法人経営に行き詰まってしまったら。整理方法について解説

監修者
弁護士 鈴木 翔太
弁護士 鈴木 翔太
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企業の倒産処理、債務整理~経営状態が悪化したときの対処方法をパターンごとに解説~

急激な社会情勢の変化や景気の悪化などにより会社の経営状態が著しく悪化してしまうケースは多々あります。経営者の頭を倒産の2文字がよぎることもあるでしょう。

企業の債務整理方法には、私的整理、民事再生、会社更生、破産、特別清算の5つがあります。負債の状況や経営状況、事業の継続意思等に応じて最適な方法を選択することとなります。

今回の記事では、企業の債務整理の方法5種類について解説します。

1.法人の債務整理方法

倒産は一般用語であり、正確な定義はありません。一般的には「経営状態が悪化して自主再建が難しい状態」を指す言葉とされております。つまり債務整理が必要な状態です。

企業の債務整理方法は5種類あります。この5種類をその性質で分けると再建型清算型の2種類に大別することができます。

再建型の手続き

  • 私的整理
  • 民事再生
  • 会社更生

清算型の手続き

  • 破産
  • 特別清算

 

再建型とは企業を残し経営状態を改善して再構築していく手続きです。清算型とは企業の資産と負債を清算し、企業を消滅させる手続きです。

なお、各々の手続きにはメリットもデメリットもあります。以下、各手続きについて確認していきましょう。

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2.私的整理

先に掲げた5種の方法(私的整理、民事再生、会社更生、破産、特別清算)のうち、私的整理以外の方法は、法的整理と呼ばれる方法であり、破産法や民事再生法の法律に則って裁判所の関与のもと手続きを進めるものとなります。

他方で私的整理の場合は、裁判所は関与しません。債務者と債権者が直接交渉をして解決を図ることとなります。

まずはこの私的整理についてみていきましょう。

2-1.私的整理とは

私的整理とは、企業が借入先の金融機関などと交渉をして、債務の圧縮や利息のカット、返済期間の延長などの条件設定を行う手続きとなります。話し合いを行い、今後の返済方法について合意する手続きとお考えいただければ結構です。

合意ができた場合は、合意書を作成して支払いを継続します。合意内容に従って支払いができるのであれば廃業する必要はありませんし、経営陣が退任する必要もありません。そのため、私的整理は再建型手続きに分類されます。

2-2.私的整理のメリット

私的整理を選択した場合のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

対象とする債権者を選べる

私的整理ではすべての債権者を対象として行わなければならないものではありません。債権者を任意に選択することができます。

負担となっている金融機関のローンのみを私的整理の対象とすれば、直接の取引先に迷惑をかけずに済むといったことも可能です。

会社を残せる

再建型の手続きなので会社をそのまま残すことができます。また、経営陣が退任する必要もありません。

負担が軽い

民事再生や破産といった法的整理手続きと比べると費用は安く済みます。かかる期間も短いので負担も軽くなります。

イメージが良い

破産や民事再生などと比べてイメージが良いので、世間における評判の低下度合いが軽くなる傾向にあります。

2-3.私的整理のリスク・デメリット

私的整理を選択した場合のリスク・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

相手の合意がないと失敗する

私的整理では債権者の同意がないと債務の圧縮ができません。しっかり事業計画を示して金融機関に理解してもらえないと失敗します。

多額の負債があると対応しにくい

私的整理では、負債額を大幅に減らすことはできません。他の再建型手続きでは負債を減額(圧縮)することができるので、この点が大きく異なります。

債務の圧縮がほとんど期待できないため、負債が大きくなりすぎている場合は、私的整理での再建は困難となります。

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3.民事再生

次に再建型の一つである民事再生についてみてみましょう。

3-1.民事再生とは

民事再生は、民事再生法という法律に従って、裁判所の関与のもとに会社を再建させる手続きです。

その大きな特徴は、一定以上の債権者の同意があれば債務を大幅に圧縮できる点です。債務を圧縮するための再生計画案を作成し、債権者の意見を聞いた上で裁判所の認可を受け、計画通りに支払いを終えれば残りの負債が免除されて企業を再生できます。

基本的には、経営陣は退陣する必要なくそのまま経営に携わることができます。ただし裁判所によって監督委員が選任される可能性があります。

3-2.民事再生のメリット

民事再生を選択した場合のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

会社を残すことができる

民事再生を採用した場合は、会社を廃業する必要がありません。これまで得た有形無形の資産、信用などをすべて維持できるのが大きなメリットとなります。経営者もそのまま残り、自分の手で会社を再建していけます。

債務を大幅に圧縮できる

民事再生では、負債を大きく圧縮できます。個別の債権者による合意は不要で、一定以上の債権者が反対しなければ再生計画が認可されます。

比較的短期間で再生の目処を立てられる

民事再生は、法的整理の中では比較的早期に進められる手続きです。申立から再生計画認可まで半年程度で終わるケースも多いので、早めに再生の目処を立てられるのもメリットとなるでしょう。

3-3.民事再生のリスク・デメリット

民事再生を選択した場合のリスク・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

多くの債権者が反対すれば失敗する

民事再生では債権者全員が賛成する必要はありませんが、一定以上が反対すれば再生計画案が認可されません。大口の債権者が非協力的なケースなどでは認可を得ることは難しいでしょう。

収益性のない企業は利用できない

民事再生をすると負債額が大きく圧縮されますが、圧縮された負債は返済しなければなりません。取り扱っている商材が売れる見込みが無いといった理由で将来の収益力が見込めず圧縮された負債の返済すら難しいような状況であれば利用することはできません。

費用がかかる、経営から解放されない

民事再生を選択した場合、裁判所に納める予納金(裁判所に納める費用)や弁護士費用が高額になる可能性があります。事業を継続するための資金も必要となるので、一時的に資金繰りが苦しくなる企業がほとんどです。

社会的な信用を失うリスク

民事再生は再建型の手続きではありますが、世間一般には破産と区別できていない方も多くいます。そのため、民事再生により破産と同等の悪いイメージを抱かれることが多く、社会的信用やブランド力が従前よりもかなり低下してしまうこととなります。

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4.会社更生

再建型の一つである会社更生についてみてみましょう。

4-1.会社更生とは

会社更生とは、会社更生法という法律によって株式会社を再生させるための特別な手続きです。裁判所の選任した更生管財人のもと、通常一般の民事再生よりも強力な方法で組織再編などを行いながら会社を再生させることが可能です。

ただし、会社更生を利用できるのは株式会社だけです。合資会社、合名会社、社団法人などの法人では利用することができません。

4-2.会社更生のメリット

会社更生を選択した場合のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

担保権者などによる権利行使が制限される

民事再生の場合、抵当権者などの担保権者による権利行使を止めることはできませんが、会社更生なら制限できます。会社の重要な資産を守りながら再生できる方法です。

再生のため、大規模な組織再編ができる

会社更生を適用すると、合併や定款変更、増資や減資などの各種の組織再編を容易にできるので、ドラスティックな経営改革が可能です。

4-3.会社更生のリスク・デメリット

会社更生を選択した場合のリスク・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

株式会社のみが利用できる

会社更生を利用できるのは株式会社のみです。そのため、合資会社、合名会社、社団法人などの法人では利用することができません。

経営権を失う

会社更生は更生管財人主導のもとで進められるので、旧経営陣は関与できません。会社を残すことはできても、経営権を維持するのは不可能です。

時間がかかる

会社更生は複雑な手続きで、終結までに大変長い時間がかかります。

高額な費用がかかる

会社更生の予納金は非常に高額で、数千万円単位となります。手続きが重厚な分、弁護士費用も高額になります。

以上の理由から、会社更生は、中小零細企業よりも大規模な株式会社の再生に適した手続きといえます。

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5.破産

次に、清算型手続きである破産(法人破産)についてみてみましょう。

5-1.破産とは

破産は破産法に基づいて、裁判所の関与のもとに債務超過や支払不能状態となった会社を清算して消滅させる手続きです。裁判所の選任した破産管財人の主導のもと、手続きが進められます。

清算型の倒産手続きなので、破産すると会社は消滅します。手続き後に一切支払いは残りませんが、会社の資産もすべて失われます。

5-2.破産のメリット

破産を選択した場合のメリットしては、以下のものが挙げられます。

苦しい経営から解放される

収益力を失い財務状況の悪化した会社を経営し続けるのは大変なストレスとなります。支払いができなければ債権者から厳しい取り立てを受けることもあるでしょう。破産してしまえば会社はなくなるので、苦しい経営から解放されるメリットがあります。

すべての支払いが不要となる

破産すると会社が消滅するので、あらゆる負債の支払いが不要となります。個人と違い「免責」という概念はありません。そのため、税金や保険料、従業員への給料などもなくなります。金額の制限もありません。

どれだけ多額の負債を抱えていてもすべて0にできるのは大きなメリットと言えるでしょう。

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人生の再スタートを切れる

環境の悪化した中で再生不可能な企業を経営していても人生に先は見えません。破産して経営から解放されれば人生の再スタートを切ることができます。

5-3.破産のリスク・デメリット

破産を選択した場合のリスク・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

会社や資産がなくなる

破産すると、これまで大事に育ててきた会社がこの世界から消滅します。会社に愛着を抱いている経営者にとっては大きな痛手となるでしょう。

従業員や取引先に迷惑をかける

会社が破産すると従業員への給料や取引先への未払い金を支払えなくなります。お世話になった人に迷惑をかけてしまうのもデメリットの1つです。

信用を失う

破産すると経営者は信用を失います。次に何かしようとしても「かつて破産した人だ」という偏見を持たれる可能性があります。

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弁護士 鈴木 翔太

6.特別清算

次に、清算型手続きである特別清算についてみてみましょう。

6-1.特別清算とは

特別清算は、会社法の規定にもとづく清算型の会社倒産手続きです。

債務超過の疑いがあるケース、通常の清算手続きでは著しい支障をきたす可能性がある場合に利用できます。

6-2.特別清算のメリット

破産を選択した場合のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

経営陣が自主的に手続きを進められる

特別清算では申立人が清算人を選べるので、経営陣が残って自主的に清算手続きを進めることが可能です。

費用が安い

特別清算は破産と比べて費用が安く、予納金が数万円で済むケースもあります。

手続きが早い

破産と比べると短期間で手続きが終結する傾向にあります。

イメージ低下を防ぎやすい

破産と比べると世間に与えるインパクトが小さく信用を維持しやすいといえるでしょう。

6-3.特別清算のリスク・デメリット

特別清算を選択した場合のリスク・デメリットとしては、以下のものが挙げられます。

債権者の同意がないと利用できない

債権者が同意しないと特別清算は成立しません。失敗すると破産するしかなくなります。

会社も資産も失われる

特別清算でも会社は消滅します。資産やこれまで築いた信用もすべて失われるので、会社に愛着を持つ経営者は喪失感を受けるでしょう。

7.さいごに

会社の経営状況が悪化した場合、状況に応じて適切な手続きを選択する必要があります。しかし、専門の知識がないとどの方針が妥当であるのかは判断がつきにくいものです。

お悩みの経営者様がおられましたら恵比寿の弁護士がお力になりますので、できるだけ早い段階でご相談下さい。

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