債権譲渡担保とは?改正民法を踏まえて解説!!

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弁護士 鈴木 翔太
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債権譲渡担保とは?改正民法を踏まえて注意点を弁護士が解説

取引先の不払いを回避する方法の一つに、債権譲渡担保を設定する方法があります。

債権譲渡担保とは、取引先が債務を支払わないときに、取引先の第三債務者に対する債権を譲渡してもらい、自社が直接取り立てる契約を取り交わすことです。

実は近年の民法改正により債権の流動化が推進されており、債権譲渡担保は利用しやすくなっている状況にあります。

今回の記事では、債権譲渡担保の方法やメリット、注意点について改正民法を踏まえて解説します。取引先による不払いリスクに備えておきたい方はぜひ参考にしてみてください。

1.債権譲渡担保とは

債権譲渡担保とは、債務者が約束通りの支払いを行なわないときに備えて、債務者の第三債務者に対する債権を担保に取る方法です。

一例として、以下のケースで考えてみます。

  • A社とB社は継続的に取引を行なっており、A社は常時B社に対し債権を有している
  • B社とC社は継続的に取引を行なっており、B社は常時C社に対し債権を有している
  • B社の経営は悪化しており、今後支払不能状態に陥る可能性がある

このようなケースにおいて、A社としてはB社と継続して取引をすることには、B社の不払いリスク(倒産リスク)という多大なリスクが発生しております。このようなケースにおいて、A社は、B社から「C社に対する将来の債権」を譲渡してもらう(債権譲渡担保)ことで、本件リスクを回避することが可能となります。債権譲渡担保を取っておけば、将来B社がA社に対し支払が出来なくなった際に、A社は直接C社に対し債権の取立てを請求することができるためです。

このように債権譲渡担保契約を設定しておけば、債務者(先の例ではB社)が不払いとなった場合には第三債務者(先の例ではC社)から債権回収を図ることができますので、A社としてはB社の不払いリスクを避けることが可能となります。

債権譲渡担保の登場人物と呼称

債権譲渡担保を説明する際に出てくる登場人物は以下の三者です。法律的な呼び名があるので確認しておきましょう。

  • 債権者…債権の譲受人。先の例でのA社
  • 債務者…債権の譲渡人。先の例ではB社
  • 第三債務者…債務者に対して負債を負う人(法人)。債権譲渡が実行された際は、債権者(譲受人)から直接取り立てを受ける。先の例ではC社

以下の説明においても、この呼称を用いて説明します。

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2.債権譲渡担保のメリット

債権譲渡担保を設定した場合、以下のメリットを享受することができます。

2-1.取引先が不払いを起こしたとき、スピーディに債権を回収できる

1つめのメリットは、取引先が何らかの事情で不払いを起こしたとき、すぐに債権回収できることです。

債権譲渡担保を設定していない場合、相手が不払いを起こしたときには、内容証明郵便で督促したり訴訟を起こしたりすることで回収しなければなりません。これには時間がかかりますしその間に相手が財産を隠してしまったり他の債権者に先を越されたりする可能性もあります。

債権譲渡担保を設定しておけば、相手方との交渉や訴訟をせずとも、直接第三債務者へ支払を請求することができるので、手早く債権回収を図ることができます。

2-2.取引先が経営破綻した場合であっても債権を回収できる

企業の経営状態が著しく悪化した場合、経営破綻して倒産することがあります。倒産した場合、債権の回収がほぼ困難となりますし、破産手続きにおける配当金も雀の涙ほどであることがほとんどです。満足できる債権の回収は望めないでしょう。

他方で、あらかじめ債権譲渡担保を設定しておけば、相手の経営状況が悪化した時点で担保権を実行し、第三債務者から債権の回収を図ることができます。

相手の経営状況が悪くなったときに、債権譲渡担保は大きな威力を発揮する可能性があります。

債権回収できないときの対処方法と貸倒損失について取引先が債権を支払わないなら、積極的に取立てをしなければなりません。 しかしあらゆる手段を尽くしても債権回収できないケースはあります。そんなときには「貸倒損失」として税務上の損金算入をしましょう...

3.民法改正による影響

実は昨今の民法改正により債権譲渡担保制度を利用しやすくなっております。改正内容についてみてみましょう。

3-1.譲渡禁止つき債権を譲渡した場合の効力

債権には、譲渡禁止特約をつけることができます。

譲渡禁止特約とは、当事者間で「この債権は譲渡してはならない」とする約束です。譲渡禁止特約つきの債権については、相手の承諾なしに勝手に譲渡してはなりません。

旧民法では、譲渡禁止特約つき債権を譲渡した場合、債権譲渡は基本的に無効と規定されていました。

なお、債権の流動性を考えると、このように一律に無効にするのは合理的とはいえません。

そこで改正民法では、譲渡禁止特約つきの債権譲渡も「基本的に有効」とされました(民法466条2項)。

ただし、譲渡禁止特約について知っている、あるいは知らなかったことについて重過失のある債権者に対しては、第三債務者は譲渡禁止特約を主張して履行を拒絶できるとされています(民法466条3項)。

たとえば、先の例において、B社がC社に対して有する債権に譲渡禁止特約がついていたとします。B社がこの特約を無視してA社へ債権譲渡したとしても債権譲渡自体は有効とされます。ただし、A社が譲渡禁止特約を知っていた場合(故意)、譲渡禁止特約が付いていることについて重過失によって気づかなかった場合(重過失)には、C社はA社からの請求を拒絶することができます。

また、C社は誰に支払をすればよいのかわからない場合には、法務局に弁済供託することができます(民法466条の2)。

3-2.将来債権の譲渡を明記

改正民法では、将来債権の譲渡についても明確な規定がおかれました。将来債権譲渡とは、債権譲渡契約の時点で発生していない債権を譲渡することです。

一般的な売買取引のケースではすでに対象物が存在するケースが大多数です(コンビニエンスストアでサンドウィッチを買う際、サンドウィッチは既に手元に存在してますよね)。

債権譲渡担保の場合、『将来』の債権不払いに備えて担保するわけですから譲渡対象も将来の債権となる可能性があります。この「契約時には存在していない」債権を譲渡するのが将来債権譲渡です。

改正前の民法では将来債権譲渡の可否について明確な規定がありませんでしたが、改正民法においては将来債権の譲渡が可能であると明記されました(民法466条の6)。

3-3.異議をとどめない承諾の廃止

民法改正により、第三債務者の異議をとどめない承諾に関する規定が抹消されました。

異議をとどめない承諾とは、第三債務者が何の抗弁も主張せずに支払い義務を認めると、第三債務者が主張できたはずの抗弁を主張できなくなってしまう、というものです。

たとえば先のケースにおいて、C社がB社に対し契約の取消権を有していたとします。このような場合、A社のC社への債権支払を要求に対して、C社は契約を取り消すことで支払いを免れることができます。ここでC社が何も異議をとどめずにA社に対し支払いますと答えてしまった場合、C社は契約の取消権を行使できなくなってしまいます。この際のC社の承諾を異議をとどめない承諾と言います。

異議をとどめない承諾によってC社による抗弁が全面的に切断されてしまうとするとC社にとってはあまりに酷です。そこで改正民法では異議をとどめない承諾による効果が「否定」されました。

改正法のもとでは、C社は「抗弁権を放棄します」という明確な意思表示をしない限り、A者に対して取消権を主張することで債権の弁済を免れることができます。

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4.債権譲渡担保の設定方法

債権譲渡担保を設定するときには、以下の流れで進めましょう。

4-1.譲渡対象の債権を明らかにする

まずは譲渡対象の債権を明確化しましょう。

譲渡対象債権とは、債権譲渡担保に入れられる債権です。先の例で言えば「B社のC社に対する債権」が譲渡対象債権となります。

譲渡対象が明確でない場合は、債権譲渡担保契約自体が無効となってしまうので注意しましょう。たとえば契約書に「B社の有するすべての債権を譲渡する」などと記載した場合は、「B社のC社に対する債権」を明確に特定できないため、契約が無効になる可能性が高くなります。

特に、債権譲渡担保の場合は将来発生する債権を担保に入れるケースが多いです。将来発生する債権を特定することは容易ではありません。以下の内容を指定することで対象を明確にしておきましょう。

  1. 債権の種類:建築請負代金、運送料金など
  2. 第三債務者の特定:第三債務者の名称や本店所在地など
  3. 債権が発生する期間:2021年3月1日~2022年2月28日など

4-2.被担保債権を明らかにする

次に、被担保債権を明らかにしましょう。被担保債権とは「債権譲渡担保によって担保される債権」です。

たとえばA社のB社に対する債権を担保するのであれば、被担保債権はA社のB社に対する債権となります。

被担保債権もなるべく特定しなければなりません。「A社のB社に対するすべての債権」というような漠然とした特定では債権譲渡契約の効果が認められない可能性があります。

債権の種類や発生時期などについてはできる限り明確にしておきましょう。

4-3.債権譲渡通知や登記について定める

債権譲渡を行うときには、債権譲渡の通知や登記に対する配慮も必要です。

債権譲渡の通知とは、第三債務者に対し「債権譲渡がありました」と通知することです。債権者債務者間で債権譲渡が行われたとしても、これが第三債務者に通知されなければ第三債務者は債権譲渡を知る術がありません。事情が分からない中、突然債権者から請求を受ければ第三債務者は混乱してしまいます。そのため、債権譲渡があったことを第三債務者へ主張するために債権譲渡の通知が必要となります。

なお、債権譲渡の通知は債務者が行わねばなりません。先の例で言えばB社がC社に対し通知しなければなりません。そのため、B社の協力が必要ということとなります。債権者(A社)が直接第三債務者へ債権譲渡通知を送っても対抗要件として認められないので注意しましょう。

なお、債権譲渡の登記によっても債権譲渡の通知と同様の効果が認められます。登記することで債権譲渡が公示されるので、あえて通知をしなくても債権者は第三債務者へ債権譲渡を主張できる状態となります。ただし、債権譲渡の登記には債務者の協力が必要となります。

第三債務者に通知をしないとどうなる

「債務者から第三債務者に対し債権譲渡の通知を行なわない」「債権譲渡の登記をしない」場合、債権者は第三債務者に対し請求することはできません。

実務上、債務者は「取引先の信用を失いたくない」という理由で「債権譲渡通知」に拒否感を示すケースが多数です。このような場合には、債務者の了承を得て債権譲渡登記をしておくことを推奨します。

4-4.債権譲渡契約書を作成する

債権譲渡担保の条件が決まったら、合意内容を債権譲渡契約書にまとめます。

契約書には最低限、以下のような内容を記載してください。

  • 譲渡対象の債権
  • 債権譲渡登記について
  • 債権譲渡通知について
  • 債権者が自ら債権回収を実行できる条件について

債権譲渡契約書は、公正証書の形で作成しておくと安心です。

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5.債権譲渡担保の注意点

債権譲渡担保を設定するときには、以下の点に注意しましょう。

5-1.譲渡禁止特約に注意

債権には、譲渡禁止特約がついているケースが少なくありません。

譲渡禁止特約がついていても債権譲渡は原則有効ですが、譲受人(債権者)が悪意または重過失の場合、第三債務者から支払を拒絶される可能性があります。

譲渡禁止特約を知っている場合はもちろんのこと、少し調べれば譲渡禁止特約の存在がわかる場合にもそういった債権を担保にとってはなりません。

債務者と第三債務者との間で締結された契約書の内容を確認し、譲渡禁止特約がついていないかチェックしてから債権譲渡担保の契約を締結しましょう。

5-2.債権の特定性に注意

債権譲渡担保をとるときには、必ず対象債権が特定されていなければなりません。将来債権だからといってあいまいな記載をしていると、契約自体が無効になるリスクが高まります。

また契約時点で債権が特定されていないからといって白紙にしておき後から債権者が好きに記入できるといった対応もしてはなりません。後に裁判になった際に無効となる可能性が高くなります。

将来債権をどのように特定すればよいかわからない方は、弁護士に相談しましょう。

5-3.取り立て権限の消滅を明記

将来債権を担保として譲渡した場合でも、債務者がきちんと債権者へ支払いを続ける限りは債権譲渡を実行する必要がありません。債務者自身が第三債務者へ支払を請求して回収することになります。

債務者の経営状況というのは外からはなかなか判断がつきません。場合によっては、不払いを起こす寸前の債務者が先に第三債務者から回収してしまい、債権者が権利行使できないというケースもあるかもしれません。

このようなリスクを抑えるため、債務者が不払いを起こした時点で債務者自身の取り立て権限が失われるといった内容を明確化しておく必要があります。

6.債権譲渡担保の設定は弁護士へ相談を

債権譲渡担保を設定するときには、法律面からのさまざまな配慮が必要です。自身の判断で条件を決めたり契約書を作成したりすると、後で無効になるリスクもあるので注意してください。

恵比寿にある鈴木総合法律事務所では企業法務に力を入れており、債権回収の支援についても積極的に取り組んでいます。

効率的な債権回収方法をお知りになりたい方はぜひお気軽にご相談ください。

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