従業員に横領・背任行為をされたときの対処方法

監修者
弁護士 鈴木 翔太
弁護士 鈴木 翔太
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従業員が会社のお金を使い込んだり商品を横流ししたりして会社に損失を与える行動をとると「横領罪」や「背任罪」が成立する可能性があります。

「横領」と「背任」は両方とも会社に損失を与える犯罪行為ですが、成立要件や刑罰などの点に違いがあります。

いずれにせよ経営者サイドとしては、従業員の横領や背任行為によって迷惑をかけられたときの対処方法を押さえておく必要があるでしょう。

今回は横領罪と背任罪の違いやそれぞれが成立する具体的なケース、被害に遭ったときの対処方法を解説します。

1.横領も背任も会社に財産的な損失を与える犯罪

一般に「横領」と「背任」は混同されているケースが多いのですが、これらは別の犯罪類型です。

ただどちらも「被害者に財産的な損失を与える犯罪」という点では共通しています。

  • 従業員が会社のお金を自分のものにしてしまった(横領)
  • 従業員が取引先と結託して架空の発注を繰り返した(背任)
  • 融資担当者が本来融資対象とすべきでない信用の低い相手に多額の融資をしてしまった(背任)

上記のように、同じように財産上の損失を与えられた場合でも、成立する犯罪名が異なります。

以下で横領罪と背任罪の違いをみていきましょう。

2.横領罪とは

横領罪は「他人の物を預かって占有する人が占有物を自分のものにしてしまう」犯罪です。

刑法252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

横領罪が成立するには以下の要件を満たさねばなりません。なお犯罪が成立するために必要な要件を「構成要件」といいます。

2-1.他人の物を占有している

「他人の物」を「占有」している状況が必要です。

たとえば会社からお金を預かっている従業員、預金管理を任されている従業員、商品を預かっている従業員などは「他人の物を占有している」といえます。

2-2.委託関係がある

次に「委託関係」が必要です。委託関係をわかりやすくいうと、「委託者が相手に物を預けること」です。委託されていないのに勝手に占有している場合には横領罪は成立しません。

ただし窃盗罪や占有離脱物横領罪など、別の犯罪が成立する可能性はあります。

横領が行われるとき、通常は会社が担当従業員に対しお金や商品などを預けているでしょうから、委託関係が認められます。

2-3.自分のものにする(横領行為)

横領罪が成立するには、占有者(加害者)が委託物を「自分のものにする」ことが必要です。

自分のものにするとは、所有者でなければできないことをすることです。

たとえば従業員が会社から預かっているお金を勝手に使い込んだり自分名義の口座に送金したりすると「自分のものにした」といえるので、横領となります。

2-4.従業員による横領は「業務上横領罪」になる

従業員が会社の財産を横領した場合には、単なる横領罪ではなく「業務上横領罪」が成立します。

刑法253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、業務として他人の物を預かっている人が横領したときに成立する横領罪の加重類型です。

単純横領罪の場合、単発で物を預かっているだけなので悪質性が高くはありません。一方業務として他人の物を預かっているにもかかわらず横領してしまった場合、相手の信頼を裏切る度合いが高くなり、強い悪質性が認められます。

よって業務上横領罪は単純横領罪よりも刑罰が重くなっています。

  • 単純横領罪の刑罰…5年以下の懲役刑
  • 業務上横領罪の刑罰…10年以下の懲役刑

会社の財産を横領した従業員には業務上横領罪が成立するので、刑事事件になれば10年以下の懲役刑が適用されます。

2-5.従業員による横領罪の具体例

  •  経理担当者が会社のお金を使い込んだ
  •  営業担当が商品を横流しした

3.背任罪とは

次に背任罪とはどういった犯罪なのか確認しましょう。

刑法247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

背任罪は、他人から事務を委託されている人が自分や第三者の利益や本人に損害を与えるために任務に背く行為をして本人に損害を与えたときに成立します。

以下で背任罪の構成要件をみていきましょう。

3-1.他人のために事務処理をしている

背任罪が成立するには、「他人のために事務処理をしている」状況が必要です。横領罪と異なり、必ずしも「物を預かっている」必要はありません。

会社と従業員の関係でいうと、通常会社は従業員に何らかの仕事を委託しているので「他人のために事務処理をしている」要件は満たしやすいでしょう。

3-2.自分や第三者の利益または本人に損害を与える目的

加害者に「自分や第三者の利益」または「本人に損害を与える目的」が必要です。

自分や第三者の利益をはかる目的を「図利目的」、本人に損害を与える目的を「加害目的」ともいいます。

たとえば「お金をとって自分が利益を得よう」というのは「自分のための図利目的」、「取引先に利益を得させよう」というのは「第三者のための図利目的」となります。

「会社に損失を与えてやろう」と考えている場合には「加害目的」が認められます。
背任罪が成立するには、これらのうちどれか1つ以上が必要です。

3-3.任務違背行為

「任務違背行為」とは、本人から頼まれた任務に背く行動です。

たとえば金融業者内に融資基準があり、信用のある相手にしか貸付を行わないようルールが作られているにもかかわらず、融資担当者が相手と結託して資力のない事業者へ融資した場合には「任務違背行為」があるといえるでしょう。

建築士が違法建築の設計を行った場合、不動産鑑定士が故意に実際の価格と著しくかけ離れた評価を報告した場合などにも依頼者との関係で「任務違背行為」が認められます。

3-4.財産上の損害の発生

背任罪が成立するには、本人に「財産上の損害」が発生したことが必要です。

たとえば従業員が不正融資を行って回収不能リスクが高まると、会社には「本来貸付をしないような相手にお金を渡してしまった」点で損失が発生します。

3-5.従業員による背任罪の具体例

  • 融資担当者が本来貸付を行うべきでない信用の低い相手に不正融資をした
  • パチンコ店の従業員が特定の客に、有利なパチンコ台の設定情報を提供した
  • 担当者が取引相手に架空の発注を繰り返してキックバックを得ていた

3-6.特別背任罪について

特別背任罪は、背任罪の加重類型で、成立するのは株式会社の取締役や代表者、監査役、支配人などの重要な役職にある人が背任行為を行った場合に限定されます。

一般の従業員が背任行為を行った場合には特別背任罪は成立しません。

3-7.図利加害目的がないケース

外形的には従業員の問題行動によって損失を被ったとしても、背任罪が成立しない可能性があります。「図利加害目的」が認められない場合です。

背任罪の成立には「利益を得てやろう」「会社に損害を与えてやろう」という意図が必要です。

従業員がルール違反の行為をしていても、本人としてはまじめに業務を行っていて結果的に会社に損失が発生してしまったのであれば、背任罪は成立しません。

背任罪を追及する際「図利加害目的」がハードルとなるケースはよくあります。

4.横領と背任の違い

横領罪と背任罪は混同されやすいので、以下で主な違いを確認しましょう。

4-1.行為の違い

横領罪は「預かっている他人の物を自分のものにした」場合に成立します。

「物を預かっている関係」や「自分のものにする行動」がないと成立しません。

背任罪の場合、広く「任務に背く行為」によって成立するので、横領罪よりも成立範囲が広くなります。従業員へ財産を委託していなくても、従業員が自分のものにしなくても背任罪であれば成立する可能性があります。

4-2.主観的な要件が異なる

横領罪が成立するには「自分のものにしてやろう」という不法領得の意思が必要です。

他人の利益を図った場合や会社に損害を与える目的では横領罪が成立しません。

背任罪の場合、従業員本人の利益ではなく取引先などの「第三者の利益を図った」場合や「会社に損害を与えよう」という目的であっても成立します。

5.業務上横領罪も背任罪も両方成立する場合

従業員がお金を使い込んだ場合などには、業務上横領罪と背任罪の両方が成立する可能性があります。

どちらの構成要件にも該当する場合、通常「業務上横領罪」への該当性から先に判断されます。たとえば経理担当者がお金を使い込んだ場合、通常は「業務上横領罪」によって処断され背任罪は問題にされません。

横領罪が成立しない場合において、より広く成立する背任罪の適用を検討することになります。たとえば架空の発注を繰り返して会社に損害を与えた場合には、物を預かっていないので業務上横領罪が成立せず、背任罪を適用します。

6.会社が従業員に横領や背任行為をされたときの対処方法

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従業員の横領や背任行為が発覚したら、以下のように対処を進めましょう。

6-1.調査する

まずは実情を調査しなければなりません。

そもそも横領や背任が行われた事実があるのか、どの程度の損害が発生しているのか、いつ頃から行われたのかなど、明らかにしなければ責任追及も困難となります。

資料の収集、関係者からの聞き取り、本人への質問や聞き取り調査などを進めましょう。

6-2.自宅待機命令、休職命令

本人が出社すると証拠隠滅などを図る可能性がありますし、他の従業員に影響が及び職場環境が混乱する可能性もあるでしょう。

このような場合、自宅待機命令を下して出勤停止にできます。ただし停止中も賃金は全額払わねばなりません。就業規則に規定があれば休職命令も出せますが、刑事裁判で有罪になっていない以上無給にはできません。

6-3.損害賠償請求をする

従業員による横領や背任行為による損害の内容が明らかになったら、損害賠償請求を行いましょう。ただし損害額が膨大になっており、一括払いが困難なケースが少なくありません。

その場合、可能な範囲で分割払いさせましょう。場合によっては訴訟を起こして追及する方法もあります。

なお給料との相殺は禁止されているので、勝手に給料から損害賠償額を天引きしてはなりません。

6-4.懲戒解雇する

横領や背任行為をされたら、当該従業員を「懲戒解雇」できる可能性があります。

ただし懲戒解雇するには就業規則に懲戒制度についての定めが必要です。

また、刑事事件で有罪になっていない段階では「無罪が推定」されるので懲戒解雇は認められにくいでしょう。

なお懲戒解雇するときには、労基署で事前手続きをすれば解雇予告手当の支給を省けます。

退職金を減額、不支給にできる可能性がありますが、必ずしも全額不支給にはできないので注意が必要です。迷ったときには弁護士へご相談ください。

6-5.刑事告訴を検討する

横領や背任行為をした従業員の責任を追及する方法として、刑事告訴は最後の手段です。

刑事告訴して従業員が逮捕されたり刑罰を科されたりしても、会社の被害は回復されません。たとえばお金を横領されたとき、従業員が有罪判決を受けても被害金は返還されません。

むしろ従業員が職を失って刑務所へ行くことになれば、賠償金が支払われない可能性が高くなってしまいます。

また刑事事件がメディアで報道されると会社に対するイメージや信用低下が発生するリスクもあります。

刑事告訴を検討すべきケース

以下のような状況であれば、刑事告訴を検討してもよいでしょう。

  • 従業員が開き直って一切払おうとしない
  • 従業員に資力がなくこのままでは支払いを受けられる見込みがない
  • 中小零細企業などで従業員の横領による風評被害のリスクが低い

刑事告訴すべきか迷ったときには弁護士がアドバイスいたしますので、ご相談ください。

7.企業法務は恵比寿の鈴木総合法律事務所までご相談ください

企業経営していると、従業員の横領や背任行為をはじめとしてさまざまな法律トラブルに巻き込まれる可能性があります。その都度適切な対応を進めてリスクを最小限度にとどめましょう。

恵比寿の鈴木総合法律事務所では、各業種の中小企業へ法的支援を積極的に行っております。企業法務や刑事事件に強い弁護士をお探しの方はぜひご相談ください。

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