支払督促とは?訴訟との違いや活用方法を弁護士が解説

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弁護士 鈴木 翔太
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支払督促とは?訴訟との違いや活用方法を弁護士が解説

売掛金や貸付金などの弁済を受けられない場合、支払督促が有効な解決手段になる可能性があります。

ただし、支払督促にはメリットだけではなくデメリットもあるので、正しい知識を持って利用しましょう。

今回は、支払督促の特徴や訴訟との違い、活用方法を弁護士が解説しますので、債権回収にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

1.支払督促とは

支払督促とは、裁判所へ申立てをして相手方から一定期間異議が出なければ、すぐに差押えに移行できる手続きです。

債務者が約束通り支払をしないとき、まずは任意の弁済を求めるのが一般的です。それでも支払われない場合、訴訟を起こして判決を取り、強制執行(差押え)をしなければなりません。

ただ、訴訟を起こすと証拠提出が必要となりますし、相手も争ってくる可能性があります。

争点整理や尋問なども行われるため、大変な時間がかかってしまうでしょう。手間暇もかかり、弁護士に依頼する必要が出てきて費用もかかります。

支払督促であれば、申し立てて相手から一定期間異議が出なかったら、訴訟をしなくてもすぐに差押えができます。支払督促は書面審理で厳密な証明も不要なので、時間も労力もかかりません。

少額訴訟との違い

支払督促と似た債権回収方法に「少額訴訟」があります。ただ、少額訴訟は一種の訴訟なので、一定の証拠は必要となりますし、書面だけで審理されるわけでもありません。

また少額訴訟には「60万円」という限度額もあります。

支払督促には限度額もないので、何百万円、何千万円という債権でも請求できます。

相手が異議を出さない場合に限りますが、支払督促は少額訴訟と比べても非常に有効な債権回収方法といえるでしょう。

2.支払督促と訴訟の違い

以下では支払督促と通常訴訟の違いをみていきましょう。

2-1.手続きが簡易

支払督促の手続きは非常に簡単です。

書面審理となっていて証拠も不要です。支払督促申立書を提出するだけで、相手が異議さえ出さなければ裁判所が「仮執行宣言」を出してくれます。

一方、訴訟を起こすと相手からも反論や証拠提出が行われて、何度も期日が開かれるのが通常です。手続きは複雑で証拠も必要となり、時間も労力もかかってしまうでしょう。

訴訟は弁護士に依頼しないと対応が困難ですが、支払督促であれば弁護士に依頼しなくても対応しやすい手続きです。

2-2.すぐに差押えができる

訴訟を起こしても、判決が出て確定するまで差押えはできません。

判決が出るまでに半年以上かかるケースも多いですし、確定するまでさらに2週間かかります。相手が控訴すれば確定せず、控訴審で争いが続いてしまいます。

支払督促であれば、相手が異議さえ出さなければ1~2ヶ月程度で差押えができる可能性があります。相手による資産隠しを防いで早めに差押えを行いたい方にはメリットとなるでしょう。

2-3.費用が安い

支払督促であっても通常訴訟であっても裁判所の費用がかかります。

申立の際に請求金額に応じた収入印紙を購入し、納付しなければなりません。

ただ、収入印紙の金額は、支払督促の場合通常訴訟の半額となります。

費用が安い点も支払督促のメリットといえるでしょう。

2-4.金銭債権にしか使えない

支払督促と通常訴訟は、適用できる事件の種類についても違いがあります。

支払督促の場合には、金銭債権にしか適用できません。

たとえば以下のようなお金を請求する場合です。

  • 貸付金
  • 売掛金
  • 敷金
  • リース料
  • 未払の通信料
  • 未払の宿泊費、飲食費
  • 未払の家賃
  • 未払の奨学金

一方、建物の明渡しや物の返還請求、移転登記請求、離婚請求などの事件には支払督促を適用できません。

2-5.最終解決手段にならない可能性がある

支払督促を申し立てても、相手が2週間以内に異議を出せば通常訴訟へ移行してしまいます。そうなったら、訴訟で争いをやり直さねばなりません。

支払督促を申し立てても、異議を出されると最終解決できず2度手間となってしまう恐れがあるので注意しましょう。

一方、訴訟であれば「判決」によって最終解決が可能です。判決にさらに異議を申し立てられる事はありません(ただし控訴される可能性はあります)。

異議を出されるのがほぼ明確であれば、はじめから訴訟を申し立てる方がよいでしょう。

3.支払督促の流れをパターン別に解説

支払督促の流れは、相手から異議が出るかどうかと、異議が出たタイミングによって大きく変わってきます。パターン別にみてみましょう。

3-1.まったく異議が出なかった場合

まずは相手からまったく異議が出なかった場合の流れを示します。支払督促が「成功したケース」と考えてください。

①支払督促の申立

まずは裁判所へ支払督促申立書を提出して申立てをしましょう。管轄は「相手方の住所地を管轄する簡易裁判所」です。

訴訟と違い、証拠の添付は不要となっています。

②支払督促の発付、送達

裁判所へ支払督促申立書を提出すると、書類の審査が行われます。不備がなければ「支払督促」が発付され、相手方へと送達されます。

③仮執行宣言の申立

相手方へ支払督促申立書が送達されてから2週間の間異議が出なければ、申立人は「仮執行宣言」の申立ができる状態になります。

このとき、支払督促に異議が出なくても、すぐに差押えができるわけではないので注意しましょう。必ず「仮執行宣言」を申し立てなければなりません。

仮執行宣言の申立てができるのは、「相手方に支払督促申立書が届いて2週間が経過した日から30日以内」です。

30日を過ぎてしまったら、せっかく申し立てた支払督促の効果が失われてしまうので、急ぎましょう。

④仮執行宣言つき支払督促正本の送達

申立人が期限内に仮執行宣言の申立をすれば、裁判所は相手方へ「仮執行宣言つき支払督促正本」を送ります。相手方はこれに対して異議を出すこともできますが、この時点で異議を出しても差押えを止める効果はありません。

⑤ 強制執行(差押え)

仮執行宣言つき支払督促正本が送達されて2週間が経過しても相手が支払をしない場合、裁判所へ申し立てて相手の資産や給料などの債権を差し押さえることができます。

差押えの際には別途「送達証明書」が必要となるので、裁判所へ申請しましょう。

3-2.当初の支払督促に異議が出た場合

相手から異議が出ると、以下のような流れになります。

① 支払督促の申立て

まずは支払督促の申立を行います。

② 支払督促の発付、送達

簡易裁判所で支払督促が発付され、相手方に支払督促申立書が送達されます。

③ 異議申立て

相手が2週間以内に異議を申し立てます。

④ 通常訴訟へ移行

異議申立書が提出されると、手続きは通常訴訟へと移行します。

訴訟は引き続き、支払督促を申し立てた相手方の住所地の裁判所で行われます。

この場合、仮執行宣言は出ないので、強制執行はできません。

3-3.仮執行宣言つき支払督促へ異議が出た場合

相手方が「支払督促」に異議を出さなくても「仮執行宣言つき支払督促」に異議を申し立てる可能性があります。その場合の手続きの流れを確認しましょう。

① 支払督促の申立

まずは相手方の住所地の簡易裁判所へ支払督促申立書を提出します。

② 支払督促の発付、送達

簡易裁判所から相手方へ支払督促申立書が送られます。この時点では相手方から異議が出ません。

③ 仮執行宣言の申立

2週間、相手方から異議が出なかったので、その後30日以内に仮執行宣言を申し立てます。

④ 仮執行宣言つき支払督促正本の送達

裁判所から相手方へ仮執行宣言つき支払督促正本が送達されます。

⑤ 異議申立て

相手方から仮執行宣言つき支払督促へ異議申立てが行われます。

⑥ 通常訴訟へ移行

相手から異議申立てが出ると、通常訴訟へと移行します。管轄裁判所は相手方の住所地を管轄する裁判所です。

⑦ 強制執行(差押え)

仮執行宣言つき支払督促に異議が出ても、差押えは可能です。訴訟で争いながらではありますが、相手の資産を差し押さえる手続きを進められます。

4.支払督促のデメリット、注意点

支払督促には以下のようなデメリットがあります。

4-1.異議を出されると訴訟になってしまう

支払督促を申し立てても、相手が異議を出せば通常訴訟へ移行してしまいます。

実際、支払督促を申し立てる方は「支払督促なら簡単だからやってみたいけれど、通常訴訟はやりたくない」と考えているケースが少なくありません。

そんな方でも異議が出ると、強制的に訴訟手続に巻き込まれてしまいます。訴訟になれば法律論に従った書面や証拠提出が必要になるので、弁護士なしでは対処が厳しくなるでしょう。時間も労力もかかります。

支払督促を申し立てるときには、「最終的に訴訟になってもかまわない」という覚悟をもっておくべきといえるでしょう。

4-2.訴訟で負ける可能性がある

支払督促を申し立てる段階では証拠は不要です。相手にお金を払ってほしいけれど資料がまったくない場合でも、支払督促に成功すると差押えができる可能性があります。

しかし、相手が異議を出せば訴訟に移行してしまいます。訴訟では証拠による立証が必要ですから、資料が手元になければ負けてしまうでしょう。

資料がないのにやみくもに支払督促を申し立てるのは危険といえます。

4-3.相手の住所地の裁判所で審理が行われる

支払督促に異議を出されたときに「審理が行われる裁判所」の管轄にも注意が必要です。

支払督促は、相手方の住所地の簡易裁判所へ申し立てなければなりません。

異議が出て通常訴訟に移行した場合の裁判所も、相手方の住所地の裁判所です。

相手方が遠方の場合には、裁判の期日に出席するために多大な費用と労力がかかってしまうおそれがあります。

支払督促だけなら書面審理なので出廷は不要ですが、訴訟に移行したら交通費や時間などのコストがかかることに注意しなければなりません。

相手が遠方の場合、支払督促を申し立てるかどうかは特に慎重に検討すべきといえるでしょう。

5.支払督促を活用すべき場面

支払督促は、以下のような場合に利用するのが有効です。

5-1.金銭債権を請求したい

支払督促を適用できるのは、金銭債権のみです。

貸付金、売掛金、敷金や通信料、リース料などの債務を払ってもらえないときに利用しましょう。

 

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5-2.相手が争わない

支払督促を申し立てても、相手が異議を出せば通常訴訟へ移行してしまいます。

訴訟になったらこちらにも応訴の負担が発生しますし、無駄な時間と手間がかかってしまうでしょう。

支払督促が有効となるのは「相手が争わない」場合に限られます。

相手の態度をみて「支払督促を無視しそう」な場合に申立てを検討してみてください。

5-3.相手の資産を把握している、調査可能

支払督促を申し立てて仮執行宣言を出してもらっても、相手の資産がわからなければ差押えができません。預貯金、株式、不動産など相手の財産に目星がついているなら、支払督促を申し立てるのが有効といえます。

ただし現時点では調査が未了でも、近いうちに判明する可能性があるなら早めに支払督促を申し立ててかまいません。

まとめ

債権回収にはさまざまな手段があり、支払督促もうまく利用すれば有効な解決方法となります。ただし、やみくもに申し立てると、かえってコストがかかってしまう可能性もあり、慎重に検討すべきといえるでしょう。

どのような手段が債権回収に最適か判断しにくい場合、弁護士にご相談いただけましたらベストな方法をアドバイスいたします。約束通りに弁済を受けられずにお悩みの方がおられましたら、企業(事業者)さまも個人さまも、お気軽にご相談ください。

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