過払い金とは、過去の借金に対して支払い過ぎた利息部分のことです。過払い金が発生している場合は、相手方に請求をすることで取り戻すことができます。
今回の記事では、過払い金とは何か、どのような取引において発生するのか、メリットやデメリットについて詳しく解説いたします。
1.過払い金請求とは?
過払い金請求とは、過去の借金に対して支払い過ぎた利息部分を取り戻すための手続きです。完済している借金はもちろん、現在返済中の借金に対しても過払い金請求を行うことが可能です。
過払金請求は、債務整理の一つとして分類されていることが通常です。なお、債務整理は、その名のとおり、こちら側が負っている借金(債務)について整理をする手続きなのですが、過払い金請求は払い過ぎてしまっている借金の利息部分、すなわちこちら側が有する債権を請求する手続きとなりますので、他の債務整理手続きとは性質が異なります。
過払い金請求をして過払い部分が返ってくるかどうか、どの程度返ってくるかは取引状況等により異なります。長い間、高い利息を支払い続けていたケースでは、数百万円単位の過払い金を請求できる可能性もあります。

2.過払い金請求ができる取引
過払い金請求は、過去の借金に対し支払い過ぎた利息を返してもらうための手続きですが、過払い金が発生しているかどうかは契約条件や取引の内容等によります。
それでは、どのような取引だと過払い金が生じている可能性があるのでしょうか?
過払い金を請求するには、次のような要件を満たしていることが必要があります。
- 2010年6月17日以前から貸金取引を利用
- 過去、金利が20.0~29.2%(グレーゾーン金利)であったことがある
- 最終取引日から10年以内
2010年以前は、金利には出資法と利息制限法の2つの法律で、上限金利が定められていました。出資法上の上限金利は29.2%、利息制限法では15~20%です。
出資法上の上限金利を超えなければ刑事罰が科されなかったことから、違法ではあるけれど刑事罰は課されない金利、すなわち20%~29.2%の金利で融資をする貸金業者が多く見受けられました。なお、この20%~29.2%の金利をいわゆるグレーゾーン金利と言います。
2010年、出資法の上限金利を20%に引き下げることが決まり、これによりグレーゾーン金利で借入を行なっていた期間についての上限金利も20%で計算し直すこととなりました。この2010年以前のグレーゾーン金利で取引していた期間において、払い過ぎていた利息が存在し、これが過払金請求の対象となります。
なお、過払い金請求ができる取引について、完済していることは必ずしも要件とはなりません。現在借金が残っているとしても、法定金利に基づき引き直し計算をした結果、負債がなくなるどころか過払が生じていることが判明した、というケースもあり得ます。
昔から長く借入をされている方は、完済しているか否かを問わず、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

3.過払い請求のメリット・デメリット
過払い金請求の最大のメリットは、支払い過ぎた利息が戻ってくることです。
過去の取引において法律で定められた以上の利息を払っていた、言い換えれば法律上払う必要のないお金を払っていたわけですから、返してもらって当然と言えます。
しかし、債権者側が自ら「あなたの取引においては過払い金が生じておりました。その分を返金しますね。」と言ってくることはまずありません。こちら側から請求手続きをしなければ過払い金は戻ってこないものとお考え下さい。
また、自ら過払い金を請求した場合、相手方貸金業者から様々な理由を付けられて、本来支払ってもらえるはずの過払い金を減額されることがほとんどです。
専門家である弁護士に過払い金請求を依頼すれば、相手方に対し正当な金額を請求することができますので、ちゃんと請求をしたいのであれば手続きを弁護士に依頼することをお勧めします。

4.過払い金請求に関する疑問にお答えします
以下、過払い金請求に係る疑問点をQ&A方式でお答えします。
Q1.過払い金請求をするとで信用情報に影響はあるの?
信用情報やブラックリストについては、以下の記事で紹介しておりますのでこちらをご確認ください。

過払金請求が信用情報に与える影響について、以下説明します。
既に完済している状況で、過払い金を請求する場合
完済している状態、過払い金を請求した場合、信用情報に事故情報が載ることはありません。
負債が残っている状況で、過払い金を請求する場合
信用情報に傷が付くのはローンやクレジットカードの返済を滞納した場合や、債務整理をした場合です。
過払い金請求そのものが債務整理として扱われることはありませんが、弁護士が過払い金請求をするために介入した時点でその取引については任意整理として登録されることが大多数です。任意整理として情報が登録されれば、信頼情報に事故情報が載ったこととなります。
なお、この場合であっても、負債がなくなり過払い金が生じるようであれば手続き終了後に事故情報(登録情報)は抹消、言い換えれば信用情報が回復することとなります。
したがって、過払い金が生じているのであれば、信用情報との兼ね合いではリスクはほぼないといえるでしょう。

Q2.過払い金請求をすると、他社のクレジットカードは使えなくなるの?
過払い金請求をすることで、利用している他の(他者の)クレジットカード等は使えなくなってしまうのでしょうか?
既に完済している状況で、過払い金を請求する場合
この場合は、過払い金請求が信用情報に与える影響はほとんどないため、他社のクレジットカードが使えなくなることはありません。
負債が残っている状況で、過払い金を請求する場合
この場合は、信用情報上に任意整理で情報が登録されることがあります。この影響で、他のクレジットカードが利用停止になる可能性はあります。
Q3.過払い金請求をしていることは家族にバレる?
過払い金請求をすると家族にバレてしまうのでしょうか?
家族や勤務先に借金の事実がバレないか心配する方が多く見受けられます。特に、過払い金請求の対象となるのは、いわゆる消費者金融であることがほとんどです。クレジットカードや銀行融資はまだしも、消費者金融を使っていたことを家族に知られたくないと思う人は多くいます。
自身で過払い金請求を行なう場合、取引履歴の取り寄せ等のために貸金業者から取引履歴を取得する必要があります。基本的にこれらの書類はご自宅宛てに郵送で届きますので、ご家族と一緒に住んでいる方はバレてしまう可能性があります。
また、交渉(話し合い)で決着がつかない場合、訴訟を提起して回収を図ることとなりますが、この場合裁判所から書面が郵送されることとなりますのでやはり同居の家族に発覚してしまう可能性があります。
ご家族に一切知られたくないということであれば、弁護士を通して手続きするのがおすすめです。弁護士を代理人として手続きを進めるのであれば、債権者や裁判所からの書面が直接自宅に届くことはなくなりますので、家族バレのリスクを抑えることができます。
Q4.過払い金請求はいつまでできる?
過払い金には時効があり、最終取引日から10年とされています。大多数のケースでは、最終取引日=完済日となりますので、完済日から10年以内に請求をしなければなりません。
なお、もうすぐ最終取引日から10年経過するという場合には、時効成立を阻止する必要があります。時効については下記の記事をご確認ください。

また、過払い請求の期限に関し、もう1つ気を付けておかなければならないことがあります。それは請求相手が存在している間に回収をすることです。
過払金があったとしても、相手方が倒産してしまっては過払い金を請求することはできません。過払い金請求の相手方が小さな会社、先行きの怪しい会社である場合は、早めに手続きに取り掛かることをおすすめします。
5.弁護士に相談してみよう
グレーゾーン金利での取引が長期間あった方については、高額の過払い金が生じている可能性が高いです。
とはいえ、過払い金の有無の確認や金額の計算、実際の回収手続き(相手方との交渉。場合によっては裁判手続き)を自らの手で進めていくことはかなり大変です。手間や時間がかかりますし、ある程度の専門知識がないと相手方にうまく言いくるめられて十分な過払い金を得ることができないリスクも生じ得ます。
これらのリスク・デメリットを回避したいのであれば、まずは弁護士に相談してみましょう。なるほど六法を運営する弁護士法人 鈴木総合法律事務所でも、皆さまの気軽なご相談をお待ちしています。Zoom面談も行っているので、遠方の方や忙しい方もどうぞお気軽にお問い合わせください。


