- 交通事故を起こしてしまった
- 罰金は支払わなければいけないのだろうか
- 前科はついてしまうのだろうか
- 会社にバレないだろうか
交通事故を起こしてしまい、様々な心配が頭を過ぎる中、今後どのように行動していけばいいのか不安に思われていませんか?
今回の記事では、交通事故を起こしてしまった場合に、取るべき行動や今後の手続について、具体的に解説していきます。
1.交通事故の加害者が負う責任とは

まず、交通事故の加害者が負う責任について説明します。
交通事故の加害者は、行政上の責任、民事上の責任、刑事上の責任という3つの種類の責任を負います。
行政上の責任
行政上の責任とは、免許停止や免許取消など、行政処分として科される不利益を意味し、反則金を支払う場合もあります。
民事上の責任
民事上の責任とは、交通事故によって被害者が被った損害を金銭的に賠償する責任です。具体的な損害として、治療費や慰謝料、休業損害などが挙げられます。
刑事上の責任
刑事上の責任とは、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの罪に問われ、警察の捜査の対象となる不利益を意味します。なお、刑事上の責任は、基本的に人身事故であった場合にのみ問われます。

2.反則金、罰金、慰謝料、それぞれの違いは?

交通事故を起こすと、反則金、罰金、慰謝料など、様々な名称の金銭を支払うことになります。
2-1.反則金
反則金とは、正確には交通反則金といい、交通反則制度に基づいて行われる、行政処分としての過料の一つです(行政上の責任)。
道路交通法に違反した人は、違反の内容に応じて定められた金額を反則金として納付することになります。
反則金を納付した場合、刑事手続を免れることができますが(刑事上の責任を負わない)、これを納付しなかった場合、刑事手続に移行し、刑事上の責任を問われることになります。
反則金の対象となるのは比較的軽微な交通事故の場合に限られており、人を怪我させたなどの重大な事故の場合には、いきなり刑事上の責任が問われることになります。
2-2.罰金
罰金とは、刑事上の責任を負う場合に、裁判手続(判決等)によって科される懲役刑や禁錮刑とならぶ刑罰の一つです(刑事上の責任)。
罰金の下限は1万円ですが、上限は法律によって様々です。
交通事故の場合、過失運転致死傷罪の100万円が上限となります。罰金は現金一括払いが原則で、これを支払わなかった場合、身柄を拘束されて刑務所や拘置所内にある「労役場」という場所で強制労働させられることになります。
2-3.慰謝料
慰謝料とは、被害者が交通事故によって被った精神的苦痛を填補するために支払われる金銭です。
加害者は、通常、治療費や休業損害などと併せて慰謝料を支払うことになります(民事上の責任)。
加害者が、自賠責保険(強制保険)や任意保険に加入している場合、被害者に対する慰謝料等は保険会社が代わりに支払うことになります。
また、任意保険会社は、被害者との示談交渉も代わりにしてくれます。もっとも、保険会社は、民事上の損害賠償債務を代わりに支払ってくれるだけで、反則金や罰金までは支払ってくれません。保険は民事上の責任についてのみ適用されるからです。
3.交通事故発生から解決までの流れ

3-1.事故現場ですべきこと
- 事故状況の確認
- 被害者の救護活動
- 道路の安全の確保(二次被害防止)
- 警察に通報
- 実況見分の立会
- 被害者の連絡先交換
- 保険会社に連絡

3-2.逮捕されてしまうの?
交通事故の加害者の場合、よほど悪質な交通違反を犯した場合でない限り、逮捕されることはありません。
事故当日はそのまま帰宅し、その後は警察に呼ばれたときにだけ捜査に協力することになります(在宅捜査)。
もっとも、軽微な事故であったとしても、その場から逃げてしまったり、被害者の救護を怠ったりすると、後日、逮捕されたり刑事責任が重くなることがありますので注意してください。
3-3.示談交渉(民事・刑事)
交通事故の現場ですべきことが終わると、被害者との示談交渉が必要となります。
被害者と示談をすることは、加害者の民事上の責任を確定(軽減)させ、刑事上の責任を軽減させる効果があります。繰り返しますが、民事上の責任は被害者の損害を賠償する責任で、刑事上の責任は過失運転致死傷罪などの罪に問われ捜査の対象となる不利益です。
先程述べたとおり、加害者が任意保険に加入している場合、保険会社が示談代行をしてくれますが、ここでいう示談はあくまで民事上の責任についての示談であって、刑事上の責任を軽減する意味の示談(正確には嘆願書の作成など)は含まれていません。
したがって、自分が刑事上の責任も問われている場合には、保険会社に示談交渉を任せきりにするのではなく、自分(もしくは弁護士)で示談交渉をする必要があります。
なお、被害者に後遺障害が残る場合など、示談交渉が長期化するケースもあります。
3-4.示談成立後
示談交渉が無事まとまり、被害者に損害賠償金の支払を済ませたら、民事上の責任は終了しますが、示談がまとまらず、交渉決裂となった場合には、調停や訴訟の場で被害者の損害額(民事上の責任)を確定させることになります。
一方、刑事手続については、事案の軽重、示談の有無、前科・前歴、反省の有無等の事情を考慮し、検察官が起訴・不起訴を判断します。一般的に、被害者が軽症で、初犯の場合には不起訴となることが多いです。

4.具体的なケースと処分結果
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4-1.被害者に落ち度があったケース
加害者が自動車を運転して走行中、赤信号を無視して交差点に進入した結果、交差点右方から進行してきた原付(被害者)と衝突。被害者は、加療約4ヶ月を要する左下腿骨解放骨折等の傷害を負った。
→罰金30万円
Point
本件は、被害者が加療約4ヶ月の傷害を負っており、決して軽微とはいえない事案ですが、被害者にも赤信号無視の過失(見切り発車)があったため、罰金は30万円にとどまったと考えられます(示談不成立)。
4-2.被害者と示談が成立したケース
加害者が自動車を運転して交差点を走行中、前方左右を確認せず右折したため、横断歩道上の歩行者(被害者)と衝突。被害者は、加療約7ヶ月を要する右足関節骨折等の傷害を負った。
→罰金50万円
Point
本件は、被害者が加療約7ヶ月のヶ月の傷害を負っており、決して軽微とはいえない事案ですが、被害者と示談が成立し、加害者のことを許していたため、罰金50万円にとどまったと考えられます(示談金10万円)。
4-3.加害者の落ち度が大きいケース
加害者がバイクを運転して道路を走行中、赤信号を無視して横断歩道上の自転車(被害者)に衝突。被害者は、加療約1週間を要する頭部打撲等の傷害を負った。
→罰金60万円
Point
本件は、被害者の傷害は加療約1週間と軽微ですが、被害者に落ち度はなく、また、示談も成立していないため、罰金60万円の判決が下されたと考えられます。
4-4.罰金の前科があったケース
加害者が自動車を運転して交差点を走行中、前方左右を注視せず左折したところ、横断歩道上を走行してきた自転車(被害者)と衝突。被害者は、加療約9ヶ月を要する右鎖骨遠位端骨折等の傷害を負った。
→懲役9ヶ月(執行猶予なし)
Point
本件は、被害者が加療約7ヶ月の重傷を負っている上、加害者には罰金の前科2犯があったため、懲役9ヶ月の実刑判決が下されたと考えられます。また、加害者が被害者に対し不誠実な供述をしていたことも、刑事責任を加重させたと考えられます(示談不成立)。
5.円満に解決するために加害者がとるべき対応

5-1.事故現場ですべきこと
3章で説明しております「事故現場ですべきこと①~⑦」は必ず実施しましょう。これを怠ると、逮捕されたり刑事責任が重くなるおそれがあります。
また、警察や被害者へは、自分が認識していることを正直に答え、誠実に対応するようにしましょう。後になって、言っていることが変わったり、現場の状況と矛盾することが発覚すると、疑いの目を向けられ、刑事責任が重くなるおそれがあります。
5-2.示談交渉
被害者と示談交渉をしましょう。
基本的には、保険会社があなたの代わりに示談交渉をしてくれますが、被害者が大怪我を負っている場合など、あなたが刑事上の責任を問われている場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。
被害者の被害感情が大きいとき、加害者が直接被害者と交渉しようとしても、そもそも交渉のテーブルについてもらえない場合もあります。また、示談を持ちかけるタイミングも重要です。示談が成立するか否かは刑事上の責任に大きく影響することなので、交渉のプロである弁護士にお願いすることをおすすめします。
5-3.自動車保険に入っておく
被害者に対する損賠賠償額はかなり高額になることもあります。
このとき、加害者が任意保険(自動車保険)に入っていないと、損害賠償金を自分で支払うことが出来ず、被害者と示談をすることが出来なくなってしまいます。被害者と示談が出来ないと、刑事上の責任も重くなってしまうおそれがあります。
このような事態を避けるためにも、任意保険には必ず加入しておくようにしましょう。
また、一口に自動車保険と言っても、その内容には、車両保険、人身傷害保険、対人賠償保険、対物賠償保険など様々なものがあります。このうち、被害者に対する賠償や示談代行をしてくれるのは、対人賠償保険と対物賠償保険です。
これから自動車保険に入る方も、すでに加入している方も、自分が加入する自動車保険に対人賠償保険と対物賠償保険が含まれているか、しっかり確認するようにしましょう。
6.さいごに
いかがでしたか?交通事故を起こすと様々な責任を負い、解決まで時間と労力を要します。このようなことにならないために、くれぐれも、安全運転にお努めください。



