個人再生の申立を行なう際には、申立書を構成する「債権者一覧表」「報告書」「財産目録」「家計全体の状況」に記載されている内容が一応確からしい(=疎明)と判断できる書類を添付する必要があります。
特に財産目録については、銀行口座の状況や収入証明、保険証券などの疎明資料を添付することが必要です。
それではどのような資料を添付しなければならないのでしょうか?
今回の記事では、個人再生の申立書に添付する疎明資料について解説いたします。
疎明資料の種類
添付する疎明資料としては以下のものが挙げられます。
- 住民票
- 金融機関(銀行等)の通帳、取引履歴
- 受給している公的扶助の受給証明書
- 給与明細、賞与明細
- 源泉徴収票、課税証明書、確定申告書
- 退職金明細書
- 保険証券、解約返戻金証明書
- 自動車検査証、査定書
- 高額動産の査定書
- 不動産登記簿謄本、不動産の査定書
- 債権調査票
なお、個人再生を申し立てる際に必要となる書類は、個人破産の際に必要となる資料とほぼ同一です。
01.住民票
再生債務者を確定させるために添付します。具体的には再生債務者の氏名、生年月日、住所、家族構成)等を確認するためです。また、この情報をもとに官報に情報が記載されます。
原則として申立3ヶ月前に取得した住民票を添付します。一部の裁判所では住民票の他に戸籍謄本を要求されることがあります。
02.金融機関(銀行等)の通帳、取引履歴
再生債務者が開設した金融機関(銀行、信用金庫等)の口座について、取引明細を添付する必要があります。通帳であっても窓口で依頼して発行してもらって取引履歴であってもインターネットバンキング上のWeb明細であっても構いません。
取得範囲について
取得すべき取引履歴の範囲は管轄裁判所によって異なりますが、直近2年分を要求されることがほとんどです(一部の管轄では1年分で足りることもあります)。
直近の範囲
「直近2年分」については、原則は「申立を起点に過去2年」とされております。なお、弁護士への依頼日(受任日)を起点に過去2年とする解釈もあり、現状ではこちらが主流となっております。必要な範囲については依頼した弁護士にしっかりと確認しましょう。
合算記帳
長期間記帳していなかった通帳においては、合算記帳(一定の期間についての取引期間がまとめて1~2行で記載された記帳)がなされることがあります。このままだと当該期間の履歴が不明であるため、合算記帳のなされた期間については取引履歴を取得する必要があります。
使用していない口座
開設はしたけど過去2年において一切使っていない口座についても取引履歴は必要なのでしょうか?
答えは必要です。
「履歴を取得したところで取引履歴は一切記載されてないんだから意味がないのでは?」とお考えになる方がいらっしゃいますが、取引が無かったことを疎明するためにその履歴が必要となるのです。また、現在の残高を確認する目的でも必要となります。
03.受給している公的扶助の受給証明書
公的扶助とは、児童手当や失業給付、年金や生活保護などのことです。
これらを受給している場合は、疎明する書類として受給証明書(または受給者証)を添付します。
04.給与明細、賞与明細
申立前2ヶ月に支給された給与明細や過去1年間で支給された賞与明細を添付します。
05.源泉徴収票、課税証明書、確定申告書
直近2年分の源泉徴収票を添付します。源泉徴収票がない場合は、課税証明書(非課税証明書)や確定申告書を添付します。
06.退職金
退職金の有無が分かる資料、退職金がある場合は、現在自己都合で退職した際に支給される退職金額を疎明する資料(直近で定年退職などによる退職となる場合は、支給予定の退職金額を疎明する資料)を添付します。
何故添付しなければならないのか?
退職金(退職金予定額)も固有の財産として評価されるためです。そのため、退職金の有無、退職金があるのであれば現在の価値(定年での退職が当面先であれば自己都合退職での金額、定年での退職が近い(満額の退職金の支給が近い)場合には通常支払われる退職金の金額)を疎明する必要があります。
疎明方法
退職金の有無の疎明方法の一つとして、雇用契約書や就業規則類を確認する方法があります。これらの書面において「退職金は無い」と明記されていれば退職金が無いことを疎明できます。
退職金がある場合には、額を疎明する資料が必要となります。①勤務先に「仮に今辞めた場合に支給される退職金額」を書面で発行してもらう、②(就業規則等から明確に算出できるのであれば)就業規則などを添付します。
07.保険証券、解約返戻金証明書
生命保険や損害保険などの保険商品には、解約した際に返戻金が発生するものがあります。この解約返戻金が潜在的な資産となるため、資料を添付する必要があります。
- 保険証券
- (解約返戻金がある場合)現時点で解約した場合の解約返戻金証明書
- (解約返戻金が無い場合)は解約返戻金が無いことを証明する資料
08.自動車検査証、査定書
自動車やバイクを所有している場合は、車検証と査定書を添付する必要があります。
09.高額動産の査定書
所有している高額財産については、その評価額についての疎明資料を添付する必要があります。
例えば、高価な貴金属を所有していたりブランドバッグをたくさん所有している場合には、それらの現在価値を示す資料を添付します。
10.不動産登記簿謄本、査定書
不動産(土地や建物)を所有している場合、不動産の登記簿謄本、査定書2社分を添付する必要があります。
住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンの契約書や償還予定表なども添付します。
不動産の扱い
個人再生では破産と異なり財産を換価処分することはありません。しかし、当該財産の評価額を清算価値に載せることにはなりますので、再生計画による弁済額が跳ね上がってしまうリスクがあります。
- 住宅ローン特則の対象とする自宅がアンダーローンである場合
- 相続不動産がある場合
上記のような場合は、清算価値が高額になってしまい個人再生では解決できなくなってしまうことがあります。
11.債権調査票
債権者から開示された債権調査票を添付します。債権調査票は、弁護士が債権者から収集するものであり再生債務者が手配するものではありません。
12.その他の資料
上記のもの以外にも添付を要する資料は多々あります。また、再生債務者側から何かを主張したい場合、証明したい場合には、これを裏付ける資料が必要となります。
収集すべき資料の範囲やその取得方法について疑問点がある場合は、専門家である弁護士に相談しましょう。
さいごに
この記事をお読みになられている方の多くは、負債や返済について何かしらのトラブルや心配事を抱えていらっしゃるかと思います。
東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、個人再生事件に注力しており、事件の解決実績も豊富です。債務や負債に関するトラブルをお抱えになっている方はお早めにご相談ください。