個人再生は、個人が抱えている借金(負債)を大きく減額することができる法的整理手続きです。
個人再生は自己破産と比較して以下の点でメリットがあります。
- 資格制限がない
- 住宅を保持しながら債務の整理が可能
- 破産においては換価処分の対象となる財産も保持することが可能
- 免責不許可事由の規定がない
とはいえ、個人再生の申立をするには弁護士費用や裁判所に納める費用、個人再生委員に対する報酬等でそれなり費用がかかります。
今回の記事では、個人再生の申立を行う際に生じる費用について解説します。
費用の内訳
弁護士に依頼して個人再生を申立する際に要する費用は以下の3つに大別できます。
- 依頼した弁護士に支払う報酬等
- 印紙代や官報公告費用等の申立時に係る費用
- 個人再生委員に対する報酬
なお、これらの費用は依頼する弁護士の報酬体系や管轄裁判所(申立を行なう裁判所)によってまちまちです。
依頼した弁護士に支払う報酬
個人再生の申立は、弁護士に依頼して行うのが通常です。依頼を受けた弁護士が申立書の作成や申立後の再生計画案等の作成を行います。
それでは弁護士に個人再生の申立を依頼した場合、どれくらいの弁護士費用が掛かるのでしょうか?
費用については依頼する事務所の報酬体系にもよるため一概には申し上げられませんが、だいたい30~50万円で設定されている事務所が多いように見受けられます。また、住宅ローン特則(住宅を維持するための特別な申請)をつける場合には、弁護士費用を10万円前後上乗せされる事務所がほとんどです。
弁護士費用がいくらになるのかについては依頼する弁護士にしっかりと確認しましょう。なお、弁護士費用についてはほとんどの事務所で分割支払いに応じております。
印紙代や官報公告費用等の費用
個人再生は裁判所を介した手続きですので、申立に際し下記の費用を支払必要があります。
費用の種類 | 金額 | 内容 |
申立手数料 | 10,000円 | 収入印紙で納付する手数料 |
郵券 | 2,000円~ | 債権者への書類送付に使用する切手代 |
官報公告費 | 約13,000円 | 官報への掲載費用 |
費用として約25,000円かかると見込んでおきましょう。なお、予納郵券については債権者数や申立先の地方裁判所(管轄裁判所)によっては増減します。
個人再生委員に支払う費用
01.個人再生委員とは
個人再生委員は、裁判所が選任する弁護士です。申立書に記載された財産や収入状況の調査、履行可能性の有無の判断、再生計画案の確認等の実務を行います。いわば個人再生手続きの監督をする立場の人です。
個人再生委員は選任されないこともある
東京地方裁判所を始め多くの管轄では個人再生委員が選任されますが、一部の地方裁判所では個人再生委員が選任されないこともあります。
02.報酬
個人再生委員が選任された場合には個人再生委員に対する報酬が発生します。個人再生委員に対する報酬額は管轄裁判所によりけりですが15~30万円の範囲内です。なお、東京地方裁判所の場合は、個人再生委員に対する報酬額は15万円です。
報酬の支払方法
個人再生委員に対する報酬の支払方法は少し特殊で、たいていは個人再生申立手続きの中で行なわれる履行テストを介して行われます(後述)。
履行テスト
個人再生は、再生計画案に従って負債額を圧縮し、これを向こう3年間(事情がある場合は最長5年)で返済する手続きです。そのため、圧縮された金額を3年~5年で支払うだけの資力がある方でないと手続きを行なうことができません。
たとえば個人再生によって500万円の負債を100万円に減縮する場合、100万円を3年36回払いで弁済するとなると毎月の弁済額は約2.8万円となります。この人が毎月2.8万円を弁済できるかどうかを確かめなければなりません。
履行テストとは個人再生によって減縮された負債を分割で返すことができるのかを判断するためのテストです。
個人再生手続きにおいては、個人再生手続きの申立後から手続きが終結するまでの期間(約半年間)、弁済予定額と同額を再生委員の指定する口座に振り込ませることが通常です。先の例で言えば2.8万円を個人再生委員の口座に振り込ませることで、申立した人の自由には使わせない状態にし、この状況でも生活が維持できているかを確認します。
当然ここで生活が維持できない場合には再生計画に基づく弁済を継続することができないと判断され、個人再生の認可を得ることはできません(不認可相当)。
再生委員への報酬の支払方法
履行テストでは、個人再生委員の指定する口座に返済見込み額を入金することとなります。手続き終結後、個人再生委員は入金された金額を返金してくれるのですが、その際に報酬を差し引きます。
先の例で言えば2.8万円を約半年支払うこととなるので再生委員の口座には16.8万円が積み立てられることとなります。手続き終結後、再生委員はこの16.8万円から報酬15万円を差し引いた1.8万円を再生債務者に返金してくれます(東京地裁管轄の場合)。
このように個人再生委員への報酬は報酬として直接支払うのではなく、履行テストとして入金した金額から差し引かれる形で支払うこととなります。なお、地裁によっては支払方法が異なることがあります。
さいごに
個人再生の申立をするにはそれなりの費用がかかりますが、手続きによって得られる効果はほとんどの場合で費用以上のものとなります。
多額の負債でお悩みの方は、依頼するしないは別として一度弁護士に相談してみることをお勧めします。悩みを打ち明けることで借金による精神的ストレスが軽くなるかもしれません。
東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、個人の借金問題について多数の解決実績を有しております。個人再生はもちろんのこと、破産や任意整理についても注力しております。債務整理の相談は無料で行なっておりますのでお気軽にお問い合わせください。