本来なら自分は法定相続人であるはずなのに、遺言によって遺産を受け取れなかったり受け取る遺産の額が小さくなってしまったりすることがあります。
このような場合でも「遺留分減殺請求」を行うことで最低限の遺産を取得できる可能性があります。
今回の記事では遺留分減殺請求とその方法について解説します。
注意
令和元年7月の法改正により、遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求に変わりました。双方の違いは下記リンクを参照ください。
以下の本記事の説明は、旧法の遺留分減殺請求についての説明です。遺留分侵害額請求とは異なる部分があることにご留意ください。
遺留分とは
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分のことです。
相続が発生したとき、遺言が残されていた場合はそれに従って、遺言が残されていない場合には遺産分割協議で決まった分割方法または民法の定める割合(法定相続分)に従って遺産を相続します。
遺言による指定内容は法定相続に優先するため、遺言において「第三者に遺産を分与する」「特定の法定相続人に遺産をすべて受け継がせる」と記載されていた場合、本来の法定相続人であっても遺産を受け取れなくなります。
このような偏った遺言は相続人の期待を大きく裏切るものであるため、法律で制限が加えてられております。具体的には、一定の範囲の法定相続人に最低限度の取得分としての「遺留分」を認め、遺言の内容如何に寄らず遺留分に相当する遺産を受け継ぐことができるようにしたのです。
遺留分が認められる人
遺留分が認められるのは「兄弟姉妹以外の法定相続人」です。具体的には以下のような相続人に遺留分があります。
- 配偶者
- 子ども、孫などの直系卑属
- 親、祖父母などの直系尊属
なお、兄弟姉妹の子どもである甥姪も兄弟姉妹の地位を引き継ぐので、遺留分は認められません。
遺留分の割合
遺留分の割合は、ケースによって異なります。
親等の直系尊属のみが相続人となるケースでは、遺留分の割合は遺産全体の3分の1です。これを相続人が法定相続分に従って分け合うことになります。
それ以外のケースにおける遺留分の割合は、遺産全体の2分の1です。これを、相続人がそれぞれの法定相続分に従って分配します。
たとえば法定相続人が妻と2人の子供の場合、遺留分の割合は2分の1です。また、妻の法定相続分は2分の1、子どもたちの法定相続分はそれぞれ4分の1ずつです。そのため、妻の遺留分は4分の1(=2分の1×2分の1)、子どもたちの遺留分はそれぞれ8分の1(=2分の1×4分の1)となります。
遺留分減殺請求の対象
遺留分を請求することを、法律では「遺留分減殺請求」といいます。
遺留分減殺請求の対象となる行為は遺言だけではありません。以下のような行為に対しても遺留分減殺請求ができます。
- 遺言による分与、相続分の指定
- 死因贈与
- 死亡前1年以内の生前贈与
ただし、受贈者が悪意の場合には1年より前の生前贈与であっても遺留分減殺請求の対象になります。
また、生前贈与が法定相続人の「特別受益」に該当する場合にも、特段の事情がない限り1年より前の贈与が遺留分減殺請求の対象となります。
遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺請求をするときには、必ず内容証明郵便を利用して遺留分の侵害者に対し遺留分減殺通知書を送りましょう。
内容証明郵便を利用すべき理由は、遺留分減殺請求に期限があるためです。
遺留分減殺請求は、相続の開始と遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知ってから1年以内に行う必要があります(民法1042条)。
確実に期限内に遺留分減殺請求をしたことを明らかにするために内容証明郵便を利用する必要があるのです。内容証明郵便には確定日付が入るので、確実に期限内に送ったことを明らかにできますし通知内容も証明されます。内容証明郵便で遺留分減殺通知書を送ったあとは、相手(遺留分侵害者)との間で具体的な遺留分の返還方法を話しあって決める必要があります。
話し合いをしても合意ができない場合には家庭裁判所で遺留分減殺調停をしなければなりません。
調停でも話がまとまらなければ「遺留分減殺訴訟」により、裁判所で遺留分の有無や遺留分の返還方法を決定してもらう必要があります。訴訟になると当事者が希望しない方法で遺留分の返還方法を決定されてしまう可能性もあります。遺留分の返還についてはできるだけ自分たちで話し合って解決する方が良いでしょう。
さいごに
相続の場面では利害の対立等によりトラブルが起きることが往々にしてあります。他の相続人ともめて意見が合わないなどのトラブルが起こった場合には弁護士に相談しましょう。
東京・恵比寿にある鈴木総合法律事務所では相続トラブルについて注力しており、多数の解決実績も有しております。遺産相続に関してお悩みがある場合には、お気軽にご相談ください。