「借金の金額が増えすぎて、毎月の返済が苦しくなってきた…」
そんなときには、個人再生が有効な対処方法となります。
ただ、個人再生は自己破産などと比べるとなじみが薄く「どんな手続かわからない」という方も多いです。
今回は、個人再生について説明をします。
1.個人再生とは

個人再生は、借金を整理するための法的な手続である「債務整理」の1種です。
裁判所に申立てをして、「再生計画案」を認可してもらうことにより、借金の返済額を大きく減額してもらうことができます。
任意整理では、利息をカットできる程度ですが、個人再生であれば、借金の元本ごと概ね5分の1にまで大きく減らせるので、借金額がある程度膨らんでしまった方の場合に有効です。
個人再生をするときには「住宅資金特別条項」をつけることも可能です。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンを抱えている債務者が個人再生をするときに、住宅ローンだけはそのまま支払いを続け、他の借金のみを減額してもらえる方法です。一般では「住宅ローン特則」と呼ばれていることも多いです。
住宅ローン特則を使って個人再生をすると、住宅ローン支払い中の家を失うことなく、他の銀行カードローンやサラ金、クレジットカードなどの借金だけを減らせるので、家計の状況が非常に楽になり、家を守りながら借金の支払いを継続していける方がたくさんおられます。
2.個人再生のメリット
個人再生には、以下のようなメリットがあります。
2-1.借金が大きく減る

個人再生をすると借金を大幅に減らせます。最低弁済額は100万円となっているので、100万円以下には減りませんが(もともと100万円以下の場合には減額されずそのままになります)、特に財産がない方の場合には、借金返済額を概ね5分の1にまで減額してもらうことも可能です。
2-2.家を守りやすい
個人再生をすると、住宅ローン付きの家を守ることができます。
住宅ローンを長期間滞納してしまうと保証会社によって代位弁済が行われてしまいますが、住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てると、代位弁済をなかったことにできます。その場合、また元のように銀行等の債権者へ分割払いを継続することができます。ただし、代位弁済をなかったことにするには、代位弁済後6か月以内に個人再生をする必要があります。
また、競売が開始されていても、競売を中止してその間に個人再生手続を進め、家を守ることが可能です。ただし、この場合も入札開始日より前に個人再生の手続をする必要があります。
2-3.弁護士に依頼すると督促が止まる

個人再生の手続を弁護士に依頼すると、その時点で債権者からの督促が止まります。
貸金業法により、弁護士の介入後、債権者は本人に直接支払い請求してはいけないことになっているからです。
これまで債権者からの電話や郵便による督促によって精神的に疲弊していた方などは、弁護士に依頼するととても楽になります。
2-4.強制執行を止められる
個人再生をすると、給与差し押さえなどの強制執行を中止させることができます。中止された分の給料は、いったん会社にプールされるか供託されるかして、個人再生手続が終わったらまとめて債務者に支払われます。
3.個人再生のデメリット
個人再生には、以下のようなデメリットがあります。
3-1.収入要件が厳しい

個人再生をするときには、厳しい収入要件をクリアする必要があります。手続後の3~5年間に残った借金を返済しなければなりませんが、その支払いを確実にできないと認可されないからです。
サラリーマンや公務員などの安定した収入のある方、個人事業者などの収入がある方は利用できますが、主婦や無職の方、収入が少なすぎたり不安定だったりする方は利用できません。
3-2.手間がかかる
個人再生は、債務整理手続の中でも手間がかかります。必要書類もとても多いですし、手続中にもさまざまな書類の提出が必要となったり裁判所から照会や指示を受けたりするのでその都度対応しなければなりません。
弁護士に依頼せず、個人で適切に個人再生を進めるのは難しいでしょう。
3-3.費用が高額になるケースが多い
個人再生は、比較的多額の費用がかかる手続です。
東京地方裁判所管内では個人再生委員が選任されるので、その費用がかかりますし(弁護士に依頼すると15万円)、弁護士費用も、任意整理や自己破産などの他の債務整理方法よりも高額になることが多いです。
4.個人再生できる人、向いている人

以上を踏まえて、個人再生に向いているのは以下のような人です。
- 多額の借金がある
- 安定した収入がある
- 住宅ローンがあって、家を失いたくない
- 代位弁済通知が届いた
- 債権者からの督促に疲弊している
- 競売が始まった
- 債権者から裁判を起こされた
- 給与差し押さえを受けている
債務整理にはいろいろな手続があり、それぞれ向き不向きがあります。適切な方法を選択することにより効果的に借金問題を解決できるので、お困りの際には、是非とも一度弁護士までご相談下さい。