破産や個人再生を申し立てた際のリスク・デメリットの一つとして、手続きのことが官報に掲載されてしまうという点があります。
- そもそも官報とはなんなのか?
- どのタイミングで官報に情報が掲載されるのか?
- どのような情報が官報に掲載されるのか?
- 官報に掲載されることによりどのようなデメリットを被る可能性があるのか?
今回は、上記の疑問点について解説いたします。
官報とは?
官報とは、国(政府や各省庁といった行政機関)が諸事項を一般国民に周知させることを目的として刊行される公告文書(広報紙)です。国が発行する新聞と考えていただければ理解が容易かと思われます。
政策や行政等に関する諸事項を国民に周知させるという目的から、掲載される内容は、法律・政令・条約などの公布、国や特殊法人等の諸報告、会社の決算公告等が掲載されます。
官報は、国立印刷局が、行政機関の休日を除き、毎日発行しています。とはいえ官報はコンビニエンスストアで販売されているようなものではありません。
- 全国の官報販売所で購読を申し込む
- 国立印刷局が管理するインターネット版官報のサイトでアカウントを作成したうえで閲覧する
- 図書館で閲覧する 等
以上のような方法を取らないと閲覧することができないため、普通に生活する分には目にする機会はほぼないといえます。
なお、金融系の職等に従事している方であれば、職務の一環として官報を精査することがあるかと思いますので、比較的なじみがあるかと思われます。
官報に掲載されるタイミング
官報には、法令の公布等のほか、裁判所公告事項も掲載されるのですが、その公告事項の一つとして破産や個人再生に関する情報があります。
それでは、どのような内容がどのようなタイミングで掲載されるのでしょうか?
例えば、破産事件(少額管財)の場合、下記のタイミングで、官報に情報が掲載されます。
- 破産手続の開始決定
- 破産手続の廃止決定
- 破産手続の免責決定
また、個人再生事件であれば、下記のタイミングで官報に情報が掲載されます。
- 個人再生手続の開始決定
- 書面決議に付する決定(債権者の意見を聴く決定)
- 認可決定
官報に掲載される内容
それでは、官報には何が記載されるのでしょうか?破産(少額管財)の場合を例に挙げてみてみましょう。
01.官報掲載例
開始決定時
令和2年(フ)第11111号 (←事件番号)
東京都渋谷区恵比寿0-0-0 (←破産者の現住所)
債務者 田中 花子 (←破産者の氏名)
1 決定年月日時 令和2年8月5日午後5時
2 主文 債務者について破産手続きを開始する
3 破産管財人 弁護士 山田 太郎 (←管財人の氏名)
4 破産債権の届出期間 令和2年9月2日まで
5 財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告・免責審尋の期日 令和2年10月16日午前10時30分
6 免責意見申述期間 令和2年10月16日まで
東京地方裁判所民事第20部
廃止決定時
令和3年(フ)第11111号 (←事件番号)
東京都渋谷区恵比寿0-0-0 (←破産者の現住所)
破産者 田中 花子 (←破産者の氏名)
1 決定年月日 令和3年1月15日
2 主文 本件破産手続を廃止する。
3 理由の要旨 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するに不足する。
東京地方裁判所民事第20部
免責決定時
令和3年(フ)第11111号 (←事件番号)
東京都渋谷区恵比寿0-0-0 (←破産者の現住所)
破産者 田中 花子 (←破産者の氏名)
1 決定年月日 令和3年1月15日
2 主文 破産者について免責を許可する。
東京地方裁判所民事第20部
02.掲載される個人情報
以上のとおり、破産者の個人情報として、「名前」と「現住所」が掲載されます。
03.他の事件での掲載内容について
他の事件における官報への記載内容は、事件の種別、掲載段階により異なります。各々の場面での掲載内容の詳細については割愛させていただきますが、債務者の個人情報として「名前」と「現住所」が掲載されることに変わりはありません。
官報掲載による手続き発覚リスク
官報に掲載されることで、他の誰かに破産(個人再生)に臨んだ事実が判明してしまうリスクはどれくらいあるのでしょうか?
先に述べた通り、一般の方は、官報を閲覧する機会がほとんどありません。
また、官報には裁判所公告のほかにもいろいろな情報が掲載されていること、裁判所公告の頁においても全国の破産、個人再生の公告のほかさまざまの情報が掲載されているため、よほどしっかりと見ていない限り気づかないものと思われます。
また、掲載される個人情報は「名前」と「住所」の2つだけですので、名前と住所の双方を知られていない限りは特定される可能性は低いといえます。
官報に名前と住所が掲載がされたことをきっかけに、他者に手続きが発覚してしまうリスクは非常に低いものと考えられます。
なお、金融機関や信販会社等に勤めている知人がおり、その方が債権者の信用情報をチェックする業務に携わっている場合、その知人は破産や個人再生の公告欄を精査していることでしょうからその人に手続きが知られてしまう可能性は高いといえるでしょう。
官報掲載によるその他のリスクについて
官報に名前と住所が掲載されるその他のリスクとして、闇金業者などによるDM(ダイレクトメール)の発送が挙げられます
破産や個人再生等を行なったことにより信用情報に事故情報が記載されてしまった方(金融ブラック状態にある方)は、信用情報が回復するまでの間、一般の金融機関や貸金業者から借入を行なうことが難しくなります。
そのような人は、闇金業者からすれば顧客になる可能性があるのでぜひともアプローチしたい対象です。
官報を閲覧すれば名前と住所、手続きの進捗状況を確認することができますので、闇金業者がこの情報を基に「私共はブラックの人にもお金を貸しますよ」といった内容のDMを送ってくるのです。
なお、このようなDMは無視しておけば何らの実害はありません。
さいごに
今回の記事では、官報に個人情報が掲載されるタイミングとその内容、他者への発覚リスクなどについて大まかに説明いたしました。
この記事をお読みになられている方の多くは、負債や返済について何かしらのトラブルや心配事を抱えていらっしゃるかと思います。
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