賃貸に出している物件において、入居者の賃料の滞納が生じた場合はすぐに回収に取りかかりましょう。
放っておくと滞納額が高額になり、賃借人も払うに払えない状態になってしまいます。こうなってしまうと裁判を経て財産調査や差し押さえを行なうことが必要となり、回収までに時間と費用を要することとなってしまいます。
今回の記事では賃料の滞納が起こった際にスムーズに回収するための手順について解説します。賃貸アパートやマンションなどの物件を運営しているオーナーさまはぜひ参考にしてみてください。
滞納賃料の回収手順
入居者が賃料を滞納したら、以下の手順で回収を進めましょう。
- すぐに督促する
- 内容証明郵便で督促
- 訪問する
- 3ヶ月以上滞納されたら内容証明郵便で賃料請求と解除通知
- 裁判を起こす
- 差し押さえを行う
01.すぐに督促する
賃料の入金期日を1日でもすぎたらすぐに督促しましょう。
督促は、電話での督促または郵便での督促がオーソドックスです。メールアドレスがわかっているのであればメールを送信するのも一つの方法です。
なお、重要なのは「すぐに」連絡することです。時間を空けてしまうと、借主側は「払わなくても文句を言われないんだ」と安心し、滞納を常態化させてしまう可能性があります。また、単なる払い忘れであれば督促の連絡をすればすぐに払われるケースが多数です。
毎月の入金状況をしっかり確認し、1日でも遅れたらすぐに督促しましょう。
02.内容証明郵便で督促
電話や普通郵便などの方法で督促しても借主が賃料を払わない場合は、内容証明郵便を使って督促状を送りましょう。
内容証明郵便とは郵便局や差出人のもとに控えが残るタイプの郵便です。特殊な書式になっていて、手渡しでの配送となるため、相手に強いプレッシャーを与える効果も期待できます。
内容証明郵便には、以下の事項を書き入れましょう。
- 滞納している金額
- 支払期限
- 支払いがない場合の訴訟予告
- 賃貸借契約解除の可能性があること
- 振込先
なお、内容証明郵便を発送する際は、「配達証明」のサービスも利用するようおすすめします。配達証明とは、相手に郵便が届いた事実を郵便局が証明してくれるサービスです。
配達証明をつけておけば相手がいつ受け取ったのかわかるので、相手が「請求されていない」等と言い訳することができなくなります。
なお、内容証明郵便は手渡しであり、ポストに投函されるものではありません。そのため、相手が受け取らない場合は持戻されてしまいます。持戻となった場合は同じ内容の文書を普通郵便で発送しましょう。
03.訪問する
相手が賃料を払わない場合は、現地を訪問して取り立てる方法も有効です。
大家が訪ねていくと仕方なく払う人も中にはいるので、相手が在宅していそうな時間を狙って訪ねてみることを検討してください。
04.3ヶ月以上滞納された場合は契約解除を検討
法律上は、賃料をおおむね3ヶ月分以上滞納された場合には債務不履行に基づいて大家側(貸主側)から契約を解除できると考えられておりますので、賃料滞納が3ヶ月分以上となってしまった場合には賃貸借契約の解除を検討しましょう。
3ヶ月も滞納するような借主は今後も払う見込みが小さいといえますし、今回払われたとしても同様の滞納トラブルを繰り返すおそれが非常に高いです。不良な賃借人であれば、賃貸借契約を解除して退去させ、別の賃借人を入れた方がメリットも大きくなります。諸々を勘案し、契約解除するのか否かを判断しましょう。
なお、賃貸借契約を解除する際は、内容証明郵便で解除通知書を送ります。解除通知書には、以下の事項を書き入れましょう。
- 滞納賃料額を請求することと支払期限
- 期限までに支払がない場合には契約を解除すること
- 支払いがない場合は訴訟を起こして立ち退きを求めること
- 入金先口座
契約を解除する予定はないということであれば、解除(予告)はせずに支払いの督促だけを行いましょう。
05.裁判を起こす
内容証明郵便によって支払いを請求しても相手が賃料を払わないときには、訴訟を起こしましょう。
賃料のみを請求する場合、賃料請求訴訟という金銭請求訴訟を起こします。請求金額が60万円以下であれば少額訴訟も利用できます。少額訴訟であれば審理の方法が簡略化されているので当事者が1人でも対応しやすく1日で結審するので負担が軽くなります。
また、賃料請求だけであれば「支払督促」を利用できます。
支払督促は滞納金額がいくらであっても利用可能です。支払督促を申し立てた場合、相手が2週間以内に異議を申し立てなければ相手の給料、預金や車、保険などの資産をすぐに差し押さえられます。
なお、少額訴訟や支払督促の申立後に相手が異議を出した場合は、通常訴訟に移行します。
滞納賃料の請求と契約解除にもとづく明渡し請求の両方を行う場合には、地方裁判所に対して訴訟を起こし、建物明け渡しと賃料請求を行わねばなりません。少額訴訟や支払督促は利用することはできません。
訴訟において裁判で相手による賃料不払いの事実を立証できれば、明け渡し命令と賃料支払い命令を下してもらえます。途中で話し合いができれば、和解によって訴訟を終わらせられる可能性もあります。
なお、通常訴訟は極めて専門的な手続きであり、申立書の作成や証拠の準備を含め、法的知識に乏しい当事者が1人で対応するのは非常に困難です。弁護士に依頼することを推奨します。
06.差し押さえを行う
訴訟で判決が出たら、相手に任意に賃料支払や明け渡しに応じるよう連絡してみてください。滞納者が任意に賃料支払や退去(明け渡し)をしてくえたのであれば、差し押さえなどの強制執行は不要です。
相手が応じない場合には、強制執行によって相手の資産を差し押さえて回収しましょう。
差押え可能な資産としては以下のようなものがあります。
- 給料、ボーナス
- 預金
- 保険
- 車
- 株式、投資信託、債券
- 不動産
- 売掛金
- 動産類
なお、相手の給料を差し押さえるには勤務先を特定しなければなりません。預金を差し押さえるにも取引先の金融機関を調査する必要があります。これはなかなか大変な作業です。
相手方の勤務先や取引金融機関が不明な場合、財産開示手続きや第三者からの情報取得手続きを利用して調べられる可能性もあります。
06.財産開示手続、第三者からの情報取得手続き
相手の財産を調査する方法の一つとして、財産開示手続があります。これは、裁判所から相手方に対し、財産内容を開示するよう求める制度です。相手が出頭しない場合や虚偽を述べた場合、懲役や罰金刑が科される可能性があります。
また、裁判所が市区町村役場や金融機関などへ情報紹介する手続きである第三者からの情報取得手続きも有効です。
07.明け渡しの断行
退去命令が出たにも関わらず、相手が任意に立ち退かない場合、明け渡し断行の強制執行を行わねばなりません。地方裁判所の執行官へ申立をして事前準備を行い、現地へ行って相手を強制的に立ち退かせる手続きです。
判決が出たからといって大家が勝手に借主の荷物を持ち出したり処分したりすると違法になる可能性があります。必ず強制執行の手続きを利用しましょう。
また、明け渡しがなされても、これをもって賃料が払われることが確約されるわけではありません。相手が支払いをしない限り、給料や預金などの差し押さえを行って回収する必要があります。
弁護士に賃料回収を依頼するメリット
賃料を滞納されたとき、弁護士に依頼すると以下のようなメリットを享受できます。
01. 相手にプレッシャーをかけて回収の可能性が高まる
多くの人は、弁護士から督促があった場合は強いプレッシャーを感じるものです。大家や不動産管理業者が督促するよりも相手が誠実に対応し、訴訟前に賃料を回収できる可能性が高まります。
02.労力と時間を削減できる
自分で相手に督促したり内容証明郵便を送ったりすると、多大な労力と時間が消費されてしまいます。多忙でなかなか請求手続きに取りかかれない方もおられるでしょう。
弁護士に手続きを一任すれば自分で対応しなくてよくなりますので、労力と時間のコストを大きくカットすることが可能となります。
03.ストレスがかからない
賃料滞納中の賃借人との交渉は、非常にストレスのかかかります。
- 相手が開き直って払わない
- 連絡がとれない
- 期日までに払うと言ったのに実際には入金しない
- 相手が逆切れする、感情的になって話にならない
逆に大家が精神的に追い詰められるケースも少なくありません。
弁護士に手続きを依頼すれば、以降は弁護士が代理人として動きます。自身で対応することがなくなるので、ストレスもかからず、普段の仕事や大家業などに専念できます。
04.トラブルを最小限度に抑えられる
トラブルの状況次第では、最終的に裁判になって差し押さえしなければならなくなります。弁護士に依頼すれば交渉段階で早期に家賃を回収できる可能性が高くなりますので、トラブルを最小限度に抑えられるメリットを享受できます。
さいごに
弁護士から相手に連絡を入れると意外とすんなり回収できるケースが多々あります。手間がかかって精神的に負担の大きな交渉も弁護士までお任せください。
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、債権回収業務に力を入れて取り組んでいます。賃料不払いにお悩みの不動産オーナー様は是非一度お気軽にご相談ください。