- 会社の同僚に一方的に好意を持たれ付きまとわれている
- 拒絶しているにも関わらず元交際相手がいつまでも復縁を要求してくる
特定の相手に持つ恋愛感情などの好意の感情を満たす目的やその感情が満たされなかったことへの恨みをはらす目的で、その人や家族につきまとい等の迷惑行為を繰り返す人のことをストーカーと呼びます。
ストーカーは、一方的な理由で特定の個人に迷惑行為を繰り返し行っており、場合によっては拉致監禁や殺傷につながることもあります。ストーカー被害に遭われている方は、早急に対応策を講じた方がよいでしょう。
今回の記事ではストーカー行為の種類と成立する犯罪、対応方法等について弁護士が解説します。
ストーカー
01.ストーカー
ストーカーとは特定の相手に持つ恋愛感情などの好意の感情を満たす目的やその感情が満たされなかったことへの恨みをはらす目的で、その人や家族につきまとい等の迷惑行為を繰り返す人のことです。その人や家族につきまとい等の迷惑行為を繰り返す行為をストーカー行為といいます。
02.ストーカー規制法
ストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、ストーカー行為を取り締まるために規定された法律です。2000年11月に施行されました。
ストーカー行為の種類
ストーカー規制法では、「つきまとい等」を「反復して」行い、その相手に「不安を覚えさせる」行為をストーカー行為と定めており、具体的には以下の8種の行為がストーカー行為にあたるとしております。
- 住居、勤務先、学校その他通常の所在場所での付きまとい・待ち伏せ・進路立ちふさがり・見張り・押しかけ
- 監視している旨の告知
- 面会・交際・その他義務のないことを行うことの要求
- 著しく粗野な言動、著しく乱暴な言動
- 無言電話、連続した電話・ファックス・メール
- 汚物・動物の死体等の送付
- 名誉を害する事項の告知
- 性的恥辱心を害する事項の告知
①の行為の例としては、外出先で尾行する、自宅付近で待ち伏せする、自宅・勤務先・学校などに押しかけるといった行為が挙げられます。
②の行為の例としては、帰宅にあわせて電話をかけて「おかえり」と伝えたり、行動や服装などをメールやSNS投稿によって告げたりするなど、監視していることを匂わせるような言動をすることが挙げられます。
③の行為としては、「どうしても会ってほしい」「ヨリを戻してほしい」と何度も面会・交際を求めたり、自宅などにプレゼントを送りつけるといった行為が典型例です。
④の行為としては、被害者本人を前にして大声で怒鳴ったり「ぶっ殺すぞ」など乱暴なメッセージを送信する、自宅や勤務先の周辺で車のクラクションを鳴らし続けたりするなどの行為が考えられます。
⑤の行為としては、無言電話をかける、「もう連絡しないでほしい」と明確に拒否されているにもかかわらず何度も電話・メール・SNSなどを利用してコンタクトを図ろうとする行為が考えられます。
⑥の行為の例としては、汚物を玄関先に置く、動物の死骸を宅配便で送るなど、不快感や嫌悪感を与えるようなものを送りつける行為が挙げられます。
⑦の行為の例としては、不名誉な内容のビラを作って街頭に貼る、SNSなどで誹謗中傷にあたる投稿をするなど、被害者の社会的評価をおとしめるような行為が挙げられます。
⑧の行為としては、わいせつな写真を送りつける、電話・メールなどで卑猥な言葉を告げるといった行為が考えられます。
注意点として、ストーカー行為を「反復して」行った場合であって、かつ、相手に「不安を覚えさせ」たケースでなければストーカー規制法による規制の対象とはなりません。
たとえば、ストーカー行為に相当する行為がなされたとしてもそれが一度きりであった場合は、反復性がないため規制の対象とはなりません。また、ストーカー行為に相当する行為がなされたとしてもその行為に対し相手が不安を感じていない場合(たとえばストーカー行為に同意している等)も規制の対象外となります。
ストーカー行為に対する罰則
01.ストーカー行為に対する罰則
ストーカー行為に対する罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
悪質性が低いものであれば罰金刑で済まされる可能性がありますが、行為が悪質で被害者への危害が大きいケースでは懲役刑が下されるおそれが高まります。
02.禁止命令に違反したストーカー行為に対する罰則
警察は、被害者の申出により、つきまとい等の行為をする者に対して「警告」をすることができます。また、都道府県公安委員会は、つきまとい等の行為を反復するおそれがあると認めるときは、被害者の申出又は職権で「禁止命令」等をすることができます。
通常、禁止命令が下されるには公安委員会による「聴聞」によって、加害者の意見も聴取する機会がもたれます。なお、加害者への危害が予想されるなどの緊急性が高いケースでは、聴聞を開くことなく禁止命令が下されることもあり得ます。
禁止命令を受けたうえでストーカー行為をした場合の罰則は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金です。警告・禁止命令を経てもさらにストーカー行為を繰り返すことは悪質なので、通常のストーカー行為よりも重い刑罰が規定されています。
03.禁止命令に違反に対する罰則
上記の他、単に禁止命令等に違反した者に対しても罰則が設けられており、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
04.刑法で罰せられる可能性もある
ストーカー行為がエスカレートし、刑法で規定する犯罪行為をした場合は、刑法の各罰条によっても処罰を受けることになります。
たとえば、復縁を迫って押し問答になり相手を突き飛ばしてしまった場合には暴行罪が成立しますし、恋愛感情が怨恨にかわってSNSで誹謗中傷をすれば名誉毀損罪に問われる可能性があります。
ストーカー行為から発展しやすい刑法犯について見ておきましょう。
- 暴行罪:2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料
- 脅迫罪:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
- 強制わいせつ罪:6カ月以上10年以下の懲役
- 住居侵入罪:3年以下の懲役又は10万円以下の罰金
- 窃盗罪:10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 名誉毀損罪:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 逮捕・監禁罪:3カ月以上7年以下の懲役
上記の犯罪はあくまで一例であり、記載の刑法犯以外も当然成立する可能性はあります。
ストーカー行為の対応策
ストーカー被害に遭わないために、具体的にどのような予防策・対応策を講じるべきか見ていきましょう。
01.早めに警察に相談する
不安を覚えたら迷わず最寄りの警察署に電話をして相談しましょう。相談の内容に応じては、相手方への口頭指導や文書による警告、パトロールなどの援助してくれます。
警察に相談するとき、今まで受けた被害の内容や現在の状況等を必ず記録しておいてください。
02.きっぱりと拒否の姿勢を見せる
あいまいな態度は相手に期待させる恐れがあります。ストーカーと二人きりで会わない、ストーカーからの贈り物は一切受け取らない、電話や手紙に応対しないなどはっきりと拒否の意思を示しましょう。
03.一人での行動は極力控える
一人で行動するのは極力避けましょう。たとえば、移動の際はなるべくタクシーや公共機関を利用したり、家族や友人の方に迎えに来てもらうようにしましょう。また、通勤経路を固定しない、人通りの多い道を選んで歩くようにすることも大切です。
スマホ歩きなどは周囲への注意が行き届かなくなるため非常に危険ですので避けましょう。
04.常に助けを呼べる状態にしておく
携帯電話はいつでも110番できるように設定しておきましょう。スマートフォンによっては電源ボタンを複数回押すことで110番できる機能がついているので、こういった機能もチェックしておきましょう。
05.個人情報を守る
郵便物には個人情報が記載されているものがありますので、郵便ポストには鍵を必ず掛けるようにしましょう。併せて、情報が記載されている書類や女性のものとわかるゴミなどはシュレッダーや裁断してから捨てるようにしましょう。
また、インターネット上では、名前や住所を出さないのはもちろんのこと、行動パターンなどの書き込みや写真を出すのも控えるようにしましょう。SNSで居場所が特定できるような近所の描写を載せる行為も危険です。
専門家への相談
ストーカー被害に遭ってしまった場合は、一人で抱え込まず専門家に相談しましょう。
01.警察
まずは警察へ相談しましょう。警察から相手方への警告などをしてもらえる場合があります。また、警察に対し、相手を処罰するよう求めることもできます。ストーカー行為にお困りの方への相談窓口や支援制度もありますので、なにはともあれまずは警察に相談することを推奨します。
02.弁護士
弁護士に相談し、相手方に牽制をすることも検討しましょう。弁護士から、「あなた(ストーカー)が行なってる行為がストーカー行為にあたること」や「被害者が迷惑を受けていること」、「以後そのような行為をやめること」などを内容証明郵便などで要求することができます。
また、警察に同行し被害を訴え、警告や刑罰を求めることもできます。
弁護士を間に入れることで、相手と直接やり取りをする必要がなくなるといったメリットもあります。
03.探偵
探偵にストーカー対策を依頼すると、ストーカー被害の実態を調査し、証拠を収集してくれます。 調査結果や証拠を警察に届け出ることで、ストーカー行為に対して対処してもらえる可能性が高くなります。
さいごに
ストーカーの被害に遭った場合、対処方法を間違えてしまうと感情を逆なでして状況が悪化してしまうこともあります。最悪の場合、拉致監禁や殺傷事件につながる可能性もありますので十分な注意が必要です。ストーカー被害に遭った場合は、警察や弁護士などの専門機関に相談し、最適な対策を講じる必要があるといえるでしょう。
なお、事案や被害の程度によっては警察が動いてくれないことも往々にしてあります。
このような場合、弁護士に依頼すれば被害者に代わって被害の深刻さを訴えたり、刑事告訴をすることが可能となります。ストーカー被害から免れたいのであれば、刑事事件に強い弁護士に相談しましょう。
東京恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では、ストーカー被害者の支援に注力しております。ストーカー被害に遭っていてお困りの方は是非一度当事務所までご相談ください。