債権が焦げ付いたら「債権回収会社に任せようか」と考えるケースがあるものです。
確かに債権回収会社を利用すると、自力では回収できない債権も回収できるなど、メリットを受けられる可能性があります。
一方で回収できる金額は債権の額面より低くなるなどのデメリットもあるので注意が必要です。
今回は債権回収会社の概要と、利用するメリットやデメリットを中心に恵比寿の弁護士が解説していきます。
1.債権回収会社とは

1-1.債権回収会社の基本知識と利用方法
債権回収会社とは、他人の債権回収業務を専門的に行っている会社です。
焦げ付いた債権を抱えている事業者から債権回収の委託を受けたり債権譲渡を受けたりして、自ら債務者に連絡をして取り立てを行います。
債権回収会社の利用方法には「債権回収の委託」と「債権譲渡」の2種類の方法があります。
「債権回収の委託」とは、債権自体は譲渡せずに回収のみを依頼することです。債権自体はもともとの債権者に残ります。
債権回収を委託すると回収できた債権から委託手数料が引かれ、その手数料を引いた残額を受けとることが可能です。
「債権譲渡」とは、債権そのものを移転してしまうことです。債権譲渡すると、もともとの債権者には一切の権利がなくなるので、回収した金額から支払いを受けることはできません。債権譲渡したときに債権回収会社から支払われる「譲渡代金」によって自社の債権を回収します。当然、譲渡代金はもともとの債権額よりも減額された金額となります。
一般的には、債権回収の委託手数料の方が債権譲渡による割引き率よりも低くなる例が多数です。委託をしても回収が難しそうなケースで債権譲渡を選択すると良いでしょう。
1-2.債権回収会社を利用する企業や利用できる債権の種類
債権回収会社を利用するのは、焦げ付いた債権を抱えている事業者が主です。たとえば、日常的に多くの不良債権が発生する貸金業者や金融機関による利用が多く、破産管財人なども債権回収業者を利用する例があります。
債権回収会社に委託できるのは、以下のような債権です。
- 通信料
- 物販債権
- リース・クレジットの債権
- マンション管理費
- 家賃
- 診療報酬
1-3.債権回収業を行っているのは「許可を受けた業者」のみ
債権回収業は、誰でも行って良いものではありません。本来、他人の債権回収業を有償で行って良いのは「弁護士のみ」です(弁護士法72条)。債権回収会社はその例外として認められるものですので、法務省によって厳しく管理されています。
きちんと要件を満たし、法務省によって許可を受けた業者しか債権回収業を行ってはなりません。
法務省が許可をした債権回収業者については、こちらに一覧が掲載されているので、調べたいときにはご参照ください。

2.債権回収会社を利用するメリット

事業者が債権回収会社を利用すると以下のようなメリットがあります。
2-1.焦げ付いた債権でも回収できる
債権回収会社を利用すると、自社では回収できない債権を回収できる可能性があります。
社内に専門の債権回収部門がないために放置している債権があるなら、債権回収会社を利用して少しでも回収した方が良いでしょう。
2-2.債権回収の手間を省ける
債権回収には多大な手間がかかるものです。社内で従業員に対応させている場合、「この人員を他の業務に割くことができれば」と考える経営者もいらっしゃるのではないでしょうか?
債権回収会社に回収を委託すれば自社で対応する必要がなくなるので、必要な人材を必要な場所に配置して生産性を高めることが可能となります。
2-3.自社で対応するより債権回収の確実性が上がる
債権回収には専門のノウハウが必要です。自社内で知識のないものが対応していると、どうしてもスピーディな回収は不可能となりますし、回収漏れも多々発生するでしょう。
専門業者である債権回収会社に任せる方が確実に多額の債権を回収できます。
3.債権回収会社を利用するデメリット

3-1.手数料がかかる
債権回収会社を利用すると、多額の手数料がかかります。特に債権譲渡する場合には大幅にディスカウントされ、額面額には遠く及ばない金額になる例も多々あります。自社で回収した方が、結果的にコストが安くつく例も少なくありません。
3-2.詐欺のケースがある
上記でも説明したように、債権回収業は許可制になっており、誰でも営業して良いものではありません。しかし時には闇で債権回収業を行っている業者もあります。
そういった業者に依頼してしまったら、「違法な業者に債権回収を委託した会社」として自社の評判が低下するなど、トラブルに巻き込まれる可能性があります。

4.債権回収会社を利用するときに注意すべきこと

債権回収会社の利用を検討しているなら、以下のようなことに注意しましょう。

4-1.本当にコストに見合っているか
債権回収会社にどのくらいの手数料をとられるのか、あるいはどのくらい譲渡代金を引かれるかを理解し、自社で対応するのとどちらがコスト的に得かをきっちり検討しましょう。
多少手間がかかっても自社で対応した方が得であれば、わざわざ依頼する必要はありません。
4-2.詐欺ではないか
詐欺(闇)の債権回収会社に回収を依頼すると、回収した金額を持ち逃げされたり自社の評判が低下したりするリスクがあります。
また、許可を受けていても、不祥事を起こして業務停止処分を受けているずさんな債権回収会社が存在します。
委託先を選ぶ際には、きちんと許可を受けていることはもちろん真面目に営業している良質な業者を見極める必要があります。
5.債権回収を弁護士に依頼する方法もある

債権回収の依頼先は、債権回収会社だけではありません。弁護士はもともと他人の法律事務を代理する権限を持っており、債権回収の代理も専門としています。手数料も債権回収会社より安くなる可能性が高いので、焦げ付いた債権を抱えてお悩みであれば、是非一度ご相談ください。

