覚醒剤(かくせいざい)を所持したり使用したりすると、覚醒剤取締法違反となります。覚せい剤は依存性が強く、蔓延すると社会的な害悪となりますので、その規制は厳しく処罰は重いものとなっております。
今回の記事では、覚醒剤取締法違反で刑事事件になるケースや逮捕されたときの対処方法について弁護士が解説します。
1.覚醒剤とは
覚醒剤とは、麻黄(まおう)という植物から抽出された成分を原料として科学的に合成された薬物の総称です。
略称・俗称
エス、スピード、シャブ、アイス、アッパー、ラッシュ、クラッシュ、ホワイト、クリスタル、ブラックビューティー、ペップピル、クランク、デキシー、ハーツ、アンポンタン、アキアジ、アンナカ、ガンコロ、ヤーマ、ヒロポン、ユキ、突撃錠、冷たいの、勝利錠、猫の目錠等(熊本県警察のサイトより引用。下記リンク参照)
効果
覚せい剤には神経を興奮させる作用があり、使用すると眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えたような感覚になります。
しかし、そのような感覚も数時間で切れ、その後は激しい脱力感、疲労感、倦怠感に襲われます。乱用を続けると、過度の睡眠不足と食欲減退により身体が衰弱するほか、壁のしみが人の顔に見える、いつもみんなが自分の悪口を言っている、警察に追われている、誰かに命を狙われているなどの幻覚や妄想が現れ、時には錯乱状態になって、発作的に他人に暴力を加えたり、殺害したりすることがあります。
また、急性中毒になると、全身けいれんを起こし、意識を失い、最後には脳出血により死亡する場合もあります。(熊本県警察のサイトより引用。下記リンク参照)
依存性が非常に高い薬物であり、覚醒剤取締法においてその所持や使用などの各種の行為が禁止されています。
2.覚醒剤取締法違反になるケース

覚醒剤取締法では、以下の各種行為が禁止されています。
- 所持
- 使用
- 輸出、輸入
- 製造
- 譲渡、譲受
たとえば、覚醒剤を腕に注射したりあぶって吸引したり錠剤で摂取したりすると、覚せい剤の使用罪として処罰されます。また、単にもっているだけでも所持罪として処罰の対象となります。「持っていただけだ。使ってはいない」という弁解は通用しないということです。
故意について
覚醒剤取締法違反は故意犯です。そのため、自分の使ったものや服用した薬物が覚醒剤であることを知らなかったのであれば犯罪とはなりません。
そのため、覚せい剤取締法違反で逮捕された方の多くは、「覚せい剤だとは気づかなかった、知らなかった」と主張されます。
しかし、はっきりと覚醒剤であると認識していなくても「もしかしたら覚せい剤かもしれない」「正体不明の何らかの違法薬物」という程度の認識があれば、覚醒剤取締法違反の故意が認められます。
医師から処方された薬物や薬局で薬剤師に相談して処方された薬物に覚せい剤が含まれていた場合であれば故意が認められない可能性が高いですが、知り合いにもらった薬や知らない人から購入した薬が覚せい剤だった場合に「知らなかった」という弁解が認められることはほとんどありません。

3.覚せい剤取締法違反の罰則

覚せい剤は、他の薬物と比べて依存性や危険性が高いので、薬物犯罪の中でも刑罰が重く設定されています。
覚せい剤取締法違反が成立すると、どの程度の罰則が適用されるのか確認しましょう。なお、覚醒剤などの薬物犯罪では、営利目的があるかないかで罰則の内容が異なりますので、比較しながら見てみましょう。
3-1.所持・使用の場合
営利目的がない場合は、10年以下の懲役刑と定められております。営利目的がある場合は、1年以上の有期懲役刑及び500万円以下の罰金の併科と定められております。
このように覚醒剤は所持や使用で10年以下の懲役刑となりますので重罪といえます。
また、所持にも使用にも同じ罰則が適用されます。すなわち、使用していないこと(単純所持であったこと)を理由に軽い罪にしてもらうことはできないということです。
3-2.輸出・輸入・製造の場合
営利目的がない場合は、1年以上の有期懲役刑と定められております。営利目的がある場合は、無期または3年以上の有期懲役刑及び100万円以下の罰金の併科と定められております。
このように営利目的で輸出、輸入、製造をすると、無期懲役を含む非常に重い罪が適用されますのでやはり重罪と言えます。
4.覚せい剤取締法違反の量刑の相場
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覚せい剤取締法違反で逮捕されたとき、どの程度の刑罰が適用されることが多いのでしょうか?
営利目的のない単純な覚せい剤の所持や使用の場合、初犯であれば執行猶予がつく可能性が高いといえます。懲役1年6ヶ月、執行猶予3年などといった具合です。逆に薬物前科、特に覚醒剤に関する前科があると執行猶予はつきにくくなります。
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覚醒剤取締法違反(所持、使用)で量刑が重くなるのは以下のようなケースです。
- 使用の回数や頻度が多い
- 反省していない
- 薬物に手を出しやすい環境にある
- 監督する人がいない
- 薬物依存状態が酷い
他方で、量刑が軽くなるのは以下のようなケースです。
- 使用の回数や頻度が少ない
- 反省している
- 家族による監督が期待される
- 定職に就いている
- 犯行動機は「魔が差しただけ」などであり、依存度が低い

5.覚せい剤取締法違反で逮捕されたときの対処方法

覚せい剤取締法違反で逮捕されたとき、なるべく処分を軽くしてもらうには以下のような対応が必要です。
5-1.反省の態度を示す
まずは反省の態度を示すことが重要です。
薬物犯罪では被害者が存在しないため、被害者と示談することによって情状をよくすることはできません。本人がしっかりと自分の弱さを見つめ直し、再犯に及ばないと誓うことにより、軽い処分につなげやすくなります。
5-2.家族や職場による監督を期待できると示す
社会に戻ったときの環境も重要です。例えば、家族や職場などによる監督を期待できる場合には、執行猶予をつけてもらいやすいです。
反対に、単身者や定職に就いていない、悪友との縁を切りにくいといった事情がある場合、執行猶予をつけると再犯に及ぶ可能性が高いので実刑になりやすいといえます。
既婚であれば配偶者、未婚であれば親などに情状証人として出廷してもらうべきですし、勤務先の社長などに嘆願書や身元引受書を作成してもらうことも効果的です。
覚醒剤取締法違反は重罪なので、逮捕されると実刑になる可能性もあります。不利益をなるべく小さくしたいのであれば、早急に弁護士にご相談ください。


