支払ってもらえるはずの売掛金を支払ってもらえない・・・。
自力では債権の回収が難しい状況になってしまったら、債権回収会社に債権回収を任せるというのも解決策の一つとはなります。
債権回収会社を利用すれば、相手方との交渉や債権回収のための法的手続きなどを一任することができますので、時間的にも労力的にも精神的にも負担を減らすことができます。
他方で、債権回収会社に対し委託料や手数料等を支払うこととなるため、回収できる金額は額面よりも低くなる等のデメリットも存在します。
今回の記事では、債権回収会社についての概要、債権回収会社を利用した際のメリットやデメリットについて恵比寿の弁護士が解説します。
1.債権回収会社とは

債権回収会社とは、委託者が有する債権の回収業務を専門的に行う会社のことです。サービサーと呼ばれることもあります。
焦げ付いた債権を抱えている事業者から、債権回収の委託を受けたり債権譲渡を受け、債務者に連絡をして債権の回収(取り立て)を行います。
債権回収業を行うことができるのは許可を受けた業者のみ
債権回収業は、誰でも行うことができるものではありません。
他人の債権回収業を有償で行って良いのは弁護士のみです(弁護士法72条)。債権回収会社はその例外として認められるものですので、法務省によって厳しく管理されています。具体的には、債権管理回収業に関する特別措置法の規制を受けることとなります。
このように、所定の要件を満たし法務省によって許可を受けた業者しか債権回収業を行ってはなりません。法務省が許可をした債権回収業者については、以下のサイトを参照ください。

2.債権回収会社の利用方法
債権回収会社を利用するには、債権回収の委託と債権譲渡の2種類の方法があります。
2-1.債権回収の委託
債権回収の委託とは、債権を譲渡せずに回収のみを債権回収会社に依頼することをいいます。債権譲渡をしないので、債権自体は委託者(本来の債権者)のもとに残ります。
債権回収を委託し、実際に債権を回収できた場合、回収できた債権の金額から委託手数料を差し引いた残額を受け取ることとなります。
2-2.債権譲渡
債権譲渡とは、債権そのものを債権回収会社に譲渡することを言います。
債権譲渡すると債権そのものが本来の債権者から債権回収会社に移転することとなるので、本来の債権者には一切の権利がなくなります。
債権譲渡の場合、債権譲渡時に債権回収会社から支払われる譲渡代金を本来の債権に充当します。なお、この譲渡代金はもともとの債権額よりも大幅に減額された金額となることがほとんどです。
また、その後、債権回収会社が債務者(相手方)からいくら回収しようとも一切の権利を主張することはできません。
どっちが経済的にメリットがあるのか?
債権回収の委託と債権譲渡ではどちらの方が経済的にメリットがあるのでしょうか?
一般的には、債権回収の委託手数料の方が債権譲渡による割引率よりも低くなることが多いようです。とはいえ、債権の回収ができなかった場合には、債権回収の委託では一銭も得ることができません。債権譲渡であれば譲渡代金分は回収できます。
そのため、回収見込みがあるようであれば債権回収の委託、債権回収会社でも回収が難しそうであれば債権譲渡を選択するのが良いとされております。
3.債権回収の対象
債権回収会社に委託できるのは、以下のような債権です。
- 通信料
- 物販債権
- リース・クレジットの債権
- マンション管理費
- 家賃
- 診療報酬
4.債権回収会社の利用者
債権回収会社を利用するのは、焦げ付いた債権(回収が困難な債権)を抱えている事業者が主です。
日常的に多くの不良債権が発生する以下のような事業者が利用することが多いです。
- 通信業者
- ネットショッピングの事業者
- 貸金業者
- 信販会社
- 不動産会社(不動産管理会社)
- 病院、診療所
もちろん上記の事業者以外にも利用する事業者は多数おります。また、破産手続きにおける破産管財人が債権回収業者を利用することもあります。

5.債権回収会社を利用するメリット

債権回収会社を利用すると、以下のメリットがあります。
5-1.債権を回収できる可能性がある
債権回収会社を利用することで、自分では回収できない債権を回収できる可能性があります。
回収困難として放置している債権があるのであれば、債権回収会社を利用して少しでも回収に取り掛かった方が良いといえます。
5-2.債権回収の手間を省ける
債権回収は、時間的にも労力的にもかなりの負担となります。多大な手間を考慮した結果、債権回収を諦めている事業者様も多く見受けられます。
債権回収会社を利用すれば自社で対応する必要がなくなるので、余計な負担がかかることを避けることができます。
6.債権回収会社を利用するデメリット

6-1.コストがかかる
債権回収会社を利用する場合、多額のコストがかかります。
債権回収を委託した場合は、委託料や回収した金額に対する成功報酬といったコストがかかります。
また、債権譲渡する場合には、本来の債権額を大幅にディスカウントした金額しか得ることができません。コスト面でいえば自社で回収を図った方がはるかに有利です。
6-2.違法業者(詐欺業者)の可能性がある
債権回収業は許可制になっており、誰でも営業ができるわけではありません。しかし、中には無許可で債権回収業を行っている業者もあります。
誤ってそのような業者に依頼してしまった場合、回収金額を持ち逃げされたり、「違法な業者に債権回収を委託した会社」として自社の評判が低下したりといった余計なトラブルに巻き込まれる可能性があります。

7.債権回収会社を利用する際の留意点
債権回収会社の利用を検討する場合、以下の点に注意しましょう。
7-1.コストが見合っているか確認する
①回収可能性はあるのか、②債権回収会社に依頼した場合、どのくらいの手数料をとられるのか、をしっかりと確認しましょう。
手間や労力がかかっても自社で対応した方が経済的にメリットがあるということであれば債権回収会社を利用する必要はありません。
7-2.違法な会社ではないか確認する
許可のない違法な債権回収会社に手続きを依頼してしまうと、回収した金額を持ち逃げされたり自社の評判が低下したりするリスクがあります。
また、許可を受けていたとしても、過去に不祥事を起こして業務停止処分を受けているずさんな債権回収会社も中には存在します。
委託先を選ぶ際には、きちんと許可を受けていることはもちろん真面目に営業している良質な業者を自身で見極める必要があります。
8.債権回収を弁護士に依頼する方法もある

債権回収の依頼先は、債権回収会社だけではありません。弁護士に債権回収を依頼することも可能です。
もともと弁護士は、他人の法律事務を代理する権限を持っており、債権回収の代理も行なうことができます。
回収時の手数料等についても債権回収会社より安いこともあるので、焦げ付いた債権を抱えてお悩みであれば弁護士に依頼することも視野に入れてみてはいかがでしょうか?


