拳銃や刃物を正当な許可なく所持していると、銃刀法違反で重い刑罰が科される可能性があります。単に持っているだけでも重い罪が成立してしまうので、軽く考えてはなりません。
また、3Dプリンターや市販の材料を利用して拳銃や銃弾を作成することもできるようですが、このような行為は武器等製造法に抵触します。この武器等製造については未遂であっても罪に問われる可能性があります。
今回の記事では、拳銃や刃物などを所持していたり製造した場合に成立する罪について解説いたします。
拳銃を規制する法律
拳銃を規制する法律の主たるものとしては、銃砲刀剣類所持等取締法と武器等製造法が挙げられます。また、火薬類取締法や狩猟に関する法律などもこれに該当します。
各法律についてみていきましょう。
銃砲刀剣類所持等取締法
銃砲刀剣類所持等取締法は、銃や刀剣類、刃物の製造や所持、販売等を規制する法律です。「銃刀法」と略して呼称されることが多いので、以下この記事でも銃刀法と表記します。
01.規制の対象
銃刀法で規制されるものは、銃や大砲、クロスボウや刀剣類、刃物です。
銃砲
銃砲とは、けん銃や小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空銃です(2条1項)。けん銃だけではなく猟銃や空気銃も含みます。
クロスボウ
クロスボウとは、引いた弦を固定し、解放することによって矢を発射する機構を有する弓をいいます(3条1項)。
刀剣類
日本刀や剣、ナイフなどのことです。具体的には以下のものです。
- 刃渡り15cm以上の刀、やり及びなぎなた
- 刃渡り5.5cm以上の剣、あいくち
- 45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(2条2項)。
刃物
上で述べた刀剣類以外の刃物で、刃体の長さが6cm以上のもののことです。
02.所持が認められるケース、認められないケース
銃砲やクロスボウ、刀剣類については、正当な許可を受けていないと(正当な権限を有していないと)所持することはできません。無許可で持っているとそれだけで罪になります。
他方で、包丁などの刃物の場合、正当な理由があれば所持しても罪になりません。場合によっては外に持ち出すことも可能です。たとえばキャンプのためにナイフを携帯して出かけた場合や、料理教室で料理をするために外に包丁を持ち出した場合は、違法にならない可能性があります。
03.罰則
以下、拳銃を所持、輸入、販売した場合に課される刑罰について解説します。
拳銃を所持した
拳銃は所持しているだけで犯罪が成立します。つまり家でもっているだけで銃刀法違反として処罰を受ける可能性があるのです。
拳銃を所持した場合の刑罰は、1年以上10年以下の有期懲役刑です。懲役刑になると最低でも1年以上は刑務所へ行かねばならないので、大変に重い罪といえるでしょう。
拳銃を輸入した
拳銃を輸入すると、さらに重い罪が適用されます。罰則の内容は3年以上の有期懲役刑となっており、実刑になれば最低でも3年は刑務所に行かねばなりません。なお有期懲役の限度は20年です。
拳銃を販売した、譲り受けた
拳銃を譲渡したり譲り受けたりした場合にも銃刀法違反の犯罪が成立します。罰則は、拳銃所持と同様、1年以上10年以下の懲役刑です。
武器等製造法違反について
武器等製造法とは、危険な武器類の製造を処罰するための法律です。
01.規制の対象
規制されるのは、以下のような武器類や猟銃などです。
武器類
- 銃や大砲
- 銃弾
- 爆発物
- 爆発物を投下、発射するための機械器具
- 上記のために使用される部品
猟銃など
- 猟銃
- 捕鯨砲
- もり銃
- と殺銃
- 空気銃
拳銃を製造した場合だけではなく、拳銃に充填する銃弾を製造した場合にも処罰対象になります。
02.罰則
武器等製造法に違反した場合の罰則は以下の通りです。
銃や大砲を製造
拳銃を含む銃や大砲を製造した場合、3年以上の有期懲役刑となります。有期懲役の限度は原則的に20年なので、3年以上20年以下の懲役刑が適用されるという意味です。
製造が営利目的だった場合には無期もしくは5年以上の有期懲役又は無期若しくは5年以上の有期懲役および3000万円以下の罰金刑の併科となり、刑罰が加重されます。
たとえば販売する目的で拳銃を制作すると、無期懲役になる可能性もありますし、最低でも5年以上の懲役刑が適用されます。執行猶予をつけるには言い渡される刑が3年以下でなければならないので、5年以上の懲役刑には執行猶予もつけられません。
拳銃を製造すると実刑となって3年以上の有期懲役刑が科される可能性が高いので、絶対にやってはなりません。
銃弾を製造
銃弾を製造した場合にも武器等製造法違反となります。罰則は7年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑です。販売などの営利目的があった場合には10年以下の懲役又は10年以下の懲役および500万円以下の罰金の併科となります。
銃の本体を作成していなくても銃弾を制作しただけで重い罪が適用されるので、拳銃に関する危険物は絶対に製造してはなりません。
猟銃や空気銃を製造
猟銃や空気銃を製造した場合にも武器等製造法違反となります。罰則は3年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金刑またはその併科です。
「空気銃を製造しただけだから犯罪にはならない」ということにはならないので、軽い気持ちで製作しないよう注意しましょう。
03.未遂犯
武器等製造法には未遂犯が成立します。つまり、製造しようとしただけで実際に製造しなくても処罰される可能性があるのです。
未遂犯の刑罰は基本的に既遂犯と同じですが、裁判所の裁量で「減軽される可能性」があります(刑法43条)。
武器等製造法の未遂になりうる行為の例
- 銃や銃弾を製作するために3Dプリンターを用意した
- ネットで銃や銃弾の製作方法を調べた
- 3Dプリンターで銃や銃弾を製作しようとしたが、失敗した
拳銃を製作するために3Dプリンターを用意したり、実際にプリントしてみたりすると、仮に失敗に終わったとしても重い罪が適用される可能性があります。
まとめ
拳銃や刀剣類を製作、所持、販売、携帯してしまうと、銃刀法違反や武器等処罰法によって、重い罪が科されてしまいます。
もし、銃刀法違反や武器等製造法違反などで検挙されたら、すぐに弁護士までご相談ください。早期に対応することにより、不起訴処分を獲得するなど不利益を小さくするための効果的な対応が可能となります。
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では刑事弁護に積極的に取り組んでいますので、銃刀法違反や武器等処罰法違反などが心配な方はお早めにご相談ください。