未成年の子どもがいる夫婦が離婚する際は、親権者を決めなければなりません。現行法では、父母のどちらか一方にしか親権が認められないためです。
親権について夫婦間でしっかりと話し合い合意ができればよいですが、話し合いで決着しないことも往々にしてあります。
その場合は裁判で決着をつけることとなりますが、あらかじめ適切に対処しておかないと親権を相手にとられてしまうリスクがあります。
今回の記事では、親権獲得を有利に進める方法について解説します。
離婚後は親のどちらかしか親権者になれない
親権者とは、子どもの財産管理を行い、子どもと一緒に住んで養育監護する親のことです。親権者でない場合は、基本的に子どもと一緒に住めませんし財産管理もできません。
日本の法律では、婚姻時は、父母の両方が子どもの親権者となっています。これを共同親権といいます。
他方で、離婚後は単独親権となります。そのため、離婚する夫婦においてはどちらか一方しか親権者になることができません。
そのため、夫婦が離婚する際は、夫婦で話し合って子どもの親権者を決める必要があります。
親権者の判断基準
父母ともに子どもの親権を希望している場合は、当事者間の話し合いでは親権者を決めることができません。この場合は、調停や審判、裁判を行い、親権者を決める必要が出てきます。
家庭裁判所が親権者を判断するときの基準としては以下のものがあります。
01.これまでの養育実績が高い
親権は、子どもが生まれてから現在に至るまで、主として子どもの養育を行ってきた側に認められやすくなっています。
02.子どもとの関係が良好
親権は、現在の子どもとの関係が良好な親に認められやすい傾向にあります。子どもがなついているかどうかも重要視されます。
また、子どもの年齢が10歳を超える頃から、子どもの意思も尊重されるようになりますし、子どもが15歳以上になると子ども自身が親権者を選ぶことができます。
そのため、子どもと良好な関係を築いておくことが必要と言えます。
03.子どもと現在一緒に暮らしている
夫婦が離婚前に別居している場合、現在子どもと同居して養育している親が優先される傾向にあります。別居親に親権を認めた場合、子どもの居住環境や学校などが変わってストレスを与えてしまうためです。
04.子どもと一緒に過ごせる時間が長い
親権は、離婚後の生活で、子どもと一緒に過ごせる時間が長い親に認められる傾向にあります。裏を返せば、フルタイムでほとんど子どもと顔を合わせられない親には親権が認められにくいといえます。
05.健康状態が良好
健康状態が良好な親の方が子どもを育てるのに望ましいといえますので、親権は健康状態が良好な親の方が優先される傾向にあります。
なお、うつ病などの病気を患っていても子どもの養育に支障のない程度であれば親権者になることができます。
06.居住環境が良好
親権者を定める際は、子どもと同居する予定の居住環境も重視されます。そのため、家が狭すぎる、周囲の治安が極端に悪いなどの問題がある側は、親権者になりにくいといえるでしょう。
なお、ただ家が大きく立派なら良いわけではありません。普通程度の生活ができるのであれば問題視されないといわれています。
07.養育できるだけの経済力がある
親権を得るためにはある程度の経済力があった方がよいです。
なお、経済力は必要条件ではありません。生活保護を受けていても、相手から養育費をもらうことで子どもを育てられることを条件に親権が認められた事例も多数あります。
08.離婚後、相手との面会交流に積極的
離婚後、相手親との面会交流を積極的に行う姿勢を見せると、親権を認められやすくなるでしょう。
親権獲得を有利に進める方法
前章の内容を踏まえ、親権獲得を有利に進めるために対応しておくべきことを見てみましょう。
01.別居時に子どもと離れない
子どもと同居している親が親権者として優先される傾向が非常に強いです。
そのため、離婚前に別居をする場合に、子どもと離れてしまうと親権を獲得するのが難しくなってしまいます。別居時に子どもと離れてはなりません。子どもと一緒に家を出るか、相手に1人で出ていってもらうようにしましょう。
02.養育に積極的に関わる
子どもの養育に関わる親が親権者として優先されます。
子どもが小さければお風呂や食事、おむつ換えなどの世話、子どもが大きくなってきたら成長に応じて生活に積極的に参加していきましょう。
03.子どもと接触する機会を増やす
子どもの学校や幼稚園などとの連絡を積極的に引き受ける、宿題や習い事をみてあげる、休日は一緒に過ごすなど、子どもとの接触を増やしましょう。
04.子どもとの関係を良好にする
子どもがなついている親の方に親権が認められやすい傾向があります。
また、子どもが大きい場合は、子ども自身の意思も尊重されます。怖がらせたり嫌がられたりすると、子どもが自分を選んでくれないということもありますので良好な関係を作るように努めましょう。
05.仕事を調整する
フルタイムで忙しく働いている方は、子どもと一緒に過ごす時間をとれないと判断され、親権を認めてもらいにくい傾向にあります。時短やフレックスタイムなどを利用して、仕事時間を調整するようにしましょう。
06.監護補助者を用意する
仕事が忙しくて日中子どもの面倒をみられない方(特に父親側)は、監護補助者を用意しましょう。
監護補助者とは、子どもの養育をサポートする人のことです。
たとえば、祖父祖母に同居してもらい、看護補助者として養育を手伝ってもらうようにしましょう。
07.離婚を保留にする
子どもが乳幼児のときに離婚すると、ほとんどのケースで母親に親権が認められます。
父親が親権を獲得したければ、子どもが学童期に入るまで離婚を保留にするのが良いでしょう。
さいごに
子どもの親権獲得を有利に進めたいのであれば、前々から準備をしておくことが重要となります。
たとえば子どもを相手に連れて行かれてしまったら、その後に取り戻すのは難しくなるでしょう。養育実績を作ろうとしても一朝一夕にはできません。親権を獲得したいのであれば、事前にしっかりと準備しておくべきです。
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