放火罪と失火罪は何が違う!?火災に関する犯罪について解説!!

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弁護士 鈴木 翔太
弁護士 鈴木 翔太
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放火罪は殺人罪と同等の法定刑が科される可能性のある重罪です。故意に建物に火を放つということは自らの意思で多くの人を死の危険にさらすことなので当然といえば当然です。

なお、火災を引き起こすことに関する罪には放火罪の他に失火罪があります。放火罪と失火罪はどこに違いがあるのでしょうか?

今回の記事では、放火罪をはじめとする火災に関する罪について詳細に解説します。

故意か過失かで問われる罪が異なる

火災を引き起こす犯罪は、「(対象物に)火をつける意図」を有していたか、すなわち故意であったか過失であったかによって問われる罪が変わります。

01.故意がある場合

建物に火をつける意図を有していた場合は放火罪が適用されます。

02.故意がない場合(過失の場合)

火をつける意図を有していない場合は失火罪が適用されることとなります。

たとえば、寝たばこや料理中の思わぬ出火を起因とする火事の場合は、少なくとも故意(対象物に火をつける意図)はありません。そのため、このような事情に起因して火災が八背した場合は失火罪が適用されることとなります。

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放火罪の種類

放火罪は、火をつけた対象が何であったかにより、下記の3種類に分類されます。

  1. 現住建造物等放火罪
  2. 非現住建造物等放火罪
  3. 建造物等以外放火罪

01.現住建造物等放火罪(刑法108条)

現住建造物等放火罪は、「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した」場合に適用されます。

現住建造物等には、家やビルだけでなく人がいる電車や艦船や鉱坑なども含まれます。なお、仮に家やビルに火を放った際に人がいなかったとしても、これらの建物が現住建造物にあたることに変わりはありません(後述する非現住建造物には該当しません)。

未遂でも罪に問われます。

法定刑は「死刑または無期、もしくは5年以上の懲役」と非常に重いものとなっております。

02.非現住建造物等放火罪(刑法109条)

非現住建造物等放火罪は、「放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した」場合に適用されます。

非現住建造物等の典型例は、物置小屋や倉庫です。

非現住建造物等放火罪は、誰がその建造物等を所有しているかによって次の2つに分類されて法定刑もこれに応じて変わります。

他人所有の非現住建造物等放火罪(刑法109条1項)

非現住建造物等の所有者が他人だった場合、他人所有の非現住建造物等放火罪が適用されます。

この場合の法定刑は「2年以上の懲役」です。

自己所有の非現住建造物等放火罪(刑法109条2項)

非現住建造物等の所有者が放火者自身であり、後述する他人所有と見なされる条件にも当てはまらない場合は、自己所有の非現住建造物等放火罪が適用されます。

この場合の法定刑は「6ヵ月以上7年以下の懲役」です。

なお、自己所有の建物(空き家)に火をつけたとしても不特定多数の人やその財産に危険が及ばなかった場合には罰せられません。たとえば自己所有の空き家の壁や床が少し燃えた程度であるならば、放火罪を問われない可能性があります。

他人所有とみなされる自分の建物

自分が所有している建物であっても以下のような場合には、他人所有と見なされ他人所有の非現住建造物等放火罪が適用されることとなります。

  • 差し押さえを受けている
  • 賃貸している

03.建造物等以外放火罪(刑法110条)

建造物等以外放火罪は「放火して、現住建造物等や非現住建造物等以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた」場合に適用されます。

建造物等以外放火罪についても、火を放った対象物が本人所有か否かによって法定刑が変わり、自己所有の物に放火した場合は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」、他人所有の物に放火した場合は「1年以上10年以下の懲役」となります。

放火罪や失火罪で逮捕されたらどうすればいい!?放火・失火に関する罪を端的に説明すれば、建物に故意に火を放てば放火罪、過失により出火させれば失火罪です。 放火罪は殺人罪と同等の刑罰が科せられる非常に重い罪です。事案によっては過失による出火であ...

失火罪の種類

失火罪についてみてみましょう。

過失により建物その他を燃やしてしまうと失火罪に問われることがあります。失火罪は過失の内容により下記の3種類に大別されます。

  1. 失火罪
  2. 業務上失火罪
  3. 重過失失火罪

01.失火罪(刑法116条)

「失火により、現住建造物等又は他人の所有する非現住建造物等を焼損した場合」や「失火により、非現住建造物等であって自己の所有するもの又は建造物等以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた場合」に失火罪が適用されます。

失火罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。

なお、過失の内容によっては後述する重過失失火罪が適用される可能性もあります。

02.業務上失火罪(刑法117条の2)

「失火罪にあたる行為が、業務上必要な注意を怠ったことによる」場合には、業務上失火罪が適用されます。

業務上失火罪の法定刑は「3年以下の禁錮または150万円以下の罰金」です。

たとえば料理人が仕事中に不注意で火事を引き起こしてしまった場合、業務上失火罪が適用される可能性があります。

03.重過失失火罪(刑法117条の2後段)

「失火罪にあたる行為が重大な過失による」場合には、重過失失火罪が適用されます。

法定刑は「3年以下の禁錮または150万円以下の罰金」であり、失火罪よりも重いものとなっております。

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火災に関連する罪

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火災に関する罪には、放火罪や失火罪のほかにも以下のようなものがあります。

  1. 延焼罪
  2. 消火妨害罪
  3. 激発物破裂罪、過失激発物破裂罪
  4. ガス漏出等罪、ガス漏出等致死傷罪

それぞれの罪の内容や法定刑について、ひとつずつ確認していきましょう。

01.延焼罪(刑法111条)

延焼罪は、「自己所有の非現住建造物等放火罪又は自己所有の建造物等以外放火罪を犯し、よって現住建造物等や非現住建造物等(自己所有の非現住建造物等を除く)に延焼させた場合」、または「自己所有の建造物等以外放火罪を犯し、よって他人所有の建造物等以外に延焼させた場合」に適用される罪です。

延焼の内容によって法定刑が分かれており、前者の場合は「3ヵ月以上10年以下の懲役」、後者の場合は「3年以下の懲役」となります。

02.消火妨害罪(刑法114条)

消火妨害罪は、「火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した」場合に適用される罪です。

法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。

03.激発物破裂罪・過失激発物破裂罪(刑法117条)

激発物破裂罪は、「火薬、ボイラーその他の激発すべき物(激発物)を破裂させて、現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等を損壊した場合」、「激発物を破裂させて、自己所有の非現住建造物等又は建造物等以外の物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた場合」に適用されます。

これらの行為が過失によるときは、過失激発物破裂罪が適用されます。

法定刑は、損壊した物が何だったかにより変わります(放火罪や失火罪で適用される内容に準じます。)。

04.ガス漏出等罪・ガス漏出等致死傷罪(刑法118条)

ガス漏出等罪は、「ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた」場合に適用されます。同様の行為により、人を死亡させたり、傷害を負わせた場合は、ガス漏出等致死傷罪が適用されます。

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関連用語

懲役や罪名の決め手ともなる3つ関連用語、「放火」「焼損」「公共の危険」について解説します。

01.放火

放火とは、目的物の焼損に原因力を与えることをいいます。これは、焼損が生じる可能性のある目的物に点火することを意味しますが、媒介物を介して目的物に点火する場合には、媒介物への点火も含むとされます。

02.焼損

焼損(しょうそん)とは、火が媒介物を離れ、目的物が独立に燃焼を継続するに至った状態をいいます。

03.公共の危険

公共の危険とは、人やその財産、建物が危険にさらされる可能性があることをいいます。公共の危険があったかどうかは、放火罪や失火罪の決め手となる重要な要素です。

さいごに

火災に関する罪にはさまざまなものがあり、そのどれも刑は重くなっております。中でも現住建造物放火罪には殺人罪と同等の法定刑が定められています。

故意や過失の証明等の対処を誤れば不利益を被る可能性がある以上、火災に関する罪に問われている場合は弁護士に適切な対処を依頼することが必須と言えるでしょう。

東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、刑事弁護について広く受け付けております。火災に関する罪で逮捕されてしまってお困りの方は是非一度ご相談ください。

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