改正民法対応!債権の新しい「時効制度」について弁護士が解説!

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弁護士 鈴木 翔太
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改正民法対応!債権の新しい「時効制度」について弁護士が解説!

売掛金や貸付金などの未払い金を請求する際には「時効」に注意が必要です。

時効が成立してしまったら、債権が発生していても請求できなくなってしまう可能性が高くなってしまいます。

時効については近年の民法改正によって大きく変更された点があるので、改正法の内容も正しく理解しておきましょう。

今回は改正民法を踏まえた債権の時効期間や時効の成立を防ぐ方法を弁護士が解説します。

未回収の債権を抱えた法人様や個人様は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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1.時効とは


債権の時効とは一定期間以上請求や支払いが行われないときに、債権が消滅してしまう制度です。

売掛金や貸付金などの債権が発生しても、債務者が支払わないまま長期間が経過してしまうケースが少なくありません。一定以上の期間(時効期間)が経過すると、債権が消滅して請求できなくなってしまいます。

ただし時効期間が経過しても、当然に債権が消滅するとは限りません。時効の効果が発生するには債務者による「援用」が必要です。援用とは「時効によって利益を受けます」という意思表示をいいます。

つまり時効に必要な期間が経過して債務者が「援用」した時点で、その債権については請求できなくなると考えましょう。

債権を請求しないまま放置していると時効が成立してしまう可能性があるので、未回収の債権は早めに回収する必要があります。

時効と除斥期間の違い

時効と似た制度に「除斥期間」があります。

除斥期間とは、一定期間が経過すると当然に権利が消滅してしまう制度です。

時効と違い、債務者による援用は不要です。

また時効には「更新」や「完成猶予」といって、途中で時効の進行を止めたり、巻き戻して当初の期間から数え直しにしたりするルールがあります。時効の完成猶予期間中は時効が成立しませんし、更新されたら当初からの数え直しになります。つまり時効は「止めることができる」といえるでしょう。

除斥期間には更新や完成猶予は適用されないので、一定期間が経てば必ず権利が消滅します。

債権の種類によっては、時効と除斥期間の両方が適用されるケースもあります。そういった場合には、時効期間内だけでなく除斥期間内に債権回収する必要があるので注意しましょう。

2.民法改正で時効制度が大きく変わった


実は2020年4月1日に施行された改正民法により、債権の時効についての法的ルールが大きく変更されました。

2020年4月1日以降に発生する債権については、新しい民法による時効制度が適用されます。

どういった点が変更されたのか、以下で旧民法と新民法を比較してみましょう。

3.旧民法における時効


まずは旧民法における時効制度をご説明します。

旧民法下では、債権の原則的な時効期間が10年間とされていました。これを「民事時効」といいます。

そして債権の種類により、以下のように異なる時効期間が適用されました。

  • 飲食店や宿泊施設、大工や左官工などの債権…1年
  • 弁護士や生産者、卸売商人や小売商人などの債権…2年
  • 医師や薬剤師、助産婦、工事の設計者や施工業者などの債権…3年
  • 商取引によって発生した債権…5年

このように、債権の種類によって時効制度を短縮する制度を「短期消滅時効」といいます。

また商取引によって発生した債権を「商事債権」といい、こちらに適用される5年の時効期間を「商事債権」と呼んでいました。

なお残業代などの賃金請求権については、労働基準法により時効期間を「2年」とされていました。

4.改正民法下における時効


2020年4月1日から施行された改正民法では、短期消滅時効や商事時効が廃止されました。

そもそも債権の種類によって時効期間を区別する合理性がなくなったためです。

改正民法においては、時効は以下のように統一されています。

  • 債権者が請求できることを知ってから5年(主観的起算点)
  • 債権者が請求できる状態になってから10年(客観的起算点)

基本的には債権者が「債権を請求できる」と知ったときから5年で債権が消滅すると考えましょう。つまり「債権の発生と弁済期の到来を知ってから5年」という意味です。このように「債権の発生と弁済期の到来を知った時点」を「主観的起算点」といいます。

一方、場合によっては債権者が請求できる時期が到来した事実を知らないこともあるでしょう。そういったケースでは、「債権を請求できる時期が到来してから10年」で時効が成立します。このように「請求できる時期」を「客観的起算点」といいます。

新しい民法下では、主観的起算点から5年、あるいは客観的起算点から10年のどちらか早い方が経過すると、基本的にすべての債権が消滅します。

4-1.賃金債権の場合

残業代などの賃金債権については、企業側にかかる負担をふまえて「経過措置」がもうけられました。これまで2年だった時効期間をいきなり5年に延長すると、企業が多額の残業代を返還しなければならなくなり、経済的な影響が大きすぎると考えられたためです。

2020年4月に労働基準法が改正され、賃金債権の時効は当面「3年」とされました。ただし今後は近い将来において、民法に合わせて賃金債権の時効も5年に延長される見込みとなっています。

4-2.時効期間が変更される債権の例

改正民法により、以下のような債権の時効期間が変更されます。

  • 飲食店や宿泊施設の債権…1年から5年へ
  • 弁護士や卸売商人などの債権…2年から5年へ
  • 医師、病院の診療報酬…3年から5年へ
  • 個人間取引における債権…10年から5年へ

※ただし主観的起算点を基準としています。

飲食店や宿泊施設、クリニックなどでは、これまでよりも期間に余裕ができるので、債権回収しやすくなるでしょう。

とはいえ長期間放置していると資料が散逸したり債務者が行方不明となったりして事実上回収困難となる可能性もあるので、基本的には急いで回収すべきと考えます。

5.改正法が適用される時期は?

民法改正によって時効期間が延長される業種も多いのですが、すべての債権に改正民法が適用されるわけではありません。

改正民法が施行されたのは2020年4月なので、それ以前に発生した債権については旧民法が適用されます。

たとえば病院で未払いの診療報酬がある場合、2020年3月までの患者への債権であれば、発生時から3年以内に回収しなければなりません。

未回収の債権がある場合には、いつの時点で発生した債権なのか検討し、正しく時効期間を計算する必要があります。

6.不法行為に基づく損害賠償請求権の時効


今回の民法改正により、不法行為にもとづく損害賠償請求権の時効についても変更がありました。

不法行為にもとづく損害賠償請求権とは、相手の故意または過失による違法行為によって発生した損害についての賠償請求権です。

たとえば交通事故に遭った場合や不倫された場合の慰謝料が典型ですが、商取引において相手が非常に悪質な犯罪行為などを行った場合にも不法行為にもとづいて賠償金請求できる可能性があります。

従来、不法行為にもとづく損害賠償権の時効は、以下のように規定されていました。

  • 損害及び加害者を知ったときから3年(時効)
  • 損害発生時から20年(除斥期間)

ところが法改正により、以下のように変更されました。

6-1.一般の不法行為の場合

  • 損害及び加害者を知ってから3年(時効)
  • 損害発生時から20年(時効)

これまでは「損害発生時から20年」の期間制限は「除斥期間」とされていましたが、改正民法下では「時効」に変わります。そこで、損害発生時から20年以内に完成猶予や更新の手段をとれば、時効の成立を防ぐことができようになります。

6-2.生命または身体に対する不法行為の場合

  • 損害及び加害者を知ってから5年(時効)
  • 損害発生時から20年(時効)

生命または身体に向けられた不法行為の場合、主観的起算点による時効期間が5年に延長されます。たとえば殴られて怪我をした場合、人身事故の被害に遭った場合などには、相手方と損害発生を知ってから5年間、賠償金を請求できるという意味です。

また客観的起算点にもとづく期間制限については、除斥期間が時効に変わります。

7.時効を止めて債権回収する方法


売掛金や貸付金、未払い家賃などが発生してすぐには回収できない場合、どのようにして時効を止めればよいのでしょうか?

以下では時効の成立を防ぐ方法を解説します。

 

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7-1.完成猶予と更新

時効の成立を止める方法には「完成猶予」と「更新」の2種類があります。

完成猶予とは、時効の成立を一定期間先延ばしにすることです。猶予されている間は時効が成立しません。

更新とは、時効期間を当初に巻き戻してあらためて数え直しをすることです。時効が更新されると、その時点から再度5年などの期間が経過しないと時効は成立しません。

時効成立が間近な場合でも、完成猶予させれば一定期間は時効が成立しませんし、更新すると期間が巻き戻るので権利を保全できます。

7-2.完成猶予の方法

時効を完成猶予させる方法には、以下のようなものがあります。

6ヶ月間時効を先延ばしにする方法

  • 債務者へ請求(内容証明郵便を推奨)
  • 仮差押や仮処分

上記のアクションをとると、時効期間は6ヶ月間延長されます。ただし猶予期間は6ヶ月だけなので、その間に訴訟や調停などを起こしてより確実に時効を止める必要があります。

債務者へ請求するときに内容証明郵便を使う理由

債務者への請求によって時効の完成猶予をさせたい場合には、証拠を残すために必ず内容証明郵便を使いましょう。口頭で請求しても相手が「請求されていない」と否定する可能性があるからです。請求した証拠がなかったら「時効が成立した」とみなされてしまうでしょう。

内容証明郵便を使えば手元に控えが残りますし、請求した日時や相手に送達された日時も証明できるので(配達証明をつけた場合)、そういった危険が発生しません。

なお内容証明郵便で時効を先延ばしにした場合、再度内容証明郵便を送っても時効は先延ばしになりません。完成猶予できるのは1回だけなので注意してください。

債務者との協議による時効の完成猶予

債権者と債務者が書面で権利について協議を行うことを合意した場合には、合意時から1年間時効が完成猶予されます。相手と話し合えるようであれば、こういった対応も検討しましょう。

訴訟提起や差押の申立による完成猶予

以下のような場合にも時効が完成猶予され、手続きが終了したときに時効が更新されます。

  • 訴訟や調停などの裁判手続きを申し立てた
  • 差押などの強制執行手続きを申し立てた

ただし上記のような手続きを行っても、途中で取り下げると時効の更新は成立せず権利が消滅してしまいます。

7-3.時効を更新させる方法

時効を「更新」させると、また当初から時効期間を数え直すので確実に権利を守ることができます。

時効を更新させるには以下の方法があります。

  • 債務者に債務を認めさせる
  • 判決や決定が確定する
  • 強制執行を完了する

債務承認による更新

債務者本人が債務を認めたら、時効は更新されます。ただし相手が口頭で債務を認めても、後に「そんなことは言っていない」などと言い出すおそれが高いでしょう。債務承認させるなら、必ず書面を作成すべきです。「債務承認書」「債務弁済に関する誓約書」などを作成して相手に署名押印させましょう。

また相手が債務の一部を払った場合、「支払います」などと言わなくても債務承認したことになります。後々に備えて支払いを受けた証拠を残しておきましょう。

確定判決による更新

訴訟の判決や支払督促の仮執行宣言が出たとき、強制執行を終えたときなどにも時効が更新されます。

相手が債務の存在を認めない場合には、訴訟を起こして時効を更新させる方法が有効です。
長期間支払われていない債権がある場合には、早めに弁護士に依頼して訴訟を起こしましょう。

7-4.更新後の時効

時効が更新されたら、その後はどのくらいの期間で時効が成立するのでしょうか?

これについては、債務承認か確定判決による時効の完成かで異なります。

債務承認によって時効を更新した場合には、基本的に更新後の時効期間は5年です(ただし主観的起算点の場合)。

一方で、支払命令の判決が出て確定した場合には、更新後の時効期間が10年になります。

裁判を繰り返していれば半永久的に時効を成立させないことも可能ですから、すぐには債権回収できない場合にもあきらめる必要はありません。

8.債権回収は弁護士へお任せください


未回収の債権がある場合、時効の完成前に回収する必要があります。ただ近年の民法改正により時効に関するルールが大きく変更されたので、専門知識が必要です。相手に債務承認させるにも訴訟を起こすにも、弁護士によるサポートが必須となるでしょう。

当事務所では事業者さまへの法的支援や法律顧問業務に力を入れて取り組んでいます。未回収債権を低コストで効率よく回収されたい方がおられましたら、法人様でも個人様でもお気軽にご相談ください。

 

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