵便物転送等といった不利益を課せられることもありません。
とはいえ、個人再生をすること(したこと)が同居の家族にバレてしまうのではないか、家族に悪影響を及ぼすのではないかといった不安や心配から手続きを敬遠されてしまう方が多くいらっしゃいます。
今回の記事では、個人再生手続きが家族に与える影響について解説します。個人再生手続きを検討されている方は是非参考にしてみてください。
個人再生とは
個人再生とは、債務整理の一つで、抱えている負債を所定の割合に圧縮して、その金額を原則3年(最長5年)で分割して弁済する手続きです。
破産手続と同様、裁判所を介した法的手続きであり法律によって厳格に定められております。申立書の様式や添付しなければならない書類はもちろん、手続きを進めるうえで課せられる義務等もしっかりと取り決められております。
個人再生をするうえで課される義務や制限
個人再生の申立を行うにあたり、破産者に課される義務や制限等についてみてみましょう。
個人再生をする人(以下、「再生債務者」と表記します)に課せられる義務や制限等のうち、同居の家族に対し影響を与えそうなものをピックアップしましたので確認してみましょう。
01.新たに債務を作ってはならない
個人再生手続に臨む際は、新たな債務をつくるような行為をしてはなりません。
手続き中に新たに債務をつくってしまうと、手続きそのものに悪影響を与えます。最悪の場合、認可を得ることができない(再生計画案が認められない)ということにもなりかねませんので絶対に新たに債務を作ってはいけません。
新たな債務を作る行為としては、以下のようなものが挙げられます。
- 金銭の借入を行なう
- クレジットカードを利用して買い物をする
- 携帯会社の後払い決済を利用して買い物をする
- 親族から借入を行なう
- ツケで飲食する
- 他人の保証人になる(保証債務を負う)
02.生活状況を報告する必要がある
個人再生の申立書には、家計の状況を添付する必要があります。家計の状況を確認することで再生債務者の生活状況がチェックされるのです。また、資料として給与明細書や通帳の写しも添付する必要があります。
一人暮らしであれば単身の家計を添付することとなります。
他方で家族と暮らしている場合や交際相手と同居している場合には、原則として世帯全体の家計(同居人を含めた家計)の状況や資料を添付する必要があります。なお、同居者と完全に独立した家計であることを説明できる場合には単独で家計を作成することで足りることもあります。
03.官報に名前と住所が掲載される
個人再生の申立後、下記のタイミングで、官報に名前と住所が掲載されます。
- 開始決定時
- 書面決議に付されたとき(or意見を聴く決定がでたとき)
- 認可決定時
また、掲載される情報は以下の通りです。
- 名前
- 住所
- 事件管轄(管轄裁判所)
- 事件番号
個人再生手続きが同居の家族に与える影響
妻(夫)や子どもがいる状況で個人再生手続きを申し立てた場合、家族に何かしらの悪影響はあるのでしょうか?確認してみましょう。
01.負債の支払義務が生じることはない
個人再生を検討されている方の中には「自分が個人再生を行なったら、家族に借金が移ってしまうのではないか?家族が取り立てを受けてしまうのではないか?」とお考えになる方がいらっしゃいますが、これは間違いです。
家族が貴方の負債の保証人になっていない限りは家族に借金の支払義務は生じませんので、家族が負債の肩代わりをするということはありえません。
同様に、家族の財産が差し押さえられたり換価処分されるということもありません。
02.財産の返還を要求されることがある
以下のような事情がある場合、原則は実行前の状態に戻す必要があります。
- 再生債務者が家族に多額のお金を与えた(援助した)
- 再生債務者が家族の借金を肩代わりした
- 再生債務者が家族に高額な商品を贈与した
なお、実行前の状態に戻すということが難しいようであれば、相当額を清算価値に計上することで対応することもあります。このあたりの判断は専門家である弁護士でないと非常に難しいものです。対応は弁護士に任せましょう。
03.人的保証の追加を求められることがある
個人再生をしようとしている人が債務の保証人になっている場合、債権者から新たに保証人を立てることを要求されることがあります。
特に注意が必要なのは子どもの奨学金の保証人になっているケースです。新たな保証人を設定できない場合、不利益を及ぼす可能性があります。
家族に手続きがバレてしまうケース
個人再生手続きを同居の家族に秘密にしておくことはできるのでしょうか?
結論から言ってしまえば、家族に秘密のまま個人再生手続きを進めること自体は可能です。
しかし、「家族に秘密のまま個人再生手続きを進めること」=「家族にバレずに手続きできる」というわけではありません。
秘密裏に手続きを進めていてもバレてしまう可能性があります。また、事案・事情によっては家族に協力を要請しなければならないこともあります。
以下、同居の家族に手続きが発覚してしまうパターンについて具体的に確認してみましょう。
01.家族が債権者
家族が債権者である場合は、個人再生手続きに参加してもらうこととなるため、100%バレてしまいます。
家族が債権者になるケースとしては、家族から実際にお金を借りている場合や家族が負債の保証人になっている場合が挙げられます。
02.手続き上の協力
口座の取引履歴において家族と多額のお金のやり取り(送金・入金)があったり、個人再生を申し立てるに至った経緯(負債が増えた経緯)に家族が大きく関与する場合には家族の資産等を調査しなければなりません。
この調査の過程において家族に手続きが発覚してしまう可能性があります。
03.家計の作成
家族と同居している場合、原則として家族と協力して家計の状況を作成しなければなりません。資料として家族の収入証明や金融機関の取引履歴を添付する必要もあります。そのため、家族に秘密で手続きを進めることは難しいといえるでしょう。
04.生活状況の変化
個人再生手続きに臨む場合、今まで利用していたクレジットカード等は全て利用できなくなります。今まで主にクレジットカードで決済していた場合は、決済方法が変わったことに疑念を抱かれ手続きがバレることもあります。
また、生活水準が下がったことを理由に手続きに臨んでいることが発覚してしまうケースもあります。
05.官報
個人再生を申し立てると、官報に名前と住所が掲載されます。
官報とは、国(政府や各省庁といった行政機関)が諸事項を一般国民に周知させることを目的として刊行される公告文書(広報紙)で、国立印刷局が行政機関の休日を除き、毎日発行しています。国が発行する新聞と考えていただければ理解が容易かと思われます。
官報はコンビニエンスストアで販売されているようなものではありません。閲覧するためには、①全国の官報販売所で購読を申し込む、②国立印刷局が管理するインターネット版官報のサイトでアカウントを作成したうえで閲覧する、③図書館で閲覧するといった方法をとる必要があります。そのため、普通に生活をする分には目にする機会は非常に少ないです。
とはいえ、家族が目にすることは絶対にないとは言いきれません。たまたま家族が官報をみてしまったがために破産手続きを行なっていることがバレてしまうこともあり得ます。
06.ダイレクトメール
官報に名前と住所等が掲載されることから、悪質な金融業者(貸金業者)が「ウチは個人再生した人にも融資しますよ」とダイレクトメール(DM)を送りつけてくることがあります。
このようなDMを家族が見てしまうことで、個人再生を行なったことを知られてしまうことがあります。
07.保証債務
子どもの奨学金といった債務について保証人になっている場合、債権者から代わりの保証人を立てるよう要求されることがあります。これにより家族に個人再生手続きに臨んでいることがバレる可能性はあります。
08.信用情報
個人再生手続に臨むと、信用情報機関に事故情報が記載されることとなります。
個人再生の場合は、再生計画案に基づく弁済を終えてから5年間が経過するまでは事故情報が記載されます。そのため、新たにカードを作成することはできませんしローンを申し込んでも審査で否決される可能性が高いといえます。
配偶者から「自動車を購入しよう」等と提案され、購入時のローンの与信審査が一向に通らないことを怪しまれた結果、手続きに臨んだことがバレる可能性はあります。
まとめ
今回の記事では、個人再生手続きが同居の家族に与える影響について解説しました。
この記事をお読みになられている方の多くは、負債や返済について何かしらのトラブルや心配事を抱えていらっしゃるかと思います。
東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、債務整理の問題に注力しており、個人再生をはじめ多数の解決実績を有しております。債務や負債に関するトラブルをお抱えになっている方はお早めにご相談ください。