- 貸したお金が返ってこない
- 回収できていない売掛金がある
- 家賃を滞納されたままになっている
- 請負代金をずっと払ってもらっていない
- 未払いの診療報酬が発生し続けているが、全然回収できていない
上記のような場合、債権が「時効」によって消滅してしまうリスクが高まっています。早めに取り立てて回収しましょう。
以下では債権の「時効」と中断方法、取り立て方法を恵比寿の弁護士が解説します。
1.債権の時効とは

人にお金を貸した場合や売掛金がある場合、未払いの家賃がある場合、請負代金や診療報酬など金銭の支払い請求権はすべて「債権」の1種です。
債権とは契約やその他の法律上の理由にもとづいて相手に何かを求める権利です。上記で挙げた債権はすべて金銭支払いを求める「金銭債権」となります。
債権には「(消滅)時効」が適用されます。
時効とは、債権を行使できる状態になってから一定期間が経過すると請求できなくなる制度です。
せっかく権利を持っているのに行使しないで放置する人を守る必要はありませんし、債務者の方でも一定期間権利行使されなければ、「もはや請求されないだろう」と期待するようになります。
そこでお金を貸したり物を売ったりテナントに物件を貸したりして債権が発生したとき、早めに回収しなければ債権が時効にかかって消滅し、回収は不可能となります。
2.債権ごとの時効期間

実は2020年には改正民法が施行されて変わる予定ですが、現在では債権の種類によって異なる時効期間が設定されています。
現在の民法では、原則的な債権の時効は「10年」として、他の債権は種類によってより早く時効にかかる制度となっています。これを「短期消滅時効」と言います。
以下でその一例を示します。
2-1.1年の短期消滅時効
- タクシー料金などの運送賃
- 旅館や飲食店、娯楽施設などの宿泊料、飲食料、入場料などの債権
2-2.2年の短期消滅時効
- 弁護士や公証人などの請求権
- 卸売や小売の商人の売買代金請求権
- クリーニング店や美容院、洋裁などの債権
- 塾や家庭教師、学校の債権
- 賃金、残業代
2-3.3年の短期消滅時効
- 医師や助産師、薬剤師などの診療費、調剤費
- 工事の請負代金
- 不法行為にもとづく損害賠償請求権
2-4.5年の短期消滅時効
- 商事債権
- 退職金請求権
上記のように、現時点では1年や2年で消滅してしまう債権もあるので、債権が発生したら早めに回収することが重要です。
3.改正民法の施行後の時効期間
2020年4月1日からは、民法改正によって上記の短期消滅時効制度がなくなり、すべての債権の時効期間が一律で「5年」になります。
これまで1年や3年であった債権はゆっくり請求できるようになりますし、10年請求できた一般債権は早期に請求する必要性が発生します。
どちらにしても債権が発生したら早めに回収するに越したことはありません。
4.時効を「中断」する方法

そうはいっても、どうしても1年や2年などの短期に回収するのが難しいケースもあります。その場合には時効を「中断」させることで、債権を保全できる可能性があります。
時効の中断とは、時効の進行を停止させて経過期間を当初に巻き戻すことです。
時効期間がある程度進行していても、中断されるとまた当初からの計算となるので、中断を繰り返している限り永遠に時効を完成させずに済ませられるケースもあります(ただし除斥期間がある場合、除斥期間が経過すると債権は消滅します)。
時効を中断させる方法は、以下の3つです。
4-1.債務承認
債務承認は、債務者本人が「負債があります」と認めることです。
債務承認の方法には特に制限がないので、相手が「支払います」などと口頭で言った場合にも債務承認したことになります。また利息や元本の一部を支払うなど、債務を認めるそぶりを見せても債務承認となります。
ただし実際には債務承認の証拠をとっておかないと、後で「支払うと言っていない」などと誤魔化されるおそれがあります。
債務承認させる場合には、必ず書面の差し入れを求めるべきです。
4-2.裁判上の請求
裁判上の請求とは、訴訟や調停などの申し立てをすることです。この場合、訴訟提起時(調停申立時)に時効が中断するので、訴訟の最中に時効期間が経過しても債権はなくなりません。
ただし調停の途中に時効期間が経過して不成立になった場合には、不成立になってから1か月以内に訴訟を申し立てないと時効が成立してしまうので注意が必要です。
4-3.差押え、仮差押、仮処分
債権にもとづいて相手の資産を仮差押したり仮処分を行ったり、強制執行を行ったりした場合にも時効は中断します。
4-4.内容証明郵便による催告について

相手が債務承認をしない限り、時効を中断するには裁判や仮差押をするしかありませんが、時効の成立が差し迫っている場合には、すぐに裁判できないケースもあるでしょう。
その場合には「内容証明郵便による催告」によって時効を停止できます。
内容証明郵便による催告とは、内容証明郵便を使って相手に請求書を送ることです。これによって時効は一時停止し、その後6か月以内に訴訟を起こせば時効を確定的に中断させることができます。ただし停止できるのは6か月だけで、その期間を過ぎると時効が成立します。
また2回連続で時効の停止はできないので、6か月以内に再度内容証明郵便を送っても、さらに6か月間時効の成立を遅らせることはできません。
内容証明郵便で催告したら、早急に裁判の用意を進めて提訴する必要があります。
各種の債権を有していて時効の成立が心配であれば、まずは弁護士にご相談ください。時効成立前であれば弁護士が早急に手立てをとり、債権を保全する手続きを進めます。
いったん時効が成立してしまったら手立てがなくなりますので、お早めにご相談下さい。