事業を営む際、顧客や取引先との関係で売掛金などの債権が発生します。
債権をしっかりと支払ってもらうことは事業を営むうえで重要なのですが、以下の理由で債権が支払われなかったり債権の回収が困難となってしまうことがあります。
- 相手と連絡が取れない
- 請求をしているのに一銭も支払ってくれない
- 相手の資産状況が不明であり裁判を起こしても回収できるかどうかわからない
- 債権が少額のため回収コストの方が高くつきそう(費用倒れになりそう)
- 少額債権が大量にあるため事務手続に対応できない
とはいえ債権を回収をせずにそのまま放置してしまうと様々なデメリットが生じるので注意が必要です。
今回の記事では債権回収をしないことによるデメリットと効果的な債権回収方法について解説します。
債権回収が困難となる要因
事業者が他者(他社)に対して有する売上等の債権(未回収の売掛金)は、事業の利益に直結します。これを回収せずに放置することにメリットは一切ありません。
しかし、現実では債権の回収を放置せざるを得ない、あきらめざるを得ないケースが多々あります。
まずは債権の回収が達成困難となる要因を検討してみましょう。
01.相手の連絡がとれない
債権回収が困難となる要因のほとんどは、相手(債務者)とのコンタクトが取れなくなることに起因します。
- 相手が所在不明(行方不明)となる
- 電話や書面で連絡をしても無視する
相手とコンタクトが取れなくなってしまった場合、請求のしようがないとして回収を諦めてしまう方がほとんどです。
02.相手が債務を履行しない
相手が債務の履行しないことも債権の回収が困難となる要因の一つです。債務の履行とは「約束した債権の支払を行うこと」と理解してもらって差し支えないです。口では支払うと約束するものの実際には支払ってくれないケースがこれに該当します。
03.訴訟手続きの煩雑さ、効果
債務の履行は債務者の義務ではありますが、債務者が自発的に行わない場合はどうしようもありません。強制的に回収を図るのであれば訴訟を提起して債務名義を取ることが必要となります。
とはいえ訴訟を提起するには手間や費用がかかります。訴訟手続きの煩雑さは債権回収を諦めてしまう要因の一つといえます。
また、訴訟を提起し債務名義を取ったとしても相手に資産がない場合は債権の回収を図ることはできません。相手の資産状況が不明の状況で訴訟を提起すると費用倒れとなるリスクがあることも債権回収を諦めてしまう要因の一つと言えます。
04.少額債権が多数ある
ネット通販業者や宿泊業などを取り扱う事業者においては、1件1件の債権が数千円~数万円程度と少額であることがほとんどです。そのため請求コストの方が高くなってしまうと判断して回収を諦めてしまう事業者が多くいらっしゃいます。
また、少額の不良債権が大量に発生してしまっているケースでは、事務手続きの煩雑さも回収を諦めざるを得ない要因となっているようです。
債権回収を放置するデメリット
債権回収をしないで放置すると、以下のようなデメリットが発生するので注意が必要です。
01.収益性の低下
せっかく売上を発生させても実際に債権回収ができなければ、当然に収益性が低下します。財務状況も悪化してしまうでしょう。不良債権が企業の財務環境に悪影響をもたらすと、最悪の場合には倒産につながる可能性もあります。
02.時効が成立してしまう
債権には時効があります。
基本的に「債権回収できることを知ってから5年間」「債権回収できる状態になってから10年間」で時効が成立し、債権回収ができなくなってしまいます。
2020年3月31日までに支払時期が到来した債権についてはそれより早く時効が成立する可能性もあります。「後で回収しよう」と考えていても、時効が成立してしまえば回収不可能となってしまうのでその前に支払を受けねばなりません。
03.税務上のデメリット
債権回収をせずに放置することには税務上のデメリットもあります。未回収の債権が資産として計上されてしまうため税金が高くなる可能性があるのです。
このように債権回収をせずに放置しているとさまざまなデメリットやリスクが生じます。不良債権を抱えているのであれば回収に取りかかるか、どうしても回収できないなら貸し倒れ処理や放棄をすべきです。
04.従業員のモチベーション低下
債権回収できていない金額によっては、賞与(ボーナス)などを従業員に支給することができなくなるありえます。自社がきちんと債権回収できていないから賞与が支給されないんだと従業員が知ってしまえば、従業員のモチベーション低下につながることもあります。モチベーションが下がれば転職を検討する従業員も出てきます。優秀な人材が離脱してしまえば収益性や生産性が落ち込むリスクが高まります。
不良債権の回収を弁護士に依頼するメリット
回収不能な債権を抱えている場合、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
01.少額・大量の債権であっても効率的に回収できる
宿泊業やネット通販業、医療機関などの事業者が、少額かつ大量の不良債権を抱えている場合、自社で対応するのが困難と判断し回収を断念するケースがあります。
弁護士にまとめて依頼してしまえば、自社で対応する必要がなく手間もかかりません。
02.相手の所在や財産状況の調査が可能
弁護士は職権で住民票を取得して居場所を調べたり財産状況を調査することができます。
相手の居場所が不明な場合や財産状況がわからないために訴訟に踏み切れない場合、弁護士に事前調査を依頼することで回収の目途が立つ可能性があります。
03.相手が支払に応じる可能性が高くなる
取引先が軽く考えて請求を無視している場合、弁護士が代理人として内容証明郵便による請求書を送ることで多くの債務者が真剣にとらえて交渉に応じてくれます。
また、弁護士は債権回収や交渉のプロであり、依頼企業に有利になるように話を進めることができますので好条件で支払を受けられる可能性が高くなります。
04.訴訟や強制執行が可能
相手がどうしても支払に応じない場合は支払督促や訴訟等で対応するほかありません。
弁護士に依頼しておけばこれらの訴訟手続きも一任することができます。債務名義獲得後は強制執行(差押え)を行って債権回収を図ることも可能です。
債権回収会社について
債権回収を達成するためには、債権回収会社を利用する方法もあります。
債権回収会社は、債権回収業を専門的に請け負う業者です。原則として他人の債権回収を代行できるのは弁護士だけですが、債権回収業者は国から特別の認可を受けて債権回収業を行うことを認められています。
債権回収業者に債権回収を委託することでも効率的な債権回収は可能ですし、債権譲渡すればすぐにお金を得ることが出来ます。
しかし、債権回収業者に回収を委託すると高額な手数料が発生するケースも多く、債権譲渡する際も高い割引率で割り引かれてしまいます。
また、国の認可を受けていないのに債権回収を行っている違法業者もあるので間違って依頼しないよう注意が必要となります。
債権放棄という選択肢
債権をどうしても回収できない場合には放棄すべきケースがあります。未回収の債権があると税額が高額になるリスクが発生するためです。
債権放棄いた場合、売掛金が失われた分は損金として計上されるので、会社が黒字の場合には節税対策にもなります。
債権放棄するときには確実に債権を放棄した事実を残すために内容証明郵便で相手方に通知しましょう。弁護士に文面作成や発送を依頼することも可能です。
さいごに
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所は、さまざまな中小業者の顧問弁護士を務めており債権回収の経験も豊富です。債権回収に関するノウハウも蓄積しており、少額かつ大量の債権が発生する業種でも会社に利益が出るように効率的な対応をさせていただきます。回収困難とあきらめている債権でも解決策を提示できるかもしれません。
債権回収でお悩みの方は、是非一度当事務所までご相談ください。