痴漢や盗撮行為を繰り返していると、見つかって逮捕される可能性があります。
痴漢の場合、本当はやっていないのに間違いで逮捕されるケースも少なくありません。
もしも痴漢や盗撮などの性犯罪で逮捕されたら、早急に弁護士を呼んで身柄解放や不起訴へ向けた活動を開始しましょう。
今回は痴漢や盗撮、強制わいせつなどの性犯罪で逮捕された場合の対処方法について、弁護士が解説します。




1.痴漢の罪と刑罰

痴漢は、相手の意に反して羞恥心をおぼえさせるような方法で、身体を衣類の上からあるいは直接身体触るなどひわいな言動をすることです。相手が嫌がっているのに、性的な羞恥心を抱かせるような方法で身体を触ったら痴漢になると考えましょう。
典型的な痴漢行為は、以下のようなものです。
- 電車やバスの中で女性の胸やお尻を触った
- 花火大会やコンサート、イベント会場で近くにいた女性の胸やお尻を触った
- 居酒屋で近くにいた女性の身体を触った
痴漢に適用される刑罰
痴漢は「迷惑防止条例」によって禁止されています。
迷惑防止条例とは、各都道府県が地域内での暴力的な行為や迷惑行為を規制する条例です。
禁止されるのは「公共の乗り物や場所」内での行為です。電車やバス、公道や公園などの公共の場所で痴漢をしたときに迷惑防止条例違反になると考えましょう。
罰則は地域によっても異なりますが、東京都の場合には「6か月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」とされています。
どこの地域でも似通った内容ですが、東京都の場合、常習になると「1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑」にまで刑罰が引き上げられます。
強制わいせつ罪になるケース
痴漢が悪質な場合には「強制わいせつ罪」が成立する可能性があります。たとえば電車の中であっても、衣類の下に手を差し込んで性器を執拗になで回した場合などです。
また自宅内などの閉じられた空間で痴漢行為をした場合、迷惑防止条例違反になりませんが、強制わいせつ罪は成立します。刑罰は「6か月以上10年以下の懲役刑」で、迷惑防止条例と比べると、かなり重くなります。
冤罪について
痴漢は、特に「冤罪(えん罪)」の多い犯罪類型です。えん罪とは、本当はやっていないのに犯人扱いされて有罪にされてしまうことです。「無実の罪」というとわかりやすいでしょう。満員電車で痴漢と間違われてそのまま逮捕されるケースもありますし、女性が示談金目当てで痴漢をでっちあげる場合もあります。
えん罪で逮捕されたときには、当初から一貫した対応が必要です。厳しい取り調べに耐えて否認を貫き、無罪の証拠を集めて無実の証明をしなければなりません。対応に不備があると本当に裁判で有罪になってしまう可能性があるので、すぐに弁護士を呼んで対応しましょう。

2.盗撮の罪と刑罰

盗撮が趣味の方や盗撮によってストレス解消している方もいらっしゃいますが、盗撮は法律で禁止されている犯罪行為です。
典型的には以下のようなパターンがあります。
- 電車やバスなどの乗り物の中でスマホのカメラを使って盗撮
- エスカレーターやエレベーターで女性のスカートの下にカメラを差し向けて盗撮
- 出会い系サイトで会った女性とデート中にスカートの下にカメラを差し向けて盗撮
- 更衣室やトイレなどの場所にカメラを設置して継続的に盗撮
上記のような行為が発覚すると、実際に逮捕されるケースも多いので注意しましょう。
盗撮に適用される刑罰
盗撮を規制する法律も、都道府県の迷惑防止条例です。
都道府県によって規定内容が多少異なりますが、一般的には「人に羞恥心や不安をおぼえさせる方法で、下着や身体などを撮影、あるいはカメラを向ける」と、迷惑防止条例違反となります。また迷惑防止条例が規制するのは、通常「公共の場所や乗り物内」の行為です。閉じられた空間内での盗撮は処罰対象になりません。
刑罰は、東京都の場合「1年以上の懲役刑または100万円以下の罰金刑」とされています。
他県では「6か月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」とされる地域も多くみられます。
軽犯罪法違反
他人の家の中などの閉じられた空間で盗撮した場合、多くの都道府県では迷惑防止条例違反にはなりません。
ただし「軽犯罪法違反」となる可能性があります。軽犯罪法違反の刑罰は「拘留または科料」です。
拘留…30日未満の身柄拘束の罪。30日に満たない間、刑務所などの施設に収容されます。
科料…1万円未満の金銭支払いの罪。9,999円までの罰金刑と理解するとわかりやすいでしょう。
3.強制わいせつの罪と刑罰

性犯罪の中でも悪質な場合、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。
強制わいせつ罪とは、暴行や脅迫を手段として被害者にわいせつな行為を強要する犯罪です。
性交や性交類似行為を強要するとさらに重い「強制性交等罪」が成立するので、強制わいせつ罪は性交等を強要しないケースに限定されます。
典型的な強制わいせつの行為は以下のようなものです。
- 夜道でいきなり女性に抱きつき押し倒した
- 居酒屋で隣にいた女性にいきなりキスを強要した
- 家の中で、女性が嫌がっているのにキスをした、抱きついた、押し倒した
- 相手の服を脱がせた、身体を触った
- 悪質なセクハラ
強制わいせつ罪に適用される刑罰
強制わいせつ罪の刑罰は「6か月以上10年以下の懲役刑」です。痴漢や盗撮のような罰金刑はなく、懲役刑の期間も長くなります。
悪質な場合には初犯でも実刑になる可能性が高いので、万一逮捕されたときには早急に弁護士を呼んで不利益を避けるための対応を進めましょう。

4.逮捕後の流れ

痴漢、盗撮、強制わいせつなどの性犯罪で逮捕されると、以下のような流れで刑事手続が進みます。
4-1.逮捕後48時間以内に検察官へ送致
逮捕されたら警察官から取り調べを受け、48時間以内に検察官へと送致されます。
4-2.24時間以内に勾留決定されるか釈放される
検察官の判断により、引き続き「勾留」(身柄拘束)するかどうかが決められます。勾留が必要と判断されれば裁判所へ勾留請求をされ、身柄拘束が続きます。勾留が不要と判断されれば身柄は釈放されます。
4-3.勾留されると、最大20日間身柄拘束される
勾留された場合、最大20日間身柄拘束が続きます。その間は警察官から取り調べを受けたり実況見分への立ち会いをさせられたりします。
4-4.起訴か不起訴か決定される
勾留期間が満期になると、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。
勾留されなかった場合、捜査終了しだい検察官が処分決定します。
4-5.起訴されたら刑事裁判になる
起訴された場合、刑事裁判になります。
略式裁判であれば、すぐに身柄を釈放され罰金を納付すれば手続きが終わります。ただしこの場合でも「前科」はつくので注意しましょう。
通常裁判になった場合、引き続いて身柄拘束されます。裁判に出廷して最終的に刑罰を含めた判決を下されます。なお起訴後は保釈申請が可能となるので、保釈金を積めば身柄を釈放してもらえる可能性があります。
5.痴漢、盗撮、強制わいせつで逮捕されたときの対処方法
痴漢や盗撮などの性犯罪で逮捕された場合、罪を認めるかどうかで大きく対処方法が変わってきます。
5-1.認める場合
罪を認める場合には、以下のような対応が重要です。

身柄解放へ向けた活動
逮捕された状態では、社会活動を何もできず不利益が大きくなっていきます。まずは身柄の早期解放を目指しましょう。
逮捕後、勾留をしないように検察官へはたらきかけたり、勾留されたらその効果を争ったりします。勾留を避けられない場合には、早期に「不起訴処分」を獲得することにより、身柄の釈放と刑事手続からの解放を目指します。
身柄解放へ向けて活動するには外部の弁護士によるサポートが必須なので、逮捕されたらすぐに刑事弁護人を選任しましょう。

会社への対応
会社員の方は、勤務先への対応が必要です。何の報告もなく無断欠勤が続けば解雇されてしまうおそれも高くなるでしょう。
弁護士が会社と連絡をとり、被疑者のプライバシーに配慮しながら状況を説明して処分を待つよう伝えます。きちんと対処すれば、突然の解雇など早急な処分は行われないのが通常です。
示談を進める
痴漢などの犯罪行為をしてしまった場合、早めに被害者との示談を進めましょう。示談が成立すれば検察官が不起訴処分にする可能性が大きく高まります。
被疑者本人や家族が示談を進めるのは困難なので、刑事弁護人に任せましょう。刑事弁護に慣れた弁護士であれば、被害者へのコンタクトのとり方や話の進め方などについてノウハウを持っているので、スムーズに示談を成立させやすくなります。
不起訴処分の獲得
性犯罪で立件されてしまったとき、もっとも不利益を小さくする方法は「不起訴処分」の獲得といって過言ではありません。
そのため、以下のような対応を進めましょう。
- 被害者と早期に示談を成立させる
- しっかり反省の態度を示す
- 悪質ではないと考えてもらう
- 親族などによる監督を期待できる状況を示す
示談交渉や検察官への状況説明、不起訴申し入れなどは刑事弁護人が行います。取り調べに対してどのような態度をとるべきかについても弁護士が説明しますので、逮捕されたらすぐに弁護士を呼んでください。

5-2.否認する場合

えん罪で逮捕され、罪を認めないケースでは以下のような対応が重要です。
会社への対応
えん罪のケースでも、勾留によって出社できなくなる問題は同様に発生します。刑事弁護人を選任して会社とのやり取りを任せましょう。
無罪の証拠を集める
えん罪で不起訴処分を獲得し早期の身柄解放を目指すには、積極的な無罪立証をすべきです。痴漢していなかったことがわかる資料を集めましょう。
たとえば現場検証を行って被害者の言い分が不合理であることを指摘する、目撃者を探す、鑑定を行うなどです。
逮捕された被疑者本人が無罪の証拠を集めるのは不可能なので、弁護人に任せましょう。
不起訴処分の獲得
日本の刑事裁判では有罪率が99.9%を超えているので、いったん起訴された後に無罪判決を獲得するのは極めて困難です。えん罪で逮捕され、前科を避けるには不起訴処分を目指す必要があるといえます。
刑事弁護人が「被疑者が犯罪行為をしていない証拠」を集めるなどして、検察官へ不起訴の申し入れを行います。
無罪立証
刑事裁判になっても、検察官が有罪を証明できなければ無罪判決が出る可能性はあります。刑事弁護人が積極的に有罪立証に対する弾劾活動(≒無罪立証)を進めて無罪を目指します。
6.痴漢、盗撮、強制わいせつで逮捕されたら弁護士へご相談ください

痴漢や盗撮、強制わいせつで逮捕されたとき、不利益を最小限にとどめるには弁護士が必要です。逮捕されたらすぐに「当番弁護士」を呼ぶか、刑事弁護を取り扱っている弁護士を探して接見を要請しましょう。
当番弁護士の場合には弁護士を選べませんが、ご家族が外にいらっしゃるならネットを使って刑事弁護に詳しい弁護士を探せます。フットワークが軽く、すぐに動いてくれて留置施設と事務所が近い弁護士を選びましょう。
当事務所では性犯罪の刑事事件に力を入れていますので、万が一の際にはすぐにご相談ください。

