- カードローンなどの借金がかさんで返済が厳しくなった
- 住宅ローンを支払うのが困難になった
- 他人の保証をしていたら本人が払わなくなって一括請求された
- 借金以外の家賃や買掛金、損害賠償金などをどうしても支払えない
- 借金しているけれど生活保護を受けたい
- 会社の経営が立ちゆかなくなったので、精算してもう一度ゼロからやり直したい
借金を返済できなくなったときには「債務整理」によって解決可能です。
債務整理には「任意整理」「自己破産」「個人再生」の種類があり、それぞれ特徴があります。
また過去に高額な利息を払いすぎていた場合、過払い金請求をして取り戻せる可能性もあります。
以下では、債務整理の種類とそれぞれの効果、手続の流れなどについて、恵比寿の弁護士が解説していきます。
1. 債務整理の種類とそれぞれの概要

債務整理にはいくつか種類があり、代表的なものは以下の通りです。
- 任意整理
任意整理とは、裁判所を通さずに借入先の債権者と個別に交渉し、利息制限法に基づき、債務の額を再計算して、払い過ぎの利息を元金に充当したり、また、将来利息をカットしてもらうことで債務額全体を減らしたり、さらに、月々の返済額を減らすことで現在の支払よりも負担を軽くしてもらう手続です。
任意整理は、あくまで裁判所を通さない手続で(各債権者との話し合いによる解決)、任意整理の対象となる債権者を自身で選択できるため、自動車を残したり、住宅を残したりと柔軟な解決ができます。他方、法律によって強制的に借金を減額できず、返済条件も債権者との合意が必要になるため、債権者が応じなければ、任意整理することができず、他の債務整理(自己破産や個人再生)の手段と比べると負債の減額や月々の支払負担が軽減される効果は弱めです。
- 個人再生
個人再生とは、法律の規定に基づき、裁判所を通じて債務を減額する手続です。民事再生法によって強制的に債務を減らせるので、任意整理より月々の支払負担の軽減効果が高い一方、手続が厳格に定められています。また、任意整理と異なり、すべての債権者を対象とする必要があり、自動車ローンが残っていれば、自動車ローンの債権者も手続に含めなければならず、自動車を手放さなければならなかったり等柔軟な解決ができない場合があります。
- 自己破産(個人)
自己破産には、個人が利用する場合と法人が利用する場合があります。
破産とは、財産を整理・清算する手続であり、免責とは、破産しても残った借金の支払責任を免除してもらう手続です。
個人の場合、破産するだけでは借金の支払責任が免除されるわけではありませんので、免責手続をとり、借金の支払責任を免除してもらう必要があります。
自己破産手続をとることで税金等一部の負債を除くすべての借金の支払責任がなくなりますので、任意整理や個人再生と比べ、経済的更生という点では一番効果が高いです。他方、自己破産手続は、法律によって強制的に債務の支払責任を免除することとなるため、手続が厳格に定められており、すべての債権者を対象とする必要があり、また、法律によって認められた一定額以上の財産はすべて残すことができないなどのデメリットがあります。
- 自己破産(法人)
法人が自己破産をする場合、法人(法人格)は消滅しますので、個人の場合と異なり、破産手続(財産の整理・精算)すれば、手続はすべて終了となり、免責手続はありません。なお、法人が自己破産した場合、税金を含む債務の支払責任がなくなりますので、経営者の方は、資金繰りの負担や会社経営から解放されますので、再出発が図れます。
会社が自己破産しても会社代表者の個人財産がなくなることはありませんが、代表者が会社の債務の連帯保証人になっていることが多いため、代表者が保証している負債総額によっては、法人の自己破産と代表者個人の自己破産を同時に行う必要があるケースが多いのが現状です。
- 過払い金請求
債務整理の一種として「過払い金請求」があります。過払い金請求とは、過去(2008年頃より前)に消費者金融(いわゆるサラ金)やクレジットカードのキャッシング(現金の借入であり、ショッピングの利用は含みません)を利用されていて、利息制限法による法定金利(15%~20%)を超えて借入していた方で、現在借金を返し終わった方が(ショッピングの利用部分を含めて)、その払いすぎた利息を取り戻す手続です。
過払い金には10年の時効があるので、取り戻したいなら早めに手続をする必要があります。
以下でそれぞれの手続について、より詳しくご説明をしていきます。
2.任意整理について

2-1.任意整理の効果
任意整理をすると、借金の「利息」を全額カットできるケースが多数です。債権者との和解後に発生するはずの「将来利息」は基本的に全額カットできますし、また、弁護士が受任した後和解が成立するまでの経過利息もカットできることもあります。
つまり任意整理をすると、借金の総額が確定され、毎月決められた返済額を毎月決められたとおり、3~5年間返済を継続すれば(「現在の元本額」ないし「現在の元本額+和解成立時までの利息」)、借金を完済できます。
任意整理の場合、返済期間は残債務の総額及び債権者の対応にもよりますが、おおむね3~5年間になります。また、返済方法は従前の口座引き落としやカードによる返済ではなく、債権者が指定する金融機関の口座へのお振込みとなります(振込手数料はご自身の負担となります)。なお、通常、返済が2回以上(あるいは2回分以上)遅れた場合、遅延損害金をつけて一括で返済することになります。
2-2.任意整理の流れ
① 受任通知を発送
まずは債権者に対し、弁護士が受任通知を発送します。この時点で債権者から債務者本人に対する直接の督促(電話や郵便など)が止まります。
② 取引履歴の開示を受ける
債権者から、契約当初から現在に至るまでのすべての取引履歴の開示を受けます。
③ 利息制限法に引き直し計算
弁護士が取引履歴をもとにして「利息制限法」に引き直し計算を行い、債務の総額を確認します。その際、過去に利息制限法に基づく法定金利を超えて支払をされていた場合、超過利息を借金に充てることで借金が大きく減額されたり、場合によって、借金がなくなったうえに、過払い金が発生し、債権者からお金を返してもらえることがあります。
④ 返済計画案を作成して送付する
再計算によって返済すべき金額が明らかになったら、それをもとにして借金の返済計画案を作成し、債権者宛に送付します。
⑤ 和解交渉を行う
その後、債権者と返済方法(月々の支払金額や支払開始時期、期間などの返済条件)について話し合いを行います。
⑥ 合意して支払開始
合意ができたら「合意書(和解書)」を作成します。その後、相手の指定した方法によって返済を開始します。
完済した時点で借金から解放されます。
2-3.任意整理のメリット

任意整理には、以下のようなメリットがあります。
柔軟な解決ができる
任意整理は、裁判所を介さず当事者同士が直接話し合って解決する手続なので、柔軟な解決が可能です。どこまで借金を減額するのか、支払期間を何年何か月にするのかなども自由に決められますし、期間の制限などもありません。手続にあたり、必要な書類も少ないです。
借金の返済が楽になる
任意整理をすると、借金の支払総額が確定しますので(将来利息のカット)、完済までの期間が早くなります。また、月々の返済金額が減りますので、借金の返済が楽になります。今の返済が厳しいなら、早めに任意整理しましょう。
弁護士が介入すると支払の督促がなくなる
貸金業法では、弁護士などの専門家が債務整理に介入した後は、債権者は債務者に直接督促してはならないとされています。そこで弁護士が介入すると、カード会社などからの支払の督促はなくなります。これまで督促が続いて疲弊していた方は、早めに任意整理することをお勧めします。
特定の債権者を選んで整理できる
任意整理では、特定の債権者を選んで債務整理することが可能です。そこで保証人がついている借金を外して整理すれば保証人に迷惑をかけずに済みますし、また、自動車ローンを外して任意整理すれば車を回収されずに済みます。また、法的手続はありませんので、財産を失うこともありません(ただし、自動車ローンの債権者を任意整理の対象とした場合、自動車は引き揚げられます。)。
2-4.任意整理のデメリット

任意整理には、以下のようなデメリットもあります。
負債を大きく減額できない
利息制限法を超過した取引がない限り、元本は減額の対象になりませんので、借金額を大きく減額することは難しいです。また、借金額が大きくなりすぎている方は、月々の返済額が現状より大きくなってしまい、任意整理によっては解決できない可能性が高くなります。
返済が必要
任意整理して借金が残った場合、3~5年間程度の返済が必要になります。途中で返せなくなったら債権者から遅延損害金をつけたうえで一括払請求をされたり、また、訴訟をされたりする可能性があり、再度債務整理のやり直しになってしまいます。さらに、返済を継続できるだけの、ある程度の収入がある人しか利用できません。
協力してくれない債権者の存在
任意整理は債権者と直接交渉する手続なので、債権者が話し合いに応じてくれることが前提となります。まったく協力してくれない相手の場合、任意整理では解決できません。また、債権者によっては現在の勤務先を明らかにする必要となる場合があります。
ブラックリスト状態
任意整理に限りませんが、債務整理をすると「個人信用情報」に事故情報が登録されて、クレジットやローン、割賦契約を一切利用できなくなります。いわゆる「ブラックリスト状態」です。
任意整理後のブラックリスト状態は5年程度継続することが多いので、その間は借入れに頼らない生活が必要となります。
2-5.任意整理を検討すべき状況
以下のような状況であれば、任意整理を検討してみて下さい。
- カードローンやショッピング利用による借金がかさんでいる
- 保証人に迷惑をかけずに借金の整理をしたい
- 車のローンがあるが、車を手放したくない
- 現在の支払金額だと返済は厳しいが、もう少し返済額が減ったら返済を継続していける
3.個人再生について

3-1.個人再生の効果(小規模個人再生及び給与所得者等個人再生共通。なお、効果が異なる場合は個別に記載してあります。)
個人再生をすると、借金やその他の負債を大きく減額できます。個人再生の最低弁済額(①)は、以下の通りです。
- 借金が100万円未満…そのまま
- 借金が100万円以上~500万円未満…返済額は100万円に減額
- 借金が500万円以上~1500万円未満…返済額が5分の1に減額
- 借金が1500万円以上~3000万円以下…返済額は300万円に減額
- 借金が3000万円を超えて~5000万円以下…返済額は10分の1に減額
ただし上記を超える財産を持っている場合、財産評価額までは返済が必要です(清算価値保障の原則(②))。
なお、給与所得者等個人再生の場合、可処分所得2年分(実際の可処分ではなく、裁判所の基準による算定された可処分所得の2年分になります。)が上記①及び②を上回る場合、可処分所得の2年分の返済が必要になります。
個人再生後、減額された借金を返済していく必要がありますが、返済期間は原則として3年、それが難しければ最長5年まで伸長することが可能です。
また個人再生の大きな特徴として「住宅資金特別条項」があります。これは住宅ローンがある場合、(原則として住宅ローン債務者が居住している)住宅を残したうえで、住宅ローン返済は従前の約定どおり支払を続け、他の借金を減額し、住宅を残すための特則です。
住宅ローンを滞納している場合には、住宅ローンをリスケジュールして返済可能な条件に変更することなども可能です。
3-2.個人再生の流れ
① 受任通知を発送
まずは弁護士が各債権者宛に受任通知を発送します。これにより、債権者から債務者への直接の督促が止まります。
② 必要書類を集める
個人再生では非常に多くの書類が必要ですので、申立て前に書類を集め必要があります。
具体的な書類については弁護士が指示をしますので、依頼者の方にはそれに従って集めていただきます。作成すべき書類は弁護士が作成して用意します。
③ 申立て
書類や申立書などの準備が整ったら、弁護士が裁判所に個人再生手続開始の申立てを行います。
④ 個人再生委員の選任と面談、積立金(予納金)支払開始
個人再生手続開始決定があると、個人再生委員が選任されます。個人再生委員は、個人再生の手続に関与し、裁判所に代わり債務者を監督し、開始決定や再生計画案等についての意見を裁判所に報告をします。通常、弁護士が選任されます。
個人再生開始決定後、速やかに個人再生委員と面談を行い、必要事項の聞き取りなどが行われます。なお、東京地方裁判所では必ず再生委員が選任されますが(再生委員の報酬15万円がかかります。)、他の裁判所では選任されないこともあります。
その後、分割で個人再生委員の予納金の支払を開始します。
⑤ 個人再生手続開始決定
予納金の支払が始まると、個人再生委員の意見も聞いた上で裁判所が「個人再生手続開始決定」を下します。これにより正式に個人再生手続が始まります。
⑥ 債権調査と債権額確定の手続
申立後に裁判所が改めて債権調査を行い、債権者から改めて債権額の届け出があります。それに対し、債務者側から異議申立てをしたり、債権者側から評価申立て等の手続を経て、最終的な債権額を確定します。異議や評価申立てがなければ、債権者による届出額がそのまま債権額となります。
⑦ 再生計画案の提出
確定した債権額をもとにして、返済すべき借金の額と返済方法を検討し、債務者が再生計画案を作成し、再生委員の確認を経て、裁判所に提出します。
⑧ 書面決議(小規模個人再生の場合)
提出された再生計画案を裁判所が債権者に送付して、意見を募ります。債権者の頭数の半数以上、かつ、再生債権総額の過半数の債権額に相当する債権者の反対しなければ、再生計画案は認可されます。
なお、給与所得者等個人再生の場合、書面決議はありません。
⑨ 支払開始
再生計画案が認可されて確定すると、返済を開始します。完済すると借金の支払義務がなくなります。
3-3.個人再生のメリット

借金を大きく減額できる
個人再生の大きなメリットは、借金を大幅に減額できることです。上記のように、100万円や5分の1~10分の1程度にまで減額できるケースが多く、任意整理で解決できない方も、個人再生をすれば解決できる可能性があります。
住宅ローンがあっても家を守りやすい
個人再生の住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンをリスケジュールしたり、住宅ローンをそのままのこして他のカードローンなどを減額したりして家を守ることができます。
既に保証会社によって代位弁済されていた場合も、代位弁済後6か月以内なら代位弁済前の状態に戻し、家を維持できます。競売開始後でも住宅ローン特則を利用して競売中止の申立てをすることで、家を守れます。
財産がなくならない
一般に誤解されているケースもありますが、破産手続と異なり、個人再生の場合、必ずしも財産の処分が必要ではなく、預貯金や生命保険、株などすべての財産の価値相当分を債権者への返済に充てることで財産を残したまま借金を減額できます。
差押えを止められる
給与差し押さえを受けているケースなどで個人再生の開始決定を受けることで差押えを止めることができます。その場合、個人再生後に差押え対象の給料をまとめて受けとることができます。また個人再生の開始決定後は新たな差押え申立てが不可能になるので、差押えを受けそうな場合にも有効です。
弁護士に依頼すると督促が止まる
任意整理と同様、弁護士に個人再生を依頼すると債権者からの督促が止まります。
3-4.個人再生のデメリット

手続が厳格
個人再生は裁判所を介した手続であり、必要書類が多く書面提出期限なども定められ、手続は厳格になります。手間がかかるのがデメリットです。
収入要件が厳格
個人再生では、本当に返済を継続していけるのか裁判所が厳格に判断するので、確実に返済していけるだけの充分な収入がないと利用できません。
車がなくなる可能性
車のローンを返済中の方が個人再生をすると、車のローンの債権者を個人再生手続の債権者に含める必要がありますので、自動車を引き揚げられる可能性があります(所有権留保がついているケース)。
保証人に迷惑をかける可能性
保証人つきの借金のある方が個人再生をすると、保証人に一括請求されて迷惑をかける可能性が高くなります。
限度額がある
個人再生できるのは負債総額が5000万円以下の場合であり、それを超えるケースでは利用できません(ただし住宅ローン特則を利用する場合の住宅ローン債務額は除きます)。
官報公告
個人再生をすると、政府の発行する「官報」に住所や氏名、個人再生に関する情報が掲載されます。このことを「官報公告」と言います。
ブラックリスト状態になる
個人再生の場合でも、ローンやクレジットカードを利用できなくなる「ブラックリスト状態」となります。期間は任意整理より長く、5~10年程度です。
3-5.個人再生を検討すべき状況
- カードローンなどで多額の借金がある
- 住宅ローンがあるが、家を失いたくない
- 差し押さえ予告を受けて裁判をされた
- すでに差押えを受けている
- 任意整理に失敗した
上記のような状況なら、個人再生を検討してみてください。
4.自己破産(個人)について

4-1.自己破産(個人)の効果
個人が自己破産をすると、負債をすべて帳消しにしてもらえます。このことを免責と言います。免責の対象になるのは以下のような負債です。
- カードローン
- 消費者金融の借入
- クレジットカードのキャッシング、ショッピング
- 買掛金
- 損害賠償債務(一部は除く)
- 家賃
- 光熱費(一部は除く)
- 立替金
- 保証債務
- 奨学金
ほとんどどのような負債もすべて無くしてもらえるので、効果は絶大です。
ただし自己破産をすると、生活に最低限必要な分を超過する財産が失われます。残せる財産の基準は各地の裁判所によっても多少異なりますが、総額99万円までとされているケースがほとんどです(ただし、東京地裁の場合、現金ならば99万円、現金以外の預貯金や生命保険の解約返戻金などは合計各20万円以下なら現金99万円の他に残すことができます。)。つまり、100万円弱までであれば資産を維持できても、それ以上になると財産が失われるということです。
また自己破産には「免責不許可事由」があります。該当する事情があると免責を受けられず、借金や負債がそのまま残ってしまう可能性があります。たとえば浪費やギャンブルが典型的な免責不許可事由となっています。
ただし、免責不許可事由があっても、免責を相当とする事情があれば、裁判所の判断で裁量免責を受けることができます。
4-2.個人の自己破産には2種類がある
個人の自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止は、財産があまりない人や特に重大な免責不許可事由のない人のための簡易な破産手続です。
もう1つが管財事件です。財産がたくさんある人や重大な免責不許可事由がある人などのケースで選択されます。「破産管財人」が選任されてその監督下において手続が進んでいきます。
破産法上、あくまで管財事件として処理するのが原則であり、同時廃止は例外的な場合です。
4-3.自己破産(個人)のメリット

借金や負債が(ほとんど)すべてなくなる
自己破産の一番のメリットは、借金やその他の負債がすべてなくなることです。一般のサラ金やカードローン、住宅ローンやクレジットカード、車のローンや奨学金などはすべて帳消しになります。自己破産後をすると、本当の意味で「ゼロ」から再スタートを切れます。
ただし税金や健康保険料、罰金などの公的な支払や養育費などの支払義務は免責の対象外です。
差押えを止められる
既に給料などの差押えを受けている方は、自己破産をすると差押えを止めることができます。また自己破産の手続開始決定後は新たな差押えができなくなるので、差押えの予告を受けているケースでも有効です。
債権者からの督促が止まる
自己破産を弁護士に依頼すると、個人再生や任意整理と同様に、その時点で督促が止まります。
4-4.自己破産(個人)のデメリット

一方自己破産には以下のようなデメリットがあります。
財産がなくなるケースがある
自己破産をすると、一定以上の財産はすべて失われます。不動産を所有し続けることは不可能なので、破産者名義の家があったら住宅ローンの有無にかかわらず、必ず失われると考えましょう。
なお財産がなくなるのは「管財事件」のケースであり、同時廃止の場合にはそのまま財産を保有できます。
手続が厳格
自己破産は裁判所を介した手続なので手続が厳格であり、必要書類も多数です。ただし裁判所が同時廃止で手続を進めてくれた場合、同時廃止の場合、免責不許可事由がない場合になりますので、手続が簡略化されており、比較的簡単に免責がおります。管財事件の場合、何度か債権者集会が開かれたり管財人とのやり取りがあったりするので、手間と時間がかかります。
官報公告
自己破産でも個人再生と同様に、官報公告が行われます。
ブラックリスト状態
自己破産をした場合にも個人信用情報に事故情報が登録されてブラックリスト状態になります。期間は個人再生と同様、手続後5~10年間程度です。
保証人に迷惑をかける
自己破産でも対象とする債権者を選べず全員を対象にしないといけないので、保証人がついている借金がいる場合には保証人に一括請求されて、迷惑をかけてしまいます。
4-5.自己破産(個人)を検討すべき状況
- 借金額が大きすぎて返済できない
- 事業や投資に失敗して莫大な借金が残った
- 支払能力がないので一切返済できない
- 財産がない、少ない
- 生活保護を受けたい
- 生活保護受給中に借金してしまった
- 給与差押えを受けて困っている
- 差し押さえ予告を受けている
5.自己破産(法人)について

5-1.自己破産(法人)の効果
法人とは、株式会社などの会社や財団法人、社団法人などの「法人格」を持つものです。
代表的な法人は、株式会社や有限会社、合資会社などの会社です。
法人が自己破産をすると、法人が所持している資産と負債を清算します。つまり換金した資産によって支払えるだけの負債を支払って法人(法人格)が消滅しますので、個人の場合と異なり、免責手続がありません。
会社経営が苦しくなって債務超過となったり支払不能となったりしたとき、自己破産をすると会社を清算して経営者は苦しい経営から解放されます。
会社が破産すると会社は消滅するので、その会社自身が新たに別事業を行うことなどはできません。
ただ代表者個人は免責されれば、破産者ではなくなりますので、新たに別の会社を設立して別の事業(会社を興す)を行うことなどが可能です。
5-2.個人と法人の自己破産の違い
個人の自己破産と会社の自己破産にはどのような違いがあるのか、主なポイントを確かめていきましょう。
会社が消滅する
会社が破産すると会社は消滅し、商業登記も抹消されます。個人であれば破産しても住民票などはそのままで存在を消されることはありませんから、ここは根本的な違いと言えます。
免責がない
会社破産の場合、破産によって会社は消滅するので「免責」を検討する必要がありません。
一方個人の場合には、破産後も生きて行く必要があるので、借金を帳消しにするための「免責決定」が必要です。
会社が破産しても個人の資産はなくならない
会社が破産する場合、主に手続を進めるのは経営者や役員などの関係者です。ただ会社が破産しても、失われるのは会社名義の資産だけであり、申立てに関与している経営者個人の資産が失われることはありません。
会社が破産して消滅したら会社の税金の支払も不要となるので、破産後に元の経営者が会社の税金を支払う必要もありません。
これに対し、経営者個人が破産すると経営者個人の財産を処分する必要がありますし、経営者個人の税金は免責の対象にならないのでの税金支払義務が残ります。支払わないと差押えを受ける可能性などもあります。
管財事件のみ
会社の破産手続には管財事件しかありません。財産が少額であっても同時廃止によって簡易に手続を進めることは不可能です。
5-3.自己破産(法人)のメリット

経営から解放される
会社が破産すると、経営者が苦しい会社経営から解放されることが何よりのメリットです。
会社の経営状態が悪化してくると、経営者は日々対策に負われ、精神的にも追い詰められます。支払ができるかどうか心配になって不眠状態となる方も多いですし、夜逃げや自殺を考えるケースもあります。
自己破産をしてしまえば、会社自身が消滅するので経営者は会社経営に関与する必要がなくなり、すべてから解放されて自由になれます。
新たなスタートを切れる
会社を破産させれば会社の負債も消滅しますし、税金支払義務もなくなります。新たに就職したり事業を始めたりして、人生の新たなスタートを切ることが可能です。
家族も安心できる
会社経営状態が悪化してきたら、自分だけではなく家族にも大きな負担をかけるものです。
家族名義で借金してしまう方もいますし、家族を夜逃げに巻き込む経営者もいます。
破産すればそのようなことをしなくても借金問題を解決できて、家族に迷惑をかけることもありません。
弁護士が介入すると取り立てが止まる
会社破産の場合でも、弁護士が介入すると債権者からの会社への直接の取り立てが止まります。弁護士が受任通知を送付してもしつこく督促してくる悪質な債権者に対しては、警告書を送ったり仮処分を行ったりする対処方法もとることができます。多くの取引先や借入先から取り立てが来て困っているなら、破産が有効な解決方法となります。
差押えを止められる
会社の場合にも、破産をすると差押えを止めることができますし、新たな差押えをすることができなくなります。
5-4.自己破産(法人)のデメリット

会社がなくなる
法人が破産すると、その法人はこの世から消滅します。せっかく手塩に育ててきた会社がなくなることはしのびないと感じる経営者の方が多いので、この点はデメリットと言えるでしょう。
資産がなくなる
会社が破産すると、会社が所持していた財産はすべてなくなります。不動産や現金預金、株式などの有形資産だけではなく、特許や商標などの知的財産権、法人名義の許認可関係、ブランドなどの無形資産もすべて失われることになります。
5-5.法人が自己破産するときの注意点
法人が自己破産するとき、代表者が個人保証しているケースでは注意が必要です。この場合、法人が破産することにより、代表者個人に督促が来てしまうからです。
支払を免れるためには、代表者個人も一緒に破産する必要があります。そうすると、代表者の個人資産はなくなりますし、ブラックリスト状態になるなどのデメリットも発生します。
5-6.自己破産(法人)を検討すべき状況
- 会社が債務超過になっている
- 負債が大きすぎて支払ができない
- 苦しい会社経営から解放されたい
- 家族や取引先に迷惑をかけたくない
- 会社を清算して人生をやり直したい
上記のような状況であれば、お早めに弁護士までご相談ください。
6.過払い金請求について

6-1.過払い金請求の効果
過払い金請求は債務整理の一種に位置づけられますが「借金の整理」とは異なる効果を持ちます。過去に払いすぎた利息を取り戻す手続であり、今の借金を整理するものではないからです。
2008年頃より前、利息制限法を超過する利率で貸付をしていた業者が数多く存在しました。しかし最高裁によって利息制限法を超過する利息は払う必要がないと判断されたので、払いすぎ利息を取り戻せるようになりました。それが過払い金請求の仕組みです。
過払い金請求によって実際に返ってくる金額はケースバイケースです。長期間高額な利息を支払続けていた方は多額の利息が返ってきますし、そうでない方は少額です。多い方の場合、100万円や200万円以上の返還金を受けられるケースもみられます。
なお過払い金請求は、完済しているケースだけではなく現在借金返済中の方でも可能です。
6-2.過払い金請求の流れ
① 受任通知の発送
まずは弁護士が受任通知を発送します。
② 取引履歴の取得と利息制限法引き直し計算
業者から、契約当初から現在に至るまでの取引履歴を取得し、それを利息制限法に引き直し計算して過払い金の金額を算出します。
③ 過払い金請求
業者に対し、過払い金請求書を送付して返還請求を行います。
④ 交渉
過払い金の返還方法について交渉をします。このとき相手から減額を主張されるケースが多いです。
⑤ 和解と返金
交渉によって合意できたら和解して、過払い金の返金を受けます。
⑥ 過払い金請求訴訟
相手が返金に応じないケースや大幅な減額を申し出て合意が困難なケースでは、過払い金請求訴訟を起こして回収する必要があります。
6-3.過払い金請求のメリット

過払い金請求のメリットは、過去に払いすぎた利息を取り戻せることです。本来払う必要がなかったものですから取り戻せるのは当然ですが、過払い金請求をしないと返してもらえないので、手続をとるメリットは大きくなります。
返ってきた過払い金には基本的に税金もかからず、自由に使うことができます。
6-4.過払い金請求のデメリット

過払い金請求には、特段のデメリットはありません。他の債務整理と異なりブラックリスト状態になることもありませんし、官報公告も行われません。
手続をするのが面倒というくらいですが、それも弁護士に依頼すれば解決できる問題です。
6-5.過払い金請求の時効について
過払い金請求を行うときには、時効に注意が必要です。過払い金請求権は「完済してから10年以内」に請求・回収しないと時効消滅してしまうからです。
またいったん完済して再度借り直した場合、時効の起算点がずれて時効成立が早まる可能性もあります。
過去にサラ金やクレジットカードのキャッシングを利用していた方は、早めに手続をしましょう。自分では過払い金が発生しているかどうかわからない場合、弁護士が判断しますのでお気軽にご相談下さい。
6-6.過払い金請求を検討すべき状況
- 過去に消費者金融(アコム、プロミス、アイフル、レイクなどの大手、町の中小の金融業者)を利用していた
- 現在も消費者金融を継続利用している
- 過去にクレジットカードを使ってキャッシングしていた
- 過去から現在に引き続いてキャッシングし続けている
- 昔カードやサラ金会社に支払をしていたことがあるが、どういった取引かよくわからない
借金問題で苦しんでいる場合、個人でも法人でもこれ以上耐え続ける必要はありません。また過去に利息を払いすぎたのであれば、取り戻す権利があるのですからきっちり回収すべきです。
債務整理には自分一人では対処できないのが一般的です。弁護士が代理で手続をすすめ、問題解決までこぎつけますので、お気軽にご相談下さい。