時効が成立していれば借金ゼロ!?消滅時効の成立要件や時効の援用について解説!!

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弁護士 鈴木 翔太
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民法には時効という制度があります。

時効とは『ある出来事から一定の期間が経過した事実状態を尊重し、今の状態が法律的に正当でないとしてもこれを正当な法律関係と認めること』を言います。簡潔に言い換えれば『一定期間継続した事実があればその状態を正しいものとして認めましょう』ということです。

この民法上の時効は取得時効と消滅時効の2種類に大別され、消滅時効は一定期間請求をしなかった場合にその請求権が消滅してしまう制度です。借金やクレジットの債務を負っている方はこの消滅時効が気になっている方も多いのではないのでしょうか?

今回の記事では、消滅時効の成立要件、消滅時効の援用等について改正民法の内容を含め弁護士が解説します。

時効

01.時効とは

民法においては時効という制度が設けられております(民法第144条~第169条)。

時効とは『ある出来事から一定の期間が経過した事実状態を尊重し、今の状態が法律的に正当でないとしてもこれを正当な法律関係と認める制度』のことです。簡潔に言い換えれば『一定期間継続した事実があれば、その事実が本当は正しくなくても正しいものとして認めまてあげましょう』ということです。

このとおり、時効は対象となる権利に対し非常に強い効果を及ぼすものとなっております。

02.時効制度の趣旨

時効という制度はなぜあるのでしょうか?それは、法律関係の安定を図るためです。

「実際の権利関係」と「事実とは異なる一定の期間継続している事実関係」が併存してしまうことは好ましくありません。当事者はもとより関係者にとっても不都合が生じてしまう(可能性がある)ためです。

法律の格言の一つに「権利の上に眠るものは保護に値しない」というものがあります。行使できる権利をいつまでも行使しない者は保護する必要がないという考えです。

ここで「実際の権利関係」と「一定の期間継続している事実関係」を比較した場合、前者は行使できる権利(行使されうる権利)が放置されつづけているとみることができます。時効の制度はこの点を具現化したものであり、権利行使を放置した者の犠牲の上で、一定の期間継続した事実関係を事実として認めるものとなっております。

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03.2種類の時効

民法上の時効は、取得時効消滅時効の2つに大別されます。

取得時効

取得時効は、一定期間、所有の意思をもって他人の物を所有した場合に、その物の所有権を取得できる制度です。

たとえば、Aさんが、Bさん所有の土地を自分の土地であると信じて(所有の意思を持って)住み続けた場合、一定の期間経過後にその土地の所有権を取得することができます。

実際の事実関係(法律上の権利関係)では土地はBさんのものですが、Bさんが一切の権利の行使をしなかった場合には、一定期間継続した事実(Aさんが所有の意思をもって住み続けた事実)を保護し、Aさんが土地の所有権を取得することとなります。

消滅時効

消滅時効は、一定期間行使されなかった権利を消滅させる制度です。権利行使できるにも関わらず行使されなかった権利については保護に値しないということで、その権利を消滅させます。

たとえば、Xさんが貸金業者であるY社からお金を借りているケースにおいて、XさんがY社に対し一定期間返済せず、Y社もまたXさんに対し一切請求していなかった場合、長い間返済も請求もなかったという事実関係を保護し、Y社がXさんに対し債権を有しているという事実関係を消滅させることとなります。

負債(債務)と消滅時効

上述のとおり、民法上の時効には2種類ありますが、本記事では消滅時効にスポットを当てて解説していきます。

繰り返しとなりますが、消滅時効は、一定期間行使されなかった権利を消滅させる制度です。先に挙げた例を再度確認しましょう。

Xさんが貸金業者であるY社からお金を借りているケースにおいて、XさんがY社に対し一定期間返済せず、Y社もまたXさんに対し一切請求していなかった場合、長い間返済も請求もなかったという事実関係を保護し、Y社がXさんに対し債権を有しているという事実関係を消滅させることとなります。

仮にXさんがY社から100万円を借りていたとしても、消滅時効の成立によりY社の債権が消滅することとなりますので、XさんはY社に対し100万円の返済をする必要がなくなるということです。

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時効制度と改正民法

消滅時効にかかる条文を見てみましょう。

【現行民法(改正民法)】

第166条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一.債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二.権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2.債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3.前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

【改正前民法】

第166条
1.消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2.前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

第167条
1.債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2.債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

民法は2020年4月1日に大きく改正されており、これに合わせて時効制度も大きく変わりました。

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2020年4月1日以降に発生した法律関係については改正民法が適用され、それより前に発生した法律関係については改正前民法の規定が適用されます。

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消滅時効の成立要件

負債を負っている側(債務者側)にとっては、負債の存在を消滅させるという非常に強力な恩恵を受けることができる消滅時効ですが、消滅時効は成立するためには以下の要件を満たす必要があります。

  1. 一定の期間が経過していること
  2. 時効の進行が妨げられていないこと

以下、2つの要件について確認しましょう。

一定の期間が経過していること

一つ目の要件は、消滅時効の期間が経過していることです。この期間は、対象となる債権の発生時期に応じて変わります。

01.2020年4月1日以降の場合

2020年4月1日以降に発生した債権については改正民法が適用され、以下のとおりとされます。

  • 債権者が請求できることを知ってから5年(主観的起算点)
  • 債権者が請求できる状態になってから10年(客観的起算点)

主観的起算点から5年、または客観的起算点から10年のどちらかが成立した時点で債権が消滅することとなります。

借入やクレジット等の場合、契約時に約定返済日を取り決めますが、この約定返済日が請求できることを知った日となりますので、約定返済日の翌日から5年を経過すると消滅時効が成立します。最後の返済日の翌日から5年を経過した場合、消滅時効が成立しているとお考えいただいて結構です。なお、貸金やクレジット債務の場合は、客観的起算点が主観的起算点よりも早く到来することはないので、10年を考慮する必要はありません。

02.2020年4月1日より前に発生した債権の場合

2020年4月1日より前に発生した債権についての時効は、債権の種類によります。

  • 銀行や貸金業者、カード会社の債権は5年
  • 信用金庫や学生資金機構等の債権は10年

両者の違いは、営利目的であるか否か(商事債権であるか否か)です。改正前民法における消滅時効の時効期間は10年なのですが、商事債権である場合は短期消滅時効の5年が適用されます。そのため、前者は5年、後者は10年となっているのです。

なお、改正前民法においては、上記以外にも短期消滅時効にかかる債権があります。本記事では説明を割愛しますが、気になる方は下記リンクを参照ください。

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時効の進行が妨げられていないこと

2つ目の要件は、時効の更新時効の完成猶予となる行為が行なわれていないことです。

01.時効の更新

時効の更新とは、所定の行為がなされることで、進行していた期間を巻き戻す効果、すなわち経過した期間がリセットされることです。ストップはない点にご注意ください。改正前民法では「時効の中断」と呼称されていました。

時効の更新の方法としては、以下の3つがあります。

  1. 債務の承認
  2. 判決、仮執行宣言付支払督促
  3. 強制執行

①の債務の承認とは、債務者本人が「負債があります」と認めてしまうことです。

債務者自身が負債の存在を認めるのであればその時点で時効の進行をリセットさせていいよね、ということになりますので、債務の承認は時効の更新事由とされています。

この債務の承認は、負債の存在を認めるような行為を行なうことで成立します。たとえば「あとで払います」と債権者に口頭または書面で回答した場合も債務を承認したことになりますし、利息や元本の一部を支払うなど債務を認める行為をした場合も同様です。

②は、支払督促や貸金返還請求訴訟といった裁判所を介した法的手続きにより得られるものです。債務名義と呼ばれることもあります。

一定の期間経過すれば債権を消滅させることができるとなれば、債務者は支払いを免れるために逃げ続けるかもしれません(音信不通、雲隠れ)。逃げまわることで債権を消滅させられてしまうとなれば債権者側にとっては非常に不利です。

そこで、債権者には支払督促や貸金返還請求訴訟等の裁判上の請求が認められており、この手続きで確定判決や仮執行宣言付支払督促を得ることができれば、時効を更新することができます。

公示送達

支払督促や訴訟をするためには、相手方(債務者)の住所が必要となりますが、必ずしも相手方の住所を確認できるわけではありません。こと多重債務者の場合、様々な請求から逃げるために住民票を異動させないことも往々にしてあるためです。

債権者は債務者の現在の居所を特定することができない場合、訴状や支払督促が届くこともないように思えます。そのため、自分の手元に裁判所から書面が届いたことは無いから訴訟されていないはず、とお考えになる方が中にはいらっしゃいます。

しかし、この考えは誤りです。

債権者は、相手方(債務者)の住所が不明であることを証明できた場合には公示送達の制度を利用することができます。公示送達とは、裁判所の掲示板に文書を一定期間掲示することで相手方にその文書が送達されたとみなす制度のことを言います。送達されたとみなすわけですから、その後も手続きは進み、確定判決等を取られてしまうこととなります。

住民票を異動させずにいたから手元に訴状は届いていない、時効の更新はなされていないと考えていても、実は公示送達により手続きは進行していたということも往々にしてありますのでご留意ください。

10年の時効期間

②の場合、更新後の時効期間は10年となります。5年ではないことにご注意ください。

たとえば2020年8月から時効期間が進行していた場合において、2024年5月に支払督促を打たれ2024年7月に仮執行宣言付支払督促が出されてしまった場合、2034年まで消滅時効は成立しないこととなります。

③についてですが、債務名義等に基づき強制執行を受けた場合も時効期間はリセットされます。

02.時効の完成猶予

時効の完成猶予は、進行している時効を一定期間先延ばしにするものです。時効期間のストップとお考えいただいて結構です。改正前民法では、「時効の停止」と呼称されておりました。

時効の完成猶予の効果は、あくまで時効成立までの期間を延長させるだけです。延長できる期間はあまり長くなく、ほとんどが時効の更新に係る手続きを進める際に行使されるものであることから、あくまでの補助的なもの、主で行使するものではないものとご理解下さい。

時効の完成猶予には以下のものがありますが、本記事ではその詳細についての説明を割愛します。

  • 催告
  • 裁判上の請求
  • 仮差押え
  • 協議を行なうことの合意等
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時効の援用

01.時効の援用とは

実は時効が成立したとしても、そのままでは時効成立による利益を受けることができません。時効の援用をすることではじめて時効の効果を享受できることになります。

02.時効の援用の方法

時効の援用は、相手方への意思表示をもって行います。裁判を申し立てる必要はありません。

また、意思表示の方法については特に決まりはありません。そのため、口頭であっても差支えはありません。なお、消滅時効の援用の意思表示をしたことの証拠を残すためにも内容証明郵便で対応しておくのが良いでしょう。

時効の援用を弁護士に依頼するメリット

弁護士に時効援用を依頼するメリットとしては、以下のものがあります。

01.時効が成立しているかを調査してもらえる

弁護士に依頼すれば、時効が成立しているかについてしっかりと確認してもらうことができます。

02.内容証明の発送をやってもらうことができる

弁護士に依頼すれば、弁護士から時効援用のための内容証明を発送してもらうことができます。また、債権者から債務不存在確認書を発行してもらうこともできます。

03.時効が成立していなかった場合の対処も依頼することができる

消滅時効が成立していなかった場合において、債務整理(破産、個人再生、任意整理)の相談をシームレスに行うことも可能です。

東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、消滅時効の援用手続きについても受け付けております。自身の抱える負債について時効が成立しているかどうか知りたい方、時効の援用によって負債を無くしたい方は是非一度当事務所までご相談ください。

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