交通事故で高次脳機能障害になってしまったときの対処方法について解説

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弁護士 鈴木 翔太
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交通事故で頭を強打したり強く揺さぶられたりすると「高次脳機能障害」になってしまう可能性が高まります。

高次脳機能障害になると認知症に似た症状が出ます。これまで普通にできていたこともできなくなるなど日常生活や仕事に大きな支障が出てしまう方も少なくありません。まずは症状や治療方法を知り、後遺障害認定を受けて適切な賠償金の支払いを受けましょう。

今回の記事では、交通事故で高次脳機能障害になったときに認定される後遺障害の等級や対処方法を解説します。

高次脳機能障害とは

交通事故で強く頭を打った場合や頭を強く揺さぶられた場合などに高次脳機能障害が起こる可能性があります。

高次脳機能障害とは、外傷や内部的な疾患などの要因で脳が損傷し、認知機能が失われる障害です。認知能力が低くなるので、具体的な症状は「認知症」と似ています。特に頭蓋骨骨折した場合、脳内出血やくも膜下出血、硬膜下出血などの症状が出て一定時間意識不明になると、高次脳機能障害になるケースが多く見られます。

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高次脳機能障害の症状

01.高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害になると、以下のような症状があらわれます。

  1. 記憶障害
  2. 注意障害
  3. 遂行機能障害
  4. 今まで普通にできていたことができなくなる
  5. 社会規範やルールを守れなくなる
  6. 性格の変化

①の記憶障害の症状が出ると、新しく物事を覚えられなくなったり、過去の物事を忘れてしまったりします。日付や時間などの基本的なこともわからなくなるケースもよくあります。

②の注意障害の症状が出ると、集中力がなくなり、ミスが増えます。周囲からは「飽きっぽくなった」と思われるケースもあります。

③の遂行機能障害の症状が出ると、物事をやり遂げる能力が低下します。人に言われないと何もできなくなったり、計画を立てられなくなったり計画通りに物事を進められなくなったりします。

また、これまで普通にできていたことをできなくなってしまうことがあります(④)。たとえばボタンをとめたり着替えや歯磨きをしたりするのが難しくなる方、言葉が出にくくなるなどです。

その他、大人であれば当然守るべき社会の規範やルールを守れなくなり、非常識的ととらえられるような言動をしてしまうケース(⑤)、これまで温厚だった人物が突然攻撃的になる、逆上しやすくなる、あるいは無気力になってしまうといった性格に変化がみられる症状もあります(⑥)。

02.症状の程度や内容はさまざま

ひと言で高次脳機能障害といっても、症状の内容や程度は人によって大きく異なります。軽い方なら日常生活も仕事も続けられますが、重症になると家族が常時監視しなければならなくなるケースもあります。

状況に応じて最適な治療を受ける必要があるといえるでしょう。

03.本人に自覚症状がないことも多い

高次脳機能障害となった場合、本人が症状を自覚しない(できない)ケースがあるので注意しましょう。他方で本人と関わる方々(家族や知人、会社の同僚等)は、マイナスの影響を受けることとなるので変化に気づきやすいといえます。

交通事故前と後で、仕事やプライベートにおける周囲の感じや対応に異変を感じたら高次脳機能障害になっている可能性を疑ってみてください。

また、事故被害者の周囲の方(家族や同僚)は、被害者の挙動や言動に目に見えるマイナスの変化が出ている場合は、高次脳機能障害になっている可能性を本人に伝え、病院に行くよう案内しましょう。

高次脳機能障害の治療方法

高次脳機能障害になったら、どのように治療を進めるのでしょうか?

01.脳神経外科を受診する

高次脳機能障害の治療を受けられる診療科は「脳神経外科」です。

軽い症状であれば、まずはお近くの脳神経外科クリニックを受信してMRIなどの検査を受けましょう。必要に応じてより大きな病院の紹介を受けてください。

症状が重い場合には、はじめから大病院を受診してもかまいません。ただし高次脳機能障害は極めて専門性の高い分野なので、専門医の在籍している病院に行くようお勧めします。

02.リハビリを行う

高次脳機能障害の治療は、基本的にリハビリテーションです。医師だけではなく理学療法士、言語聴覚士、臨床心理士等の各種の専門家が連携して患者の支援を行います。作業の反復やグループ訓練などを行って社会復帰を目指す場合もあります。

高次脳機能障害は、認知症と違ってある程度は回復する可能性のある症状です。事故後、すぐに的確な治療を受けてリハビリを継続すれば、ある程度までは脳の機能が回復する可能性があります。

高次脳機能障害に専門的に対応している病院であれば、社会復帰に向けた支援活動を行っている機関を紹介してくれたりアドバイスをくれたりするでしょう。

事故で頭部をケガしたら、高次脳機能障害に専門的に対応している病院を探して早めに受診することが重要です。

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高次脳機能障害で認定される後遺障害等級

交通事故で高次脳機能障害になってしまった際は、「後遺障害等級認定」の手続きを進めましょう。

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高次脳機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級は以下の通りです。

【後遺障害等級と後遺障害慰謝料の目安】

認定等級後遺障害の内容後遺障害慰謝料の金額
(弁護士基準)
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの2800万円
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの2370万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの1990万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1400万円
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの1000万円
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの690万円

 

なお、上記で示した後遺障害慰謝料の金額は「弁護士基準」で計算したものです。任意保険会社と示談交渉する際に提示される慰謝料は保険会社基準で計算されており、上記の金額より大幅に低くなる例がほとんどです。

高次脳機能障害で弁護士基準による高額な慰謝料を請求するには、多くの場合、弁護士に示談交渉を任せるか訴訟を起こす必要があります。

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また、交通事故で後遺障害認定された場合、「後遺障害逸失利益」も受け取ることができる可能性があります。後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって得られなくなった将来の収入です。

高次脳機能障害になって仕事ができなくなったり制限されたりすると収入が減少することが想定されます。この減少分の補填として「逸失利益」を支払ってもらうことができるのです。

後遺障害逸失利益を請求できるのは、基本的に事故前に働いていた方です。会社員、自営業者、アルバイトなどの方であれば問題なく請求できますし、主婦でも逸失利益が認められます。

金額は事故前の年齢や年収によって大きく異なりますが、1~3級に認定されると1億円を超えるケースもあります。

なお、無職無収入の方、会社役員の方、年金生活者の場合には請求できない可能性が高くなります。不動産や株式などの不労所得のみで生活している場合にも逸失利益は払われません。

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弁護士 奥野

高次脳機能障害で後遺障害認定されるための要件

高次脳機能障害になったときに後遺障害認定を受けるには、以下の要件を満たさねばなりません。

01.高次脳機能障害の原因となる診断名がついている

高次脳機能障害の原因となりうる診断名がついていることが必要です。たとえば以下のような診断名がこれに該当します。

  • 頭蓋骨骨折
  • 脳内出血
  • クモ膜下出血
  • びまん性軸索損傷

02.一定の意識障害が発生した

交通事故後に一定期間の意識障害が発生したことが要求されます。基本的には下記のいずれかに該当しなければなりません。

  • 交通事故後、6時間以上意識混濁状態が継続した
  • 交通事故後、1週間以上健忘状態や軽度意識障害状態が続いた

03.画像によって異常所見を立証できる

CTやMRIなどの画像検査によって脳内出血などの所見を確認できなければなりません。

特にびまん性軸索損傷の場合、事故当初からの脳の状態の変化が重要となる可能性があります。事故当初から病院に行かないと後に後遺障害の証明が難しくなる可能性があるので、交通事故に遭ったらすぐに受診することが重要です。

04.高次脳機能障害に典型的な精神障害が現れている

高次脳機能障害における典型的な精神障害が現れているかどうかも重要です。

  • 日常生活で通常できていたことができなくなり、支障をきたしている
  • 性格が変わった
  • 感情をコントロールできない

上記のような事情を確認できなければなりません。

05.高次脳機能障害の証明方法

高次脳機能障害で後遺障害認定を受けるには、以下のような書類が必要です。

  1. 診断書、後遺障害診断書
  2. 頭部外傷後の意識障害についての所見
  3. カルテや看護記録
  4. CTやMRIなどの画像検査結果
  5. 神経系統の障害に関する医学的所見
  6. 日常生活状況報告書
  7. 看護日誌

①は、医師に作成してもらうものです。通常の診断書だけではなく、後遺障害診断書も作成してもらわねばなりません。後遺障害診断書は自賠責に定められた書式があるので、医師に渡して記入してもらいましょう。

②は、交通事故後に一定の意識障害が発生した事実を証明するための資料です。医師に作成してもらう必要があります。自賠責に専門の書式があるので、入手して医師に作成を依頼しましょう。

③は、病院に保管されているカルテや看護記録です。

また、高次脳機能障害で後遺障害認定されるには、CTやMRI、レントゲンなどで異常所見を確認できなければなりません。そのため④のような画像検査結果は必須となります。

⑤は、患者の日常生活における動作や認知、情緒や行動障害の症状などについて医師が確認し、作成する資料です。患者や家族の説明をもとに医師が作成します。ただし医師は患者と一緒に暮らしているわけではないのできちんと作成してもらうには患者や家族が医師に正確に状況を伝えなければなりません。自賠責に専用書式があるので、入手して医師に作成を依頼しましょう。

⑥は、患者や家族が作成する報告書です。日常生活でできることとできないこと、問題行動の有無や感情の起伏、学校や職場への適応状況などを記入します。また、家族が患者を看護している場合、自分たちで作成した看護日誌(⑦)も後遺障害認定資料となります。

高次脳機能障害で適切な賠償金を受け取る方法

高次脳機能障害となってご本人やご家族がつらい思いを強いられても、適切な金額の賠償金を受け取れるとは限りません。きちんと支払いを受けるには、以下のように対応しましょう。

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01.適正な等級の後遺障害認定を受ける

交通事故で正当な金額の賠償金を受け取るには後遺障害認定が極めて重要です。後遺障害認定されれば慰謝料や逸失利益を受け取れるので一気に賠償金が増額されます。

また、後遺障害の等級によっても慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わります。症状の程度に応じた適正な等級の認定を受けなければなりません。

高次脳機能障害の立証には多数の資料が必要ですし医師との連携も要求されるでしょう。自分たちだけで対応するのが難しければ弁護士に相談してみてください。

02.弁護士基準で賠償金を計算する

高次脳機能障害が認められ後遺障害認定を受けることができれば億単位の賠償金を請求できるケースも少なくありません。しかし、被害者やご家族がご自身たちで示談交渉すると賠償金額を大きく減額されてしまう可能性が高いので注意しましょう。

基本的に、保険会社は保険会社基準で計算します。この保険会社基準は弁護士基準よりも低額であることがほとんどです。たとえば後遺障害慰謝料の場合、保険会社基準と弁護士基準を比較すると、2~3倍の違いが出ることも珍しくありません。

なお、弁護士基準での正当な請求は弁護士でないと非常に難しく、個人や家族が弁護士基準で請求しても通してもらえないことがほとんどです。賠償金を不当に減額されないためにも弁護士に示談交渉を依頼することを推奨します。

さいごに

東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、交通事故の被害者事案について多数の対応実績を有しております。高次脳機能障害になってしまった事案についても受け付けております。

ご自身で示談交渉をされている方、保険会社からの提示金額に納得できない方、どのように治療や後遺障害認定手続きを進めてよいかわからない方、ぜひとも一度ご相談ください。

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弁護士 浜島
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