借金の返済が苦しくなると、自己破産や任意整理といった債務整理という選択肢が頭をよぎります。
破産を行なえば負債を無くすことができますし、任意整理を行なえば無理のない弁済スケジュールに変更することが可能となりますので、債務整理は生活を立て直すという点では大きなメリットがあります。
他方で債務整理にはそれ相応の代償があります。クレジットカードを作れなくなることはその1つです。
今回の記事では、債務整理をした場合にいつまでクレジットカードが作れないのか、その間の代替手段はないのか等について解説します。
債務整理後はクレジットカードを作れなくなる
結論からお伝えすると、一部の例外を除き、債務整理をするとクレジットカードが作れなくなります。では、そもそも債務整理とはそもそも何のことで、どんなときに必要になるものなのでしょうか。
まずは、債務整理の種類と、クレジットカードが作れなくなるケースを紹介します。
01.クレジットカードに影響する3つの債務整理
債務整理と一口に言っても、いくつかの種類があります。クレジットカードが作れなくなるのは、次の債務整理を行った場合です。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
個人再生と自己破産は、裁判所を通して借金の減額、あるいは帳消しをする手続きです。個人再生では100万~5000万円の借金を最大で5分の1程度に減額でき、自己破産では税金等を除いたほぼすべての借金を帳消しにできます。
任意整理は、紹介した2つの任意整理と異なり、裁判所を通さない債務整理です。裁判を起こすことなく債権者(お金を借りた相手)と交渉し、支払い過ぎた借金の利息を元金の返済に充ててもらったり、将来発生する予定だった利息をなくしてもらったりできます。
任意整理は裁判所を通さないため、クレジットカードへの悪影響はないように見えるかもしれません。しかし、クレジットカードが作れなくなるという点は、個人再生や自己破産と同じです。
02.過払い金請求はクレジットカードに影響しない
債務整理の中で唯一、クレジットカードに(基本的に)影響しないのが「過払金請求」です。
過払金請求とは、過去の借金に対して支払い過ぎていた利息がある場合、多く支払った分を返してもらえる手続きです。借金の完済から10年以内の請求が可能で、返済中の借金に対しても行うことができます。
ただ、返済中の借金に対して過払い金請求をすると、その借金を完済するまではクレジットカードが作れなくなることもあります。とはいえ、過払い金請求で戻ってきたお金で借金を完済できる場合もあるので、まずは法律事務所に相談してみるといいでしょう。
債務整理をすると事故情報が登録される
債務整理によりクレジットカードが作れなくなるのは、信用情報機関に事故情報が登録されるためです。
クレジットカードやお金の借入などの審査に関わる「信用情報機関」と「事故情報」の仕組みを解説します。
01.事故情報とは?
債務整理で登録される「事故情報」とは、借りたお金を返せなかったり、返済が大きく遅れたりしたときに登録される情報のことです。滞納や返済不可などの状況に陥ることを「金融事故」と呼び、金融事故の履歴が事故情報です。
金融業界には「信用情報機関」と呼ばれる機関があります。個人の信用情報を集め、保有している機関です。クレジットカードやローンの契約、借金をすると、各契約情報が信用情報機関に登録されます。滞納や債務整理などの事故情報も、信用情報機関の登録情報です。
金融機関は、信用情報機関の情報を参照でき、契約時の審査に活用しています。もちろん、事故情報が残っていれば「この人にお金を貸して大丈夫か?」と懸念されることになり、審査が厳しくなるのです。
- CIC:クレジット会社や携帯電話会社が主に参照
- JICC:貸金業を行う会社が主に参照
- KSC:銀行や信用金庫などが主に参照
02.クレジットカードを作れない期間
債務整理によりクレジットカードを作れない期間は、5年もしくは10年です。
いわゆる「ブラックリストに載る」というのは、信用情報機関に事故情報が登録されることを意味しています。信用情報機関に事故情報が残るのも5年もしくは10年であり、事故情報が残っている間はクレジットカードの新規契約が難しくなります。
信用情報期間ごとの事故情報が残る(クレジットカードを作れなくなる)期間は、次の通りです。債務整理の種類によって、事故情報の残る期間は異なります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
CIC | 5年間 | 5年間 | 5年間 |
JICC | 5年間 | 5年間 | 5年間 |
KSC | 5年間 | 10年間 | 10年間 |
なお、それぞれの期間は任意整理や個人再生による返済を終えてからの期間です。自己破産の場合は、自己破産が決定してからの期間となります。
また、KSCに事故情報が残っていると、銀行や信用金庫からの借入は難しくなります。しかし、CICやJICCの事故情報が消えていれば、クレジットカードの審査には通りやすくなるでしょう。
クレジットカードの代替手段
債務整理をすると、基本的に5年間はクレジットカードが使えなくなります。
とはいえ、カードが作れないということは、気軽に借金ができないということでもあります。不便なのはたしかですが、まずは残った負債を確実に返済し、信用情報を回復されるためには、かえって好都合ともいえるでしょう。
しかし、インターネットの普及した現代では、現金だと買い物しづらい場面もあります。
インターネット通販をするたびにWebマネーを買いにいくのは手間ですし、サブスクリプション(毎月一定の料金を払うことで、サービスを継続利用できる仕組み。Amazonプライムなどが代表的)のサービスも使いづらいでしょう。
そこで次からは、クレジットカードの代替手段として使える3つのカードを紹介します。
01.デビットカード
クレジットカードの代替手段として特におすすめなのが、デビットカードです。クレジットカードと同じように、実店舗やオンラインショップなどで利用できます。
デビットカードとは、銀行口座と連動し、支払いを行うカードです。デビットカードで決済すると、カードに登録した銀行口座から、決済しただけの金額が引き落とされます。簡単にいえば、銀行口座から直接お金を支払うようなイメージです。
何より、デビットカードには審査がありません。銀行口座に入っている分のお金しか使えないので、使い過ぎて返済不能に陥るリスクも低いでしょう。
02.プリペイドカード
プリペイドカードは、デビットカードに近い感覚で使えるカードです。カードにお金をチャージし、チャージした金額分だけのカード決済ができます。
デビットカードとの違いは、カード決済するお金が銀行口座に入っているのか、カードにチャージしているのかです。どちらも自分の持っている分のお金しか使えないという意味では同じですが、使いすぎを防ぎたいならプリペイドカードの方がおすすめできます。
銀行口座から直接決済ができるデビットカードは、「お金を使っている」という感覚が薄いです。使える金額も大きく、クレジットカードのような使いすぎが懸念されます。
プリペイドカードなら、チャージの時点で現金を支払うことになるので、「お金を使っている」感覚になりやすいでしょう。チャージ金額も自分で決められるので、自制もしやすいです。
03.家族カード
紹介してきた中で唯一、クレジットカードと全く同じように使えるのが家族カードです。
家族カードとは、本会員である家族のクレジットカードに付帯して、作ったり使ったりできるカードです。自分自身の信用情報ではなく、家族の信用情報を基に審査を行うので、ご自身に事故情報があっても発行・使用できます。
審査や強制解約に影響するのは、あくまでも本会員の信用情報であり、ご自身の債務整理が原因で家族の信用情報が傷付くこともありません。
債務整理にはそれ相応の代償がある
債務整理とは、借金の返済が難しくなったときに利用できる手続きのことでした。債務整理をすることで、借金や利息の負担が軽くなったり、なくなったりします。
もちろん、借金返済が苦しくなったらすぐに債務整理をすればいいというわけではありません。借金の減額や帳消しが可能な債務整理には、それ相応の代償があります。クレジットカードが作れなくなるのも、債務整理の代償の1つです。
とはいえ、どうしても返済できないような借金を、いつまでも放置しておくのは賢明ではありません。
返済が滞り続けた段階で、事故情報は登録されます。金融機関から一括返済を求められることもあり、それでも返済ができなければ代位弁済という「第三者による強制的な借金の肩代わり」が行われます。いずれの場合も、しばらくはクレジットカードが作れなくなるでしょう。
返済不可能なレベルに借金が膨れ上がってしまったのなら、まずは法テラスや法律事務所に相談するのが得策です。専門家の力をかりながら、最も良い対応策を考えるのです。
なるほど六法を運営する弁護士法人 鈴木総合法律事務所では、債務整理に関する相談を、初回無料で承っています。
zoom相談にも対応しているので、忙しい方や遠方の方も、どうぞお気軽にお問い合わせください。