免許を取得して間もない運転初心者は、交通事故を起こしてしまいがちです。
運転に慣れていないためハンドルブレーキ操作を誤ることもありますし、少し慣れた頃に油断して事故を起こしてしまう方もいます。
今回は運転初心者が起こしがちな事故や、事故を起こしてしまったときの対処方法を弁護士がお伝えします。
免許をとって一年以内の方やご家族の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.免許取得後1年間は「初心者運転期間」
「運転初心者」は、免許を取得していつまでの人をいうのでしょうか?
道路交通法では、「免許を取得して1年未満の人」を「運転初心者」として、初心者マークの表示を義務付けています(道路交通法71条の5)。このことからすると、免許取得後1年以内の人は「運転初心者」といえるでしょう。
免許取得後1年間を「初心運転期間」といいます。
なお初心運転期間は「免許の種類ごと」に計算します。
たとえば普通自動車免許を取得した半年後に大型二輪免許を取得した場合、普通自動車免許の初心運転期間が終わっても、その後半年間は大型二輪免許の初心運転期間が続きます。
2.運転初心者が起こしやすい事故

運転初心者は、ベテランドライバーよりも交通事故を起こす割合が高くなっています。
具体的にどういった事故が多いのか、みてみましょう。
2-1.追突事故
運転初心者は前方車両との距離を見誤るため、追突事故を起こしてしまうケースが非常に多くなっています。
道路交通法上、車を運転するときには十分な車間距離をとらねばならないと規定されています。相手が急ブレーキを可能性もあるので、近づきすぎないように注意しましょう。
夜間はものが見えにくくなり、歩行者や自転車にも気づきにくくなるものです。
運転に慣れないうちに夜間に運転するなら、徐行するなど特に慎重に運転しなければなりません。
雨天でも視認性が悪くなるうえ、道路が滑りやすくなって事故を発生させやすい状況になります。晴天の場合よりもさらに十分な車間距離をとって運転しましょう。
2-3.右左折時の事故
交差点では、ただでさえ交通事故が多発します。
運転に慣れないうちは、右左折時に操作がもたついて周囲の車と接触してしまうケースが多々あります。
また自転車や歩行者、バイクの巻き込みにも注意しなければなりません。左折時には後ろや横に自転車などがいないか、サイドミラーや視認によって慎重に確認しましょう。
2-4.進路変更時の事故
進路変更も初心者にとっては高いハードルになりがちです。
もたもたしていると、後ろから来た車に追突される可能性があるので注意が必要です。
移動予定の車線に車が来ていないことを確認してから、タイミングよく進路変更しましょう。
2-5.ガードレールや施設への衝突
運転初心者は、ガードレールや施設、壁などに衝突する自損事故を起こすケースも多々あります。自損事故と思っても、他人のものを壊すと物損事故として管理権者や所有者へ損害賠償しなければなりません。「自分だけならまぁいいか」などと軽く考えないようにしましょう。
2-6.転落事故
道路脇の溝などに落ちて、ドライバーが自ら転倒転落してしまうケースもあります。被害者はいなくても、自分がケガをしたり車が壊れたりして損害が発生してしまうパターンです。
3.初心者マークの表示義務
免許取得後1年未満の人は、車体に「初心者マーク」をつけなければなりません。
つける場所は「前面」と「後面」の両方です。片方だけしかつけないと違反になるので注意しましょう。より具体的な位置としては「地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置」につけなければならないと定められています(道路交通法施行規則9条の6)。
また、フロントガラスに初心者マークをつける方法は認められていません。
初心者運転の表示は道路交通法によって定められた義務なので(道路交通法71条の5)、必ず守りましょう。
◆初心者マークをつけなかった場合の罰則
初心者マークを表示しないで運転すると、「初心運転者標識表示義務」という道路交通法違反となります。
罰則は2万円以下の罰金または科料です(道路交通法121条1項9号の3)。
ただし反則金制度が適用されるので、定められた金額を払えば通常刑罰は科されません。
反則金の金額は、準中型自動車の場合に6,000円、普通自動車の場合に4,000円となっています(道路交通法施行令別表第6第19項)。
また行政処分として免許の点数も1点加算されます(道路交通法施行令別表第2第1項)。
前方と後方の片側にしか表示しなかった場合、車の側面に表示した場合、うっかりつけるのを忘れた場合などにも違反となるのでくれぐれもご注意ください。

4.初心運転者講習について
免許取得後1年以内の初心運転者期間内に事故や交通違反をして、合計点数が3点以上となってしまったら、初心者運転講習を受けなければなりません(ただし2回以上取り締まりを受けたときです。1回の違反で3点になった場合は含みません。)
初心運転者講習の受講対象となったにもかかわらず講習を受けなかった場合や、受講終了後の初心運転者期間中に再度違反をして免許の点数が一定に達した場合、再試験を受けなければなりません。
再試験に不合格になった場合や正当な理由もないのに再試験の受験を拒否した場合、免許取り消しになってしまいます。
初心運転期間中は、交通事故や交通違反をしないように慎重に運転すべきですし、講習が必要となったらきちんと受講しましょう。
5.事故を起こしてしまったときの対処方法
初心者が交通事故を起こしてしまったら、以下のように対処すべきです。
5-1.被害者を救護する
事故現場でけが人が出たら、救護しなければなりません。
道路交通法において、事故が発生したとき車両の運転車や同乗者は「けが人を救護しなければならない」と定められているからです。
初心者の場合、事故を起こすと気が動転して動けなくなってしまう方も多いですが、被害者の救護は非常に重大な義務です。
違反すると「救護義務違反(ひき逃げ)」となり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が適用される可能性があるので、必ず対応しましょう。
まずは被害者を安全な場所へ移動させて、応急処置を行います。必要に応じて周りの人に助けを求めたり救急車を呼んだりしましょう。

5-2.危険防止措置をとる
交通事故が起こると、車の金属片やガラス片が飛び散ったり車が道路を塞いだりして危険が発生するケースも多々あります。
車を路肩などの場所へ寄せて邪魔にならないようにして、停止ランプを表示させましょう。道路には三角表示板をおいたり発煙筒をたいたりして、後続車へ事故を知らせるべきです。

5-3.警察へ通報する
道路交通法により、事故の当事者は警察へ通報しなければならないと定められています。
初心者の場合、「事故をなかったことにしたい」「信じたくない」などと考えて現場から走り去ってしまうケースもありますが、通報義務違反も違法で罰則も適用されます。
人身事故だけではなく物損事故や自損事故でも報告義務があるので、必ず110番通報しましょう。
5-4.実況見分に立ち会う
人身事故の場合、警察が到着したら実況見分が開始されます。実況見分とは、警察が事故直後の現場の状況を保存する手続きで、後に実況見分の結果を詳細に記した実況見分調書が作成されます。
実況見分調書は民事的な賠償の際に過失割合を算定する資料となるので、加害者にも被害者にも重要な書類です。
実況見分の際には、警察へ事故の状況を正確に伝えましょう。
5-5.保険会社へ連絡する
自動車保険に入っていたら、保険が適用されてさまざまなサービスを受けられます。
ほとんどの方が対人対物賠償保険に入っていますが、この保険を適用すると保険会社が示談交渉を代行してくれるので自分で相手と直接話をする必要がありません。
人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に入っていたら、死傷したときに自分の加入している保険会社から保険金を受け取れます。自損事故保険や車両保険を適用できるケースもあります。
事故に遭ったら、すぐに保険会社へ連絡しましょう。
◆家族の保険が適用される場合
年齢の若い運転初心者の場合、親などのご家族の車を運転していて、家族名義の自動車保険が適用されるケースがよくあります。
その場合には、親に事故を告げて親から保険会社に連絡してもらいましょう。
その上で相手との示談交渉や保険金の請求などの手続きを進めてください。
5-6.ケガをしたら病院へ行く
交通事故に遭うと、自分がケガをしてしまう可能性もあります。
軽傷であっても必ず病院へ行って、検査や適切な処置を受けましょう。
自分では「たいしたことはない」と思っても、実際には骨折や脳障害が発生しているケースが少なくありません。むちうちの症状が後に出てくる可能性もあります。
ケガをしたとき、通院しなければ慰謝料も休業損害も請求できません。
ねんざ、打撲、骨折やむちうちなどのケガは整形外科、頭を打ったときには脳神経外科など、適切な診療科を受診しましょう。
5-7.絶対に逃げてはいけない
交通事故を起こして気が動転しても、決してその場を立ち去ってはいけません。
事故現場から離れると「ひき逃げ」「当て逃げ」となって、重大な刑罰が適用されるリスクが発生するからです。「後で戻ってこよう」と思っていても、いったん現場を離れると道路交通法違反になります。
人身事故だけではなく、物損事故でも警察への通報義務があるので、怖くても急いでいても絶対に逃げてはなりません。

6.初心者が交通事故に遭ったら弁護士へ相談を
事故対応の知識がない初心者が交通事故を起こすと、さまざまな困難に直面するものです。
保険会社へ損害賠償請求を行う際にも、保険会社の対応に困惑したり慰謝料や賠償金の金額に納得できなかったり、後遺障害認定を受けられずお困りになる方が多数おられます。
親の車を運転していたら、親にも迷惑をかけてしまうでしょう。
初心者の交通事故に適切に対応するには、弁護士によるサポートが必要です。
6-1.適切な対応方法を確認できる
弁護士に相談すれば、将来の予想される展開を見据えた最適な対処方法を確認できます。
通院方法や医師とのコミュニケーションの方法、保険会社への対処方法や資料の集め方、後遺障害認定の方法など、弁護士からさまざまなアドバイスを受けられるので、安心できます。
6-2.賠償金額が上がる
弁護士が示談交渉をすると、高額な弁護士基準が適用されます。被害者ご自身が対応する場合と比べて大幅に賠償金がアップする例が多々あります。
特に治療期間が半年以上になった場合や後遺障害が残りそうなケースでは、必ず弁護士に依頼すべきです。
6-3.示談交渉を任せられる
免許取り立てで事故を起こしてしまったら、ただでさえ精神的ダメージが大きいものです。
そんな状態で、自分で示談交渉を進めるのは大変な心理的負担になるでしょう。「もう二度と運転したくない」という気持ちになってしまう方も少なくありません。示談交渉に労力や時間を割かれるのも負担です。
弁護士に示談交渉を任せれば、自分で直接対応しなくて良いので気持ちも楽になり、手間や時間もかかりません。弁護士費用特約を適用できれば、費用負担も生じないケースが大多数です。
6-4.弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、保険会社が300万円まで弁護士への相談料や着手金、報酬金などの報酬を負担してくれる保険です。よほど大きな交通事故でない限り、弁護士費用特約を適用すると無料で弁護士のサービスを利用できます。
若い方の場合、ご自身が自動車保険に加入していないケースもよくありますが、親の自動車保険の弁護士費用特約を適用できる可能性があります。
親と同居している場合、別居していても独身の方であれば、親の弁護士費用特約を適用できる保険会社が多いのです。
まずは加入している保険の内容を確かめて、弁護士費用特約を適用できるか確認してみてください。
恵比寿の鈴木総合法律事務所では、交通事故に遭われた方のサポートに積極的に取り組んでいます。不運にも免許取り立ての初心者で事故を起こしてしまった方にも親身になって対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。


