痴漢や盗撮、強制わいせつなどの性犯罪の被害に遭ったら、1人で悩まず適切な機関へ相談しましょう。
今回の記事では、痴漢や盗撮、強制わいせつなどの性犯罪の被害に遭ったときの相談窓口や対処方法をご紹介します。
性犯罪の種類
性犯罪には以下のような種類があります。
- 痴漢
- 盗撮
- 児童買春
- 児童ポルノ製造・所持
- 強制わいせつ
- 強制性交等罪
以下、それぞれの犯罪についてみてみましょう。
01.痴漢
痴漢とは、電車やバスなどの乗り物の中、広場、イベント会場などで他人の身体を衣服の上から直接触るといった行為による犯罪です。
多くの場合、迷惑防止条例違反にあたります。悪質なケースでは、強制わいせつ罪が成立することもあります。
02.盗撮
盗撮とは、エレベーターやエスカレーターなどの場所で女性のスカートの下にスマホカメラを差し入れて撮影する、女子トイレや更衣室にカメラを仕掛けるといった行為による犯罪です。
基本的には迷惑防止条例違反となりますが、軽犯罪法違反や建造物侵入罪も成立することがあります。
03.児童買春
児童買春とは、18歳未満の未成年に対価を渡して性交や性交類似行為をしたときに成立する犯罪です。
その刑罰は非常に重く、初犯でも実刑になる可能性があります。
04.児童ポルノ製造、所持
児童ポルノとは、18歳未満の未成年のわいせつな画像や動画などのことです。18歳未満の児童の性的な所作を撮影したり保存したりしていると児童ポルノに関する罪で処罰対象となります。
06.強制わいせつ
暴行や脅迫を手段としてわいせつ行為を行うことで成立する犯罪です。たとえばいきなり抱きついたりキスをしたり服を脱がせたりした場合が強制わいせつにあたります。
強制わいせつ罪の刑罰は6ヶ月以上10年以下の懲役刑であり、初犯でも実刑になる可能性があります。
07.強制性交等罪
むかしは強姦罪と呼ばれていた犯罪です。相手に暴行や脅迫を行い反抗不能な状態にしたうえで性交や性交類似行為を強要したときに成立します。
法改正により被害者は女性だけではなく男性も含まれるようになりました。また、性交だけでなく肛門性交や口腔性交などの性交類似行為を強要した場合にも成立します。
刑罰は5年以上の有期懲役刑であり(刑法177条)、執行猶予がつく可能性が極めて低い重罪です。
性犯罪の相談窓口
性犯罪に遭うと被害者は大きく傷つきます。精神的にも肉体的にも大きなショックを受けるため、「早く忘れてしまいたい」という方がほとんどです。
しかし、相手の行為は犯罪、不法行為にあたります。泣き寝入りせずに被害申告やしかるべき手続きをしてきっちりと処罰を受けさせたほうが良いでしょう。
性犯罪に遭ったときにサポートを受けられる窓口を見てみましょう。
01.警察
警察に直接出向き、被害を訴えることが可能です。
また、犯罪被害者が利用できるホットライン(電話窓口)も設けられております。相談内容に応じて専門の窓口を案内してもらえます。
総合窓口(全国共通):「#9110」
性犯罪被害相談(全国共通):「#8103」
なお、警察に相談して実現できるのは「加害者に対する処罰」です。痴漢や強制わいせつなどは犯罪なので被害者から申告があれば警察が捜査を開始し、加害者を逮捕して検察官へ送ります。
刑事裁判で有罪になれば加害者には罰金刑や懲役刑が適用されます。加害者にペナルティを与えたい場合には、警察へ相談してみてください。
02.男女共同参画局
内閣府の男女共同参画局では、各地方自治体と連携して性犯罪被害者をサポートしています。以下のリンクに窓口一覧があるのでお近くの機関に連絡してみましょう。
男女共同参画局では、性犯罪に遭ってつらい思いをしていること、今後どうすればよいのかといった全般的なアドバイスを受けることができます。
03.地方自治体
地方自治体の男女共同参画センター、女性センターや市町村役場などでも性犯罪被害の相談を受け付けております。お近くの施設や役所へ連絡して利用しましょう。
地方自治体でも性犯罪に遭ったつらい気持ちを聞いてもらったり、状況やご希望に応じたアドバイスをしてもらえたりします。
04.法テラス
全国の法テラスにて犯罪被害者支援業を行っています。支援してくれる弁護士の紹介などを受けることができるので、法的な手続を進めたい場合には利用しましょう。
05.弁護士
法テラスで弁護士の紹介を受けずに、自身で弁護士を探して相談することも可能です。
この方法であれば、性犯罪の被害者支援に力を入れている弁護士を自身の眼で探せますし、プロフィールや実績、性別などをみて自分で好みの弁護士を選べるので安心感があるでしょう。
弁護士は、加害者に対する刑事告訴の代理や刑事手続きへの関与のサポート、加害者に対する損害賠償請求の代理などを依頼することができます。
06.メンタルクリニック
性犯罪被害を遭い、精神的に追い詰められてしまう方は多数いらっしゃいます。精神的に大きく傷つき、外に出るのが怖くなったりうつ状態になったりしてメンタルの調子を崩してしまう方も多いです。
そんなときはメンタルクリニックに通いカウンセリングを受けることで楽になる可能性、快復に向かう可能性があります。苦しいときにはお近くのクリニックに相談してみてみましょう。
性犯罪の被害者が加害者に対してできること
性犯罪に遭った被害者は、加害者にどういった対応ができるのでしょうか?
01.被害届の提出、刑事告訴
被害者は、犯罪に遭った事実を警察に届け出たり、加害者に対する刑事罰を求めて刑事告訴することができます。
警察に被害の報告をする届出が被害届です。被害届を提出すると「犯罪被害に遭いました」と警察へ申告したことになります。被害届を受理した警察は、必要に応じて捜査を進め、加害者を逮捕して検察官へ送致します。
また、刑事告訴は「加害者を処罰して下さい」という被害者からの積極的な意思表示です。告訴を受理した警察は何らかの対応をしなければなりません。
単に被害届を提出するよりも刑事告訴をした方が強い意思表示となり、警察にも動いてもらいやすくなります。性犯罪に遭って相手を許せない気持ちが強いのであれば告訴状を作成して警察に提出しましょう。
02.刑事裁判への参加
加害者が逮捕されて捜査が進むと、検察官の判断により起訴されて刑事裁判になる可能性があります。特に強制わいせつや強制性交等罪、児童買春などの重大犯罪の場合、不起訴になる可能性は低く起訴されて通常裁判が開かれるケースが多数です。
加害者が通常裁判によって裁かれる場合、被害者には加害者の裁判手続きへの参加が認められ、以下のような方法で関与できます。
- 検察官に意見を言える
- 証人や被告人に尋問、質問できる
- 事実関係や量刑について意見を述べられる(被害者論告)
- 心情を陳述できる
①についてですが、被害者は、検察官が刑事裁判でどのような活動をするのかについて意見を述べることができます。
②についてですが、被害者は被告人側が用意した情状証人に対し尋問することができます。被告人自身に対しては事実関係も含めて質問が可能です。
③についてですが、被害者には、刑事裁判の終盤において事実関係や量刑についての意見を述べる機会を与えられます。たとえば「懲役〇年にしてほしい」と裁判官に伝えることができます。
④についてですが、被害者がどんなに辛い思いをしているかといった心情などを裁判官や裁判員に伝えることができます。
以下のような考えをお持ちの方は、被害者参加制度を利用した方が良いといえるでしょう。
- 加害者の刑事裁判を見届けたい
- 加害者が何を考えているのか知りたい
- できるだけ厳しい刑罰を与えてほしい
担当検察官へ申告すれば被害者参加が可能です。なお、1人で証人尋問や被告人質問、被害者論告などの手続きを進めるのは心身共に負担となることでしょう。被害者支援弁護士に協力してもらいながら対応されることをお勧めします。
03.損害賠償請求
犯罪被害を受けると損害が発生するので、加害者に対し民事的な損害賠償請求が可能です。こと性犯罪の場合は、精神的苦痛が大きいので基本的には「慰謝料」を請求することになります。
慰謝料の金額はケースによって大きく異なります。痴漢や盗撮の場合なら数十万円程度となることが多く、児童買春や強制わいせつなどの場合には100万円を超えるケースもあります。強制性交等罪であれば数百万円以上になるケースも少なくありません。
また、産婦人科での検査や処置が必要になった場合にはその費用を請求することもできますし、休業損害を請求できるケースもあります。
なお、ちゃんとした損害賠償請求を行なうためには法的な知識が必要です。加害者とのやり取りも必要となるので個人でしっかりと対応するのは非常に困難と言えます。
この点、弁護士に手続きを依頼すれば相当の金額をしっかりと請求することが可能となります。賠償請求を検討しているのであれば弁護士に依頼することを推奨します。
性犯罪被害を弁護士に相談するメリット
性犯罪被害に遭ったことを弁護士に相談するメリットとしては以下のものが挙げられます。
01.1人で不安な気持ちが解消され楽になる
性犯罪に遭った被害者は大きく傷つきます。外へ出ることすら怖くなるケースも多いです。そんな状態で警察に被害届を提出したり刑事裁判に参加したりするのは困難と言えるでしょう。
弁護士に手続きを依頼すれば、被害者に代わって必要な対応を進めてもらえます。抱えている不安や今後のことなど様々なことを相談することが可能です。また、弁護士には守秘義務がありますので、被害の事実を他者に漏らされる心配もありません。
実際、法律の専門家である弁護士が味方になってくれた安心感から、だんだんと元気を取り戻す被害者の方も多数いらっしゃいます。
02.警察への対応を任せることができる
刑事告訴をしたいと思っても、何から手をつけてよいかわからない方が多いでしょう。また、被害者自身が告訴状を警察に提出しても「不備がある」「証拠がない」などといわれて受け付けてもらえないケースも少なくありません。
この点、弁護士に告訴状の作成や提出を依頼すれば、被害者自身はほとんど対応が不要となるので労力がかかりません。また、弁護士が法的観点から適切な告訴状を作成し、証拠を整えて告訴手続きをとれば受理される可能性が高くなります。
03.被害者参加制度の代理人を依頼できる
加害者の刑事裁判に被害者参加したいと思っても、被害者が1人で被告人と向き合うのはなかなか困難です。効果的に情状証人や被告人に質問したり、意見陳述したりするのも難しいといえるでしょう。
この点、弁護士に手続きを依頼すれば、弁護士が被害者に代わって証人尋問や被告人質問を行ってくれます。また、被害者論告については弁護士が書面を作成しますので、被害者はそれを読むだけで対処できます。
04.加害者との示談交渉や損害賠償請求を依頼できる
性犯罪が立件されると、加害者が処分を軽くするために被害者へ示談交渉を申し入れてくることがありますが、被害者としては「加害者とかかわりたくない」「示談に応じるべきか無視するべきか判断できない」「適切な慰謝料の金額がわからない」などの理由で困惑してしまうものです。
この点、弁護士に相談すれば、示談に応じるべきかどうかを適切に判断できます。また、弁護士に任せれば、自分で対応する必要がなくなるので気持ちも楽になるでしょう。相手が不誠実な場合は、訴訟を起こして損害賠償請求をすることも可能です。
さいごに
痴漢、盗撮、強制わいせつの被害に遭われた方が、加害者に対して刑事でも民事でも適切な対応を行ないたいのであれば、弁護士によるサポートは必要不可欠と言えるでしょう。
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、痴漢、盗撮、強制わいせつなどの性犯罪の被害者への支援に注力しております。秘密厳守で親身になってお話をお伺いしますので、辛いお気持ちを抱えていらっしゃる方は是非一度ご相談ください。