中絶した場合、慰謝料を請求することはできるの?

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弁護士 鈴木 翔太
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性交渉によって妊娠したとしても様々な事情から中絶という選択肢を取らざるを得ないことがあります。

中絶した女性は肉体的にも精神的にも大きな苦痛を受けることになりますが、中絶を余儀なくされたことを理由に男性側に対し慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

今回の記事では中絶により慰謝料を請求できるケースとできないケース、慰謝料の相場や請求手順などについて解説します。

中絶しただけでは慰謝料は発生しない

中絶手術は中絶手術を受ける妊娠した女性に対し、肉体的にも精神的にも大きな苦痛を与えます。

そのため、中絶手術をした場合、男性側に対し無条件で慰謝料を請求できると考える方が多くいらっしゃるようです。

ただこの考えは誤りです。法律的には中絶したからといって必ずしも慰謝料を払ってもらえるとは限りません。

慰謝料を請求するためには男性側の言動に不法行為が成立している必要があります。

01.不法行為とは

不法行為とは、故意や過失にもとづいてなされた他人(被害者)の権利・利益への侵害行為のことです。

不法行為が成立するためには、以下の3要件をすべて満たす必要があります。

  • 侵害行為に違法性があること
  • 行為の結果として相手側(被害者側)に損害が生じたこと
  • 行為と損害との間に因果関係があること

単に中絶を行なっただけの場合、上記の3要件を満たしません。交際している男女が合意のもとに性行為を行う場合には男性側に中絶についての故意・過失があるとはいえませんし、性行為そのものも女性側の権利の侵害行為とはなりません。男性側に故意や過失、違法行為が認められない以上、不法行為は成立しないため慰謝料を請求することは困難といえます。

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慰謝料が発生するケース

上記の説明とは逆に、男性側の言動に不法行為が成立するケースであれば慰謝料を請求することが可能です。

中絶を理由に慰謝料を請求できるケースについてみてみましょう。

01.強姦された、性行為を強要された

不法行為が成立するためには相手方の故意・過失に基づく権利侵害行為が必要となります。この要件は合意のうえで行なった性交渉では成立しませんが合意がない性交渉の場合であれば成立し得ます。

なお、合意がない性交渉の一つとして強姦(強制性交)が挙げられます。強姦は重大な人格権侵害であり刑法によっても厳しく処罰される違法行為です。強姦により子どもができてしまいやむなく中絶した場合には加害者に対し極めて高額な慰謝料を請求できます。

また、強姦にまでは至らないケース、たとえば上司の男性から職務上の地位を利用して性行為を迫られ応じさせられた場合についても性交渉の合意があったとは言えないので不法行為が成立する余地があります。このようなケースで中絶した場合も慰謝料を請求できる可能性が高いといえます。

02.男性側が不誠実な態度をとった

合意による性交渉による妊娠・中絶であっても慰謝料を請求できるケースがあります。その一つとして男性が極めて不誠実な態度をとったケースが挙げられます。

妊娠は男女の性行為によって発生する事象であり、その責任の一端は男性側にもあります。中絶するのであれば男性側は女性側に対し誠実に対応しなければなりません。にもかかわらず男性側が不誠実な態度を取った場合には故意による権利侵害が成立したと考えることができるので、不法行為が成立する余地があります。

たとえば男性側が以下のような不誠実な態度を取るようであれば、女性側は慰謝料を請求できる可能性があります。

  • 男性側に妊娠した事実を告げたとたん、逃げてしまって音信不通になった
  • 中絶費用などの医療費を一切負担しようとしなかった

03.避妊していると嘘をつかれた

合意にもとづく性交渉であったとしても、その合意条件に嘘がある場合は多々あります。

たとえば男性が「避妊具(コンドーム)を付けている」などと嘘をついて実際には避妊せずに性行為に及んだ場合です。女性側が真実を知っていたら性行為には応じなかったといえる場合には合意があったとは言えません。

このようなケースでは男性側に不法行為が成立しますので、妊娠し中絶した女性は中絶による精神的苦痛にもとづく慰謝料を請求できる可能性があります。

04.独身であると嘘をつかれた

婚活アプリや結婚パーティ、結婚相談所、マッチングサービスなどにおいて「俺は独身」と偽って女性と交際し性行為に及ぶ男性は少なくありません。

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既婚であることを知っていたのであれば性交渉には応じなかったのであれば、03のケースと同様に女性側の合意があったとは言えません。

男性の独身であるという申告を女性側が過失なく信用して性行為に応じた結果妊娠し、中絶を余儀なくされた場合には慰謝料を請求できる余地があります。

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その他のケース

01.男性側の希望に沿って中絶した場合

女性側は子どもを産みたかったのにもかかわらず男性側が強く中絶を希望してがために中絶したというケースにおいて、「無理に中絶させられた」と主張して慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

答えはNo.です。このようなケースでは基本的に慰謝料を請求することはできません。その理由は、女性側は男性側の希望を拒否することができたからです。産もうと思えば産めた以上、女性が自分の意思で中絶した判断されてしまい慰謝料は発生しないということになります。

他方で、男性が女性に対し暴力を振るったり脅したりして強制的に中絶させたケースでは女性側の判断に基づく中絶とは言えないので慰謝料を請求できる可能性があります。

02.男性に黙って中絶した場合

女性が男性に黙って中絶をしたケースを想定します。このようなケースにおいて、男性側が「自分は産んでほしかった。勝手におろすなんてどういうことだ。精神的苦痛を受けた」などと主張して女性側に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

答えはNo.です。女性が男性の同意なしに子どもをおろしたとしても、男性に対し慰謝料を払う必要はありません。子どもを産むかどうか、中絶するかどうかは女性の意思で決定できることだからです。

仮に男性側から「なぜ言ってくれなかったのか」「中絶に同意していない」などと文句を言われたとしても気にかける必要はありません。あまりにしつこいようであれば弁護士に依頼して対応を任せましょう。

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中絶した場合の慰謝料の相場は?

中絶をしたことを理由とした慰謝料請求の相場についてみてみましょう。

強姦された場合など女性側の自由意思がない状況での性交による妊娠・中絶の場合は、請求できる金額は極めて高額となります。500万円を超えるケースも多いでしょう。

他方で、嘘をつかれて(騙されて)性行為に及んで妊娠・中絶した場合や、妊娠発覚後に男性側が不誠実な態度を取った場合は200万円以下となるケースがほとんどです。

なお、以下のような事情がある場合には慰謝料の額が高額となる傾向にあります。

  • 中絶の影響で子どもを産めない体になってしまった
  • 中絶により鬱病になった、仕事を辞めた

請求できる金額は、諸々の事情や状況により変動します。適正な慰謝料の金額を知りたい方は弁護士に相談してみましょう。

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弁護士 奥野

慰謝料以外に請求できる金額

中絶した場合、慰謝料以外にも男性側に請求できる費用があります。

01.診察や中絶手術の費用

中絶するためには病院に通って診察や検査を受けなければなりません。当然医療費がかかりますし中絶手術自体にもお金がかかります。

中絶手術に要する費用は、妊娠初期であれば7~15万円程度、妊娠中期であれば20~30万円程度が相場のようです。

これらの診察、検査、中絶手術にかかる医療費は相手に請求することができますが、請求できる割合は事情によって異なります。

合意の上で性交渉及び中絶を行なった場合

合意によって性交渉を行い、互いに話し合って中絶する場合には半額ずつの負担とするのが一般的です。なお、経済力の高い男性側が全額負担することに決めた場合などは男性が全額負担するといった負担割合を採用することもあります。

強制的な性交の場合

女性側に自由意志のない状況での性交に基づく妊娠・中絶であれば、女性側に責任はないと考えられますので男性側が全額負担すべきといえます。

男性側が嘘をついていた場合

男性側が女性を騙しての性交に基づく妊娠・中絶の場合も、女性側の責任は男性側に比べて少ないといえるので男性側に全額の負担を求めることができます。

02.休業損害

病院への通院や手術のために会社を休むことが必要になることもあります。会社を休んだことで月収が減ったなどの損害が発生した場合は、休んだ日数分の休業損害金を請求できる可能性があります。

03.中絶による合併症や後遺症が残った場合の治療費

妊娠や中絶にともないその他の合併症を発症した場合や手術後に後遺症が残って治療が必要になった場合などにはこれらの症状への治療費も請求できる可能性があります。

慰謝料請求する手順

相手に慰謝料請求するなら次のような手順で進めましょう。

01.相手に請求する

まずは相手に請求してみましょう。相手への請求は、口頭や電話、メールといった方法で構いませんが、間違いがないのは内容証明郵便を使っての請求です。

内容証明郵便を利用すれば「間違いなく請求した」という証拠を残せるうえ、相手にプレッシャーを与える効果も期待できます。

02.話し合って合意書を作成

請求に対し相手が話し合いに応じるようであれば、慰謝料の金額や支払方法、支払時期を決めましょう。

このとき、中絶手術の費用負担方法なども一緒に取り決めておきましょう。相手が納得するのであれば全額負担してもらうとよいでしょう。慰謝料や治療費を個別で計算せずに治療費や慰謝料などすべて込みで「解決金○○万円」などと定める方法もあります。

合意ができたら合意書を作成しましょう。口約束では約束を反故にされるケースがあるので必ず書面を作成して相手に署名押印させましょう。

なお、可能であれば合意書は公正証書のかたちで作成することをお勧めします。特に慰謝料が高額でその支払いを長期分割払いとするのであれば必ず公正証書にしておくべきです。公正証書として残しておけば、将来支払いがなされないときに給与差押え等の強制執行をすることが可能です。

03.訴訟を申し立てる

内容証明郵便を送っても無視される場合や話し合っても慰謝料について合意できない場合は訴訟(裁判)を起こして責任追及しましょう。

訴訟を提起した場合は、慰謝料だけではなく医療費や手術費、休業損害なども一緒に請求することができます。

なお、訴訟をしっかりと有利に進めるためには証拠や法的な根拠(主張)が必要となります。証拠や法的根拠を一人で用意するのはなかなか大変です。訴訟での解決を検討するのであれば弁護士に相談することを推奨いたします。

東京・恵比寿にある弁護士法人鈴木総合法律事務所では、男女トラブルの解決に力を入れて取り組んでいます。中絶に関しお困りごとがある方は是非一度ご相談ください。

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