TVのコマーシャルなどで「過払い金を回収します」といった謳い文句のCMが流れることがあります。
過払い金とは過去の借金に対して支払い過ぎた利息部分のことです。過払い金が発生している場合は相手方に請求をすることで取り戻すことができます。
なお、この過払い金は借金を返済していれば必ず生じるというものではありません。ここ数年で取引を開始しているのであれば過払い金は生じなていないといっても過言ではないでしょう。
それではどのような取引であれば過払い金が生じる余地があるのでしょうか?
今回の記事では、過払い金とは何か、どのような取引において発生するのか等について解説します。
過払い金
01.過払い金とは
過払い金とは、ある借金(負債)に対して払い過ぎていたお金のことです。債権者に対しお金を払い過ぎていた状態にあるため、過剰に支払っていた部分を過払い金として請求することができます。
また、払い過ぎていたお金に対し請求日までの利息を付することもできます。そのため取引を開始したのが昔であればあるほど請求できる金額は高額となります。
過払い金がいくら生じているのかはケースバイケースです。グレーゾーン金利(後述)で長い期間取引をしていた場合には、数百万円単位の過払い金が生じている可能性も十分にあります。
02.過払い金が発生するメカニズム
過払い金が発生するメカニズムについてみてみましょう。
2010年以前は出資法と利息制限法の2つの法律で上限金利が定められており、それぞれで上限金利は異なっていました。
- 出資法上の上限金利 :29.2%
- 利息制限法の上限金利:15~20%です。
当時は出資法上の上限金利を超えなければ刑事罰が科されませんでした。そのため、多くの貸金業者が【違法ではあるけれど刑事罰が課されない】出資法上の金利すなわち20%~29.2%の金利で融資を行なっておりました。
この20%~29.2%の金利のことをグレーゾーン金利といいます。
2010年、出資法の上限金利が20%に引き下げられることになり、併せてグレーゾーン金利での取引について過去にさかのぼって上限金利を20%として再計算することとなりました。
20%~29.2%の金利で計算されていた貸金取引を~20%に引き直して再計算することになるのですから払い過ぎていた利息が生じて当然です。この払い過ぎていた利息部分が過払い金の対象となります。
なお、グレーゾーン金利の取引を利息制限法の金利で再計算することを専門用語で引き直し計算と呼びます。
03.過払い金が発生する要件
過払い金が発生するには、元の取引が次の要件を満たしていることが必要となります。
- 2010年6月17日以前から取引があった
- 金利が20.0~29.2%(グレーゾーン金利)であった
- 最終取引日から10年以内
①②は、過払い金発生のメカニズムから当然の帰結となります。グレーゾーン金利での取引がない限り過払い金が生じる余地がないためです。
また、③は時効の問題です。最終取引日から10年経過している場合は時効(消滅時効)が成立してしまうため、過払い金を請求しても時効成立を理由として支払いを拒絶されてしまうのです。
完済していることは要件ではない
元の借金を完済していることは、過払い金発生の要件にはなりません。借金が残っている状態であっても引き直し計算をした結果、負債がなくなるどころか過払い金が生じている状態に転ずるといったことも往々にしてあります。
04.現在では過払い金が生じないケースの方が多数
過払い金は、グレーゾーン金利での取引があった場合に引き直し計算を行うことで生じる可能性があるものです。グレーゾーン金利が採用されていたのが2010年までであったことを考えると、それ以前から取引を行なっていたことが必要です。
そのため、2010年6月以降から始まった貸金取引においては過払い金が生じる余地はありません。
なぜ請求が必要なのか?
法律で定められた以上の利息を払っていた、言い換えれば法律上払う必要のないお金を払っていたわけですから、払い過ぎていたお金を返してもらうのは当然の権利です。
しかし、貸金業者側(債権者側)が自ら「あなたの取引においては過払い金が生じておりました。その分を返金しますね」と提案してくることはまずありません。請求されるまでは払いませんというスタンスでいるのです。
そのため、過払い金を支払ってもらうにはこちらから債権者に請求しなければなりません。
弁護士に任せた方が良い理由
過払い金を請求すること自体は、個人であっても行なうことは可能です。しかし、以下の点を考慮すると弁護士に任せた方が間違いがないといえます。
01.請求できる金額を計算するのが大変
どれくらい過払い金が生じているのか、現在までの利息を含めいくら請求できるのか等については債権者に取引履歴を開示してもらわないと算出することができません。また、開示された取引履歴をもとに引き直し計算を行う必要がありますが、その計算には非常に手間がかかります。
02.債権者との交渉が大変
自ら過払い金を請求した場合、相手方から様々な理由を付けて金額を減額してきます。理由としてそれらしいことを言ってくるため、真に受けてしまうと思わぬ損を被ることがあります。
03.訴訟対応が大変
債権者と交渉しても満額の支払に応じてもらえない場合は訴訟で対応するほかありません。しかし、訴訟を提起するとなると、訴状を作成する、証拠を集める、口頭弁論に出向く等の対応が必要となり、時間と労力がかかります。また、適切な法的主張ができないと裁判官が債権者に有利な判決を下すことも考えられます。
弁護士に過払い金請求を依頼すれば、上記の問題点は全て弁護士が対応してくれます。相手方に対し正当な金額を請求することができますし、適切な法的主張を行なうことも可能です。相手の言い分に飲まれずに正当な請求をしたいのであれば弁護士に手続きを依頼することをお勧めします。
04.司法書士だと140万円の壁がある
過払い金請求は司法書士に依頼することも可能です。
しかし、司法書士に依頼した場合、発生している過払い金が140万円を超えた時点で何もできなくなってしまうという欠点があります。
140万円の過払い金が生じていることが判明した時点で、債権者に対する交渉も書類の取り交わしも訴訟対応もできなくなってしまいます。こうなった場合に司法書士にできることは弁護士を紹介することくらいです。
過払い金がいくら生じているのかは計算しないことにはわかりませんが、取引期間が長い場合や取引額が大きかった場合は140万円以上の過払い金が生じることもザラです。リスクを考慮すると初めから弁護士に依頼をしたほうが良いといえるでしょう。
過払い金請求に関するQ&A
01.過払い金請求をすると信用情報に影響はでるの?
過払い金を請求することが信用情報に影響を与えることはあるのでしょうか?
既に完済している状況で過払い金を請求する場合
完済している状態、過払い金を請求した場合、信用情報に事故情報が載ることはありません。
負債が残っている状況で過払い金を請求する場合
信用情報に傷が付くのはローンやクレジットカードの返済を滞納した場合や、債務整理をした場合です。
過払い金請求そのものが債務整理として扱われることはありませんが、弁護士が過払い金請求をするために介入した時点でその取引については任意整理として登録されることが大多数です。任意整理として情報が登録されれば、信頼情報に事故情報が載ったこととなります。
なお、この場合であっても引き直し計算の結果、負債がなくなって過払い金が生じるようであれば、手続き終了後に事故情報(登録情報)は抹消されますので信用情報は回復します。
以上のとおり、過払い金を請求する上では信用情報上のリスクはほぼないといえるでしょう。
02.過払い金請求をすると、他社のクレジットカードは使えなくなるの?
過払い金請求をすることで、利用している他社のクレジットカード等は使えなくなってしまうのでしょうか?
既に完済している状況で過払い金を請求する場合
すでに完済しているのであれば過払い金請求が信用情報に与える影響はほとんどないので他社のクレジットカードが使えなくなることはありません。
負債が残っている状況で過払い金を請求する場合
先述のとおり、弁護士が介入した時点で信用情報上に任意整理で情報が登録されることがあります。任意整理で登録された場合、他社のクレジットカードが利用停止になる可能性は否めません。
03.過払い金請求をしていることは家族にバレる?
家族や勤務先に借金の事実がバレないか心配される方は多くいらっしゃいます。
特に過払い金請求の対象となるのはいわゆる消費者金融であることがほとんどです。クレジットカードや銀行融資であればまだしも消費者金融を使っていたことを家族に知られたくないと思うのは当然です。
自身で過払い金請求を行なう場合、貸金業者から取引履歴を取得する必要がありますが、この書面は自宅宛てに郵送で届くことが通常なので、家族と一緒に住んでいる場合は手続きを使用としていることがバレてしまう可能性は高いといえます。
また、交渉(話し合い)で決着がつかない場合、訴訟を提起して回収を図ることとなりますが、裁判所からの書面は自宅に郵送されることとなりますのでやはり同居の家族に発覚してしまう可能性は高いでしょう。
家族に手続きを一切知られたくないということであれば、弁護士を通して手続きするのがおすすめです。弁護士を代理人として手続きを進めれば、債権者や裁判所からの書面は弁護士事務所に届くようになります。直接書面が自宅に届くことはなくなりますので家族バレのリスクを抑えることができます。
04.過払い金に時効はあるの?
過払い金には時効があり、最終取引日から10年とされています。大多数のケースでは、最終取引日=完済日となりますので、完済日から10年以内に請求をしなければなりません。
もうすぐ最終取引日から10年経過してしまうという場合には、時効成立を阻止する必要があります。
05.相手方が倒産したらどうなる?
過払い金を請求する上で気を付けておかなければならないことがあります。それは請求相手が存在している間に回収する必要があるということです。
過払金が生じていたとしても相手方が倒産してしまっては過払い金を請求することはできなくなってしまいます。
過払い金請求の相手方が小さな会社、先行きの怪しい会社である場合は、早めに手続きに取り掛かることをおすすめします。
弁護士に相談しよう
グレーゾーン金利での取引が長期間ある場合は、高額の過払い金が生じている可能性が高いといえます。
とはいえ過払い金の有無の確認や金額の計算、実際の回収手続き(相手方との交渉。場合によっては裁判手続き)を自らの手で進めていくことはかなり大変です。手間や時間がかかりますし、ある程度の専門知識がないと相手方にうまく言いくるめられて十分な過払い金を得ることができないリスクも生じ得ます。
これらのリスク・デメリットを回避したいのであれば、弁護士に相談してみましょう。
なるほど六法を運営する弁護士法人鈴木総合法律事務所では、過払い金の請求事件についても承っております。Zoom面談にも対応しておりますので遠方の方や忙しい方もどうぞお気軽にお問い合わせください。