配偶者や子ども、交際相手のような家族、パートナー、大切な人が突然「詐欺罪」で警察に逮捕されてしまったら、どうすればよいのでしょうか?
詐欺は重罪であり、放っておくと初犯でも実刑判決が出てしまうケースが多々あります。
家族や恋人が詐欺で逮捕されたら、早い段階で適切な対応を進めるべきといえるでしょう。
この記事では、家族や恋人が詐欺罪で逮捕されたときの対処方法を解説します。
少しでも不利益を小さくするため、ぜひとも参考にしてみてください。
詐欺罪が成立するケース
実は詐欺罪が成立するためには、以下の4つの要件を満たし、かつ各々の要件が1つの因果関係で結ばれていることが必要となります。
- 欺罔行為があったこと
- 被害者が錯誤に陥ったこと
- 財物の交付
- 利益の移転
01.欺罔行為があったこと
詐欺罪が成立するには、欺罔行為があったことが必要となります。
『欺罔行為』とは、加害者が相手(被害者)をだます行為です。
お金をだまし取ってやろうと思った加害者が、相手方からお金を詐取するために嘘の情報を伝える行為などが該当します。
02.被害者が錯誤に陥ったこと
加害者の欺罔行為により被害者が錯誤(その人が認識している内容と客観的事実が合致しないこと)に陥ることも要件の一つです。
03.財物の交付
だまされた被害者が、勘違いをしたまま(錯誤状態のまま)、加害者に対しお金やその他の財産を交付したということも詐欺罪成立の要件です。
04.利益の移転
被害者による財物の交付により加害者へ利益が移転したということも詐欺罪成立の要件の一つです。
05.因果関係
上記の4つの要件が全体として1つの因果関係で結ばれていることが必要です。
なお、詐欺罪には未遂罪があります。
被害者が途中で気づいて財物が交付されなかった、最終的に利益は移転しなかった、といったケースでは「詐欺未遂罪」が成立する可能性があります。
詐欺罪が成立する典型的なケース
家族や恋人が詐欺罪で逮捕された事案でよくあるケースは以下のようなものです。
01.オレオレ詐欺(振り込め詐欺)
最近特に多いのは、オレオレ詐欺に加担してしまうパターンです。
アルバイト感覚の軽い気持ちで組織的なオレオレ詐欺グループにかかわってしまい、架け子や受け子などの仕事をしてしまう若者が増えています。
オレオレ詐欺にかかわると詐欺罪が成立し、非常に重い刑罰を科される可能性が高くなるので要注意です。
02.給付金詐欺
コロナの影響で事業が苦しくなった人や会社へ向けて、各種の給付金が交付されています。
しかしこの制度を悪用し、本来なら給付金を受け取るべきではない人がたくさん給付金を詐取しているので注意が必要です。
偽の決算書類や帳簿を作成したりして営業成績が落ち込んだと見せかけて給付金をだまし取る手口などがみられます。
03.結婚詐欺、恋愛詐欺
本当は結婚する気などないのに結婚をにおわせてお金を払わせると結婚詐欺になります。
また、本当は恋愛感情もないのにお金をだまし取る目的で恋人のフリをして「家賃やクレジットカードの料金を払えない」などといってお金をだまし取る手口は「恋愛詐欺」とよばれます。
最近ではアプリなどで簡単に男女が出会えるので、こうした詐欺も増加傾向にあります。
04.他人名義のクレジットカードを勝手に使用
クレジットカードは本人による利用を予定しているものであり、加盟店やカード会社は本人が利用するものと信じています。
他人名義のクレジットカードを勝手に利用すると詐欺罪が成立する可能性があります。
05.保険金詐欺
本当はケガをしていないのにケガをした資料を作出して保険会社に提出し、保険金の支払を受けるケースなどです。
06.架空請求詐欺
本来は債権がないのに相手を誤信させるような請求を行い、お金をだまし取る手口です。
ネット上のワンクリック詐欺のほか、郵便を送ってお金を支払わせる手口もみられます。
07.無銭飲食
はじめからお金を払う気がないのに料理を注文して無銭飲食すると、詐欺罪が成立する可能性があります。
08.キセル乗車
乗車時に入場券だけを購入し、降車時に「切符をなくした」などといって一駅分の料金だけを支払うといったような「キセル乗車」をすると、詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺罪の刑罰
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役刑」(刑法246条)です。
罰金刑はなく、有罪になれば必ず懲役刑が適用されます。執行猶予がつかない限り、現実に刑務所へ行かねばならないので不利益は極めて大きいといえるでしょう。
詐欺罪は初犯でも実刑になる?
息子や彼氏などの大切な人が詐欺罪で逮捕されたら、「実刑判決になってしまうのか?」と心配になるものです。
詐欺罪が成立すると、初犯でも実刑になる可能性があるのでしょうか?
答えは「Yes」です。
詐欺罪は非常に重い罪であり、同じ財産犯である窃盗罪よりも重く処罰される傾向があります。オレオレ詐欺などにかかわると、若年者の初犯でも実刑判決が出てしまうケースが少なくありません。
実刑を避けるには、逮捕当初から被害者との示談交渉などの適切な対応を進めるべきです。家族や恋人が詐欺罪で逮捕されたら、迅速に行動しましょう。
家族、恋人が詐欺罪で逮捕された後の流れ
詐欺罪で逮捕されたら、以下のような流れで刑事手続が進められます。
01.72時間以内に勾留される
逮捕後48時間以内に検察官のもとへと身柄が送られ、多くの場合にはその後24時間以内に「勾留」されます。勾留されると、引き続き警察の留置場で身柄を拘束され続けます。
ただし軽微な犯罪などで勾留されなければ、72時間以内に釈放されます。
02.取り調べが行われる
勾留されると、警察で取り調べが行われます。
このとき適切に対応しないと、後に不利益な調書をもとに起訴不起訴の判断をされたり有罪認定の証拠にされたりするので、注意が必要です。
取り調べを受ける際には、必ず事前に刑事弁護人からのアドバイスを受けておくべきといえるでしょう。
03.起訴か不起訴か決定される
勾留期間は最大で20日です。満期がきたら検察官が起訴か不起訴かを決定します。
起訴されると刑事裁判となり、不起訴になったら釈放されます。
詐欺罪には罰金刑がないので、略式裁判となる可能性はありません。起訴されると必ず公開法廷で刑事裁判が開かれます。
04.刑事裁判になる
刑事裁判になると、被告人は毎回法廷に出廷しなければなりません。家族や恋人だけではなく一般人も裁判を傍聴できます。
また、勾留されていた場合、起訴後は「保釈」が可能となります。
保釈されると身柄を解放してもらえて一時的に日常生活に戻れるので、身柄拘束されているなら早めに刑事弁護人を通じて保釈申請をしましょう。
なお、保釈の際「保釈保証金」が必要となりますが、逃亡などしなければ後から返してもらえます。
05.判決言い渡し
刑事裁判が終結すると、裁判官から判決が言い渡されます。
有罪になった場合には、同時に刑罰が決まります。執行猶予判決が出ればそのまま釈放してもらえて日常に戻れますが、実刑判決が出ると刑務所へ収監されてしまいます。
実刑判決を避けるため、起訴前起訴後を通じて適切な弁護活動を行う必要があります。
家族、恋人が詐欺罪で逮捕されたときの注意点
家族や恋人が詐欺罪で逮捕されたら、以下のようなことに特に注意してください。
01.勾留までは家族でも面会できない
逮捕されてから勾留されるまでの約3日間はたとえ家族であっても面会が許されません。もちろん恋人や婚約者も面会できません。
この期間に本人と接見(面会)できるのは、刑事弁護人(になろうとするもの)のみです。
早期に本人へ今後の刑事手続の流れや必要なアドバイスを伝えるため、逮捕されたらすぐに刑事弁護人を選任しましょう。
02.接見禁止について
詐欺罪では「接見禁止」処分がつけられるケースも少なくありません。接見禁止処分とは、刑事弁護人以外の誰とも面会できなくする処分です。
これがつくと、勾留に切り替わっても家族や恋人、友人などの一般人は一切面会できませんし、手紙のやり取りすらできなくなります。刑事弁護人をつけない限り、本人が完全に孤立してしまうので極めて危険な状態といえるでしょう。
接見禁止処分をつけられたら、本人を安心させて今後適切な対応をとっていくためにも、早急に刑事弁護人を選任しましょう。
03.組織的犯罪、余罪の多い詐欺は長びく可能性が高い
詐欺罪は、単独犯ではなく「組織的」に行われることの多い犯罪です。たとえばオレオレ詐欺は組織犯罪の典型といえるでしょう。
また同じような詐欺を繰り返し行っている人も多数です。たとえば結婚詐欺、保険金詐欺、キセル乗車などは、一回では済まないケースが多いでしょう。
このように、組織犯罪や余罪の多いケースでは、共犯者の捜査や余罪取り調べ、立件などが続くために通常より捜査期間が長引く傾向があります。追起訴が続き、なかなか取り調べが終わらないケースも少なくありません。
共犯者との関係を意識した難しい対応が必要となる可能性もあります。
詐欺罪で逮捕されたときには刑事弁護に慣れた弁護人をつけることが極めて重要といえるでしょう。
家族や恋人が詐欺罪で逮捕されたときに重要なこと
01.被害者との示談交渉
詐欺罪で処分を軽く済ませるには「被害者との示談」が非常に重要です。
起訴前に示談できれば不起訴にしてもらえる可能性が大きく高まります。できるだけ早く被害者に連絡を入れて賠償問題の話し合いを開始しましょう。
ただしご家族や彼女、婚約者などの方が示談交渉するのは難しいでしょうから、早期に刑事弁護人を選任する必要があります。
02.不起訴処分の獲得
詐欺罪で少しでも不利益を小さくするには「不起訴処分の獲得」が必須です。不起訴処分になれば、有罪にならないので前科はつきません。身柄も比較的早めに解放してもらえます。
会社勤めをしている方であっても解雇を免れて、これまで通りに働ける可能性が高くなるでしょう。
不起訴処分を獲得するには、勾留期間が満期になるまでに示談を成立させ、被疑者にとって良い情状を集めて検察官へ働きかける必要があります。
勾留満期までの短期間にいろいろな活動をしなければならないので、フットワークの軽い刑事弁護人の選任が必須となるでしょう。
03.執行猶予判決の獲得
起訴を避けられないケースでは、執行猶予判決を目指すべきです。執行猶予がつけば、実際に刑務所に行く必要はなく、日常生活に戻ってこられます。
ただ執行猶予を得るには刑事裁判で本人に有利な事情を説得的に主張立証しなければなりません。起訴前に作成された供述調書が不利に働いてしまう可能性もあります。
逮捕された当初から有能な刑事弁護人がついて、将来の判決を見据えた適切な弁護活動を展開していく必要があるでしょう。もちろん刑事裁判における弁護活動も重要です。
04.刑事弁護人を選任する
詐欺罪は重罪なので、放っておくと不利益がどんどん大きくなります。できるだけ早めに刑事弁護に長けた弁護士を「刑事弁護人」として選任しましょう。
資力のない方の場合には国選弁護人をつけることもできますが、国選弁護人の場合「刑事弁護に積極的に取り組んでいる弁護士」「熱心な弁護士」を選ぶことはできません。
また国選弁護人は「勾留開始後」にしかつけられない問題もあります。逮捕後勾留までの重要な3日間、被疑者が一人で対応しなければなりません。
こうした不利益やリスクを考えると、逮捕直後から私選弁護人を選任する方が本人のためになるといえるでしょう。
大切な息子さんご主人、彼氏彼女、婚約者などの身近な人が詐欺罪で逮捕されたら、一刻の猶予もありません。できるだけ早めに刑事弁護に熱心に取り組んでいる弁護士へ相談しましょう。
東京・恵比寿に事務所を構える弁護士法人鈴木総合法律事務所では刑事弁護に力を入れており、経験を積んだ弁護士が精力的に活動しています。
家族が逮捕されてしまいお困りの際には是非とも一度ご相談ください。